鬼人達の宴蒼 第五章鬼の絆
今回は新しい鬼との展開である。
後はネタバレになるので無し。
誤字、脱字があったらすみません。
五日目の朝。
雫は鬼の石を袋に入れて、顔を洗いに行った。
流石に少し疲れている気がした。それも今日学校に行けば休みになる。
「お母さん。おはよう。」
「おはよう。雫。」
ご飯を食べて、着替えようとすると母親に止められた。
「…雫。ちょっと、調子悪いんじゃないの?大丈夫?」
「…昨日体育あったから、少しね。大丈夫。」
着替えてインターフォンが鳴る。
玄関には要と透がいた。
「雫。おはよう。」
「おはよう。雫。」
「おはよう。行ってきます。」
今日はいつもと違い、雫の母親が出てきた。
「…待って。要君、透君。今日、雫、ちょっと調子良くないみたいなの。体調悪くなったら保健室に連れて行って。」
「え?お母さん、心配し過ぎだよ。」
「…お母さん。勘はいいの。雫、今日は気をつけなさい。」
「…分かりました。雫の体調、見ておきます。」
「僕も気をつけておきます。」
「うん。行ってらっしゃい。雫、一人で無理しないのよ。あんた、私と一緒で無理するんだから。」
「…うん。行ってきます。」
雫の母親は玄関から暫く三人を見ていた。
「…雫、昨日の事で疲れているのかもな。荷物持つよ。」
要は雫の手提げ鞄を持った。
「…え?大丈夫だよ。」
「…大丈夫じゃなさそうだよ。僕ら鬼だから荷物持つの大丈夫だよ。」
教室に着くと流石にクラスの子が気にした。
「…どうしたの?黒澤さん。荷物持って貰って?」
「雫、ちょっと体調悪いみたい。」
「え?大丈夫?」
「うん。なんとか。…お母さんにも言われたけど、私、体調悪そう?」
「…よく見たらちょっと表情よくないよ。気分悪くなったら言った方がいいよ。」
「うん。」
昼ご飯を食べたら少し雫は寝てしまった。
「…珍しい。黒澤さん寝てるやん。」
「…昨日あんまり寝れてないんじゃない?」
それから授業が一通り終わると違和感を感じた。
「…ねぇ、気のせい?寒くない?」
「…ん。確かに…」
雫とクラスの女の子とそういって窓の外を見ると雪が降っていた。
「…嘘、雪降ってる。」
「…何?これ?前に隣の県の起きた異常気象と一緒じゃん?」
雪は学校の裏山を真っ白にしていた。
山をよくみると氷の塊みたいなのが浮いていた。
「…あれ、分かる?氷が浮いてる。」
「…分かる。やばくない?なんで氷浮いてるの?」
「…たぶん、氷の鬼が荒ぶっているのかも。」
「…え?なんで、そうなるの。」
「…隣の県の異常気象止めた人、最近あったの。鬼がいたって。」
「…え?マジ?」
グラウンドが少し騒がしくなった。
見ると氷の蜘蛛らしきものがいた。
グラウンドの生徒は慌ててバットで戦っていた。
「…ちょっと、学校も危なくなってきたんじゃない?」
校内放送が入る。
「学校内の生徒は外が危険なので学校から出ないで下さい。」
「…ねぇ、田中さん、お願いがあるの。私、要君と透君で行ってくるから。出たら学校の扉、閉めてくれない?」
「え!黒澤さん、危ないよ!朝体調悪かったじゃん!」
「…私、今火の力、使えるの。」
雫は田中さんに火球を掌に出してみせた。
「…黒澤さん。大丈夫なの?無理してるってこの事でしょ?」
「…ごめんね。でも、鬼を静めるの、今は私や要や透しか出来ないの。行かせて。」
「…じゃあ、俺が扉閉めに行くよ。」
近くにいた佐藤君が言った。
「…黒澤さん。ちゃんと無事に帰ってきてよ。」
「…うん。」
「…要、透。二人も気をつけなよ。」
「あぁ。」
雫、要、透、佐藤は一階に行った。
「…表は先生がいるな。裏なら大丈夫だろ。…要や透の体つきが変わったのって、本当は訳ありなんだろ?」
「…うん。僕、鬼になれる。」
「でも、悪い鬼じゃないよ。…私達、悪鬼になった人を元に戻す為に戦ってるの。」
「…こんなのなかったら嘘だって言うけど、あんな氷の蜘蛛とか見たら言えないよな。…二人ってどんな鬼なんだ?」
佐藤君に言われると要と透は鬼の姿になった。
「…俺は水鬼。」
「僕は風鬼。」
「…私は、術者って言うのかな。今は所、要の水、透の風、後は雷、火、土、木の鬼は静めて力を使えるの。今日は氷で間違いないと思う。」
「…お前ら、四人も鬼と戦ったのかよ。…無理するなよ。特に黒澤、体調悪いだろ。要、透。しっかり守ってやれよ。」
「あぁ。行ってくる。」
三人は外に向かった。
学校の外には氷の塊がいくつかいた。
氷の下にはつららが出来て落ちたりしていた。
雫は火球を放って氷を壊した。
「…要、透。周りから見えなくしておいて。」
「あぁ。大丈夫だ。まあ敵を倒すのは分かるかもしれないけどな。」
グラウンドで逃げ遅れた生徒が部室に籠っていた。
氷の蜘蛛を倒すとドアを叩いた。
「…中に誰かいる?開けて。蜘蛛は倒したよ。」
中には少し怪我をした生徒がいた。
「…たぶん、木の力で治せるかも。」
雫が木の力を使うと生徒の怪我が治った。
「…歩ける?学校の裏の扉にクラスの子がいるの。ここは寒いから避難しましょう。」
雫は生徒を連れて学校の裏の扉に戻った。
「佐藤君、この人達をお願い。」
「あぁ、後は皆逃げ終わったかな?」
「体育館の生徒は皆校舎に逃げたと思う。行ってくるね。」
また扉を閉めると三人は学校の裏山に向かった。
裏山は足場が悪いので要が雫を背負って登った。
ある程度行くと歩ける場所に着いたので雫は降りた。
「…何だろう?人がいないと思うけど、見られている感じがする。」
雫が歩いていると突然頭上から頭だけの骸骨が現れて口を開いた。
「…っ!」
雫は咄嗟に光の玉を放って死霊を倒すが、膝をついて座り込んだ。
「雫!大丈夫か!」
「…ごめん。なんだか力が入らない。」
「…さっきの死霊に生命力を吸われたみたいだね。…雫、少し僕の生命力を分けるから、ちょっとキスさせて。」
透はそういうと雫と唇を重ねた。
何かが吹き込まれる感じがしたが、ある程度したら透は離れた。
「…うっ。大分生命力を分けたけど、ちょっと足りないや。」
「…残りは俺がする。」
要も雫と唇を重ねたが、ちょっと機嫌が悪そうだった。
「…雫。どうだ?良くなったか?」
「…うん。来た時より大分良いけど、透、大丈夫?」
「うん。ちょっと頑張りすぎちゃった。でも、風が澄んでいるから体力回復出来たよ。」
透は嬉しそうにしていた。まあ、キスしたから嬉しいのもありそうだった。
奥に行くと青い長髪の女性の鬼がいた。
「…澄子だな。」
「…雫。あの子で女の子は全員だよ。」
「うん。」
澄子は大量の氷の塊を周囲に振り撒いていた。
雫は火の光線を放つが多すぎて全然打ち落とせなかった。
「…っ!要!透!善鬼化しよう!」
「…うぉおおおっ!」
要と透が善鬼化して澄子に立ち向かうが全く近づけなかった。
「…嘘。強すぎて全然ダメ。」
要と透は氷の塊を懸命に叩き落とすが全くダメだった。
「…どうしよう。…勝てそうにない…。」
雫が諦めかけた時、火の石と雷の石が輝いた。
(雫、あんたは一人で頑張りすぎるんだから。無理なら周りの人に助けてもらいなさい。)
「…お願い。重蔵さん、彩夏さん。助けて。」
雫が願うと火柱と雷が出て、重蔵と彩夏が現れた。
「…やっと出れるようになった。」
「…うん。雫姉様がお供えしてくれたから力が戻ったよ。…今なら私達、善鬼になれるよ。雫姉様。私達に力を。」
「…うん。重蔵さん、彩夏さん、善鬼化して。」
「…うぉおおおっ!」
「…はぁあああっ!」
重蔵と彩夏は肩や肘から角を出して善鬼になった。
「澄子!あんたには悪いけど、雫姉様を傷つけるなら容赦しないよ!」
彩夏は高い火の壁を出すと澄子に向けて放った。
「…要!透!俺が援護する!一気に澄子を倒すぞ!」
「おうっ!」
重蔵は全身に雷を纏うと勢いよく澄子の方に向かい、後ろから雷撃を放った。
勢いよく飛ぶ澄子に要と透は拳をぶつける。
黒いオーラは飛び散ると澄子から消えた。
「…菫…姉さん。」
澄子に彩夏は近づいた。
「…澄子、菫姉様は池の中にいるんだよ。あんたが悪鬼になって暴れても、戻らないんだよ。」
「…澄子さん。私、菫さんを救いたいの。力を貸して下さい。」
「…私、間違っていたね。心を闇に囚われて、暴れていた。私の力。あなたに託します。」
澄子は消えると空色の石になった。
「…また、元に戻れたね。ありがとう。重蔵さん、彩夏さん。」
「…重蔵でいい。また困ったら、呼んでくれたら雫姉さんを助けるよ。」
「私も。雫姉様の為なら頑張るよ。雫姉様は一人じゃないよ。…澄子も、後でお供えしてくれるかな。」
「…うん。」
そういうと重蔵と彩夏は雫を抱きしめた。
「…雫姉さん。大好きだよ。」
「…私も。雫姉様が大好き。」
二人は言うと元の石に戻った。
「…こんな使い方もあるのね。」
雫が言うと要と透も雫を抱きしめた。
「…雫。俺も大好き。一人じゃないよ。」
「…僕も雫が大好き。一緒だよ。」
「…うん。」
雫は心が温かくなる気がした。
学校に戻ると佐藤君と田中さんが慌てていた。
「…?どうかしたの?」
「…いや!だって!田中!あれ出せ!」
「黒澤さん!どれだけ苦戦したの!火柱でかいの出て、山火事なるやん!って皆騒いでいたんだから!」
田中さんが携帯の動画を見せると雲を突き抜ける位の火柱が立った後に、雷の怒号が響いた。
「…あー。氷の鬼ね。強すぎて雷の鬼と火の鬼を呼んだの。ちゃんと元の鬼に戻したよ。後はお供えしたら善鬼って言う鬼になるの。」
雫は空色の石を出して言った。
「…善鬼ってなんだよ。」
「…え?鬼が強くなるの。」
「…いかつくなるの?」
「でも、火と木と今日の氷鬼は女の子だよ。」
「…え!気になる!」
「今度落ち着いたら、見せてあげる。…後は男の子の鬼がいるんだっけ?」
「…うん。二人残ってる。星谷と辰夜。」
「…まあ、黒澤さんは、怪我しないように気をつけないと。」
田中さんが言うと雫は顔を下げた。
「…もしかして、何かあった?」
「…不意打ちで生命力ちょっと吸われちゃった。頭の上から死霊出てきて。」
「…やばくないそれ!もう家帰ったら早く寝なよ!」
「…まあ要と透が治してくれたから朝より大丈夫。気をつけるね。…じゃあ、また月曜日ね?」
「…明日から休みだもんね。じゃあまたね。」
雫と透と要が教室を出て行って暫くすると田中さんが携帯電話を出す。
「…要と透の鬼の姿。やばいね。こっそり撮っちゃった。」
「…いや、目の前で見たらかなり筋肉ついてた。…絶対それ、ネットで流すなよ。」
「…まあね。うちらの大切なクラスメートじゃん。…でもさ、他の鬼とか、善鬼とか言うの、気になるね。」
「…絶対強いやつ。そういえばさ、他の鬼と戦った人と知り合ったって言っていただろ。…あいつら帰りに知らない人とあってたぞ。」
「…っ!見た!毎回ポニーテールの人がいたけど、別の人がいたよね!確か髪が長い女の人と男が二人!」
「後長髪の男の人と眼鏡の女の人。たぶん男の人皆鬼じゃないか?」
「ヤバイ!うちら見てるじゃん!確か男の人は体つき良かったよね!確定じゃん!」
「鬼なったら角出るんだろ?気になる。」
二人は盛り上がっていた。むしろいろんな事がバレていた。
「…透、要。大丈夫?生命力私にくれたけど
?」
「大丈夫。雫が元気になって嬉しい。」
「俺も雫が元気ないなら早く生命力分けたら良かったな。」
言われると雫はキスの事を思い出して顔を赤くした。
「…キス。ちょっと恥ずかしいな。」
「…僕、ちょっと嬉しかった。だって、いつも要が一番だもん。」
「え?」
要が言うと透はチラッと見た。
「…幼稚園の時に先に手を繋ぐのは要だもん。僕は泣いている時に雫が手を繋ぐんだ。いつも僕は何も出来なかった。だから、今度は雫を僕が守りたかった。王子様はいつも要だった。僕も今は勇気があるから雫の王子様になりたいんだ。…いつか、僕らは雫を取り合うかも。ずっと三人仲良しは難しいかも。」
要も透も雫の掌を握る力は少し強かった。
「…私は、まだ分かんない。二人共、好きだから。透のキスも、要のキスも、同じ位ドキドキしたの。今はどちらか一方は無理。二人と一緒が良い。」
「…分かった。」
透も要もちょっと機嫌が悪い。
(どうしよっか…)
(背中を擦ってあげると落ち着くよ。)
結花の言葉を思い出して、雫は要と透の背中を擦った。
「要も透も、大好きだよ。だから、二人共喧嘩したらダメだよ。…今は一緒だから。」
「…うん。」
「…分かった。」
二人の肩の力が抜ける気がした。
「…じゃあ、明日またお昼に逢おうか?また明日ね。」
「…うん。雫、ごめんね。」
「……雫、また明日。」
透と要と話すと家の中に帰った。
「…今日は大丈夫だった?」
夕食の時に雫の母親が聞いた。
「…微妙。ちょっと透が要にライバル心抱いてた。」
「…透君も変わったわね。昔は泣き虫だったけど、今は雫に良い所見せたいのね。」
「…うん。でも、要と争わないでほしいからさ。難しいなって思ってる。」
「…雫、あんたはどっちなの?」
母親は言った。
「…どちらかでないといけないのは分かってる。でも…。」
(翼さんは、両方の鬼を取ったんだよね。)
「…最近あった人は両方選んだの。どちらかと、両方。選択肢が三つはあるなと思ってる。」
「…最近あった人?」
「…この辺りに観光に来てる人は友達に両方取られたって言っていたの。私達は三人だから大丈夫かなって思ってる。」
「…その人。誰?」
「…大学生の人。中村さん。」
そういうと雫の母親が何かを思い出すように言った。
「…双葉ちゃん?…いいや、あの子、雫と同じ年よ。」
「…その人は下は結花さん。双葉ちゃんは一人っ子だったよね?…けど、まさか…」
雫は食事を済ませると食器を片付けた。
「…私があった中村さん、双葉ちゃんの従姉妹じゃない?」
中村双葉。それは雫が小学六年の時に引っ越した近所の女の子だった。
「…中村さん。従姉妹に双葉って言う女の子がいませんか?」
雫がメールを送ると返事が返ってきた。
「双葉ちゃんは従姉妹だよ。よく知っているね?逢った事あるの?」
「私の家の後ろが双葉さんがいた家です。小学六年まで遊んでいました。」
雫の母親がやってきた。
「…雫。どうだった?」
「お母さん。当たってる。結花さん、双葉さんの従姉妹のお姉さんだよ。」
双葉は要や透ともあった事がある。
私達と結花さんは繋がっていた。
今回は雫がやられたり、他の鬼を呼んで善鬼化等新しい展開があって蒼らしい感じだったと思います。
後結花と雫、要、透の繋がりがある展開は本来Aエンドで出す予定なのですが、早めに出しました。
この双葉ちゃんは今後の重要人物です。
大体分かる人には分かると思います。