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それぞれのお宝ダンジョン(その1)

 一人でお宝ダンジョンを進む。

 以前四組だったのに今回は八組だからか、部屋が狭い気がする。

 とりあえず宝箱を探す。

 前回は金のスライム40匹に、恵比寿の魚篭だったっけ。

 さて、今回は何かな?

 早速、宝箱を見つけた。

 開ける。

 金のスライムがいた。

 うん、わかってた。

 宝箱を開けるドキドキがない。

 これ、本当に運がいいのか?

 とりあえず、宝箱の中の金のスライムを恵比寿の魚篭に入れる。


 レベルを上げることは、これからの琵琶湖ダンジョンの探索に役立つ。

 面白くはないが、絶対役に立つ。

 不貞腐れずに宝箱を開けて金のスライムを集めていこう。


 他の面白いアイテムはみんなに任せるか。


   ~side姫~


 お宝ダンジョンには更衣室はないので、いつもの忍び装束ではなく普段着で中に入っている。

 中に入っていたのはホイッスルだった。

 魔物寄せの笛のような便利なアイテムだろうか?

 鑑別のモノクルで調べてみる。


【キノコホイッスル:笛を吹くと歩ききのこを召喚することができる】


 何度でも使えるっぽい。

 笛を吹いてみると、どこからともなく歩ききのこが三匹現れた。


「あなた、私の言うことがわかる?」


 とテイムしているのかと思ったが、歩きキノコが攻撃してきた。

 二階層の魔物なので痛くもないけれど、どうやら召喚できるだけでテイムできるわけではないらしい。


 これ、一体どう使えばいいのだろう?

 低レベルの時はレベル上げに使えたかもしれないけれど、今は必要ない。

 前回も宝箱をいっぱい開けた。珍しいアイテムはいっぱいあったけれど、本当に役立つアイテムはそれほど多くなかった。

 とはいえ、普通にレベルを上げるだけで強くなれるのには限度がある。

 ステータスだけでは通用しない敵がいる。

 鰐霊神なんてものはまだ序の口だ。

 噂によると、無限に再生するヒュドラの上位種、永遠に分裂を繰り返すスライム、周囲の酸素を奪って探索者を窒息死させる火の精霊。

 こういう敵に対抗するには、貴重なアイテムやスキルが必要になる。

 そうなると、キノコホイッスルも役立つかもしれない。


 と思ったら、別の歩きキノコが攻撃をしてくる。

 私の服にキノコの胞子がついた。

 着替え、持ってきていないのに。


「本当にこれが役に立つのかしら」


 そう呟き、歩き茸を倒す。



   ~sideアヤメ~


「ご主人様、宝箱があったぞ」


 ゼンちゃんが飛んできた。

 以前より狭いと言っても、宝箱の位置はまばらだ。

 形代を操ったらもっと簡単に見つけられるけれど、そこまで急ぐ必要はない。

 宝箱の気配を感じることができる壱野さんや、俊敏値が高い押野さんだったら規定数の宝箱をあっという間に集め終えるだろうけれど、ミルクちゃんや青木さんや水野さん、トゥーナさんは時間がかかると思う。


「うん、直ぐに行くよ」


 私はゼンちゃんについて宝箱のある所に向かう。


「ねぇ、ゼンちゃん」

「なんだ?」

「私、強くなれてるのかな?」

「あぁ、強いぞ。拙者が魔物だったころにご主人と戦っても、きっと負けるだろうな」

「そう……ですよね」


 私は強くなった。

 それはステータスのことだけでなく、魔法の腕も。

 それでも、時々思ってしまう。

 私の力は壱野さんに貰ったものだと。

 大魔術師の装備も、大半のスキルも全部壱野さんに与えられたもの。

 それは本当に私の力なのだろうか?


(おご)ることなかれ、浮華名利の毒を焼かるることなかれ」

「え?」

「空海の残した言葉だ。浮ついたこの世の名声や利益の毒に、驕ってはいけない、つまりは天狗になるなって意味だ。ご主人様はそれを理解している。だから、きっと強くなるさ」


 ゼンちゃんが諭すように言った。

 その言葉が私の心の負担をちょっと和らげてくれる。


「でも、元々天狗だったゼンちゃんが天狗になるなって、変な感じだね」



   ~sideミルク~


 お宝ダンジョンに入る途中、泰良に言われた。


『全部ポケットティッシュでも、ミルクには救済ポイントがあるからな。むしろそっちに期待しているぞ』


 私には救済措置というスキルがある。

 救済措置は、宝箱を開けたとき中身がハズレだったらポイントが入る。

 しかも、お宝ダンジョンの宝箱の場合は10ポイント。

 全部ハズレだった場合、400ポイントが手に入る。

 400ポイントもあれば、結構使いやすいスキルを覚えられる

 他の人にスキルを覚えさせることができないのは残念だけど、私自身の成長には必要だ。


 とはいえ、やっぱりハズレはハズレ。

 ポケットティッシュはもう要らない。


 早速宝箱を見つけた。

 私は目を閉じ、宝箱を開ける。

 そして、目を閉じたまま宝箱の中を手探りで見つけた。


 この感触――ポケットティッシュじゃない。

 もっとトゲトゲしている。

 なんだろ? どこかで触ったような記憶がある。

 栗? ハリネズミ?

 どっちにしろ、ポケットティッシュじゃなかったことを喜び、目を開けた。


「……タワシ?」


 亀の子タワシだ。

 鑑別のモノクルで調べてみる。

 

【魔法のタワシ:相手に当てると、固定10のダメージを与える】


 使えるのか使えないのかわからない。

 そして、救済ポイントが10増えた。

 やっぱり私にとってお宝ダンジョンはアイテムを集める場所じゃなくて救済ポイントを集める場所のようだ。

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― 新着の感想 ―
ミルクは何をガッカリしてるのかわからないが、固定ダメージを与えられる道具とかチート級アイテムだぞ
ポケットティッシュ…たわし…次にお宝ダンジョン入ったら出るのはなんだろう?
ネタを欠かさない作者氏のその姿勢が大好きです(*^^*)
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