ダンプルSOS
PDでの修行は毎日続いている。
最近、ようやくレベル140に到達した。
梅田ダンジョンも35階層まで到達し、
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壱野泰良:レベル140(ランクC)
換金額:3231685D(ランキング:78〔JPN]909[ALL])
体力:5624/5624
魔力:450/450
攻撃:2352(+235)
防御:2098(+419)
技術:2001
俊敏:2056(+205)
幸運:4911
技能:料理 剣術Ⅱ 集団戦
スキル:PD生成Ⅱ 気配探知 基礎剣術 瞬間調合
詳細鑑定Ⅱ 獄炎魔法 インベントリⅡ 怪力
火魔法 投石 ヒートアップ 基礎槍術
魔法反射 肩代わり トレジャーアップ
妖精の輪 琴瑟相和 水魔法 応用剣術
疾風 常在戦場 ラッキーパンチ 影獣化
対応力 付与魔法 空間魔法 猫の手
エナジードレイン 念話 隠形 財テク
鉄壁
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今のところ、ステータスが伸び悩む様子はない。むしろ幸運値が不気味な程に伸びている。
レベル130で隠形、レベル140で鉄壁スキルを覚えた。
そして、D缶から出たスキル玉で財テクというスキルを覚えた。
隠形は、気配を消して周囲から気付かれにくくなるスキル。
財テクは、魔物がドロップするDコインが運が良ければ2倍になるスキル。
鉄壁スキルは防御値が2割増しになるスキルだ。
アヤメとミルクもレベル130に、姫はレベル135になっている。
アヤメとミルクのステータスもまだ伸びていて、姫は攻撃値以外はいまのところ順調に成長している。
まず、運が良ければ2倍というのは、俺にとっては常に2倍ということと同じ。そして、パーティメンバーが倒した魔物に対してもこの常に2倍が適用される。
これで、一気にDコインの入手量が増え、俺たちのランキングはいよいよベスト100位以内に突入。
さらに世界ランキングも表示されるようになった。
これには世界一位を目指している姫も喜んでいたな。
換金額ランキングが増えても、実際に換金しているわけではない。
手に入れたDコインの大半はダンポンによってエネルギーに変換してもらっている。
エルフの世界を救うためだ。
エルフの世界を救うには、五つの条件がある。
俺がエルフの世界に行くことができる条件について、勇者とは何かについて詳しく知る。
俺一人ではなく、仲間もエルフの世界に行く方法について調べる。
エルフの世界に現れる終末の獣を倒せるだけの力を手に入れる。
エルフの世界で100年過ごしても、地球の時間経過を最小限に留める。
エルフの世界を100年間再生するためのエネルギーを得る。
一つ目、勇者について知るのは姫の父、キングさんとの接触待ち。
二つ目については既に可能性に気付いている。クロは俺の影の中に潜み、一緒についてきた。クロが一緒に来られるのなら、たとえばアヤメのラーニングスキルの腰巾着やそれに似たスキルを使えば一緒に来られるのではないか?
三つ目については現在修行中。
四つ目については、PDの中でエルフの世界の記憶を再生するのはどうかと思っている。
PD内で100年経過した場合、実際は1年しか経過していない。
1年間くらいなら……まぁ、長期出張ということで世間への言い訳も経つ。少なくとも浦島太郎のようにはならない。
そして、一番の問題が100年間、エルフの世界を再生させるためのエネルギーだ。
Dエネルギー缶1本で2時間、エルフの世界の記憶を再生できる。
100年再生させようと思えば、40万本以上。
これは現実的ではない。
俺たちはこれをDコインで賄おうと思った。
Dエネルギー缶1本分と、2億4000万Dは同じエネルギーを持つ。
現在、仲間全員で稼いだ額は1億2000万Dと、いまだにDエネルギー缶一本分にも満たない。
100年分再生させようと思えば、約100兆Dという天文学的なDコインが必要になる。
だが、敵が強ければ強くなるほど敵が落とすDコインの額も増える。
いまはこれだけしか稼げていないが、50階までいけばどれだけDコインを稼げるようになるか。
100階までいけば、200階までいけば、さらに稼げるDコインの額は増えるだろう。
それこそ、一回の探索で何十億D、何百億Dと稼げるようになるかもしれない。
あくまで可能性の話だが、しかしキングさんが異世界に行くためにダンジョンの奥深くに潜り続けているという話を考えると、それが正しいのではないかと思えてくる。
どちらにせよ、強くなるにはダンジョンに深く潜る必要があるからな。
今週納品分のミスリルゴーレムを狩り終え、ダンポンに刃こぼれした魔物解体用包丁の修理を依頼してから家に戻って休憩をしていると青木が遊びに来た。
「おーい、壱野。ちょっといいか?」
「どうした?」
「ダンプルと連絡が取れないんだが、お前、何か知らないか?」
ダンプルと連絡が取れない?
「え? お前、ダンプルと連絡とか取り合ってるのか?」
「お前が紹介したんだろうが!」
ダンプルが日本で流行っている異世界転生や異世界召喚について知りたいっていうから、そういうのに詳しい青木を紹介してやった。
「俺が言っているのは、あの一度切りじゃなくて、いまでも連絡を取り合うくらい仲がいいのかってことだ」
「そういうことか。まぁ、最初は面食らったけど、面白い奴だぞ? だが、最後に変なメッセージを送ってきてから、連絡が取れなくなったんだ」
青木がスマホで見せてくれた画面には何かの文字のようなものが書かれているが、それが何かわからない。
いったいなんだ、これ?
「青木、ちょっとメモさせてもらっていいか?」
「おう。そう言うと思って印刷してきたぞ」
と青木が印刷したメモを俺に渡した。
「ありがとう! 茶を出すから、少し待っててくれ」
俺はそう言って、お茶ではなく魔法の水筒の牛乳をグラスに入れて出して、俺は庭に向かった。
「なんで牛乳なんだ、もらうけど……ってうま! おい、壱野、これどこで買ったんだ!?」
青木の声が聞こえてくるが、応えずにPDの中に入った。
「ダンポン、これ何かわかるか?」
「なんなのです?」
「ダンプルが友だちに渡したメッセージみたいなんだが――」
ダンプルの文字なら、同じダンプルか、もしくはダンポンならわかるだろう。
そう思って尋ねたら正解だったようだ。
「これは……助けを求めるメッセージのようなのです」
「助けを?」
「詳しくはわからないのですが、ダンプルが助けを求めるってきっと本当に大変な事態なのです」
確かにそうだよな。
死にそうな目にあったとしてもダンプルが助けを求めるとは思えない。
生駒山上遊園地攻略で死んで、キングさんに何度も殺されて、それでも平然な顔をしているのだから。
一度ダンジョン学園に行ってみるか。




