鬼人達の宴蒼 プロローグ
鬼人達の宴 蒼
始まりました。軽くプロローグを書くつもりが、まあまあ書いてます。
今回は作品紹介にあるように、以前の朱のように鬼と試練をするのではなく、悪鬼になった子を浄化する物語です。
誤字、脱字があったらすみません。
昔、大きな池がある村で9人の少年少女が遊んでいた。
「はしゃぎすぎて転ばないようにしなさい。」
優しそうに言う女性がいた。
彼女の名前は菫。村で医学の知識があり、薬を作って村人の怪我を直したりした。
「菫姉様も遊ぼう。」
少し大人びた少年が菫に言った。
「真刃。私は薬草を探してくるから、皆と待っていてね?」
もう一人大人びた少年が来た。
「千春。私は薬草を探してくるから、皆と待っていてね?」
「はい。」
千春の返事を聞くと菫は二人の頬を優しく擦った。
二人は目を細めて嬉しそうにした。
「あっ!真刃と千春だけズルい!」
こちらを見ていた子が言った。
「…行ってらっしゃい。」
「はい!姉様!」
菫は皆の方に行く真刃と千春を見守った。
二人が合流すると皆が菫に手を振り、菫も手を振った。
最近村人が体調不良になりやすくなった。薬の消費も多くなったので新しい素材が必要だった。池の小高い丘には薬草が生えているので菫は向かった。
薬草を探していると何かの気配を感じた。
(…いけない。猪かしら?)
菫が見ると目の前には男がいて菫を突き飛ばした。
空が見えた。次に水面が見えた。そして、黒い手が現れた。
(これは何!?)
菫はもがくが黒い手は菫を離さなかった。
やがて、意識が無くなった。
「ん?…千春!あそこに菫姉様が浮かんでいる!」
「何っ!」
千春が真刃の言う場所まで行くと人が浮いているのが分かった。
千春は泳ぐのが得意だ。千春が着物を脱いで泳ぐと菫だった。
岸まで菫を運んだが、菫の脈はなかった。
「…ダメだ。脈が無い。死んでいる。」
「…っ!そんな!」
「村から誰か呼んでくる!」
何人かが村に行き、残りの子は大泣きだった。
「…そんな。さっきまで元気だったのに。」
「…嘘だ。菫姉様…」
呆然とする真刃と静かに泣く千春だった。
その日、菫の遺体は自宅に運ばれた。多くの人が手を合わせてに来た。
夜、池の周りに人影が現れた。人間の姿をしていたが、人間ではない。死者だ。
池から黒い煙が沸く。
「…良し。殺れ。」
謎の男が言うと池の水は勢いよく湧いた。
村では菫を慕っていた子が泣いていた。
「…あの子、ずっと泣いているね。」
「…そっとしておやり。」
親が子と距離を置いていった。子の体にはいつの間にか黒い煙が包んでいた。頭から角が生えて、白目を剥いた後に黒く染まった。
突如、村には鐘がカンカンカンとなる。
それが洪水だとは誰も思わなかった。
外に出ると人々は呆然と立ち、洪水に飲まれた。
「…菫…姉様。」
真刃と千春は同じ家に住んでおり、鬼になっていた。瞳がゆっくり上がり、悪鬼になろうとしていた。
「真刃、千春、私はここにいますよ。」
真刃と千春の目がピクッと動くと目の前には透明な菫がいた。
「…菫…姉…様。」
三人で身を寄せると水が家を壊した。7個の光が暗い水の底に落ちていった。光を失い、黒くなった。
「菫…姉様。逢いたいよ…。」
2個の光はゆっくり上がっていった…。
「…っ!はあっ!はあっ!はあっ!」
一人の少女が目を覚めた。鏡を見ると菫に似た顔があった。
(…違う。私は黒澤雫。あんなに凄い人じゃない…。)
雫はそう思うと溜め息をついた。
二階から一階へ、顔を洗って台所に行くと母親が朝食を作っていた。
「おはよう、雫。」
「おはよう。お母さん。」
朝食を済ませて着替えると家のチャイムが鳴る。
「…おはようございます。」
「…お…おはようございます。」
玄関を開けると冷静に挨拶するメガネの少年とおどおどする少年がいた。
メガネの少年は二瀬要。
おどおどしている方は二瀬透。
二人は従兄弟同士で家は違う。
「おはようございます!行ってきまーす!」
「はい。行ってらっしゃい。」
雫が母親に挨拶をして、玄関が閉まった。
「…いやぁ、やっぱ、おもろいわ。あの従兄弟二人。」
雫の母親が首を横に捻りながら言う。ギャップが漫才師みたいらしい。
「…昨日、夢を見た。透も同じ夢を見たらしいんだ。」
「あっ!女の人が池に突き落とされる夢!」
雫の言葉に要が目を大きくした。
「…驚きです。」
「洪水、怖かった。」
透は少し震えながら言った。
「まあ、夢だよ。夢。あんな風になったら映画だもん!あっ!鬼になれる?」
「…雫、俺は人間なので不可能です。」
「鬼怖い…」
透はまた震えた。要は溜め息をついていた。
「要は。もしなれたら、なりたい?」
「…興味はあります。」
要は少し照れながら言った。なってみたいんだ。
「…透は?なりたくない?」
「…うん。あの人は僕じゃない気がする。」
今の透はたれ目で夢の真刃と違い、キリッと鋭い目ではなかった。
三人は高校三年。予定は要は医療の大学、透は美術大学、雫は工芸学を予定している。
三人が学校に向かっているとバスが通る。
「…珍しい。見かけない目立つ人がいます。」
「…あ、ポニーテールの人。」
「…どこ?分かんない…。あっ、後ろ。」
目立つポニーテールの女性が口を開けてこちらを見ていた。
「…たぶん、民宿でしょうね。池から少し離れた。」
「…わあ、怖い。あっ!言っちゃった!」
「…はははっ。おもしろい。」
三人は高校に行き、帰りも一緒だった。要は科学部部長、透はこの性格で美術部副部長だった。今は部活をしていないから一緒。
帰り道にポニーテールの女性にあった。一生懸命カメラを撮っていた。
「…あの人はカメラマン?違う、カメラウーマン。」
「…雫。俺は違うと思う。旅行で来たと思う。」
「…あっ。手を振って、こっち来た。…苦手。」
ポニーテールの女性は雫達の前に来た。
「こんにちは!朝逢ったね。」
「こんにちは。…こちらの方ではないですよね?」
「…うん。ちょっといろいろあって、旅行に来ました。…三人共は知り合いなの?」
「…俺と隣の透は従兄弟です。もう一人は雫。仲良しです。」
「…こんにちは。人と話すの苦手…。」
「…あははっ。…ちょっと印象違うかな?」
女性が少し気になる事を言った。
「…透。どんな印象でしたか?」
「…うん?ちょっと話す子かなって。…もしかしたらさ、菫姉様とか。」
ポニーテールの女性の目つきが変わった。
「…驚きです。」
「…夢の事、知っているんですか?」
「…あー。やっぱりね…。」
女性は苦笑いをした。
「改めまして、中村結花です。まあ恥ずかしい話だけど、鬼の友達が二人いたんだけど、二人共友達と恋人になってね。旅行に来てます。」
「…可哀想。」
透がポロリと泣いた。ごめん。やめなさい。
「…あなたが鬼使いかなと思って、声をかけちゃった。」
「…私?たぶん違う。要も透も鬼になりませんよ?」
「…興味はあります。が、なれません。」
「…鬼怖い。」
「…そっか。たまたま?同じ夢を…。ん?あのね、鬼の友達と友達も夢を見たの。…どうなんだろ?」
三人は結花を白い目で見ていた。
「…ちょっと、見せるだけね?これが私の友達と鬼の友達なの。」
結花がアイフォンの写真を見せた。
「…他にさ、鎌鼬とか、雪女とか。妖怪も出た。」
「…本物?偽物?」
要は混乱していた。
「…鬼の友達が雪の中、大変だったの。これね、今月の異常気象の時の。」
「…あっ!テレビで見た!雪が降って消えたって!」
透が思い出して言った。
「あー。良かった。ビックリするよね。あれ。ちなみに私ね、良い鬼の長から鬼達の秘宝の石を分けて貰ったの。これ。」
結花が輝く石を出すとドプッ!と音がして辺りが青くなった。
「…嘘。何これ。今まで変な環境で鬼にあったけど、いつもと違う。」
周りは先程の高校のようだが、誰もいない。
「…こ、怖い。」
透は震えていた。
「…結花さん、こんな感じで妖怪に逢うんですか?」
雫の一言に結花がハッとする。
「妖怪。出るかも。私光の術使えるけど、一人で勝てるかな…。」
結花のアイフォンは圏外になっていた。
「…あ。ヤバそうな敵っぽいのがいる。」
結花が雫の後ろを指差すと鎌のようなものを持つ頭巾を被ったものがいた。
「…ちょっと来ないでね?」
結花が光の玉を作って投げつけると塵になった。
「…っ!中村さん、大量に空間が歪んでいます。」
「…湧きすぎ。逃げようか?…学校に?」
三人を連れて高校に行こうとすると頭巾を被ったものが何やら唱えて雫に飛ばした。
「…ちょっと!遠距離技!反則!」
結花が直線に光のレーザーを放つがクルクルと何かが回転して飛び上がると雫に向かって落ちてきた。
「…っ!当たる!」
雫の目の前まで来ると雫は体が脈打つ気がした。
そして、青色の髪と銀色の髪の人影が目の前に現れた。
二人の頭には角があった。
一人は青色の髪の鬼はメガネをして刀を一本持っていた。
銀色の髪の鬼は二本の刀を持つ鬼だ。
「雫さん!やっぱり!要さんと透さん!鬼だよ!」
結花がちょっと興奮して言ったが、雫は不安な表情だった。
(要と透。鬼になってる。ちょっと怖い。大丈夫なの?)
結花とは違い、雫は冷たい瞳の鬼に怯えていた。
プロローグ終了。
善鬼を知る結花と違い、今回の雫は鬼に恐怖を感じるのです。
透が思っていたように「怖い」「食べられるかも」という不安を持つのです。
どうなるのでしょうか?
次回に続け。