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運命に抗う力の在り処

 研修の後の飲み会は中止となり、閑さんと本城さん(ついでに兎束さんも)は開発中の武器について話し合うことになり、俺たち四人はダンジョン局が手配してくれた帰りのタクシーで帰ることになった。

 姫も今日は京都の自宅ではなく俺の家の近くに借りているマンションに帰るらしい。

 そのタクシーの中で、俺たちは無言で、しかし全員気難しそうな顔をしている。

 きっと俺も同じような顔をしているんだろうな。

 実際は無言は無言でも、念話でずっと会話をしている。

 さすがにこの内容は他人には聞かされられないからな。


『そうか、ミルクが石舞台ダンジョンで襲われた日まで、牛蔵さんも知らなかったのか』


 さっきの会議が終わってから、ミルクと牛蔵さんは話をした。

 盗聴防止のため、スマホではなくダンジョン局の電話で。


『……うん。富士山に行ったあとで竹内のおじさまに教えてもらったんだって。私が死にそうになったからって、パパ、アメリカから日本に戻って、初めて竹内のおじ様を殴ったって言ってた。竹内のおじさまも避けもせずにお腹で受け止めたって』


 おかしいと思ったんだ。

 あの牛蔵さんがあの時のダンジョンの危険性を知っていたら、絶対にミルクをダンジョンに行かせたりしなかったよな。

 その後、牛蔵さんがミルクのダンジョン行きを許可したのは、その後電話で竹内さんから当面の危険はないと連絡があったからだそうだ。

 市役所の屋上のレストランで、牛蔵さんがミルクのことを俺に任せるような発言をしたのも、もしかしたらそれが理由かもしれない。


『上松大臣は殴られなかったのか? あの人も知ってたんだろ?』

『上松のおじさまとはその前にずっと殴り合ってたみたいだから。私たちの結婚を認めちゃった件で』


 そういえばそうだった。

 俺たち四人の婚姻届けを受理し、それを無効ではなく実際に結婚できるように手続きしているのは上松大臣だ。

 それを知った牛蔵さんは、上松大臣を一発殴り、その後は殴り合いに発展した――って聞いた。


『それで、押野さん。ダンジョン局からの依頼はどうするんです?』

『とりあえず、真衣の作ってる猛毒石と麻痺石、鈍重石を提供しようと思ってるわ。場合によっては魅了石もね』

『俺のPDについては黙ってる方向でいいんだな?』

『言えるわけないでしょ。規格外過ぎるわよ。ただ気がかりなのは、トゥーナとミコトね』

『トゥーナちゃんって、ダンジョンの外でも魔法を使えるもんね』

『ミコトはトゥーナの召喚獣ってことになってるから、トゥーナが巻き込まれたら自動的に巻き込まれるな』

『クロちゃんは大丈夫ですか?』

『そっちも心配だな……クロを一匹にさせられないし、俺の召喚獣ってことにして……そしたらクロの出動に俺も巻き込まれるよな』


 俺はただ、ダンジョンに潜って強くなりたいだけだった。

 なのに、なんでこんな面倒なことになってるんだ。

 やっぱり閑さんの言う通り、

 富士山から溢れた魔物を魔法で一掃したときには既に手遅れだったのかもしれない。


「「「「……………はぁぁぁぁ」」」」

「…………(びくっ)」


 俺たち四人が同時にため息をついて、運転手さんがびくっとなった。


『状態異常石を提供して大丈夫なのか? 特に魅了石はかなりヤバい。俺たちの所有制限をかけられるかもしれないし、下手すれば水野さんに行動制限がかけられるぞ』

『それについては考えがあるわ。魔法の契約書で事前に、状態異常石の出処を誰にも言わないし探らせない、周囲に知られるような行動をしない、あと私たちに制限をかけないとこっちに都合のいい内容の契約をしてもらうの。あぁ、それよりも嘘の出処を考えて書類を偽造してもらうのもいいかしら?』

『契約で守ってくれるのか? アニメじゃないけど影の公安みたいなのが出張ってきて勝手に調査して水野さんが攫われたりしないって確証はないだろ』

『契約を守らせる手段が私たちにはあるじゃない』


 そんな手段……もしかして、魔法の契約書か!?

 超激レア缶の中に入っていたアイテムの一つだ。

 契約の内容を絶対に守らせることができるアイテムだ。


『魔法の契約書は以前にも何度か発見されているわ。さすがに紙束ってことはないけど、それでも使用された実績もあるわ。問題があるとしたら契約の穴を突かれる場合だから、今日は徹夜で書類の草案作りね』

『俺も何か手伝おうか? 書類の内容を考えることは無理でも眠気覚ましのコーヒーを淹れるくらいならできるぞ』

『コーヒーは結構よ。徹夜って言ってもPDを使うから大丈夫。ちゃんと時間はあるししっかり寝ることもできるわ』


 京都の自宅に帰らずに大阪のマンションに帰る理由は夜も遅いというのは建前で、本当はPDを使うためだったのか。


『私の部屋から契約書を作るのに必要な書類を運ぶためのお手伝いは欲しいわね』

『是非手伝わせてほしい。契約も同席したほうがいいか?』

『契約は日曜日よ。泰良にはしないといけないことがあるでしょ?』


 しないといけないこと?


『アヤメと万博公園に行きなさい。魔法の契約書がこのタイミングで私たちの手元にある点といい、泰良の持っているD缶には最悪の運命に抗う力がある――そう思うの』

『最悪の運命に抗うための力か……』


 どうせなら、最悪の運命に抗う力ではなく、最悪の運命に巻き込まれないための力が欲しいよ。


「なぁ、兄ちゃん、嬢ちゃんたち……おっちゃんはチーム救世主(メシア)のファンなんだよ」

「「「「ありがとうございます」」」」


 国民栄誉賞を貰ってから、こんな風に声を掛けられることも増えてきたので、俺たちは慣れた感じで声を揃えて礼を言った。


「だから、仲良くしてくれよ。何があったかわからないが、喧嘩したのなら仲直りしなよ?」

「「「「え?」」」」


 喧嘩なんてしてないけど?

 ……もしかして、ずっと無言でしかめっ面だから、修羅場かなにかだと勘違いされていた?

  ~以下、必要ないのでボツにした部分、勿体ないからリサイクルあとがき。でも、やっぱりオチもない~


 アヤメとミルクをそれぞれの家まで送り届け、送り狼のような感じで姫のマンションの部屋に入った俺は、別にいちゃつくことはなく書類をPDに運んだ。

 あとは姫に任せ、庭の窓をノックする。

 母さんが窓を開けた。


「泰良、家に入る時は庭からじゃなくて玄関からって言ってるでしょ」

「ごめん、靴は運ぶから」


 俺は靴を持って家の中に入ったところで、腹の音が鳴った。

 

「研修の後は食事会で遅くなるんじゃなかったの? 泰良の分の晩御飯残ってないわよ?」

「弁当があるからいらないよ」

 

 俺はそう言って、食べかけのステーキ弁当を電子レンジの中に入れた。

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新しい黒のダンジョンの入ったところにレジャーシートで聖域作って殲滅拠点にしたらいいんじゃ
没部分もしんみりしたシリアスな味わいは嫌いではないですが、好き嫌いは分かれそう。
こんばんは。メリークリスマス! とりあえず運転手のおっちゃん、良い人なんだろうなぁ…というのは分かりましたww
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