その2
A M9:47
俺はサマーから送られてきたリストを元に、自宅か会場近くの歯医者に片っ端から電話をかけていた。
——こちらは近藤歯科です。只今の時間は診療を受け付けておりません。診療時間は前の——
——はい。日高歯科です。現在診療時間外となっております。改めてお電話——
かけてもかけても留守番電話ばかりだった。
それもそのはずだ。
今日は日曜だし今は10時前だ。
だいたいの医療機関は閉まっているし、まさか救急外来に診療してもらうわけにもいかない。
なんだか学生時代、テレフォンアポインターのアルバイトをしている時のことを思い出した。
押し売りに近い商法を勧める仕事だったが、名乗った瞬間にガチャ切りされることも多かったし、リストには何曜日にかけても留守電につながる番号も多くあって、正直精神的にだいぶキツい仕事だった。
バイト中は通話するのがしんどくてしんどくて仕方なかったのでPCをいじるフリをして度々サボっていたが、今日は自分事なのでそういうわけにもいかない。
ああバイトを雇って日本中の歯医者に一斉に架電してほしい気持ちだ。
留守電。留守電。留守電。留守電。
流石に心が折れかけてきた。