VS.西条while琴瑟相和
琴瑟相和を使ったら身体が軽くなるのを感じた。
ステータス2倍の恩恵を受けた。
さらに――
ヒートアップを使って攻撃値アップのバフを受け、
「解放:火付与」
「解放:風の速足」
「解放:狂戦士の心構え」
剣に火属性を纏わせ、さらにアヤメとミルクが補助魔法を使う。
風の速足は俊敏が高くなる補助魔法。
そして、狂戦士の心構えは自身を狂戦士状態にする最近覚えた火魔法だ。
狂戦士になると全てのスキルが使えなくなってしまう代わりに、攻撃値が大幅に上昇する。
「ここで狂戦士になりますか。確かに狂戦士になると攻撃値は大幅に増えますが、それでも私はスキル無しで勝てるほど甘くありませんよ」
「やってみないとわからないだろ」
俺は西条と距離を詰める。
琴瑟相和の効果が続くのは三分間。
その間に決着を付ける。
「では、これならどうだ?」
ホワイトに雷が落ちた。
俺が火魔法を付与したように、西条はホワイトに雷を帯びさせたようだ。
西条が雷を帯びたホワイトの剣で俺に攻撃をしてくる。
俺は自分の剣で弾く。
一瞬手がビリっときた。
なるほど、雷属性を帯びた剣で撃ち合いは危険なのか。
だが、対応力のお陰で雷耐性を得たのでもう痛みはない。
西条の攻撃が大振りになった。
このタイミングだっ!
「斬絶華」
俺は応用剣術の中でも一番の威力のスキルを放った。
俺は全身に返り血を浴びながら、西条の腹に差した剣を抜く。
「なっ……んでスキルが使える!?」
西条が俺を睨みつけながら言う。
スキルが使えるのは八尺瓊勾玉のお陰だ。
八尺瓊勾玉の効果は状態異常の無効化とさっきは説明したが、正しくは状態異常の悪い効果の無効化だ。
だから、狂戦士としての攻撃値増加はそのままに、スキルを封じる悪い効果だけを無効化できる。
そして――
「解放:火の矢!」
ミルクが魔法を放った。
小さな火の矢が俺の無防備な背中に当たる。
火鼠の外套のお陰でダメージはほとんどない。
「なにを――」
「なに、ただのフレンドリーファイアーだよっ!」
対応力で火属性に対する耐性が身に付いた。
このおかげで、これまで接近戦では一度も使うことができなかった大技を使うことができる。
「解放:地獄の業火っ!」
最大火力の地獄の業火が俺と西条を呑み込んだ。
火属性の抵抗力を持つ俺でも、かなり熱い。
体力が削られていくのを感じる。
でも、これなら西条を倒せる――
ゾワリ――
炎の中で西条が動くのを感じた。
これでも倒しきれないとか――
マズイ、もう三分経過する。
とその時、炎の中で動くもう一つの陰が。
ホワイトだ。
さっきまで剣の形をしていたホワイトがドラゴンの形になる。
俺は最後の力を振り絞り、
「疾風怒刀」
さっきまでホワイトドラゴンが化けていた西条の右腕を斬り落とした。
西条の腕から血が溢れ出て倒れる。
大丈夫だ。
西条が目を覚ましても利き腕を失っているいまなら後れを取ったりはしない。
「ふぅ……勝った」
「泰良っ! 凄い火傷っ! 解放:超回復薬の雨」
ミルクの魔法で俺の体力を回復させてくれる。
助かった。
「さすがにヤバかった。死ぬかと思ったよ」
「もう、言われた通りやったけど無茶し過ぎだよ」
仕方ないだろ。無茶をしないと勝てない相手だったんだ。
ホワイトキーパーの残党は捕縛済みか。
さすが姫だ。
うまいことやってくれたな。
「泰良様っ!」
トゥーナが叫ぶ。
振り返ると、ホワイトが襲い掛かってきた。
俺は咄嗟にミルクを突き飛ばす。
ホワイトの身体がドラゴンから大きな布のような形になり、俺を呑み込もうとした。
やっぱりこいつはスライムなのかっ!?
「解放:スライムデス!」
アヤメがスライムにだけ効果のある即死魔法を使ったが、ホワイトは止まらない。
俺は剣を振ってホワイトに攻撃をするも、ホワイトは剣に纏わりつき俺にもへばりついてきた。
そして――その意識が俺の中に入ってくる。
『次ノ宿主ハオ前ダ』




