スキル玉二十個大放出
最後に、倉庫で預かってもらっていたD缶を大量に回収して梅田のオフィスに戻った。
会議室に移動して、小さなテーブルを囲み四人で座る。
ここは防音も完璧だし、外に聞かれる心配もない。
「じゃあ、手に入れたスキル玉を言うぞ。誰からがいい?」
「「「はい!」」」
女性陣三人が手を挙げた。
普段は控えているアヤメも積極的だ。
全員から質問されたけど、戻ってからのお楽しみだって言ってここまで焦らしていたからな。
姫とアヤメがジャンケンを提案するが、ミルクが断った。
うん、ミルクは絶対にこういう時のジャンケンは負けるもんな。
「じゃあ、姫、アヤメ、ミルクの順番で一個ずつ言っていくか」
「私が最初? 何の順番なの? 胸の小さい順とか言わないわよね。好きな順かしら?」
「好きな順番っ!? 本当なのっ!?」
「私が真ん中ですか……でも、ミルクちゃんが一番最後ってことに違和感が」
「違うよ。単純に俺から見て時計回りだよ」
好きな人順とかそういうのは考えないからな。
トラブルの元だ。
誰から始めてもスキルの数が減るわけではないんだし、いいだろ?
ということで納得してもらう。
「まず、姫の一個目、アイテムボックス」
「「「いきなり凄いの来た!?」」」
うん、凄く便利なスキルだ。
俺のインベントリと違って、自動収納はなく、容量に限りがある。
「泰良、なんで姫なの? 私、ライフル銃とか普段から持ち歩くの大変なんだけど。受付で引き出すと周囲から注目浴びるし、銃弾の数も増えてきたし」
ミルクが文句を言うが、これには理由がある。
「いや、姫の場合だと分身がアイテムを集めるとき大変だろ? それに姫がアイテムボックスを覚えたら、たとえば分身Aから本体に、本体から分身Bにアイテムを送ったりもできそうだし、そうしたら四人バラバラに行動するときも重宝しそうだ」
「「「あぁぁぁ」」」
みんな納得した。
「ただ、そういうことならミルクはこのアイテムバッグをやるから、これを使ってくれ」
と俺が持っていたアイテムバッグをミルクにやる。
「ありがとう。泰良からプレゼントもらっちゃった」
「いいなぁ」
羨ましそうにしているが、アヤメのスキル玉の一個目も凄いんだからな
「アヤメの一個目は『時間魔法』だな」
「「「もっとすごいの来たっ!?」」」
「時間に関する魔法を覚えるみたいで、具体的な効果はわからん。ただ、アヤメなら使いこなせるだろ」
アヤメにスキル玉を渡す。
彼女はそれをじっと見て、
「期待に応えられるように頑張ります」
とのこと。
そして、ミルクの一個目だ。
「ミルクのは一個目は、『並列思考』」
「「「普通に凄いの来たっ!」」」
みんな、もうノリで喋ってない?
「なんで私なの?」
「いや、ミルクって銃を使う時同時に二個、三個って魔法を使ってるなら並列思考を使えば銃を撃つ速度も上がるだろ?」
「うん、そういうことなら上手に使いこなしてみるよ。で、泰良の一個目は?」
「俺の一個目は、二刀流だ」
「「「納得」」」
納得された。
まぁ、俺は布都御魂と布都斯魂剣をその場の雰囲気で使い分けているけれど、どっちも凄い剣なことには違いないんだよな。だったら、どっちも使えたら便利だと思った。
「次――戻って姫からだな。不屈」
「不屈って、体力が1割以上ある状態で攻撃を受けて体力が0になったとき、一度だけ体力1で踏みとどまるスキルよね。分身の耐久性が上がるからすっごく便利だわ。むしろアイテムボックスより使いやすいかも」
「それに、姫は一番危ない場所で戦ってるからな。本体が不屈を使うような状態にならないのが一番だが、念のために必要だろ?」
それに、姫の体力っていまいち伸びが低い。
攻撃値と違っていまでも伸び続けているが、それでも攻撃値や防御値の倍が一般的だといわれているのに実際は1.3~1.5倍しかない。
「次、アヤメの二個目は『魔纏壁』。魔力を消費することで防御力を高めることができる。危ないと思ったら迷わず使ってくれ」
「ありがとうございます」
「ミルクの二個目はクイックだ。魔法詠唱のクールタイムが短くなる。アヤメに渡すか迷ったんだが、ミルクは回復の要だからな。任せた」
「うん、ありがとう。これでサポートもしやすくなるよ」
「そして、俺の二個目は基礎格闘術だ」
影獣化したとき、影を伸ばして剣の形にすれば剣術が使えるようになるが、基本は素手で戦う。
格闘術があった方がいい。
「続いて三周目からなんだが、ここからは正直汎用スキルって感じだから、ざっと説明するぞ。姫、『オートマッピング』『ノーブレーキ』。アヤメ、『基礎杖術』『微魔法』。ミルク、『念動力』『射石飲羽』。あと俺は『延長』と『ボス特攻』だ」
オートマッピングは、青木の持つラージマッピングの劣化版。というかこっちが汎用スキルとして一般的。
分身を使って周囲の索敵をする姫にちょうどいいだろう。
ノーブレーキは、俊敏に対するデバフを無効化するスキル。俊敏命の姫にはちょうどいい。
基礎杖術は杖を使って戦うスキル。
微魔法は効果は薄いがしかし数多くの魔法を使える。
念動力はダンポンが使っているアレだ。魔力を使うため、ミルクに渡した。
射石飲羽は弓矢での攻撃力が上がるみたいだ。銃で攻撃力が上がるかは不明。
延長はバフの効果時間を伸ばすことができる。
ボス特攻はボス部屋の魔物に対して三割増しのダメージを与える。
「相変わらず凄いわね。汎用スキルだけでも十分凄いわ。特にノーブレーキは欲しかったのよ」
「はい。微魔法は便利な魔法が多いので、ダンジョンでの生活が楽になります」
「念動力――んー、やっぱりダンジョンの中じゃないと使えないのかな? 重い荷物を運ぶのに便利そうだけど。射石飲羽って中国の故事だっけ?」
汎用スキルについても好評のようだ。
ちゃんと選んだ価値があったな。
「ところで、泰良。スキル玉は全部で二十個あったわよね? 残り四個はどうしたの?」
「水野さんに二個。トゥーナに一個。あとは使い道保留のスキル玉がある。一応あげたい相手はいるんだが、みんなの許可をもらってからと思ってな」
と俺は最後の一個のスキル玉と、それを使うべき人物について説明した。
俺の話を聞くと、みんな納得して受け入れてくれた。
さて、スキルを使ってみんなのステータスの確認をしよう。




