太陽からの贈り物
太陽の塔の内部は凄かった。
芸術は爆発ってああいうことを言うんだな。
太陽の塔を出た後は、万博公園の隣のショッピングモールに行って買い物をすることにした。
まだ十一月だっていうのに、ショッピングモールは一カ月以上先のクリスマスセールが行われている。
そういえば、クリスマスプレゼントもまだ考えてなかったんだよな。
『壱野さん、それで中身は何だったんですか?』
『いや、まだ考えてないけど、何がいいかな?』
『D缶の中身を聞いているのですが――』
『あ、うん。そっちはまだ見てない。開いたのは確認したけどね』
間違えた間違えた。
『トイレで確認してくるよ』
『はい、待ってますね』
俺はそう言って、トイレの個室に行って中身を確認する。
中に入っているのは首飾りか。
綺麗でプレゼントにも良さそうだが、変な効果とかあったりしないよな?
調べてみるか――
「……ぶほっ!」
詳細鑑定をして思わず声が出て、思わず手で口を塞ぐ。
これはヤバイ、かなりヤバい。
何より装飾品っていうのがヤバイ。
スキルだったら、一人に効果を与えたら他の人には使えない。
だが、装飾品なら使いまわしができる。
そして、盗むこともできる。
たとえば、俺がいま持っている八尺瓊勾玉や、上松大臣に渡した転移用の魔法陣が織り込まれている絨毯のように。
これ、どうしたらいいんだ?
とりあえず、鞄に入れたままにしているのは怖いので、インベントリに収納する。
「はぁ……恨むぞ、葬送のタイタン」
D缶を送ってきたパーティ――たしか、リーダーの名前は土御門だったか?
八つ当たりだと思うが、しかし、そう思いたくもなる。
あまり遅いとアヤメも心配するだろうから、使ってもいない水を流して外に出る。
『壱野さん、どうでした?』
『んー、ダンジョン攻略には全然役に立たないものだよ』
『そうですか……』
『とはいえ、人によっては値千金どころか値兆金の最強アイテムかもしれない』
『それほどですか?』
俺はアヤメに念話で首飾りの効果を説明すると、彼女も難しい顔をした。
『これって――かなり危ないですよね?』
『わかってる。下手したら戦争の火種になりかねないよ』
個人が核兵器を保有しているようなものだ。
上松大臣に相談するのも怖いくらいだ。
なかったことにしたい。
だが――
『そのアイテムって今回の件で』
『ああ、めっちゃ使える。姫が言った通り、今回のキーアイテムになるかもしれない』
だが、その後が怖い。
上松大臣に渡すかどうか。
『押野さんに相談したほうがいいと思います』
『…………そうだな』
俺は姫に念話を送り、D缶の中身を伝える。
その効果を説明した途端、念話が使えなくなったのではないかと思うくらい彼女の反応がなかった。
俺は遠くの景色を見ることはできないが、姫が盛大にため息をついていることはわかる。
そして、それを梅田のオフィスに持ってくるようにと連絡が来た。
その一言がデートの終了を意味する。
姫も悪いとは思っているのだろう。
俺相手ではなく、アヤメ相手に。
それでも、今回ばかりは仕方がないとアヤメもわかってくれた。
タクシーを待つ時間も惜しく、俺たちは電車に乗って梅田のオフィスに向かった。
その間も姫とアヤメと俺の三人で念話は続く。
念話を送ってから約一時間で梅田のオフィスに着いた。
上松大臣はまだ来ていないそうだ。
彼が来るのは夜になるらしい。
昼間は別の仕事が立て込んでいるのだろう。
それでも出迎えるための準備や契約書の再確認のために姫はオフィスに詰めていたらしい。
「ついてきて」
姫は俺たちを見ると、用件も言わずに部屋から連れ出して会議室に連れていく。
「見せて」
「ああ」
俺はインベントリから首飾りを取り出した。
俺の言葉を信じていないわけではないだろう。
だが、彼女は鑑別のモノクルを取り出して確認し、溜息をついた。
きっと俺から話を聞いたときはもっと盛大な溜息だったことだろう。
俺も再度鑑定をする。
【太陽神の首飾り:日の出ている間のみ、ダンジョンの外でもダンジョン内と同じ力が扱えるようになる首飾り】
そりゃため息をつきたくなるよな。




