もう一つのPの意味
土曜日が来た。
俺の前には開封済みのD缶が置かれている。
そのすべてを説明しよう。
え? ゴミアイテムはスキップして、重要アイテムの報告だけしてくれって?
現実世界にスキップ機能があるはずないじゃないか。
さっきから何心の中で独り言ぶつぶつ言っているのかって思われるかもしれないが、ここまで開けるのに苦労したので変なテンションになっている。
比較的簡単に開くものを選んだけれど、それでも100個は多かった。結局、半分くらいしか開けられていない。
てことで、改めて開封済みのアイテム一覧を発表しよう。
まず、価値の低いアイテム。
キッチンタイマー、階段でパタパタさせて遊ぶ大きなバネの玩具、銅貨の詰め合わせ、けん玉、交通安全のお守り、なぞなぞ100選ミニブック付きキーホルダー、高級ペットフード(クロとシロによって完食済み)、ビー玉、ホールトマト(母さんに献上済み)、緑の靴下、ダンポンの絵ハガキ、木の短剣、スポーツドリンク、世界地図、ベレー帽、ヘアバンド、赤い羽根、白革の手帳、漆塗りのお椀、手袋、金魚のガラス細工、お札(どこのお金?)、老眼鏡、招き猫、草鞋、ひまわりの種、包帯、丸い石、サボテンの植木鉢、ダンポンのぬいぐるみ。
と100円ショップで売っていそうなものがほとんど。
丸い石は特殊なアイテムかと思ったら、本当にただの石だった。
ただ、白革の手帳って見てみると中身がスケジュール帳になっていて、今年のカレンダーなんだよな。D缶の中身ってちゃんと更新されているのだろうか? 来年開けていたら来年のカレンダーのついた手帳が入っていたのだろうか?
まぁ、気になるが、ダンポンに聞いても教えてくれないので、そのうちわかるだろう。
次にそこそこ価値のあるアイテム。
銀のインゴット、金の懐中時計、プラチナの指輪、魔蚕シルクのハンカチ、魔石(黄)、土の石、のぼりウナギ。
種類は少ないけど、いいものがあったな。
土の石は土属性を装備に付与することができる石だ。
水野さんがそのうち使うだろう。
のぼりウナギは食べると経験値が手に入るウナギらしい。
特別な効果のあるアイテム。
ここからは一個一個詳しく説明していこう。
【魔法の氷嚢:魔石を入れると氷を生み出す袋。魔石(黒)で約3キロの氷が作られる】
【魔導電子レンジ:魔石を入れると動く電子レンジ】
【雷の鉄手甲:殴った相手を感電させるガントレット】
【匠の釣り竿:釣果が非常によくなる釣り竿】
【絆のブローチ(4個セット):ブローチを着けている仲間の位置がおおよそわかるようになる】
【魔法の水筒(カレー):魔石を入れると極旨カレーが出るようになる。魔石(黒)で約1リットルのカレーが出る】
最後のはちょっと待てと言いたい。
カレーは飲み物だって言うけれど、水筒から出てくるなよ。
洗うのが大変だぞ。
最後はお待ちかねのスキルだ。
尚、全部修得済み。
覚えたスキルとその効果を思い出す。
【基礎槍術:槍に関する基礎技を使うことができる】
【魔法反射:魔法を跳ね返す】
【肩代わり:仲間が受けたダメージを代わりに引き受ける】
【トレジャーアップ:宝箱からいい物が出やすくなる】
【妖精の輪:???】
最後のはよくわからない。
ユニークスキルだと思うが、その効果がわからないんだよな。
これまではなんちゃら魔法とか詳細鑑定とか分身とかその名前を聞いたらわかるスキルばっかりだったのに、ここで意味わからないスキル。
妖精の輪でネット検索したら、フェアリーリングという茸の輪っかが出てきたんだけど、それと関係あるのだろうか?
叫んでも発動しない。
使おうと思っても効果がない。
アクティブスキルなのか、それともパッシブスキルなのかもわからない。
謎だ。
それともう二つ。
激レアアイテムが出た。
一つは英雄の霊薬だ。
聖女の霊薬だったらよかったのだが、贅沢は言えない。
そして、もう一つが黄金の竹。
黄金の竹といえば、信玄さんの竹刀を思い出すが、これは武器ではなく特別なアイテムだ。
【黄金の竹:好きなスキルを思い浮かべながら叩き割ると、一つだけスキルのランクを一段階上げることができる】
一節の黄金に光る竹。
スキルを一段階上げるとは、スキルの熟練度が上がるのとはまた違う。
たとえば火魔法が火炎魔法になると言った感じに、そもそもスキルが変化するのだ。
過去に何度か市場に流通したことがあったが、その時の落札価格は英雄の霊薬並みだったという。
悩んだ。
仲間メンバーの底上げで言うのなら、アヤメの風魔法をランクアップさせればかなり強くなると思う。
安全を確保するというのなら、ミルクの薬魔法をランクアップさせれば凄い薬を作れるだろう。
だが、俺は別のものをランクアップさせたいと思っていた。
それが、
【PD生成】
【詳細鑑定】
この二つのうちどちらかだ。
というのも、俺がここまで強くなれたのはこの二つのスキルの恩恵が非常に大きい。
このユニークスキル、さらに強化できるとしたら一体どんな風に進化するのか?
たとえばPD生成ならば、仲間が入れるようになるかもしれない。詳細鑑定ならいまはダンジョン内のアイテムしか鑑定できないが、ダンジョンの魔物やスキルまで鑑定できるようになるかもしれない。
別のスキルを入手するまで待つという考えもあったが、それをすると一生使わずにいそうで怖い。
ダンポンにPD生成を強化したらどうなるのか聞いてみたが、おやつを提示しても教えてくれなかった。さすがにルール違反が過ぎるらしい。
実際に使ってみたらPDの管理者として教えてくれると言ったので、強化そのものは可能なのだろう。
結果、俺は自分を信じて、【PD生成】の強化をすることにした。
PD生成の強化を願って、木の短剣で黄金の竹を叩くと、黄金の竹が一気に割れた。
まるで破竹の勢いという言葉を体現しているかのような割れっぷりだ。
そして、俺のスキル名が【PD生成Ⅱ】に変化していた。
「ダンポン、強化が終わったぞ。PD生成Ⅱではどんな変化があるんだ?」
「強化おめでとうなのです。まず、ダンジョン内にワープポイントが設置されたのです。これにより、五階層単位での瞬間移動が可能になったのです」
「それはありがたいな。10階層とかいちいち降りるの面倒だったんだよ」
「最大10倍まで魔物の出現率を増やせるようになったのです」
「それは今のままでいいな……これ以上増やすと危険だ」
「次に僕がいろいろとアイテムを販売することができるようになったのです。Dコインと交換でアイテムを販売するのですよ。その時に使用したDコインは換金額とランキングに反映されるので、どんどん購入してほしいのです」
とダンポンがカタログを見せてくれた。
さすがに英雄の霊薬のような激レアアイテムはなかったが、回復薬や魔石、さらに魔法の水筒のような魔道具が販売されている。
さらに、商品だけでなくサービスもあるようで、体力の回復サービスや壊れた武器の修復などもしてくれるらしい。
試しに折れた石斬剣の修理にいくらかかるか聞いてみたところ1万D要求された。
これだと普通に石斬剣を買った方が安そうだ。
しかし、俺の持っている布都御魂のようにお金を出せば手に入る類ではない武器の修理などに使えそうだ。
「現金での修理は無理なんだよな?」
「無理なのです。ニコニコDコイン払いなのです」
「オッケー。他に強化で変わった点を教えてくれ」
「最後に、タイラのパートナーもダンジョンに入れるようになったのです」
「パートナー?」
「そうなのです。プライベートダンジョンと、パートナーダンジョン、二つの意味を持つようになったのです」
パートナー?
俺のダンジョンのパートナーといえばクロのイメージがあるけれど、あいつは前からダンジョンの中には入れたよな?
ということは、そっちではなく――
「つまり、仲間も入れるってことか?」
「違うのです。入れるのはタイラの結婚相手だけなのです」
「ああ、そうか。まぁ、パートナーって言ったら一般的にはそっちだよな」
うんうん、よーくわかったわ。
つまり、最後のはいまの俺には関係ないってことだな。
泰良「なぞなぞ100選ミニブック付きキーホルダー……本当に本になってるんだ」
父「懐かしいな。父さんが子どもの頃はみんな持ってたぞ」
泰良「なぞなぞブームだったの?」
父「いや、そんなブームはなかったな」
泰良「じゃあなんで?」
父「なんでだろう……? それと同じくらいテ〇リスも流行ってたが」
泰良「ファミコンの?」
父「キーホルダーについている小さいテ〇リスだ」
泰良「キーホルダーブームだったとか?」
父「いや、そんなブームはなかった」
泰良「じゃあなんで流行ったの?」
父「……なんでだろう?」




