鬼人達の宴蒼 第七章 呪術者
本日は結花が帰る回です。
そして、不穏な気配が。
続きは小説で。
誤字、脱字があったらすみません。
日曜日の朝、雫は目が覚めると顔を洗いに行った。
台所に行くと母親がかなりの量のトーストを作っていた。
いろんなジャムやピーナッツバターやチョコレートを付けたものからフレンチトーストもあった。
「おはよう、雫。皆の分も作ったから呼んであげて。」
「うん。皆出てきて。」
雫が言うと鬼達が出てきた。
また一人増えて今日は六人だ。
「朝ごはん出来てるわよ。後デザートにマスカットがあるから。種も無いし、皮も食べれるからそのまま食べてね。」
『わーい!いただきまーす!』
今日は星谷もいたが、慣れたようで皆とトーストやマスカットを食べていた。
「今日は中村さんを見送るのよね?皆がごはん食べたら洗い物してすぐ出かける準備するから。」
「うん。」
トーストもマスカットもみんなすぐ食べ終わった。鬼達は今日も機嫌が良かった。
鬼達は元の石に戻り、雫の母親は洗い物をして準備をした。
雫が着替えが終わると雫の母親は結花に渡す
荷物を持っていた。
「それ、どうしたの?」
「いつも何かあった時の粗品位何個かあるわよ。中身はタオル。」
雫の母親はいろいろ準備が良かった。
二人で外に出ると要と透がいた。
「あれ?雫のお母さん、出かけるんですか?」
要が言った。
「雫が中村さんにお世話になったから、タオルを持っていこうと思ってね。」
「中村さん、双葉ちゃんと似てるけど、性格は違ってかなり明るかった。」
「そうなの?双葉ちゃんはおとなしかったからね。」
透も結花の事を話していた。
結花の民宿前に着くと結花が手を振っていた。
「黒澤さん!二瀬さん!おはよう!」
結花は四人に近づいた。
「はじめまして。雫の母です。娘がいろいろお世話になりました。これ、良ければタオルが入っているから使って下さい。」
雫の母親は結花にタオルが入った荷物を渡した。
「すみません。頂きます。今日はちょっと家に帰宅しますが、明日また友達と夕方来るかもしれません。」
「あらー。忙しそうね?どちらに住んでいるの?」
「隣の◯◯県の◯◯市です。バスに乗って◯◯美術大学に行っているんです。」
結花は普通に話しているが、ここからまあまあ距離がある。
…そこから翼達が前に来ていたのである。
「…。大丈夫?車でも片道三時間掛かるわよ?」
「あっ!大丈夫です!」
「…やっぱり、鬼の子の力?」
雫の母親がつい言ってしまう。
「ちょっと!お母さん!」
「あっ、昨日少し聞いたけど知っているみたいですね?暴露すると友達が鬼になって、背に乗せてここまで来るのに片道30分です。」
結花はまた爆弾発言をする。
「えっ!鬼ってそんなに足が早いの!」
「結界と風の術と空間操作したら早くなるんだって。足が早いと体に空気抵抗掛かるけど、結界で防いだらかなり移動速度上がるんですよ。後酔い防ぐのに空間操作すると良いって聞きました。」
驚く透に結花が説明した。
「…まあ、私は鬼の長から貰った輝く石の力で光の術しか使えませんけどね。自分の鬼もいませんけど、私や友達が雫さんや二瀬さん達の力にはなりますよ。」
「そうなの…。…お供えしたら、鬼にならないのかしら?中村さんの石。」
「…どうだろう。でも、友達は七個持ってるけど、鬼から貰った石は鬼になっていないから無理かも。」
「…きっと、中村さんにも守ってくれる人が出来るわよ。また、良ければ遊びに来て下さいね?」
「はい。では、そろそろバスが来るので行きましょうか。」
五人はバス停まで行った。暫くするとバスが来た。
「もう言ったからいいよね。明日友達と一緒に来ます。だから、また明日。また市村さんや火爪さんや五十嵐さんと来るね。たぶん、月詠夫婦も天津さんも。」
「うん。また明日ね。中村さん。」
結花はバスに乗ると来た時のように後部座席に座って手を振った。
「…行っちゃったね。」
「でも、明日また来てくれるみたいだから、ちょっと寂しくなくなったかな。」
透と要が言った。
「初めてここに来た時も一番後ろの席に中村さん乗っていたかな。…お母さん、中村さんどうだった?」
「双葉ちゃんと雰囲気は似ているけど、性格は本当に違うわね。かなり明るいし、よくしゃべっていたから。」
その頃、結花は雫の姿が見えなくなると普通に座って外を眺めた。
「静かな所だけど、良かったかな。」
暫くすると道路の端を歩く男性がいた。
黒色の髪に黒色の袴を着た人だ。
明らかに普通と違う雰囲気だ。
「…なんか、見た事ある気がする。…あっ!」
結花は慌てて雫に電話した。
「…黒澤さん、鞄持っていたよね?電話持っているよね?出て!早く出て!」
暫くすると雫が出た。
「中村さん?どうかしたの?忘れ物?」
「違うの!黒澤さん!要君と透君に鬼に変身して貰って急いでお母さん連れて家に帰って!昔菫さんを池に突き落とした男の人!バスですれ違ったの!そっちに行ってるから!気をつけて!この時代に黒色の袴だから普通じゃないよ!じゃあ一旦電話終了するね!」
雫は電話を終わると青ざめた。
「雫?どうしたの?中村さん?」
「うん。昔、菫さんを池に突き落とした男の人。こっちに向かっているって。」
雫が振り返ると黒色の袴の男がいた。
「あの人よ。逃げなきゃ。透、要。鬼になって。」
雫に言われると透と要は鬼になった。
「雫のお母さん!ちょっと持ちあげるよ!透は雫を背負って!雫の家に戻ろう!」
「分かった!」
要は雫の母親を持ちあげても早く走った。
数分もしないで雫の家に着いた。
「三人共!入って!中に入ったら雫は二階の窓が閉まっているか見てきて!透君や要君は一階ね!」
四人で家の中の戸締りを確認した。
一応ほとんどの窓は閉まっていた。
「…流石にバス停まで歩いて20分よ。すぐに来ないし、大丈夫でしょ。」
雫の母親が言うが、玄関を一回叩く音がすると玄関の扉から黒色の煙がすぐに広がって四人を包んだ。
ピチョンと水の音がした。
目を開くと辺りは真っ暗だった。
雫は携帯を出すと母親、要、透の姿が見えた。
「雫、彩夏ちゃんを出して明るくして貰いなさい。」
「うん。」
火の石から彩夏が出ると辺りは明るくなった。
「ありがとう、彩夏ちゃん。…ここ、洞窟の中ね?黒い石がいっぱいね。…スリッパ余分に出して良かったわ。一応余分にあるから、彩夏ちゃんや要君や透君も履きなさい」
三人は足にスリッパを履いた。
周りを見るとカラスのような妖怪がいた。大きな嘴を持ち、赤い褌をつけて手には長い髪を持っていた。
「髪切。髪を切る妖怪ね。私が一番髪が長いから狙われるかな。まあ、好都合だけどね。」
彩夏は刀を出して髪切を倒した。
他にはヤマカガシのような妖怪がいた。
「あれは頭の浅沓が本体の妖怪だな。体の針に気をつけて。」
要も刀で浅沓を倒した。
「本当に妖怪が多いのね。空中も一つ目の蝙蝠が飛んでいるわ。」
透が蝙蝠を倒そうとするが、雫の母親は掌から炎を飛ばして蝙蝠を倒した。
「…え?お母さん。術が使えるの?」
「ごめんね。雫。皆に御飯あげているし、今は彩夏ちゃんがいるから使えるのよ。言ったでしょ。御飯を皆に作っているのはこういう事よ。」
要や透は驚いていたが、彩夏は逆に気まずそうに黙っていた。たぶん、星谷以外の鬼は雫の母に教えて知っているのだろう。
「さてと、今日のお昼御飯はトマトのハヤシライスよ。要君や透君も食べるでしょ?辰夜君ならお肉いっぱい入ったハヤシライスがいいと思ったの。彩夏ちゃんも頑張りましょうね。美味しいわよ。トマトのハヤシライス。」
「わー!私、頑張る!」
彩夏は完全に雫の母親の御飯に釣られていた。
奥に行くと黒い二本の角に赤色の瞳の白色の髪の鬼がいた。
「あれが辰夜君ね。」
辰夜は黒い鎌を無数に作るとこちらに放ってきた。
雫が光の壁を放ったり、彩夏が火柱を出すがいくつかこちらに飛んできた。
要や透が打ち落とすが、それでも何個か鎌が向かってきた。
「…きっと光や火はダメなのね?皆、防げる力があれば私に貸して。」
雫の母親が言って掌を出すと緑色のオーラと銀色のオーラが出て大きな結界を作った。
「…雫、分かるわね?優花ちゃんと星谷君を呼んで。」
「うん!優花!星谷!出てきて!」
雫が言うと優花と星谷が出てきた。
「さてと!朝は美味しいフルーツ食べたから頑張らないとね!」
「でも、お昼のハヤシライスって食べ物は肉がいっぱいあって旨いらしいな!楽しみだ!」
あれからいろんな食べ物を食べているので優花も星谷も張り切っていた。
「透!要!優花!星谷!彩夏!善鬼化!一気に行くよ!」
「うぉおおおおっ!」
「はぁああああっ!」
星谷は月のオーラを出し、優花も髪を伸ばしていた。
「あら。スゴいわね。皆肩や肘から角を出すのね。でも大体分かったから少し私が力を送ってあげる。」
雫の母が五人に銀色と緑色のオーラを送った。
「雫のお母さん、スゴいね?俺の力が大分上がったよ。」
「私も!ならさ!星谷!一気に力ぶつけるよ!」
星谷と優花は月と木のオーラを溜めて放った。
辰夜から黒いオーラが飛んでいったが、辰夜は黒い火柱を出して燃え上がった。
「ウガァアアアッ!」
星谷と優花に黒い炎が向かってきたが、彩夏が銀色と緑色になった炎で押し返した。
「透!要!また辰夜が黒いオーラ出さないようにしたから今のうちに元に戻しなっ!」
「あぁ!行くぞ!要!」
「あぁ!」
透は飛んで辰夜の後ろに回った。そして要と透で前後から辰夜に刀を振り、黒いオーラを払い出した。
辰夜は倒れると腕を目元に当てて泣き出した。
「…俺は…菫…姉さんを…助けれなかった…。」
「…辰夜さん。私、明日、菫さんに逢うと思う。…菫さんは、まだ池の底にいると思う。一緒に助けに行こう。」
「…そうなのか。…分かった。一緒に行く。」
辰夜はそういうと黒色の石になった。
「…これで、皆元に戻ったね。」
周りの黒色の石は塵になって元の部屋に戻った。
「お母さん!私頑張ったよ!」
「今日はありがとうね。彩夏ちゃん。後でお昼御飯や夕御飯が出来たらまた呼ぶわね。」
彩夏は雫の母に抱きしめられると元の石に戻った。
「雫姉様!私頑張ったよ!」
「雫姉さん!俺も!誉めて誉めて!」
「うん。頑張ったね。ありがとう。後でまた一緒に御飯食べようね?」
「うん!」
二人は雫と抱き合うと二人も元の石に戻った。
「…さっきの男、いるかな?ちょっと見てくる。」
「要君、気をつけてね?」
要が玄関に行ってドアスコープを見たが誰もいなかった。
「…。雫のお母さん。僕、風の力で周りを調べたけど、遠くに離れたみたいだよ?」
「そう。…もし何かあったら私に教えてね?透君。」
「うん。」
暫く三人は居間でテレビを見ていた。
雫の母は昼御飯のトマトのハヤシライスとオニオンスープを作っていた。
「お昼御飯出来たから持ってくるわね。雫、また皆を石から呼んでくれる?」
「うん。皆、お昼御飯だよ。」
雫が言うと六人は出てきた。辰夜はまだ石のままだ。
「…スゴいね。雫のお母さん、皆の御飯も作っているの?」
「うん。でも、お母さんが術使ったのはビックリした。彩夏は知っていたでしょ?」
「教えたのは重蔵だけど。」
「え!いや!雫のお母さんが術使えそうだから言ってみたんだ!でも悪気はないんだ!」
「重蔵、焦ってる。面白い。」
透はケラケラ笑っていた。
「まあ、今日はお母さん巻き込んじゃったけど、無事だからいいかな。これでおしまいね?今日のハヤシライス、スプーン使うからちょっと慣れないかもね。現在ってお箸以外も使うからちょっとずつ慣れようね?」
「はーい!」
雫の母が四個ハヤシライスとオニオンスープを持ってきた。
「雫は辰夜君をお願いね?皆は台所に用意したからいらっしゃい。」
「わーい!ハヤシライス!ハヤシライス!」
鬼達は雫達のハヤシライスやオニオンスープの匂いでテンションが上がっていた。
「楽しそうだね。あれだと雫のお母さんも嬉しいかもね。」
「…さてと、辰夜さん。出るかな?」
雫が黒い石を出すと辰夜がしゃがんで現れた。
「…ここは?どこだ?」
「ここは雫の家で、今から皆で昼御飯を食べるんだよ。」
「辰夜さんも一緒に食べようか?」
「俺が教えようか?このスプーンって道具に赤いソースと米を乗せて、口に入れるんだ。」
要がスプーンで辰夜の口にハヤシライスを入れて食べると辰夜は泣き出した。
「…旨い。」
「…うん。まだ疲れていると思うからゆっくりでいいよ。」
少しして雫の母が来た。
「辰夜君。石から出れたのね?おかわりいる?まだあるわよ?オニオンスープもあるから。」
「はい。頂きます。」
「僕もハヤシライスおかわりください。トマトのハヤシライス大好きです。」
透も一緒にハヤシライスをもう一杯頼んでいた。
「…俺はスープを良ければください。」
要は顔を赤くしていった。
「いいのよ。要君も遠慮しないで食べてね?」
雫の母はそういってお皿を持っていった。
「辰夜さん。美味しかった?」
「あぁ、久しぶりに食べ物食べたから美味しかった。」
「僕の家、あんまりハヤシライス作らないからさ。美味しいよね。」
「スープも美味しかった。ベーコン入ってたな。」
「重蔵や大地や星谷がお肉好きだからかも。朝はマスカット出してた。」
「いいなあ。マスカット。」
また雫の母がハヤシライスやオニオンスープを持って来たが、一つ蓋をしたお皿があった。
「…朝、ちゃんと辰夜君の分のマスカット残していたの。透君や要君や雫も食べなさい。…皮も食べれる良いマスカットよ。」
「あっ。絶対美味しいやつだ。」
「すみません。頂きます。」
「はい。辰夜さん。美味しいよ。」
辰夜はマスカットを一つ貰って食べた。
「これも甘くて美味しい。」
辰夜は嬉しそうに食べた。
昼御飯を食べ終わると六人の鬼が戻ってきた。
「今日の夕御飯炊き込み御飯と白身魚のバター焼きとシュウマイとサラダと味噌汁ってお母さん言っていたよ。」
「シュウマイって肉料理だって、後炊き込み御飯の上に焼き鳥のもも肉乗せてくれるって。楽しみだな。」
六人共嬉しそうにしていた。
「シュウマイ美味しいよ。後焼き鳥。僕焼き鳥はあんまり家で食べた事ないからいいなぁ。」
「結構いろいろ作るんだな。雫のお母さん。」
「普段私があんまり食べないから嬉しいかもね。じゃあまた夕御飯の時に七人呼ぶね。」
七人はまた石に戻った。
「…さてと、さっきの変な男がいるかもしれないから、要君と透君は気をつけて帰ってね。」
「はい。お昼御飯ごちそうさまでした。」
「ハヤシライス美味しかったです!ごちそうさまでした!」
「ふふっ。透君も変わったわね。また遊びに来てね。」
「お邪魔しました。」
二人は挨拶をして帰った。
「…明日、いろんな人が来てくれるって言っていたよね。中村さん。雫。気をつけなさいよ。私もビックリしたけど、あんな事出来るなんて人間じゃなさそうよ。黒い霧を出して異世界に飛ばして妖怪に襲わせるなんて。まるで呪いや神隠しみたいじゃない?」
「うん。」
お昼は雫の母が買い物に行っていた。雫は音楽を聞いたりしていたが、雫の母が帰ってきて台所に行くとバターロールが数袋あって、冷蔵庫にミートボールやホイップクリームやキウイがあったので、明日はパンで惣菜からデザートまで作るつもりなのだろう。
夕御飯の時はまた鬼達が出てきて炊き込み御飯や白身魚のバター焼きやシュウマイを楽しんでいた。
特に炊き込み御飯は甘い卵焼きや焼き鳥を乗せて出されたので人気だった。
辰夜も馴染んで夕御飯を楽しんでいた。
「明日は、たぶんあの人と戦うのかな。…頑張らなきゃ。」
雫は明かりを消して眠りについた。
その日は夢を見た。
黒い袴を着た男が池の近くにいた。
「もうそろそろだ。またこの地を水で沈められる。」
そう言って男は池の下にある町を見下ろした。
今回はついに雫の母が日頃の料理を鬼に食べさせた事で術師へ。
そして、黒幕の登場。
妖怪を呼び寄せて襲わせる。これが実は碧のその先の話に繋がったりします。
次回に続け。