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京都ダンジョン21階層

 まさか、神社とは。

 まぁ、工場があるんだし、ダンジョンの中に建造物があっても不思議ではないが、神社の神聖な雰囲気と魔物が跋扈するダンジョンのイメージが合わない。

 神職の人に怒られないか?


「とりあえず、お賽銭でもした方がいいのか?」

「財布は更衣室の貴重品入れに預けてきたし、そもそも賽銭箱がないよ?」


 そう言われてみれば、賽銭箱はどこにもなかったし、御神籤やお守りを売っている売店なんてものもない。

 随分と商売っ気のない神社だ。

 まぁ、ここで祈りを捧げたところで届く相手はミコトだからな。

 それなら本人に直接願い事を言った方が届くだろう。


「ダンジョンの中に神社があることについては、ダンジョンができたときにいろいろとあったみたいだけど、ひとまず決着はついているみたいよ。ダンジョンの中でも境内の中には魔物が出てこないし聖域のような扱いにされていることがよかったみたい」


 へぇ、境内では魔物が出ないのか。

 ボス部屋の前の安全地帯みたいなものかな?

 なら、食事休憩に使うのは良さそうだ。


「境内では、飲酒、飲食、料理、喫煙、焚き火は禁止されているわよ」

「俺たちは十八歳だから飲酒も喫煙もできないよ」


 あと、姫は敢えて言わなかったが、排泄も禁止されているだろうな。

 ダンジョンの中のトイレ事情はいろいろと気を遣う。

 一応、使い捨ての簡易トイレとトイレットペーパー、目隠しの布は常に持ち歩いているが、当然、全員あまり使いたがらない。


〔賽銭箱はないけど、お参りはしたら?〕

〔いい神社だなぁ、御朱印もらいたい〕

〔御神籤売ってないのが残念。ベータさんが何回連続大吉出るか企画してほしかった〕

〔やめて、そんな企画したらデルタちゃんの体力が無くなる〕

〔御朱印って、助勤さんどころか神主さんもいないのに誰が書くんだ?〕


 確かに、お参りはしていくか。

 神社の前に四人で一列でならんで、二礼、二拍手、一礼とお参りをする。

 特にそれで何か起こるわけではないが、ちょっとすっきりした。

 赤く大きな鳥居をくぐり、森の中に入っていく。


「平和な森の中だな。本当に魔物とか出るのか?」


 お、可愛い兎だ。鹿みたいな角が生えている。

 頭に角があるからアルミラージの一種かな?

 と思ったら、俺の喉目掛けて急加速してきた。


「うわっ!?」


 攻撃を躱す。

 殺傷能力がアルミラージと段違いだ。

 よく見ると、足の爪もかなり鋭い。

 いまはまだステータス差があるから大丈夫だが、この先、かわいい魔物だからって油断したら痛い目に遭うぞ。

 今度はこちらから攻撃をしようとしたら、ウサギは一目散に逃げていた。

 ヒットアンドアウェーか。

 

〔なに、あのウサギ?〕

〔兎殺傷力高いのに逃げ足も速い〕

〔ジャッカスだ――元はアメリカにいるという未確認生物のジャッカロープ。兎の剥製に鹿の角を付けただけの紛い物だけど〕

〔兎は獅子から逃げるときも全力を尽くす〕

〔うまいこと言っているようで、当たり前だよな〕

〔兎は獅子から逃げる前に一撃入れたりしねぇよ〕


 森の中を追うのは難しいな。

 速度の問題じゃなく、単純に森の中は藪だらけで普通に歩けないんだ。

 と思ったら、さっきとは別のジャッカスが襲い掛かってきた。


「姫っ!?」

「速度は私の方が上よ!」


 姫のクナイがジャッカスの首を一瞬で斬り落としていた。

 酒瓶とDコインが落ちる。


【ジャッカスウイスキー:ジャッカスが大好きな美味しいウイスキー。微かにリンゴの香りがする】


 お神酒かなと思ったが、中身はウイスキーのようだ。

 ジャッカスは兎なのにウイスキーが好きなんだな。

 

〔ジャッカスの通常ドロップはジャッカスウイスキー、レアドロップが低級万能薬〕


 有識者凄いな。

 一般のネットページに公開されていない二十一階層の魔物の情報も知ってるのか。

 本当は兎肉も期待していたんだけどな。

 魔物の肉はどういうわけか、強い敵ほど美味しい肉をドロップする。

 兎肉は時折我が家の食卓に並ぶこともあるほどメジャーな肉になりつつあるので、上位種のジャッカスの肉を食べたかった。

 そうだ、魔物用解体包丁で肉を切ったら食べられるんじゃないか?

 うん、今度PDで試してみよう。


 とまたジャッカスが襲い掛かってきた。

 今度は俺が倒す。

 低級万能薬とウイスキー、Dコインが全て落ちた。

 このウイスキーは父さんへのお土産にしよう。


「一度逃げられたら追いかけるのは面倒だが、攻撃してくるときに倒したら問題ないな。ミルクとアヤメは俺たちの間に入って歩いてくれ。姫、分身を使って地下に続く階段の場所を探してくれ」

「わかったわ」


 姫が九体の分身を作って方々に散らばらせる。

 本当はアヤメの形代も使った方が楽に階段を見つけられるのだけど、配信されている都合で今回は使わない。


「分身が階段を見つけたわ。このまま二十二階層の探索をさせるから、次に行きましょう」


 お、もう見つけたのか。

 森の中だから時間がかかるかと思ったが、案外狭いフロアなのかもしれないな。

 リスナーからも、姫のことを有能と称えるコメントがいっぱい流れるが、その中で――


[アルファちゃんの分身、一人でいいから分けてくれないかな]


 とのコメントが。

 姫のことは一人もやらんからな。

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― 新着の感想 ―
そのうちボーパルバニーとか出てくるのか? やっぱりウサギは首刈ってこないとね
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