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家族風呂

「身代わりの腕輪1個で1500万……12個で1億8000万円……」


 アヤメちゃんがパンクしている。


「期待はしていたけれど、想像以上ね。やっぱり幸運値の高さが中身にも影響しているのかしら?」


 そうかもしれないな。

 そういや、ギャンブルとかはやらないけれど、駄菓子屋のくじ引きとかで結構当たりを引いていたっけ。あまりに当たりを引くものだから、駄菓子屋のおばちゃんにイカサマを疑われ、それ以降当たり付きの駄菓子は買わなくなった。

 だとすると、D缶もオークションで買うより、自力で狩った方がいい物が出るのかもしれない。


「泰良、これある程度は政府に流してもいいかしら? もちろん、売り上げはちゃんと分配するわよ」

「いいぞ。どうせこんなにあっても使い切れないし」

「助かるわ。これで面目は立つわね」

「面目?」

「うちはたった三人のEPO法人で実績も少ないから、多方から誹りを受けてるって話はしたでしょ? でも、政府が欲しがっている身代わりの腕輪を定期的に卸すことができればそっち方面からは信頼される。というより、私たちの認可を取り消したら身代わりの腕輪が手に入らないかもしれない。そう思うと迂闊なことはできないでしょ」


 なんでも日本で現在政府が保有している身代わりの腕輪は、姫が知る限り二個しかないらしい。裏ではいくつか保有しているかもしれないが、それらを使うことができる人間が限られているのは間違いない。

 総理大臣は着けられても、前総理は? その前の総理は? 外務大臣は? 防衛大臣は? 日銀総裁は? となってくる。

 日本は治安がいい国ではあるが、それでも絶対に安全な社会ではなくなってきたのも事実だ。


 EPO法人の面目ねぇ、そんなこと考えてもいなかった。

 もしかしたら、魔物のテイムの情報を研究し、それを公表しようとしているのもEPO法人の活動として報告するためなのか?


「なんか、姫に任せっきりだな」

「そんなことないわ。本当の裏方はちゃんと事務を雇ってるから、私がやってることなんて些細なものよ」

「そういえば、私たちのEPO法人の名前ってなんなんですか?」


 アヤメちゃんが質問する。

 そういえば、EPO法人って言うからには法人名もあるんだよな?


「天下無双よ。EPO法人天下無双。世界一位のダディに勝つつもりだもの。当然、それにふさわしい名前にしたわ」


 そんな名前でよく認可が通ったな。

 ギルド名だって思うと、まぁありかもしれない。

 ゲームでもたまに聞くフレーズだ。

 だが、EPO法人って頭につくだけで頭のおかしい会社みたいに思えてくる。

 その暴挙を止める大人はいなかったのだろうか?


 身代わりの腕輪以外にも結構いいものはあった。

 経験値薬や魔力を回復させるポーションなどだ。

 これらはミルクが使うことになった。

 経験値薬は非常に高価な薬だったが、最近はだいぶ値段も下がってきている。

 どこかの誰かが定期的にオークションに出品するせいだろう。

 間違いなく俺が姫に渡しているものが原因だ。


 次に真珠類。 

 トレジャーボックスTには宝石も結構出てきて、その中には真珠も結構入っていた。

 以前にも言ったように宝石は安く買いたたかれるのだが、真珠だけは別だ。

 ほぼ真球の真珠は高値で取引される。

 これらは姫が押野グループの伝手を使って捌くことになった。

 ハイポーションなどの回復薬は、必要な分だけ保管し残りはオークションに流す。

 身代わりの腕輪を除いても1400万円にはなると姫は言った。

 腕輪1個分にも満たないが、しかし一日で稼げる額としてはとんでもない額だ。


「このお金を分配するのもいいけれど、3000万円くらいで泰良の剣を買いたいわね」

「剣? 今の剣じゃダメか?」

「切れ味が悪すぎるわよ。予備だって持ってないんでしょ?」


 確かにそうだが、3000万円って高すぎないか?

 でも、ダンジョンの中に持ち込める武器は限られている。

 ボウガンですら500万とかだもんな。実用性のある剣となると、やっぱり高いのだろう。


「そこは姫から借りることはできないのか?」

「うちだってなんでもあるわけじゃないわよ。それと、あくまで天下無双と押野グループは別企業だから、押野グループのお金を好き勝手使っていいわけじゃないの。そんなことしたらさすがにマムに怒られるわ」

「俺等に払おうとしていた契約金は? 1000万ドルは会社の金だろ?」

「あれは私がコツコツ貯めたお小遣いを元に、投資などで増やしたお金よ」


 まさかの私財だった。

 小遣いを元に投資で1000万ドルってどれだけ才能があるんだよ。

 でも、俺の幸運値を考えると1000万ドルは直ぐ貯められそうだし、それを見抜いて契約を迫った姫の見る目は確かなんだろうな。

 それとも、金持ちの小遣いはそのくらいあるのだろうか?

 

「ミルクの貯金ってどのくらい?」

「……なんでそんなこと聞くの?」

「いや、金持ちの事情を知りたくて」

「私が管理している分だと300万くらいかな。もちろん、円よ」

「私はママに預けているからどれくらい貯金あるかわかりません。あ、でも姫さんから貰っているお給料は全部貯金してますよ」


 みんな真面目に貯金してるんだな。

 俺なんてお年玉も小遣いもほとんど全部使ってるから、ダンジョンで稼げるようになるまで貯金はゼロだった(熊の貯金箱に100円玉が何枚か入ってるがそれはノーカウントで)。

 姫が会議室の電話でスタッフを呼ぶ。

 スタッフが現れ、売却分の写真を撮影し、その一枚を姫のスマホに転送。

 そしてそれらを回収して出て行った。

 非常に手際がいい。


「じゃあ、お風呂に行きましょうか」

「そうだな。大浴場でさっぱりと――」

「何言ってるの? 家族風呂予約してあるって言ったでしょ?」


 ……ソウダッタ。




 当たり前だが、家族風呂の脱衣所に男女別なんて概念はない。

 最初に俺が着替えて中で待つ流れになった。

 三人が入ってくる前に、とっとと水着に着替えるか。

 ラッシュガードまで用意してくれるのはありがたい。

 とりあえず、短パンとラッシュガードでいいか。

 これだったらほぼ普段着と変わらないからな。

 この様子だと、女性用の水着もいろんな種類を用意していることだろうし、変な姿で来ることはないだろう。


 家族風呂は露天のひのき風呂だ。紀州熊野ひのきという地元の木材を使っているらしい。

 十人くらいは入れそうな広さがある。

 屋根があるので、雨の日でも入れる。

 床が少しぬめっていて、滑りそうで危ないな。

『床が滑りやすくなっているのでご注意ください』と目立つところに貼り紙があるので、大丈夫だろう。

 温泉は大浴場に比べて少しぬるめになっている。

 子どもも一緒に入ることを想定しているのだろうか?

 僅かな硫黄臭のする無色透明の湯で、肌が滑らかになっていく。

 これなら長時間のんびりとお風呂に入れそうだ。

 一人だったら、の話だけど。

 既に気配探知では脱衣所にいる三人の気配を感じ取っている。

 このスキルはダンジョンの外でも使えるからな。

 かくれんぼで鬼をすれば無敵の強さを発揮することだろう。


 一人目が来た。

 ミルクだ。

 まぁ、幼稚園の頃とはいえ、ミルクとは一緒に風呂に入った中だ。

 三人の中では一番緊張しないだろう。

 最初に来てくれてよかった。


「泰良、お待たせ」

「別に待ってない…………(ばっ)」


 俺は慌てて視線を逸らす。

 ミルクは着やせするタイプではない。

 服を着ていても出るところはしっかり出ているのはわかっていた。

 だが、水着姿だとその破壊力は段違いだ。

 黒のタンクトップビキニという一見地味な水着だが、タイトな分その体形がはっきり浮かび上がってしまう。


「どうしたの? 泰良」

「いや、なんでもない」

「こっち見てよ」

「星空が綺麗だな」

「曇ってるよ?」


 曇天だった。

 五月晴れはどこに行った?

Q:なんでこういうお風呂のシーンとか入れたがるんですか?


A:万が一書籍化したとき、担当編集が口絵(本文開始前のカラーのイラスト)を何にするかいちいち考えなくてもいいからです

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― 新着の感想 ―
一読者としてはミルクにがんばってほしい
主人公が勘違いしてるって設定なら別に構わないけど、硫黄は無臭だよ。
法人になったなら会社の売り上げになるのでは?
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