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ステータス確認後半戦

 姫のステータスを見る前に、四人で食事の時間になった。

 PDの中では時間感覚がおかしくなるので、決まった時間に朝食、昼食、夕食、そして就寝は徹底している。

 

「カレーはいらないのか?」

「あぁ、カレーは……」

「うん、美味しいんだけど……」

「今日は食べたくないですね」


 このダンジョン生活で半分くらいはカレーを食べていた。

 魔法の水筒(カレー)によって生み出された絶品カレーは、非常に美味しくて、ご飯に乗せてカレーライスに、パンに乗せてカレーパンに、出汁に混ぜてカレーうどんにといろんな方法で食べた。

 絶品カレー、その名の通り非常に美味しい。

 しかも、水筒の側面にはダイヤルがついていて、辛さを甘口から十辛に調整できるというのだから、まさに痒いところにも手が届く仕様だ。

 だったら、何故カレーを食べないのか?

 毎日食べた。

 飽きた。

 クロはよく毎日ドッグフードで飽きないよな。今日も美味しそうに食べてるし。


 結果、四人で食べるのはカップ〇ードルだ。

 最終日くらい豪華なディナーをと提案したんだが、最後の晩餐みたいで縁起が悪いからと却下され、逆に質素な、しかし疲れている身体に染み渡る夕食になった。

 お湯を入れて待つ。

 そして――


「「「いただきます」」」


 俺、アヤメ、ミルクの三人が同時にカップ〇ードルの蓋を開けてそう言った。

 お湯を入れて二分経った頃の話だ。


「いつものことだけど、大阪の人って、本当に3分待たないのね」


 姫はきっちり3分待つタイプらしい。


「3分経つと最後の方は麺が伸びた感じがするんですよ」

「パパなんて1分で食べ始めるよ」

「あぁ、うちの親父と兄貴も……というか俺も我慢できないときは1分くらいかも」


 今日はみんなの前だから2分待ったが、本当は1分で食べたかった。

 1分少々だと最初は少しパリパリしているんだけど、それはそれで美味しいんだよな。

 食べ終わる少し前が一番いいタイミングになっているので、それがいい。


 カップ〇ードルを食べた後、各々缶詰に入っているパンやフリーズドライのサラダなどで腹八分目あたりまで持っていき、ビタミン剤などのサプリで不足している栄養を補給する。

 大臣から貰った食品にはサプリもいっぱい含まれていた。

 姫は普段からサプリを飲みなれているのか、不足している栄養素をどう補うか教えてくれた。

 しかし、そろそろ普通の家庭料理が恋しくなってきた。


 食事が終わった後は、ステータス確認の後半戦。

 姫のステータスをみんなで見る。


――――――――――――――――――

押野姫:レベル84


換金額:777777D(ランキング:1015〔JPN])

体力:998/998

魔力:0/0

攻撃:854

防御:776(+7)

技術:869

俊敏:2101(+520)

幸運:78

スキル:注目の的 速き者 分身 琴瑟相和

    基礎短剣術 的外れ 電光石火 脱兎

    応用短剣術 先制攻撃 金の草鞋

――――――――――――――――――


 相変わらず俊敏値がバカ高い。

 的外れは、名前はハズレっぽいけれど、実は遠距離攻撃の回避率を上昇させるかなり有能なスキル。

 電光石火は俊敏値を一時的に上昇させるバフスキル。

 脱兎は敵から遠ざかる動きを見せたときに俊敏値が上がるスキルと、見事に俊敏値に関するスキルが多い。

 そんな中、先制攻撃は戦闘開始後10秒間、敵に与えるダメージが上昇するというものだ。

 これもまた姫の戦い方との相性が優れている。

 最後に金の草鞋は俊敏値の成長率が上昇するスキル。

 レベル80になって覚えたスキルだが、これからますます姫の俊敏が高くなると思うと、なんとも末恐ろしい。

 あと、幸運値が3人の中では一番高いのが特徴と言えば特徴か。


「バフ込みだと俊敏値は竹内さんを越えてるんだな」

「そうね。でも、彼だってバフ系のスキルや装備はいくつか持っているだろうし、日本一を名乗るのはまだまだ先よ……それにしても金の草鞋……泰良、どう?」

「どうって?」

「年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せっていうけれど、ここにいるのは金の草鞋を持っている年上の女房よ?」

「年上って、たった一ヶ月の違いだろうが」

「あら、誰よりも頼りにしているって熱い言葉を掛けてくれたのに」


 ……ぐはっ!

 おま、告白の時の言葉をここで持ちだすのは卑怯だろ。

 あれはその場の流れって言うか、本心っていうか。


「姫、今回の戦いが終わるまでは――」

「ぬけがけは無しって言いましたよね」

「い、いまのは抜け駆けじゃないでしょ!?」


 ミルクとアヤメが笑顔で姫を注意している。

 

「最後に俺だな」


 俺は自分のステータスを皆に見せる。


――――――――――――――――――

壱野泰良:レベル84


換金額:777777D(ランキング:1016〔JPN])

体力:2989/2989

魔力:310/310

攻撃:1497(+149)

防御:1387

技術:1256

俊敏:1299(+129)

幸運:2318

スキル:PD生成Ⅱ 気配探知 基礎剣術 簡易調合

    詳細鑑定 獄炎魔法 インベントリ 怪力

    火魔法 投石 ヒートアップ 基礎槍術

    魔法反射 肩代わり トレジャーアップ

    妖精の輪 琴瑟相和 水魔法 応用剣術

    疾風 常在戦場 ラッキーパンチ

――――――――――――――――――


 俺が一番追加スキル少ないんだよな。

 水魔法が生えたのはいいんだけど、火魔法との相性はよくないし、なんでこいつが出てきたのかはわからない。

 ただ、アヤメの雷魔法とは相性がよく、相手を水で濡らすと雷魔法の威力が上昇している気がする。

 疾風は俊敏一割増のスキルだ。これを手に入れたときは姫に羨ましがられた。

 常在戦場は、戦闘時間が長くなれば長くなるほどステータスにバフが掛かっていくスキル。

 1分につき1%、最大で1時間で60%。

 ただし、戦闘が終了したと判断されたらリセットされる。

 最後にラッキーパンチは、幸運値に応じて攻撃にクリティカルが乗る可能性があるスキル。 

 確率は幸運値×0.05%らしいので、今の俺なら100%クリティカルが乗る。100%を超えても特に意味はないらしく、クリティカル時はダメージは2倍+相手の防御によって減算されたダメージの10%を貫通ダメージとして与えることができる。

 まぁ、その程度ってことで――


「大したことないな」

「そんなわけないでしょ!」

「何言ってるの!」

「凄すぎます!」


 怒られた。


「幸運値、ちょっと見ない間にまた凄いことになってるね」

「なんか最近、さらに伸びがいいんだよな」

「ちょっとって……というか、ステータスも私の倍くらいあるんじゃない?」


 姫が自分のステータスと俺のステータスを見比べる。

 幸運値による上振れがさらに増している感じか。


「しかし、これでもまだまだ竹内さんには勝てないよな」

「相手は10年間ダンジョンに潜り続けた達人で、ダンジョンができる前から武術の達人よ。こっちはPDを使っているとはいえその時間は1年にも満たない。簡単に追いつけるわけないわ」


 姫が嘆息を漏らす。


「むしろこの短期間で20階層突破できたのは快挙ですよ。普通、20階層を突破するのに最低五年はかかるって言われていますから」


 まぁ、魔物の出現率5倍とダンポンの魔力回復サービスのお陰でタイムロスは極端に少なかったもんな。

 Dコインも結構溜まった。

 とりあえず今回はゲン担ぎのために、あとはPDでの修行疲れの変なテンションのせいで全員の換金額を777777Dに揃えたが、換金していないDコインもまだまだ山のようにある。

 これら全てを換金したら、俺たち四人ともランキング3桁台に突入するのは間違いない。

 それと、ドロップ品も売ったら億万長者だな。

 ……あ、既に貯金額は億越えになってたし、今回の依頼達成したら30億円貰えるんだった。


「修行も今日で終わり。ここで体を休めたら地上に戻る時間だな」


 懐中時計を見る。

 現在時刻は日曜日の12時25分。

 上松大臣との約束の時間まであと5分。

 ここだと500分、8時間20分か。


 休むには十分な時間だ。

 ベッドに横になろうとして――


「はいはい、寝る前にお風呂に入って歯を磨きましょうね。シャンプーがそろそろ切れるから持ってきて」


 ミルクに掛布団を捲られた。

 歯ブラシなどの日用品は上松大臣から貰った荷物の中にいっぱい入っていたし、こういうのは必要なんだな。

 俺は日用品が入っている段ボール箱を開けた。

 その中に、当たり前のように置いてあるゴム製品。

 気を利かせ過ぎなんだよ、あの人は。

 シャンプーを持って振り返ると、当たり前のように三人とも服を脱ぎ始めていた。


「みんな、なにしてるんだ?」

「お風呂があっても脱衣場がないからここで脱いでるんだよ?」

「浴室は隣の部屋ですからね」

「あっちで服を脱ぐと変に湿って大変なのよ」


 三人が口々にここで服を脱ぐ理由を言う。

 うん、確かに浴室で服を脱ぐと、いくら棚の上に置いてても湿って気持ち悪いんだよな。

 

「いや、そうじゃなくて……今日は俺から先に風呂に入る日のはずじゃ……」


 そういう流れだっただろ?

 だが、ミルクは言った。


「最後の日くらいみんなでお風呂に入ろって話してたの」

「別に初めてってわけでもないし、今更裸を見られても恥ずかしい関係じゃないでしょ」

「わ、私たち、夫婦なんですから」

「いや、そうなんだけど、明日決戦だからさ。できれば心を落ち着かせて寝たいんだよ。わかってくれるよな?」


 俺が助けを求めるようにみんなに言う。


「わからないよ」

「わかりません」

「わからないわね」


 三人とも笑顔で言った。





 現実世界で12時29分。

 俺たちはPDから出て、プレハブ小屋の扉を開ける。

 上松大臣が待っていた。


「昨日はよく休めたかね?」

「「「はい、おかげ様で」」」

「はい、一応」


 六時間は寝ている。大丈夫、元気だ。

 俺たちは上松大臣とともに生駒山上遊園地へと戻る。

 移動中に話を聞いた。

 今回の世界同時黒のダンジョン攻略の情報がダンプルによってマスコミにリークされたらしい。

 俺たち四人の個人情報まではバレていないようだ。

 一体ダンプルは何を考えているのか、わからないんだよな。

 

「それと、君たちの装備品を用意した。これから説明する」


 日本政府が用意できる最強装備か。

 そういえばそれがあったんだよな。

 どんな装備が支給されるのか――これによって黒のダンジョン攻略の難易度は大きく変化するぞ。

この話を書いていて、「うまぴょい」という言葉が頭から離れない病気になりました。

責任取って次から真面目に書きます。


次回、新装備です。

万が一書籍化するときは、装備一新するので絵師さんよろしくお願いします。

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