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四人の祝勝会

 生駒山上遊園地に現れた黒のダンジョンは消滅し、大阪と奈良に魔物が溢れて大災害――という危険性も消滅した。

 だが、全て平和に終わったわけではない。

 結局、黒のダンジョンの攻略に成功したのは日本を含め十二カ国。

 それ以外の攻略は失敗に終わり、十三の国でダンジョンの外に魔物の出現を確認。

 各国はその対処に追われているそうだ。

 姫の兄と姉も十五人亡くなったらしい。

 逆に弟や妹は全員十八歳未満で、ダンジョンに潜れない年齢だったから無事だったそうだ。


 月曜日、学校の登校。

 ええと、今日は一時間目、数学Ⅲ……あれ? 前回どんな授業やってたっけ?


「壱野、おはよー」

「青木、ひさしぶり」

「おう、ひさしぶり……ってなんでだよ! 一昨日会っただろ!」


 え? 一昨日?

 あぁ、そういえば、土曜日に京都ダンジョンで偶然会ったんだったな。


「お前、大丈夫か? まぁ、昨日は避難でいろいろあったから大変だったけどな」

「避難? あぁ、避難してたんだったな。そうだった」

「マジで大丈夫か?」


 頭がボーっとしているのは単純に寝不足のためだ。

 両親に電話で無事を報せたとき――散々怒られた。

 一応、PDに潜る前に事情を説明して納得してもらったのだが、その後、全くスマホに出ないことで心配を掛けたらしい。仕方ないじゃないか、PDの中だとスマホは使えないんだから。

 後で確認してみたら、着信履歴とメール、メッセージが百件以上たまっていた。

 帰ってからもかなり怒られた。

 でも、その後で母さんが用意してくれたお茶漬けの味はとてもうまかった。

 アヤメもきっと怒られただろうな。

 聖女の霊薬だが、アヤメは今回の一本は牛蔵さんのために使って欲しいと言ってくれた。

 彼女の呪いは現在はミコトの術により完全に抑えられているので、急いで薬を飲む必要はないからだ。

 俺は彼女のその言葉に甘えることにした。

 きっと昨日のうちにミルクの母親には連絡が行っているだろう。


「壱野くん! ちょっとこっちに来て!」

「あぁ、水野さん。おはよう」

「おはようじゃないよ。一昨日も昨日も大変だったんだから」


 水野さんは俺を人気のない場所に連行していくと、そう文句を言った。

 ん? 一昨日はクロを連れてきてもらったから大変だったのはわかる。

 昨日はなんで大変だったんだ?


「水野さんの家って、避難区域より外だったよね?」

「避難じゃなくて、問い合わせ! ミルクちゃんの使ってる銃が私の工場で作ってるものだってバレたの。押野グループの人に。それで、姫ちゃんのお母さんがうちに来たのよ」


 まぁ、押野グループの人間なら、アルファの正体が姫だってことも知ってるし、そこからデルタの正体がミルクであることも調べようと思えば調べられる。

 そして、その武器を作っているのが専属鍛冶師として雇っている水野さんってことも。

 さらに調べれば、水野さんの父親が工場を経営していて、ダンジョンの武具を製造していることにも気付くだろう。

 だが、昨日の放送を見て昨日のうちに水野さんの工場に行って交渉をするとか尋常じゃない仕事の速さだな。


「で、どうなったの?」

「うちの工場、押野グループの完全下請けになっちゃった。作りたいものは作れないけれど、とりあえず倒産の危機は免れた感じ……元々取引先も減ってきていたけれど、これまで取引していた相手と仕事ができなくなるのは……ってお父さんも少しため息をついていた」

「それは……」

「ごめん、ううん、工場が潰れないだけありがたいの。お父さんもお母さんも姫ちゃんに感謝してる。それに引き合わせてくれた壱野くんにも。私が言いたいのはそうじゃなくてっ! 大丈夫だったの? 昨日、かなり無茶したんでしょ? お父さんのスマホで動画を見せてもらったけど、あのベータって壱野くんだよね? お腹斬られてたように見えたんだけど、傷はもういいの?」

「それは大丈夫。ミルクが傷を治してくれたから」

「……もう、本当に心配したんだから」


 水野さんが安堵の表情を浮かべて文句を言う。

 昨日、ちゃんと水野さんにも電話するべきだったな。

 きっと俺に気を遣って電話を控えていたのだろう。


「そうだ。今日、改めて四人で祝勝会をするつもりなんだけど、水野さんもよかったら一緒にどうかな?」

「ごめん、今日はコンビニのバイトが入ってるんだ」

「え? まだ辞めてなかったの?」


 正直、鍛冶師としての給料だけでも十分稼げてると思うんだけど。


「急に辞められないよ。引継ぎもあるし、学生バイトだからってそこまで無責任にはなれないって。少なくとも夏休みまでは続けるつもり」

「そうなんだ。今度、クロとシロの散歩ついでに買い物に行くよ」

「あはは、来てもらっても仕事が増えるだけだからノーサンキューだよ。お店の中だとクロちゃんとシロちゃんも入れないしね」


 水野さんは笑ってそう言った




 家に帰って着替えた後、自転車で20分くらいの場所にあるカラオケボックスの前に集合する。

 山盛りのポテトフライは欠かせないので最初に注文した。


「じゃあ、お疲れ様のかんぱーい!」


 姫がマイクを握って元気よく乾杯の音頭を取る。


「いいのか? 兄さんや姉さんが亡くなってるのに献杯じゃなくて」

「いいのよ、別に。ほとんど会ったこともない相手だし。あ、姉といえば妃から連絡があったわよ。自分がダンプルに指名されなかったことを露骨に悔しがってたわ」


 と姫が嬉しそうに言うけれど、本当のところは妃は姫のことがかなり心配だったんだろうな。

 そうじゃなかったら、わざわざ連絡してこないだろう。


「それで、泰良とアヤメは家に帰ってからどうだったの? やっぱり怒られた?」

「はい、それはもう……」

「俺もこってり絞られた」

「でも、三十億円貰えるって言ったら怒りも収まったでしょ?」


 それが、そういうわけではないんだよな。

 父さんも母さんもお金に関しては特に何も言わなかった。

 バカな使い方をしなければそれでいいって。

 これまでも生活費は払っていたが、それ以上は要求もされなかった。


「私も――お金に関しては。ちゃんと貯金しておきなさいって言われただけですね」

「そういうものなの? てっきり家族全員で豪邸に引っ越すものかと思ってたわ」


 今の家に愛着もあるし、そう簡単にはいかないだろう。


「じゃあ、四人で住むシェアハウスとか買う? 一人二千万円くらい出し合って。集合場所がずっと姫ちゃんのホテルの部屋ってのも変だし、泰良のPDをこれからも使っていくのなら四人で共同で生活できる場所が必要でしょ?」

「え? 八千万円の家? それって小さくない?」


 姫が不思議そうに言う。

 十分デカイぞっ!

 東京二十三区じゃなくて大阪なら庭付きの家が買えるぞ。

 まぁ、高層マンションの最上階とかになったら億単位のお金が必要になるが。


「あの……PDってこれからも使えるのでしょうか? あれって結婚している間だけなんですよね? 上松大臣が正式にあの婚姻届けを審査して、不適切だと判断したら――」

「婚姻が無効になる……な」


 俺はぽつりとつぶやく。

 婚姻が有効になったらなったで、重婚罪で俺が罰せられる。


「せっかく結婚できたのに、壱野アヤメになる前に結婚が終わっちゃうのは辛いです」

「私だって……せっかく泰良と結婚できたのに」

「……私も」


 姫がマイクを持った手を下げて呟く。


「私も泰良と――」


 とその時、着信音が鳴った。

 姫のスマホだ。

 姫はイライラした様子で鞄からスマホを取り出す。


「上松大臣からだわ」


 そう言って、彼女は電話に出た。


「こちら、押野姫です――――はい。はい。ちょっと待ってください、全員ここにいます。はい。スピーカー機能にさせてもらいます」


 どうやら姫個人ではなく、俺たち四人に用事があるようだ。


「スピーカーにしました」

『あぁ、上松だ。全員聞こえているかね?』


 上松大臣だ。

 また何か緊急事態なのだろうか?


「聞こえてます」

「はい、おじさま」

「聞こえています」

「大丈夫のようです。続けてください」

『君たちの婚姻届の件で電話をさせてもらった』


「「「「――っ!?」」」」


 やっぱり来たか。

 そりゃそうだよな。

 あんな無茶苦茶な婚姻、大臣としてはさっさとケリをつけたいはずだ。


『今回の件を受けて、現在国会では、優秀な探索者確保のため、探索者に関する特別法を制定する予定だ』


 特別法か。

 EPO法人といい、探索者がなにかと優遇されていくなぁ。

 ここまで優遇されると嫉妬されるぞ。

 でも、なんでその話を俺たちにするんだ?


『そして世界中の同時配信においてキング・キャンベル氏の子どもたちのほぼ全員が優秀な探索者であることがわかり、探索者の素質は遺伝すると結論付けられてもいる。ミルクちゃんが牛蔵の娘であることもさらに後押しになっているな』


 話が少し見えてきた。

 もしかして――


『よって、国が認めた優秀な探索者の重婚を許可するという法律を制定予定だ。その為、君たち四人の婚姻届はその法律が制定されるか否決されるまで私が預からせてもらおう。それまで戸籍登録などはできないが君たち四人が婚姻状態であることは私が認める。ただし、このことは他言無用で頼むよ。国の大臣が法律も定まっていない状態で重婚となりうる婚姻届を預かっているというのは何かと問題になるからね』


 と上松大臣は俺たちに口止めをした。

 その後、どんな話があったかはほとんど頭に入ってこない。

 ただ、一つわかるのは、美少女三人を妻に持つ俺はこれからいろいろと苦労するだろうということと、それ以上に世界一幸せな高校生だということだ。


「山盛りのポテトフライお待たせしました」


 カラオケ屋の店員が空気を読まずにポテトフライを持って入ってきたので、俺たち四人はポテトフライを一本ずつ持って、両手を上げた。


「かんぱーい!」

 第三章はここまで

 第四章は……全く考えてません! プロットもここまでしか用意してません! これからプロット作ります。

 もしも次の話が変なショートストーリーだったら、こいつまだプロットできてないなって思ってください。

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― 新着の感想 ―
新たに法律制定で重婚ルート決定〜〜〜ヤッターーーーー!! これで真のハーレムに!!
「国が認めた優秀な探索者の重婚を許可するという法律を制定予定」 なんとなく憲法違反のような気がします。「法の下の平等」とか。 日本国憲法 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性…
結婚問題で建国するのはさすがになかったか 19カ国は追試保留されたようですね 失敗した19カ国は魔物溢れたようだけど、世界ランカーの上位が出張って収めたのかな
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