少女の思惑#side???
#side ???
京都府内にあるとある屋敷の一室で、一人の少女が情報を集めていた。
万博公園のダンジョンに現れたイビルオーガを倒した探索者の情報だ。
十八歳くらいの男女の姿が目撃されている。一人は緑髪の覚醒者の女性で、もう一人は黒髪の男性。
最初はその女性がイビルオーガを倒したのだと思った。
そして今度は石舞台のダンジョンにレベル以上の魔物が現れたのだ。
逃げ遅れた者からは多くの犠牲者が出て、生き残ったのは救助に来た牧野牛蔵の娘だけだった。
魔物は全て牛蔵によって倒されたということになっているが、魔物の中にはバイトウルフもいたという。
嗅覚の優れたバイトウルフが牛蔵が駆け付けるまでの長時間、少女を見逃すだろうか?
もう一つ彼女が気になったのは、牛蔵に贈呈されることにしていたはずの押野グループのVIPカードの名義がその助手の名前に書き換えられたことだ。
彼女は牧野牛蔵と一緒に出てきた助手の少年が予めダンジョンにいてバイトウルフを倒したのではないかと疑った。
幸い、少年の名前はコネを使い直ぐに調べることができたため、彼について徹底的に調べさせた。
「少年の調査をしたところ二点、ヒットしました」
付き人の明石が早速調査結果を伝えに来た。
「少年は事件当日の石舞台のダンジョンで午後から牧野氏のお嬢様と一緒にダンジョンに潜る予定になっておりました」
「午後から? 初心者講習には参加していないの?」
「はい。宿泊者名簿にも名前に登録はないため事前にダンジョンの中に入っていたとは思えません。」
だとしたら、牛蔵が入るまでの間、完全に封鎖されている。ダンジョンに隠れているのは難しい。
当てが外れたかと思った。
「それともう一つ、グループ内のダンジョンショップにて鑑定の依頼を出しています。その鑑定した場所が万博公園――そして、鑑定した日が――」
「イビルオーガが現れた日じゃないっ!?」
関係ないと思われた二つの事柄が一つに繋がった。
「そうなると話が変わって来るわ。イビルオーガもバイトウルフも彼が倒したのかもしれない」
「どちらも偶然巻き込まれたのだとしたら非常に運の悪い少年ですね」
「いいえ、最高に運がいい少年よ! なにしろこの私、押野姫の目に留まったのだから!」
彼女はそう言って明石に再度調査をするように言って、彼女が持ってきた資料に目を落として宣言する。
「絶対に私の仲間にしてみせるから、待ってなさい! 壱野泰良!」
書籍化用に書き下ろしたけど没にしたエピソードをしれっと割り込み投稿にしています