強制集団転移
「なんだよ、ここ……俺たち、さっきまで教室にいたよな」
「今日卒業式なのに、私死んだの? 死んだの!? 明日から卒業旅行なのに!」
「みんな、落ち着いて! 落ち着いてって!」
「もしかして集団転移!? 異世界に集団転移して全員チートスキル貰ったとか? ハズレスキルこいっ!」
案の定、みんなパニックになってる。
その時だった。
巨大な破裂音が響いた。
閑さんの方からだ。
「今のは破裂音という音を鳴らすだけの魔法だ。どうやら、ここはダンジョンの可能性が高いな」
ダンジョンの中!?
そういえば、身体がやけに軽い。
「閑ちゃん、どういうこと? なんで俺たちダンジョンにいるんですか?」
青木が手を挙げて尋ねる。
「誰か、ダンジョンに入ったことのない者はステータスオープンと念じて欲しい。ここがダンジョンならステータスが表示されるはずだ」
閑さんがそう言うと、少し騒ぎになった。
どうやらステータスが見れるようになったらしい。
魔法にステータス。
どうやらダンジョンの中で間違いないな。
だったら――と思ったが、迷宮転移は使えない。
正規の方法で入っていないからだろうか?
「ダンジョンの中ならなんとかなるだろう。私はレベル100越えの探索者だし、ちの太くん……救世主のベータくんがいるからな。それこそ五十階層クラスの魔物が出てこない限り問題ない」
みんなの視線が俺に向けられる。
ここで下手なこと言ったらせっかく落ち着きかけていた状況が元通り混乱に陥るな。
「ああ、任せとけ」
俺はそう言って胸を叩く。
と同時に、念話でミルクたちに連絡を送った。
『みんな、聞こえるか?』
『どうしたの?』
ミルクから直ぐに返事が来た。
『卒業式の準備をしていたら何故かダンジョンの中に転移させられた。クラスメートと閑さん、あとトゥーナも一緒だ』
『え!? どういうこと!?』
『どこのダンジョンですか!? 直ぐに私も行きます』
『どこのダンジョンなのかも、なんで転移したのかもわからない』
『直ぐにダンジョン局に連絡を取るわ。あと、泰良の通ってる日新高校の方にも連絡をしておくわね』
『助かる。こっちも何かわかったら連絡する。』
冷静な姫の対応に感謝をする。
ここは安全地帯なのか、魔物の気配は感じないな。
「みんな。念話で仲間に連絡がついた。とりあえず異世界に転移したとかそういう変なことはないようだ。ダンジョン局にも連絡してもらった。あとはここがどのダンジョンかわかればいいんだが」
「石切ダンジョンじゃないのか? 一番近いだろ」
近藤が言う。
確かに距離的に一番近いのは石切ダンジョンだ。
その可能性が高いだろうか?
「月見里先生、どうすればいいのでしょうか?」
「そうですね。取る方法は三つです。一つ目は助けが来るまでここで籠城する。二つ目は出口を探して全員で移動する。三つ目は二手に分かれて、一組は籠城、一組は出口を探す」
吉岡先生の質問に閑さんが三つの案を出した上で全員での移動を推奨した。
まず、一つ目の全員で籠城だがここがどこだかわからないと救援を待つのも難しい。
かといって、全員で移動するには魔物の強さがわからない。
「とりあえず、魔物の強さがわからないとですね」
「そうだな。ちの太くん、申し訳ないが頼めるか?」
「はい。ちょっと調べてきますよ」
キズリカミキタくんをインベントリから出す。
「水野さん、悪いけど」
「うん。キズリカミキタくんへの指示は私がするよ」
もともとキズリカミキタくんの主人は水野さんだからな。
きっと俺より上手に使ってくれるだろう。
「トゥーナ、青木、皆を頼む」
俺はインベントリから使えそうな槍を渡す。
青木は槍を手に頷いた。
「おう、任せろ!」
「……ん、任せて」
次にインベントリから経験値薬を大量に取り出す。
元々、水野さんのレベルアップ用に大量生産したのだが、パペットを使ったレベルアップができるようになり出番がなくなったものだ。
「経験値薬だ。みんな、よかったら飲んでくれ。魔物と戦うことはないと思うが、レベルが上がれば出口が分かった後の移動も楽になる。あと回復薬と水、食糧も置いていくから適当に食べてくれ」
俺がそう言うと、みんな次々に経験値薬に手を取った。
一本飲めばレベル10くらいになれるだろう。
みんなが薬を飲んでいる間に、俺はこっそり閑さんのところに行き、耳元で言う。
「(なにかあったら念話で連絡します)」
「(……わかった。ちの太くんから貰っておいてよかったよ)」
「(まさかこんなことになるとは、あの時は思ってませんでしたけどね)」
PDのショップで買ったものだ。
PDのことはあまり知られたくないのだが、姫の提案で念話のスキル玉を渡しておいた。
さて、移動するか。
道に迷わないように右手の法則で移動するか。
影からクロを呼び、全力で走る。
魔物がいないな。
全部狩られたあとか、魔物が少ないダンジョンなのか。
ん? 何か気配がする。
「行くぞ、クロ!」
「わふ!」
俺とクロは気配のする方に向かって移動した。
すると、そこにいたのは作業服姿の男性たち。
なんでそんな服装で――と思ったが、浅い階層なら作業服やジャージでもダンジョンに潜る人がいる。
もしかしたら、どこかのダンジョンの一階層かも。
そんな期待を胸に、一度クロには影の中に入ってもらい、彼らに近付く。
彼らも俺に気付いたようで、こちらを見た。
「すみません――」
「ここがどこか知ってるか!?」
「え?」
聞くと、彼らも気付けばダンジョンの中にいたらしい。
さっきまで普通に仕事をしていたはずなのに、地震があったと思ったら、気付けばダンジョンの中にいたのだとか。
もしかして、これってかなりやばい事態じゃないか?




