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俺の歯がない

 プロポーズは男の子の人生最大の見せ場であり、結婚式は女の子の生涯最高の舞台だ。

 俺のプロポーズはベタだが最高のキメ場になった。

 夜の都会の観覧車の最高に達した時に、跪いて指輪を差し出した。

 思い返すと照れくさくて恥ずかしいが、織さんは内心バレバレだったろうにしっかりと男のエゴに付き合って最高のヒロインになってくれた。

 今度は織さんのための舞台だ。完璧な新婦のために最高の新郎を演じなければならない。

 糖質コントロールして体型も作ったし、メンズエステにも通った。

 今日は織さんの最高にカッコイイ騎士になるんだ。

 そう思っていると緊張してきて、俺は大好物のガブリチュウをポケットから取り出して3粒まとめて食べた。

 小学生の頃から食べていた懐かしい味で、程よく緊張を和らげてくれる。

 その時だった。


 ぽきんっ


 何か口の中に違和感を感じた。


「えっ?」

 舌に何か触っている。

硬い。

ガブリチュウかとも思ったが、感触が違う。

 噛んでみようと試みたが、なぜか空振りになる。

 これはおかしいぞと思い、口の中のものをティッシュペーパーの上に吐き出してみる。

 紫白色の歯形のついた半固形のキャンディの他に、何か白いものがあった。

「詰め物……?」

 想像しうる最悪の事態を思い浮かべ、恐る恐る俺は鏡を見た。

 前歯が、欠けている。

 それも、中切歯が2本とも。

「嘘だろ……?嘘だろ嘘だろ嘘だろーーーーーーーっ!?!?!?」

 婚約は男の子にとって最高の決め場所であり、結婚式は女の子のための最大の晴れ舞台である。

 拝啓旧姓梢織様。

 晴れ舞台で新郎たる俺がチビの後輩リンチしようとして返り討ちになった喧嘩よわよわファッション不良の三井寿みたいになっても、俺を愛してくれるでしょうか。






「もしもし、ああ荒騎? この度は改めておめでとう。もう家は出たのか?」

「大変なことが起こったんだサマーどうしよう今は家にいるお前にしか相談できなくてどうしようどうしよう」

「な、何が起こったんだ? とりあえず落ち着けよ」

 AM9:21 俺は親友であり今日のベストマンを務めてもらう渡辺夏に連絡を入れていた。

「ビデオ通話にしてくれ、サマー……」

「ああ、良いけど。どうしたんだ?」

 友人の顔がスマートフォンの端末に映る。

 俺は無言のまま数秒画面を見つめると、口角を上げてニヤリと笑ってみせた。

「あれ? 荒騎お前、その歯……」

「どうしようサマー。有声音言えなくなっちゃった」

「ええええええよりによって今日の朝に!?」

「本当だよどんな因果だよ! サマー、助けて!」

 縋る思いでサマーに現状を打ち明けると、今日のヒーローではない友人は比較的冷静に現状を分析してくれた。

「とりあえず歯医者だ。すぐに診てくれる歯医者を探そう。今からでも行って式に間に合う範囲にある歯医者に片っ端から電話をかけるんだ」

「うん……」

「それと、式場にも連絡しておく。協力してもらえると思うし、最悪の場合スケジュールを少しくらいなら調整してくれるかもしれない‘

「何から何までぁりがとぅ……」

「礼はすべて事がうまく運び終わってから聞くよ!とりあえず急ごう!


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