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閑話 滋賀名物

 昨日の夜は気付かなかったが、ホテルの窓から外を見ると、琵琶湖が一面に広がっていた。


「見事なオーシャンビューだな……ん? オーシャンじゃないか。琵琶湖だからレイクビューだな」

「滋賀県の人は琵琶湖のことを海って呼ぶそうだし、オーシャンビューでいいんじゃない?」


 郷に入っては郷に従えっていうし、それでいいか。


「で、なんでミルクが俺の部屋にいるんだ? まだ朝の五時なんだが」


 朝でも夜這いって言うのだろうか?

 本当に夜這いなら牛蔵さんに殺される。


「出発時間だから呼びにきたの」

「聞いてなかった? 出発時間は朝の五時だよ?」


 そう言えば、そんなこと言ってたような気がする。

 だが、まだ眠い。


「ちょっと待ってくれ」


 俺はPD生成で部屋にPDを作って中に入った。

 そして二度寝。

 ささっと着替えてPDから出る。


「お待たせ!」

「泰良、中で寝てたでしょ」

「なんでわかる?」

「さっきと寝ぐせの形が変わってる」


 中で寝ぐせも整えてくればよかった。


「はい、そこに座って。寝ぐせ直してあげるから」


 ミルクが持っていた櫛を使ってささっと整えてくれる。

 女の子って普段から櫛とか持ち歩いてるのか?


「鍵は? オートロックのはずだけど」


 子どもみたいに寝ぐせを直される気恥ずかしさから、そんな質問をした。

 どうせ、姫が合いカギを持っていたから、それを使ったのだろう。

 ここは押野グループ系列のホテルだからな。

 と予想したが、答えは違った。


「クロちゃんが中から開けてくれたよ」


 ミルクの後ろからクロが顔を出した。

 悪びれるどころか、「よくやったでしょ、褒めて」って顔をしている。

 ミルクのために扉を開けることができるなら、俺を起こしてくれたらいいのに。


「朝飯はどうする?」

「この時間だとレストランも開いてないし、ルームサービスも時間外だからってアヤメと一緒に近くのコンビニに買いに行ったよ」

「社長の娘だからサービスしてくれるだろ?」

「社長の娘だからって我儘言ってたら四面楚歌になるよ」


 そりゃそうだ。

 姫はそのあたり弁えている。


「泰良、遅いわよ。はい、朝ご飯! さっき買ってきたわ」


 姫が黄色いパッケージに入ったパンを俺に渡した。


「……サラダパンか」

「滋賀県の名物なんでしょ? それに朝から野菜って健康的じゃない?」

「言っておくが、中にサラダは入ってないぞ?」

「そうなの?」


 と姫が隣のアヤメを見た。

 どうやら本当に知らなかったようだ。

 姫って物知りだけど海外暮らしが長かったから、そういうところが抜けてるんだよな。


「中に入ってるのはマヨネーズと沢庵ですね」

「沢庵? それって美味しいの?」

「わかりません。私は食べたことがないので。でも、滋賀県の人に長年愛されてるってことですから、美味しいんじゃないですか?」

「うまいぞ。」


 俺はビニールを破ってサラダパンを齧った。

 コーンマヨとかツナマヨと同系統だ。

 細かく刻んでいるので、何もしらなかったらタルタルソースのようなもので、沢庵が入っているとは気付かないかもしれない。

 しかし、マヨネーズと沢庵の絶妙なバランスに程よい塩味、これが癖になるんだよな。

 意外性のある食材のため、怖いもの見たさで買う人も多いがいざ食べてみると安心感のある食べ合わせなんだよ。

 沢庵といえば、ある話を思い出した。


「そういえば、沸騰した牛乳に沢庵を刻んで入れて十分経過するとコーンスープの味がするそうだぞ」


 試したことがないからわからないが、そういう話を聞いたことがある。


「さすがにそれは嘘でしょ」


 姫は信じてくれなかった。

 まぁ、試すこともないだろう。

 コーンスープと言ったら、D缶から出たコーンスープは一口飲んだだけだが、めっちゃうまかったな


 パンを食べながらダンジョンに行った。


「サラダパン、意外と美味しかったわ。絶品という感じじゃないけど、日常的に食べるにはちょうどいい感じね」

「地元に根付くパンってのはそういうパンなんだと思うぞ」

「その地元を失くさないためにも、ダンジョンの瘴気を減らさないといけませんね」


 アヤメが大魔術師の杖を握って言った。


「そうだな。滋賀県が魔物だらけになったらサラダパンを作ってるどころじゃないもんな。サラダパンのために頑張るか」

「そこは、サラダパンを愛する滋賀県民のために――じゃないの?」


 そうだった。


 ダンジョンの横にPDを設置。

 今日も受付はいないし、ダンジョンの入場記録も残らないので、横着してPDを使って一気に二十一階層に移動することに。

 昨日、わざわざ西条さんと潜った意味がなくなるけど、まぁそれはそれってことで。


「あ、みんな、おはようなのです。琵琶湖ダンジョンと繋がってるのですよ」

「ダンポン、おはよう。これ、昨日渡しそびれたけど明石が買ってきたクラブハ〇エのバウムクーヘンと洋菓子のセットよ」

「わ、ありがとうなのです!」


 姫からお土産を受け取ったダンポンが上機嫌にお礼を言った。


 ……朝ご飯としてはサラダパンの方が正解だったかもしれないけど、どうせ食べるならそっちがよかったな。

すみません、サラダパンの話書きたくなったので一話使ってしまいました。

反省はしていません

明日はちゃんとストーリー進めます。

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― 新着の感想 ―
地元で当たり前のようにあるものが県内限定だと気付くのは驚くのと同時に、ちょいハズい(苦笑) 私の場合は牛乳パンでした。
うまそう、今度作ってみるか。
この作品、ご当地情報に少し詳しくなれるのが良いですよね。サラダパンに1話、良いと思います。
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