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誕生日の贈り物

 僅かな期間でトゥーナのレベルが150になった。

 しかし、僅かな期間といってもそれは現実世界での話。

 ここでは現実世界の百倍の時間、戦うことができる。

 しかも俺と姫が協力して魔物を誘導し、ミルクが銃で麻痺石を打ち込み足止めを行い、トゥーナが遠距離攻撃で殲滅するという戦術を用いて、魔力もアヤメの魔力タンクのお陰で十分確保、補給できる。

 なんとも最高のレベル上げ環境だ。

 俺たちもわずかにレベルが上がった。

 俺はレベル172、姫はレベル173、ミルクとアヤメは170に上がった。

 ミルクの応用銃術が応用銃術Ⅱに、アヤメは魔力回復が魔力回復Ⅱにそれぞれランクアップした。


「なんとかレベルが上がりましたね」


 アヤメが温かいほうじ茶の入ったコップを配りながら言う。


「じゃあ出発は……三月末のこの日でいいわね」


 姫が休憩室に飾ってあるカレンダーをめくって都合のいい日を確認する。

 今日は三月二日なのでかなり先だ。

 

「次の土曜日でいいんじゃないか? トゥーナも急いでいるし」

「……ん、根回しが必要」

「そういうこと。さすがトゥーナね。そのあたりよくわかってるわ」


 姫が言うには、今すぐ出発となるとダンジョン局も準備が間に合わないとのこと。

 どうせダンジョン局のことだから、あのダンジョンの調査が本格的に終わるまで、何かしらの理由をつけてトゥーナをダンジョンに入れないだろう。

 姫の予想では三月末は、急げばダンジョンの調査を終えてトゥーナをダンジョンに連れて行くことができるギリギリのラインらしい。

 これは単純な彼女の予想ではなく、姫と、天下無双のダンジョン局の上層部、相談役(という名の防衛相から天下りしてきた元官僚)が話し合って決めた時期だという。

 今もなお調査をしている閑さんを含めた月見里研究所の皆や、他の探索者の人には申し訳ないが、急いで調査を終えてもらおう。


「それに、ダンジョンはとても広い上に転移魔法陣もないそうだから、調査をするとなると泊りがけになるわ。それなら学校を卒業した後の方が都合がいいでしょ?」

「とんだ卒業旅行だな」


 クラスメートの何人かは既に卒業旅行の打ち合わせをしている奴らもいる。

 俺もそこそこ仲のいいクラスメートから誘いを受けたが、いまの家への引っ越し準備があったので断った。

 青木も俺が行かないなら行かないって言っていた。

 無理して俺に合わせなくてもいいのになんだかんだ言って義理堅いよな、あいつ。

 大学に行っても家は近いし、GWの五連休のうち一泊だけ使って二人で旅行に誘うか。

 と話が逸れた。

 泊まりでのダンジョン探索か。


「安全地帯とかないだろ? 結構危ないな」

「一応、聖域シートは使うわよ? それとパペットに見張りをしてもらったら私たちは寝るくらいできるわよ」


 そうか、敵の侵入と攻撃を防ぐ聖域シートに加え、疲れ知らずのパペットがいたか。

 聖域シートは某ゲームの巻物と違って遠距離攻撃も防いでくれるから安全だな。

 逆に人間の侵入を防げないので野宿に使うにはいささか不用心だが、あのダンジョンは他の探索者がいないので都合がいい。

 それにパペットのキズリカミキタくんならちょっとやそっとの敵では負けたりしないだろ。

 敵が現れたら、声は出せなくても鐘を鳴らして起こしてもらえればいい。

 あとは値段が張るが、魔物が嫌がる臭いの出るアロマなんてものも売っていた気がするが……クロが嫌がりそうだしやめておくか。 


「……ねぇ、ミルクちゃん。聖域シートってあんまり広くないよね」

「……うん。五人で寝るならかなりギリギリになると思う」


 アヤメとミルクがこそこそと話しているがばっちり聞こえてしまった。

 四人同じ部屋で寝たことはあるが、密着した状態で五人で寝るのは経験がない。

 ヤバい、考えてなかった。


 聞こえていないふりをして視線を泳がせた俺は、ふと部屋に飾ってある時計を見る。

 特別な時計で、外の時間に合わせているため、秒針の動きが非常に遅い。

 その時計の長針、短針、秒針の全てが十二を指した。

 深夜零時だ。

 今日はこちら(シェアハウス)に泊まることは伝えているので家族が心配することはない。

 そして、三月三日になったってことは。


「十二時だな。姫、誕生日おめでとう」


 俺はそう言って拍手をした。


「姫ちゃん、おめでとう」

「押野さん、おめでとうございます」

「……おめでとう」


 姫を除いた全員で拍手をする。

 一緒にいたキズリカミキタくんも空気が読める子なので拍子木みたいな音を出して拍手する。


「そういえば今日だったわね。誕生日が嬉しい年でもないし、すっかり忘れていたわ」

「今日の放課後は誕生日パーティを予定しているからな」


 姫が本気で忘れていたという感じで言う。

 盛大なサプライズパーティでも用意しようか考えたのだが、俺たちの誕生日も四月四日(アヤメ)、四月十日(俺)、五月五日(ミルク)と続くので仕返し――じゃなくてお返しが怖いから普通に祝うことにした。


「プレゼントとは別に、これを受け取ってくれ」


 と俺は予め用意していたものを渡す。

 これだけは忘れるわけにはいかなかったからな。


「D缶?」

「誕生日に受け取ると開くんだってさ」


 牛蔵さんから貰った大量のD缶の中に入っていたものの一つだ。

 その時には既に俺もミルクもアヤメも誕生日を終えていた。

 水野さんはまだだったが、詳細鑑定のことを知っているメンバー以外に渡すのはリスクがある。

 家族に渡すか迷ったが、結局誰にも渡さないまま放置されていた。

 

「へぇ、何かしら? 誕生日ケーキとか入っていそうね」

「年齢の分だけろうそくが入ってるかも」

「誕生日って多くの宗教で聖なる日みたいな位置付けですから、光の魔道具かもしれませんよ」


 姫とミルクが茶化すが、アヤメが結構いい予想をする。

 なるほど、聖なるアイテムか。

 聖なる――待てよ。

 もしかして――


「あ、これ――」


 姫が取り出したのは、一枚の白いレジャーシートだった。

 やっぱり――


【聖域シート:広げて敷くとそのシートの上は魔物に襲われることのない絶対安全な場所になる。ただし、一度設置すると24時間動かすことはできなくなる】


 大当たりのアイテムがまさか被るとは。


「ちょうど一枚じゃ少し手狭だって思ってたのよ。これも泰良の幸運のお陰ね」

「……そうだね」


 うん、そうだよ。

 一枚のシートだったら狭くて寝られないところだったんだ。

 きっと俺の幸運のお陰だ。

 喜んでいいと自分に言い聞かせた。


 その後、俺たちは一度就寝し、学校に。

 放課後はトゥーナのレベル150達成と姫の誕生日を盛大に祝った。



 そして、高校の卒業式の日がやってきた。


コミカライズ2巻が5月初旬発売予定です

また、コミックグロウルでは

10話前半:4/5

10話後半:4/19

それぞれ更新予定

更新にあわせて1話前が無料公開されます

よろしければ無料の時だけでも読んでください

(今月は単行本化作業のためお休みでした)

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― 新着の感想 ―
>「十二時だな。姫、誕生日おめでとう」 このシチュエーションの場合は、正午とも受け取れる「十二時」よりも「日付が変わったな」「3月3日になったな」という方がいいんじゃないかなぁと思うのですがどうでし…
「一泊だけ使って二人で旅行に誘うか。」 フラグ?
完全人形任せでほんとに大丈夫かって保険的な意味で、一人は起きておくべきだって警告するような警戒アイテムが出るかと思った。
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