琵琶湖ダンジョン四十一階層殲滅作戦
大量の魔物が湖の中から現れた。
こういうのでいいんだよ。
強い敵一匹と戦うより、こういう大量の魔物と戦う方がPDで慣れている。
姫が残していた分身枠を使って三人になり、回避タンクとして前に出た。
その間にミルクたちが銃で敵を撃ち、姫のいない場所に広範囲の雷神竜巻で殲滅していく。おぉ、水の魔物には雷が有効ってのはゲームだけでなく現実のダンジョンでも有効のようだ。
次々に雑魚の魔物が倒れていく。
さて、俺の出番だな。
「クロっ! 出てこいっ!」
「わふっ!」
リーチの長さを考えると影獣化よりも剣で戦うことを選択した。
影獣化をして影を伸ばし、剣のように扱うことはできるが俺の愛剣の二本――布都御魂と布都斯魂剣の方が攻撃値が高いからな。
「二刀流基礎剣術双剣斬波」
剣戟が風の刃のように飛んでいき、前方中範囲の敵を切り伏せる。
もっと射程範囲が長ければ遠距離攻撃としても使えるが、この程度だと空を飛ぶ敵は降下してくるまで倒せない。
と空を見ると、鷲の魔物が降下してくる。
さて――
「泰良、肩を借りるわよ!」
「いたっ!」
姫が俺の肩を踏み台にして大きく跳躍すると、さらに空に走っていき、鷲の魔物を斬った。
くるくると回転し、着地する。
「天翔が使えるなら俺を踏み台にする必要ないだろっ!」
「雰囲気よっ! 連携プレイっぽくていいでしょ?」
そう言われるが、逆じゃないか?
青木と一緒に見た(見させられた)アニメで、自分を踏み台にされて殺される黒いロボットに近い気がする。
とバカなことを考えている暇はない。
敵はまだまだいるからな。
巨大な亀と戦う。
「二刀流基礎剣術十字切り!」
カンっ!?
という音とともに甲羅に剣が弾かれた。
倒せないっ!?
と思ったら、亀がよろけた。
剣では斬れなくても、ラッキーパンチによるダメージが入ったのか。
だったら倒せる!
二度、三度と剣で殴ったら亀はようやく倒れて消えた。
しかし、さっきの亀がまだまだ出て来るな。
これ全部倒せるのか?
と俺の横にミルクが走ってきて、近接で杭――パイルバンカーを打ち込んだ。
硬い亀の甲羅に金属の杭が撃ち込まれる。
「泰良、平気?」
「大丈夫だ。この杭、さっきより威力が上がってないか?」
「うん、今回は硬そうだったからミスリルの杭を使ったんだ。動きの遅い敵なら倒せるよ」
おぉ、ミルクが頼もしい。
だったら、俺も――
とあっちでアヤメが魔法をぶっ放してるな。
相変わらず威力が凄いが、一人では倒しきれない。
『みんな、俺も一発どでかい魔法ぶち込む! アヤメは魔力回復頼んだぞ!』
そして、影獣化を使用。
さて、実戦だと久しぶりだな。
『姫、敵を集めてくれ』
『もうやってるわよ!』
姫と分身たちが三方向から敵を集めてくる。
そして、一点に集まったところで分身を解除、装備のお陰で俊敏値の一番高い姫の本体一人だけが俺の後ろに滑り込んだ。
敵も十分に集まった。
行くぞ――
「解放:地獄の業火」
影を纏った破滅の炎が放たれ、大爆発を起こした。
黒い炎に焼かれて死ぬ敵――いやぁ、これは地獄絵図だね。
でも、獅子搏兎の恩寵があるから、オーバーキルによる特典が美味しそうだ。
「壱野さん、魔力を回復させますね」
「サンキュー、アヤメ」
アヤメに魔力を回復してもらった。
数は八割ほど減ったが、まだまだ敵はいるようだ。
このまま一気に殲滅だ。




