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エナジードレイン

 次はミルクのスキルを試す。

 といってもミルクが覚えた無詠唱は魔法名を言う必要がないというだけなので、今日のメインは状態異常を引き起こす石だ。

 魔石を素材に水野さんが作ってくれたその石は猛毒や麻痺などの状態異常を敵に与える。

 一応、俺も投石スキルを使って投げて当てることもできそうだが、

 ミルクが取り出したのはハンドガンだった。


「なんでハンドガンなんだ?」


 いままではライフルだったりバズーカだったりしていたので、威力が落ちている気がする。


「うん。威力を重視して弾速を意識するならいままでのライフル銃の方がよかったんだけど、今回はデバフ特化だから弾速はそこまで必要ないの。それに、銃弾を装填する必要があるから、それならマガジンを挿すだけで使えるようにしたいからね――あ、もちろん私の薬魔法がなかったら銃として全く使い物にならないよ」


 そこは心配していない。

 しかし、これも水野さんが作っているんだよな?

 あの人、本気を出せば改造銃とか普通に作れそうだ。

 といって、ミルクがピンク色の弾倉を挿す。

 

「そこから何が出るんだ?」

「ピンクのマガジンには魅了石が入ってるよ」


 魅了石か。

 確か、魅了の状態異常は、魅了された相手のために行動してしまう洗脳のような状態異常だよな?

 群れの中で使ったらどうなるか?

 俺たちはブロンズゴブリンの群れへと向かった。

 ブロンズゴブリンたちが俺たちに気付いて向かって来る。


 ミルクがハンドガンを撃った

 魅了石が飛んでいき命中すると、直ぐに変化が起きた。

 ブロンズゴブリンの色がやや赤みがかったのだ。

 魅了にかかったというのがまるわかりだ。

 そして、その魅了にかかったブロンズゴブリンは一度動きを止めたかと思うと、突然仲間に攻撃を始めた。

 さらにミルクは次々に魅了石の弾丸を敵に浴びせていく。

 ミルクに魅了されたブロンズゴブリンの数は10。

 対する敵のブロンズゴブリンは100を超えるのだが、なんか凄い勝負になっていた。

 突然の仲間の攻撃に、魅了されていないブロンズゴブリンは反撃をするもどこか本気になれていない様子だ。

 逆に魅了されているブロンズゴブリンは本気で仲間を殺しにかかっている。


「…………怖いね、洗脳って」


 元凶のミルクが一番引いていた。


「魅了石ってどのくらいの確率で効果があるんだ? 100%効果が発動しているような気がするが」

「試してみないとわからないけど、魅了系の状態異常を引き起こす攻撃をした場合の状態異常発現率は敵によって違うみたい。ゴブリン系は100%効果があるんだって」

「へぇ、どういう基準なんだろうな。知能が高いか低いかとか?」


 いや、でもゴブリンは知能が低いわけではない。

 だったら、人間に近い姿かどうか?


「……が…………ぃ」


 ミルクがぼそぼそと言った。

 いったいなんて言ったんだ?


「悪い、聞こえなかった。もう一度言ってくれ」

「……性欲が強い敵の方が効果があるみたい」

「え? あぁ、そうなの……か?」


 確かにゴブリンは性欲強いイメージだわ。

 ブロンズゴブリン――機械で作られた金属の塊なのに性欲強いのか。

 それは意外だった。


「あ、あと魅了された魔物が仲間の魔物を倒した場合、魅了状態にした人が経験値を貰えるみたいだから安心して」


 そこは別になんとも思っていない。


「これ、ミルクに忠誠を誓ってるんだよな? 俺たちが近付いても平気なのか?」

「うん。私の仲間はちゃんと仲間だって思ってくれるよ」

「そうか――」

「ただ、制限時間があるから、泰良が仲間だと思って背中を任せても、魅了の効果が切れた途端に背後からバッサリってことになりかねないから気を付けてね」


 そっか、魅了は制限時間があるのか。

 と暫く待っていると、さっきまで赤くなっていたブロンズゴブリンの色が元に戻った。

 どうやら効果が切れたらしい。

 魅了の効果が切れて呆然としているところに、仲間のブロンズゴブリンから攻撃を受けて息絶えた――金属なので息はしていないけれど。

 その後、猛毒、麻痺、鈍重と次々に状態異常を引き起こしていく。

 全部試したところで、



 最後に、ミルクは状態異常の玉を自分に当てた。

 もちろん、彼女は八尺瓊勾玉を装備しているので状態異常は無効化している。

 そして、禍福倚伏の効果でステータスがアップした。


「うーん、全体的に四割上がっている感じかな? 幸運値が上がらないのは残念だけど」


 ミルクが手を閉じたり広げたりして自分の力を確かめる。

 そして、右手を前に出して炎を帯びた岩を敵に打ち出した。

 あれは炎石魔法の隕石落下(メテオフォール)だ。

 滅多に使わない魔法だが、前より威力が上がっている気がする。


 魔法は基本威力が変わらないが、禍福倚伏では魔法の威力まで上がるのか。

 便利だなと思ったら、必ずしもそうではないらしい。


「この状態だと銃が使えないかも」

「どうしてだ?」

「真衣の銃の耐久テストは私の魔法の威力に合わせて行ってるから、この状態での耐久テストは行ってないの。というか、たぶん耐えられないと思う」


 火薬の火力が上がれば銃が暴発する危険性もあるってことか。

 それを確認したところで、ミルクはトレジャーボックスNから出てきた下級の状態回復薬を飲んで状態異常を治療した。


「さて、最後は俺だな」

「クロ、準備はいいな」


 影の中にいるクロに声を掛ける。

 声は聞こえないが、意識は伝わって来る。

 問題なさそうだ。

 影獣化を使い、全身に影を纏う。


「さて、行くとするか」


 といっても、ブロンズゴブリンの数もだいぶ減っていた。

 ブロンズゴブリンは一定数生産をすると生産がストップしてしまうからな。


 さっきからスキルや魔道具の実験のたびに倒し続けて、その間にブロンズゴブリンの群れが目前に迫ったらアヤメが雷神(ゴッドサンダー)竜巻(トルネード)で一掃していたので仕方がないか。

 

「さて、行ってくる」


 まず、一番手前のブロンズゴブリンを殴る。

 殴りつけた一瞬、なんか力が漲った気がした。

 だが、その漲った力がすぐに漏れてしまう。

 体力が最大値だからそれ以上上がらないってことか。

 吸収したエネルギーを溜め込み過ぎて体が破裂する、ド〇ゴンボールのヤ〇ンのようなことにはならないってことか。少し安心した。

 さて、次はブロンズゴブリンに殴られてみる。

 あんまり痛くない。

 逆に俺を殴ったゴブリンの方が、まるで静電気を帯びたドアノブに触れたときの俺みたいに手を引っ込めている。

 ステータスを確認するが、体力が全く減っていない。

 たぶん、殴られて減った体力より、吸収した体力の方が上回っているのだろう。


 剣を持っていたブロンズゴブリンに斬られてみた。

 今度は少し痛かった。

 俺の防御値を考えるとこんなものか。

 剣で斬ったブロンズゴブリンに変化はない。

 武器で俺を攻撃した場合はエナジードレインは発動しないと。

 減った体力は近くのゴブリンを殴って回復させる。

 エナジードレイン、乱戦だと最高に使えるな。

 これだったらシルバーゴブリン相手に戦った場合、受けるダメージより回復量が上回り、永遠に戦えるぞ。

 とマザーブロンズゴブリンと目が合った。


 俺はニッコリと笑いかける。

 

 マザーブロンズゴブリンが後ずさった。


 さて、俺は紳士だからな。

 真っすぐマザーブロンズゴブリンの方に歩いていく。

 殴ってきた敵はエナジードレインで自滅し、剣を使って攻撃して来る奴だけ反撃して倒す。

 でも、面倒になったので――


「解放:短距離転移(ショートワープ)


 空間魔法の熟練度を上げて使えるようになった短距離の転移魔法を使ってマザーブロンズゴブリンの正面に転移した。

 マザーブロンズゴブリンは突然の俺の出現に驚くも、直ぐに殴りかかって来る。

 だが、俺はその拳を受け止めてその腕を掴んだ。

 エナジードレインの痛みはかなりのものらしく、マザーブロンズゴブリンは俺を引きはがそうとするが、俺は離さない。


「さて、あとはエナジードレインの威力を確かめないといけないな。あの世へのエスコートをさせていただきます、お嬢様」


 マザーブロンズゴブリンは恐怖に顔を歪ませて俺を殴ってくるが、全然痛くない。

 というか、やっぱり体力の回復速度が上回っている。

 マザーブロンズゴブリンが助けを求める声を上げるも、既に俺たちとブロンズゴブリンの間には姫が分身とともに割って入って、殲滅行動を始めていた。


 マザーブロンズゴブリンは34秒後に倒れ、ドロップアイテムを残して消えたのだった。

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― 新着の感想 ―
生物じゃないのにゴブリンだからって性欲強いことにされるなんてブロンズさんかわいそう ダンジョンとかスキルが物理法則を大きく塗り替えるから情報大事だな
こわっw
[一言] 執事いちのくん見たい…見たくない?
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