EPO法人研修会
その日の夜。
俺たちはダンジョン局主催のEPO法人向け研修会に参加することとなった。
水野さんは秘密兵器でありダンジョンに入らないので不参加だ。
参加は強制ではないが推奨する――というなんとも半強制みたいな文言の研修会なので参加者は多い。
研修会そのものは東京の本部で行われているのだが、リモート形式で各支部からの参加も認められており、俺たち天下無双のメンバーも大阪支部の研修会場からの参加となっている。
尚、妃さんたちと旧ホワイトキーパーのメンバーは東京本部の研修会に参加している。
研修会は東京の局長の挨拶から始まり、国内の探索状況、ダンジョン学園施設のEPO法人の正会員の利用方法、新しく開発された魔道具についての情報共有などがあり、中には世間に出回っていない情報もあったため非常にタメになると思った。
中には捕獲玉についての話もあり、当事者である俺は少し苦笑した。
次に上半期におけるダンジョン内での死亡事故についての報告。
今年の上半期の死者数だけでも昨年度を大きく上回っていた。
その原因は各地で同時に発生した魔物の異常行動――特に石舞台ダンジョンでの事故が大きく影響していると語られた。
ミルクの表情が沈む。
彼女はずっと後悔している。
あの時自分がしっかり皆を誘導できていればもっと多くの人が助かったのではないかと。
だが、あの時はあれ以上のことはできなかったと俺は何度もミルク言って聞かせていた。
そして、日下遊園地跡ダンジョンの一般公開について。
日付が九月一日に決まった。
ただ、日下遊園地という地名があまり知られていないことから、石切ダンジョンと名前が変わる事になった。
生駒山ダンジョン、日下ダンジョン、東大阪ダンジョンなど様々な案があったそうだが、結局、最寄り駅の名前が付けられる形になったわけか。
事前に受け取った資料の内容はこのくらいか。
資料と一緒に貰ったサ〇ガリアのお茶を飲みながら時計を見る。
研修の予定終了時間より30分ほど早い。
ところどころ資料の細かい情報を飛ばしたため、予定より早くなったのだろうか?
『次に、こちらは昨日急に決まったため、資料に添付できなかった情報になります』
と前置きをして、次の説明が始まった。
『各都道府県及び自治体から、EPO法人の有用性に対する疑問にお答えするため、各EPO法人の貢献値の透明化事業――通称「EPO法人見える化」を実施することが決まり、最初に当局が設定していた貢献値を公開することにいたします』
ダンジョン局の管轄は防衛省で、EPO法人の管轄は各都道府県や政令指定都市になっているのだが、そのEPO法人を取りまとめているのがダンジョン局という複雑な構造になっているため、各自治体とダンジョン局の間で様々な話し合いが行われているらしい。
忘れていたが、EPO法人は始まって一年目の制度だから、いろいろと問題も抱えているのだろう。
『具体例として、こちらが貢献値上位五社となります。尚、貢献値の計算方法は皆様に依頼している仕事や当局にお寄せいただいた情報、ダンジョンアイテム、魔道具などから当局独自に経済効果を考慮した数値になっています』
と言って、その上位五つの法人の名前がモニターに映った。
1:讃岐造(27,655,421)
2:トヨハツ探索(9,875,642)
3:天下無双(6,675,288)
4:ダンジョンシーカーギルド(5,862,667)
5:月見里研究所(5,575,670)
讃岐造は俺でも聞いたことがある。日本一のEPO法人で、竹内さんのいるEPO法人だ。貢献値も2位と比べるとダブルスコアで圧勝状態。
トヨハツ探索は魔石で動く魔導エンジンの開発のために日本の自動車企業の何社かが共同出資した会社。
ダンジョンシーカーはソロ、もしくは少数のダンジョンパーティがオフ会で集まって、「なんか俺等相性よくね? 一緒に組んだら最強じゃね?」っていう独自のノリで立ち上げ、いまでもゲーム感覚でダンジョンに潜っている一団だという。
あ、ちょうどモニター向こうで盛り上がっている声が聞こえるが、そいつらがダンジョンシーカーギルドだろう。
しれっと月見里研究所が入っているが、一番の驚きは俺たちが三位に入っていることだ。
『――と魔石の新たな使い道の研究結果により、近年落ち込みつつある魔石の需要低下に歯止めをかける成果を出しております。続いて、三番目の天下無双ですが、こちらは先ほども紹介いたしました捕獲玉と魔石融合機の開発、当局の人材育成に欠かせなくなった打ち出の小槌の貸与を加味した上、当局に寄せられていた達成不可依頼をいくつも達成したことからこの貢献値となっております。続きましてダンジョンシーカーギルドは新人探索者の育成及び――』
と説明が続く。
たぶん、さっきの説明の他、チーム救世主としての活動の貢献値が大きいと思うが、それ抜きにしてもうちって結構凄いことやってるな。
貢献値に応じて、EPO法人の認可の取り下げ処分も自治体によって検討される恐れがあるとのことらしいが、これなら安泰だろう。
そう思っていた。
その日、天下無双がネットで大炎上した。
【天下無双は金の力で認可を受けているインチキギルド】
すみません、今まで暇だったのに、急に仕事がいろいろと来まして――
少し更新頻度が落ちると思います(1日1話の日が続きます)
ご了承ください




