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淡路島ダンジョン(その2)

 ダンジョンに入る前に待合室の受付で棍棒を受け取る。

 さすがに青木の前で布都斯魂剣とか使う気にはならないし、玉ねぎ坊主ならこれで十分だろう。


「青木の武器は?」

「俺はこれだ!」


 青木が取り出したのは――


「バールのようなもの?」


 二本のバールのようなものだった。


「いや、正真正銘のバールだって。最近見たアニメで、バールを武器として戦う主人公がカッコよくてな! これなら銃刀法に引っかかる事もないから所有申請の必要もないし普段から持ち歩ける。ダンジョン産だから高かったぞ」

「普段から持ち歩いていることがバレたら警察の職務質問は間違いなさそうだけどな」


 鑑定してみたら、本当にバールだった。特別な効果もなにもない、正真正銘のバールだ。

 ダンジョンからバールとか出てくるのか。

 

「それにしても嬉しいな。また壱野と一緒にダンジョンに潜れるなんて」

「ん? 言ったらいつでも一緒に潜ったぞ」

「いや、お前も別のパーティ組んでるしな。そもそも最初に一緒に探索家になろうって約束を反故にした俺が割り込むのも格好がつかないだろ?」


 そんなことを考えていたのか?

 たった一日で探索者になる道を諦めたのはどうかと思うが、あのスライム待ちが面倒になる気持ちはわかるのでな。


「馬に蹴られて死ぬのは御免だ」


 と青木があっけらかんとした口調で笑って言った。

 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ……ってやつか?


「ミルクとのことを言ってるのか?」

「なんだ、わかったか?」


 正直、数カ月前の俺だったら何を言っているかわからなかっただろう。


「ていうことは牧野と付き合ってるのか? お前も好きだっただろ?」

「まぁ、一応……」

 

 そっちもバレバレか。


「だったら、お前は牧野の方を優先してやれって。あいつ、ずっとお前のことが好きだったんだし。俺の相手は空いた時間で十分だよ」

「京都のダンジョンでミルクと約束してたって言ってたけど、あれは?」

「お前は気にすることじゃないよ。お前と付き合うためにあれこれ策をめぐらせてただけだ」


 そうなのか?

 なんか家の周りを散歩したりゲームセンターに様子を見にいったりしていたのは聞いていたが。

 そんなに策をめぐらせるくらいなら、家に直接遊びに来てくれたらよかったのに。

 母さんも歓迎したと思うんだが。


 考えていたところで、俺たちの番になった。

 一階層でスライム湧き待ちをしている冒険者の横を通り過ぎて二階層に案内された。

 二階層を二人で一緒に回ると伝えたので、区分けの説明は省略された。


 係員は一階層に続く階段のところで待機。

 俺と青木は二階層を進む。


 さて分かれ道だ。T字路だ。

 魔物がいるのは右の方だな。

 と思ったら青木が右に行った。

 正解。

 次は左――と思ったら青木が左に行く。

 またも正解。


「しっかし、なんでダンジョンってこう区画整理されてるかな? 天然の洞窟とか坑道とかって、もっとくねくねしてるだろ? でも、ダンジョンにはそんなものがない。通路だって一定の幅があるし、どこの設計士が作ったんだって思うよな」

「それ、俺も聞いたな。ダンポンが管理しやすいからだって言ってたぞ」

「そうなのか?」

「ああ。通路が曲がりくねって、通路の幅が狭かったり広かったりしたら、ダンジョンの魔物もそれに合わせないといけなくなる。それが面倒だって」


 ダンポンが言ってた。

 なんともわかりやすい話だ。

 ポ〇モン不思議なダンジョンの影響だって言われるよりもマシな理由でもある。


「狭い穴の中に魔物がつっかえていたら笑えるよな。ダンジョン配信で撮影して万バズ間違いない」


 といくつかある部屋の中の一つに青木が入ろうとする。

 そこに魔物の気配がする。


「さっきから迷いなく進んでるが、魔物のいる場所がわかるのか?」

「いや? ただ、お前がそっちに進もうとしてるのがわかったからそっちに行ってるだけだぞ?」

「俺が行こうとしてるから?」

「まぁな。誘ったのはこっちだし」


 気を遣わせてたのか。


「おっ! 玉ねぎ坊主発見!」


 青木が言う通り、部屋の中には二匹の玉ねぎ坊主がいた。

 ひょろひょろの植物の茎のような胴体に、玉ねぎの頭の変な魔物だ。


「気を付けろよ――玉ねぎの汁を飛ばしてくる。当たったら――」


 と青木が言うと同時に玉ねぎ坊主が玉ねぎの汁を飛ばしてきた。

 途端に――


「あぁ……ああああぁっ! 目がぁぁ! 目がぁぁぁぁあっ!!」


 青木が目を押さえてのたうち回る。

 いや、絶対そこまで痛くないだろ。


「一応撮影中だぞ?」

「あ、そうだった」


 さすがに恥ずかしいのか、立ち上がる。目が少し赤い。

 痛いのは本当なのだろう。


 と玉ねぎ坊主が俺の方にも玉ねぎ汁を飛ばしてくるが、棍棒でそれを防ぐ。


「そっちは頼んだ!」

「おう、任せろ!」


 スキル:必中剣――って発動しない?

 やっぱり棍棒だと剣術は使えないのか。

 俺は片方の玉ねぎ坊主を棍棒で叩き潰す。


 うん、剣術は必要なさそうだな。


 青木は――玉ねぎ坊主を倒したあとのたうち回っていた。

 叩き潰したときに目に玉ねぎの汁がまた入ったのか。


 とりあえず、落ちている玉ねぎとDコインを拾う。


「大丈夫か?」

「ああ、名誉の負傷ってやつだ」


 青木が目から涙を流してDコインを拾う。

 絶対、不名誉だよ。



 その後も俺たちは玉ねぎ坊主を倒していった。

 青木は玉ねぎを3個、俺は玉ねぎを10個手に入れた。

 そして――


 金色に光る玉ねぎがあった。


【黄金の玉ねぎ:とても美味しい玉ねぎ。ダイエットにも効果があり1個食べると1キロ痩せる】


 ダイエット効果がある……もしかして、黄金の玉ねぎを依頼に出している理由って、痩せ薬代わりに募集してたのか?


「凄いな……黄金の玉ねぎって超激レアアイテムだ」


 青木が言う。

 うん、それは知ってる。


「壱野の棍棒の扱いも凄かったし、その幸運値――お前ってもしかして」


 と青木は一人の名前を告げた。


「ベータ――」


 あぁ、バレたか。

 まぁ、そりゃ気付くよな。

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― 新着の感想 ―
ネタ率高めでおもろ
[良い点] まさか伝説のホテルニューあわじ
[良い点] 青木が気付くわけないでしょ!
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