鬼人達の宴蒼 第八章 小さな優しさ
今回はエンド前の話です。
Dエンドとはいろいろ違っています。
誤字、脱字があったらすみません。
朝、雫は早めに起きて顔を洗って朝ご飯を食べに台所に来た。
「おはよう、雫。朝ご飯用意しているから鬼の皆を出してくれる?」
「うん。」
雫がご飯の時に鬼を出すのが日課になってきた。
「今日はバターロールにいろいろ挟んで作ったの。お昼は雫が学校にいるから、皆しっかり食べなさいね?」
『わーい!いただきまーす!』
鬼達は嬉しそうにパンを食べていた。
「今日は昨日の人と決着つけるのよね。もしもの為にブロッククッキー、持っていきなさい。昼ご飯ですとか言ったらいいでしょう。」
「うん。ありがとう。」
「…皆、今日はいつも以上に大変だと思うけど、無理しない程度で雫の事、お願いね?」
『はーい!』
鬼達は返事をすると元の石に戻った。
雫は歯を磨いて、学校に行く準備をしているとインターフォンがなった。
「おはよう、雫。」
「雫、おはよう。」
「おはよう。」
「二人共、今日は無理しないようにね。もう三人だけじゃないから。無事に帰って来なさい。」
「はい。」
「気をつけます!」
「うん!行ってきまーす!」
三人は仲良く出かけて行った。
雫の母は三人が見えなくなるまで外で見ていた。
「おはよう、黒澤さん。今日の帰りは例の池に行くの?」
「おはよう。今日は鬼の石も集まったから行くよ。昨日は変な黒色の袴の人が後をついてきて大変だった。」
「えー!ヤバくない?それ?」
田中さんが言った。
「昨日はビックリしたよ。雫のお母さんも異世界に飛ばされたからさ。…でも、むちゃくちゃ強かったよ、雫のお母さん。攻撃の術と身体能力上げたり、強烈な結界張ったりしてた。」
「…最強じゃん。雫の母ちゃん。」
佐藤君も要の話を驚いて聞いていた。
「…でも、昨日の人。池に菫姉様を突き飛ばした人だと思う。許せない。」
透はいつもと違って怖い顔をしていた。
「…たぶん、その男。黒幕だよね?しかも、もし本当なら人間じゃないでしょ?昔、いたのなら。」
「…その男、もしかして池の呪いの一部なんじゃないか?」
「…っ!昔、誰か池に突き飛ばしたのって呪い高める為じゃない!?じゃあ黒澤さんが狙われてるのもそうかも!黒澤さん!やられないようにしなよ!前に死霊に襲われてたから!」
田中さんと佐藤君は雫の顔をじっと見て言った。
「うん。気をつけるね。」
雫はちょっと焦りながら言った。
(前、やられちゃったんだよね。)
授業が終わり、担任が教室を出るが不思議と何人か教室に出ようとしないので不思議に思っていた。
「…時間になったね。黒澤さんも要や透も、ちゃんと無事に帰って来なよ!」
「黒澤さん、すぐ行動するからな。またやられないようにしろよ?」
田中さんと佐藤君が言う。
「うん。気をつけるのね?また明日。」
「要や透も!鬼だけど、気をつけなよ!またね!」
「あぁ。また明日。」
「またねー。」
三人は手を振って帰った。
「…ね?皆、鬼、見たいよね?」
「見たい!見たい!」
「…こっそり行くんだろ?」
「当たり前じゃん。準備したら皆で行こうか?」
元から田中さんは何人かクラスメイトに雫達が鬼を出すのを見に行かないか誘っていた。
雫達が池に向かうといつもと違って見かけない祠がある事に気がつく。
そこにはお地蔵様があるが、悲しそうな顔をしていた。
「…こんな所にお地蔵さん、いたかな?」
「…いや、見なかったよ?」
「…汚れているけど、なんだか悲しそうな顔をしているね?」
「…あっ!そうだ!」
雫は掌から水を出した。
「水の術って便利だよね。丁度水入れるコップがあるから入れてあげよう。…クッキーもあるから、あげようかな?」
雫はクッキーをあげると三人で手を合わせた。
「…?ちょっと地蔵の表情、変わってないかな?」
「水をかけたから明るくなったのかな?良かったね。」
「…じゃあ、行こうか?」
要、透、雫が言うと三人は池の方に向かった。
数分後、田中さん達が池の方に来た。
「…ねえ?こんなお地蔵さん、ここにあったっけ?」
「…私、この辺りに昔よく来たけどないよ?」
「俺も。確か小さな岩があったと思う。」
山野さんと武山君が言った。
「…クッキーがある。あの三人が置いたのか?」
「まあいいや。願掛けしちゃう?三人が無事でありますようにって。」
田中さん達もお地蔵様に手を合わせた。
そして、顔を上げるとお地蔵様は無くなって武山君が言ったように小さな岩があった。
「…マジで?さっき、お地蔵さん、あったよね?」
「…。なんか光っているのがないか?」
お地蔵様があった所に光っているものがあるように見えた。
そして、池の方に向かっていった。
「…やっぱり、あの三人ってなんかあるよね?まあ、悪いものじゃなさそうだし、行こうか?」
「…田中さん、大分慣れてきたな。その行動力、スゲーよ。」
「いや!他の鬼見たくて!ね!行くしかないって!」
田中さんは先頭を歩いて行った。
「…市村さんや中村さん、近くまで来ているみたい。」
雫はメールの返信を見ながら言った。
「…ようやく贄が来たか。」
その言葉に振り向くと昨日の黒色の袴姿の男がいた。
「…あなた、昔菫さんを池に突き飛ばした人ね。なんであんな事をしたの。」
「言っただろ?生け贄だ。池に贄を与えてこの辺り一面を水の中に沈ませる。」
「なんでそんな事をするんだ!」
要が大きな声で言った。
「この辺りの人間を殺す為だ。」
その言葉に三人は青ざめる。
雫の頭に浮かんだのは母親の事だった。
「なんで…殺しちゃうの?」
透が聞いた。
「…呪術による死は、その地に魂が染み付いて呪いになる。お前達の仲間の鬼のように。
また、この地を呪わせる時が来たのだ。…全てを泥の中に沈める。」
そう言うと男の顔はドロリと溶けた。
「…人じゃない。」
雫はなんとなく理解した。この男は池の呪いの一部なのだろう。
池の水が高く湧き出ると三人を池の中に引きずりこんだ。
それを見た男だったものも池に入った。
「…っ!ちょっと!三人共池に入っちゃったよ!」
「さっき誰かが来ているって言ってなかったか!」
田中さんと佐藤君は慌てていた。
「…っ!あれじゃない!」
山野さんが指差す先から勇吹に背負われた結花が来た。
「…あっ!黒澤さん達と一緒にいたお姉さんじゃん!」
田中さんが言った。
「黒澤さんの友達かな?どうかしたの?」
「黒澤達が池に引きずりこまれた!黒幕の男も池の中!」
結花が聞くと佐藤君が慌てて言った。
「結花。黒澤さん、池の中ね?」
九火の狐の翼は未来予知の力で大体の事は分かっていた。
「…水の中か、私と市村さんだけ行こうか。月詠夫婦と火爪君と五十嵐君と中村さんはここで待っていてくれ。市村さん、木の結界を張ってくれ。」
「分かりました。」
天津と翼は池の中に入った。
「…黒澤さんや二瀬さん、助かりますよね?」
山野さんは半泣きになっていた。
「…大丈夫よ。貴方達、よくやったわね。上手く行きそうよ。」
紫織は山野さんの頭を撫でながら言った。
「…?どういう事だ?」
「…まあ、市村さんが戻れば分かるよ。」
武山君が不思議に思っていると達弥が言った。
(池の中に入っちゃったよ!結界張らないと!)
雫は慌てて自分や要や透に結界を張った。
どんどん沈んで池の底に沈んでいくと周りは暗くなった。
「光の術、確か私は使えたはず。」
雫が辺りを明るくすると奥に何か人の形をしたものがあった。 よく見るとその黒いものは水色の舌を出した全身黒色の雫の姿のようだった。
「…これが…菫さん…」
黒色の菫から黒色の触手のようなものが伸びる。 雫は光の光線を放つが全く効かなかった。
要は刀を出して黒色の菫に向けた。
(…雫、あなたは無理をするんだから。要君や透君に無理させたらダメよ?)
雫の中で何故か母親がそう言っている気がした。
雫は要の腕を掴んだ。
「要、一旦離れるよ。…早くしなさい!」
要は驚いて雫の方に戻った。
「透も!離れるの!来て!」
雫は二人を連れて離れた。
黒色の触手はゆっくり三人を囲んで近づいた。
「雫!このままだとやられちゃうよ!」
「…ううん。これでいいの。」
(お願い。誰か助けて。)
雫が心の中で願うと黒色の触手の動きがピタッと止まった。
雫が不思議に思っていると、三人を何かが包んだ。
「…何か光っているものがある。なんだろう?これ?」
ふと何かが光から落ちた。
「…これ。クッキー。…もしかして。」
「黒澤さん!」
遠くで翼の声が聞こえた。
雫の前には勢いよく天津が善鬼の姿で落ちて現れた。
「この者達を傷つけるのは私が許さぬぞ!」
天津は刀を出して言った。
雫は鬼の石がいつもと違って白っぽく光っている事に気がつく。
「この包んでくれているものの力ね。私達、菫さんを呪いから解放させてあげたいの。皆、お願い。善鬼になって菫さんを助ける力を貸して。」
雫が石を出すと鬼達が善鬼になった。
そして、雫は水色の羽衣の姿になった。
「あの姿!私と似た感じがする!」
「水の巫女の姿かっ!」
翼と天津が驚く中、雫は前に出た。
「皆、力を私に送って。菫さんを浄化する力に変えるから。」
「…ウォオオオオッ!」
雫の真上に鬼達の気で出来た大きな塊が出来た。
「菫さん。これは皆が貴方を救いたい思いの塊です。…皆の為に戻ってきて。」
雫が黒色の菫に気の塊を放つと黒色のオーラが吹き飛んでいった。
雫が目を開くと菫に寄り添って泣く鬼達がいた。
重蔵、彩夏、大地、優花、澄子、星谷、辰夜、千春、真刃。
暫くすると千春と真刃が雫の方に来た。
「雫。今は千春の姿だけど、俺は要として生きている。菫姉様とは別れる時間なんだ。だから、戻るよ。」
「雫。僕も今は真刃の姿だが、透だ。だから透に戻らなければならない。菫姉様の魂は行くべき場所に向かう。それで僕は満足している。」
二人はそう言って要と透の姿に戻った。
他に鬼達も雫の方に来た。
「雫姉さん、俺達もう少し雫姉さんといたい。」
「菫姉様は今から旅に出るんだよ。だから、私は雫姉様と一緒に過ごすよ。」
「菫姉さんと俺達は少し違うみたいなんだ。菫姉さんはやがて人に、俺達は人を守る鬼。」
「私達、雫姉様を守る鬼になる。」
「菫姉さんが生まれ変わるのには時間が掛かるの。それまで雫姉さんの側にいる。」
「俺も、これからいろんな人を守る鬼になりたいと思っている。」
「俺は少し姿が人によっては苦手だと思うから雫姉さんといたいかな。」
皆が寄り添った後に菫が雫に近づいた。
「雫さん。貴方のおかげで助かりました。私は皆が言っているように、人として生まれ変わる為に旅立ちます。千春と真刃以外の皆は鬼として生きる事になります。…新しい主が見つかるまで、貴方には大変かもしれないけどお願いしたいの。」
「うん。お母さんも皆が好きだから、大丈夫。菫さんも、生まれ変わった時は皆をお願いします。」
「はい。皆、すぐ逢えるように頑張るから、それまでいろんな人を助けてあげてね。」
菫は手を振ると消えた。
辺りが戻ると天津と翼が険しい顔で何かを見ていた。
小さな黒い塊が動いていた。
「…黒澤さん、菫さんとの話は終わったのね?…これは貴方や菫さんを池に突き飛ばした男の本当の姿よ。」
「…コイツは作られたようだ。呪術を使えるものが害を与えるものを生み出す事がある。」
『ニンゲン…マタ…ダレカ…ノロワレル…。グフフフフ!』
黒い塊はそう言って笑いながら塵になった。
「…また、何か起こるかもしれない。」
雫も険しい顔になった。
「…その時はまた皆で力を合わせたらいいよ。」
「僕らもいるし、他の鬼もいるからね!」
要や透が言うと他の雫の鬼も現れた。
「雫さんは賑やかね?いろんな善鬼がいるのね。」
「ハハハッ!また仲間が増えたな!…黒澤さんだったかな。鬼達と仲良くしてくれ。」
「はい。」
池から雫達が出てくると外にいたクラスメイト全員や結花や勇吹や護は驚いた。
「…ちょっと、黒澤さん。どうしたの?その格好。」
「…あっ。なんか変わっちゃった?」
田中さんが聞いたが雫はイマイチ分かっていなかった。
心配だった野山さんは雫に抱きついて泣いていた。
「黒澤さん達が池に落ちたの見て真っ青になったよ!」
「あー。ごめんね?…って、何人か来ていたの?」
「…いや、心配だったから。」
武山君が気まずそうに言った。
「あの姿はな、水の巫女の姿だ。君達が水の神様に手を合わせたからだ。」
天津が言うと田中さんが思い出す。
「あっ!お地蔵さん!スゴいの!私達が手を合わせたら消えたの!あれ何!」
「じゃあ市村さん、種明かしお願いします。」
紫織が言うと翼は掌を合わせた。
池の上を水色の生き物が浮いていた。
「…皆が分かるように視覚の強化をしています。あのお地蔵はこの池を守る為に作られたものなの。だけど、池の呪いから生まれた男に壊されたの。…そのお地蔵が現れたのは貴方達が池を戻す事とお地蔵が池を戻したい気持ちが重なって現れたの。…そして、お地蔵の別の姿が水の精霊よ。その力を受けた黒澤さんは水の巫女になったの。」
「え!黒澤さん巫女になったの!すげぇ!」
佐藤君は嬉しそうに言った。
「…あっ。そういえば、皆に見せてなかったね?私の持っている石の鬼の皆だよ?」
雫が言うと鬼達は雫のクラスメイトに近づいて話しかけていた。
「…あっ、そういえば天津様。黄鬼さんに皆の写真撮らせるんですよね?」
「うむ。黄鬼、出番だ。」
紫織が天津に言うと黄鬼が瞬間移動して現れた。
「黄鬼だ。電化製品の扱いは任せろ。」
「じゃあ、皆カメラやスマホやアイフォン渡して写真撮って貰おうか?特に黒澤さんのクラスの方は撮りたかったでしょ?ネットに載せないならいいし、皆約束は守るでしょ。田中さんや佐藤さんは市村さんの九火の尻尾にも興味あるみたいよ?」
「あんまり強く握らないなら、いいわよ?」
翼は田中さんや佐藤君に尻尾を触らせたりした。
「ヤバい!大きい!尻尾大きい!」
「フカフカ!柔らかい!」
翼の尻尾を雫のクラスメイトが楽しんだ後は皆で写真を撮った。
特に雫のクラスメイトは鬼や九尾の狐と写真が取れてテンションが上がっていた。
「さて、皆明日も学校かな?気をつけて帰るんだぞ?」
『はーい!黒澤さん、要、透。また明日ね!天津さんさようなら!』
雫のクラスメイトは天津に手を振りながら帰って行った。
「今日は皆さんありがとうございました。」
「三人が心配だったからな。まあ一番楽しんだのは天津様ですよね?」
「うむ。最後は人間の子と仲良くなれて良かったぞ。」
雫が言うと達弥と天津は嬉しそうにしていた。
「俺達は特に何もしていなかったけど。」
「そう言いながら勇吹は武山君と楽しそうに話していたな。」
「…っ!護だって佐藤君に腕触らせて楽しそうにしてただろっ!」
「二人共同じ位楽しそうにしていたでしょ?」
勇吹と護は翼に言われると顔を赤くしていた。
雫、要、透の三人が気にしていたのは結花だった。
今回の最後は雫のクラスメイトがお楽しみのようでした。
たぶん実際は二桁前後は来ていたと思います。
日が変わりました。
今日か明日には完結するかもしれません。




