ホワイトかブラックか
「さっきから気になってたんだけど、その魚篭も魔道具なんだよね?」
「ああ。恵比寿の魚篭っていうアイテムでな、魚とかいろいろと入れることができる。逆に普通の道具は入れることができないし、何かが中に入っているとインベントリに入れることもできないんだ」
まぁ、使い分けはできるな。
「他には何があったの?」
「えっと、手に入れたのはこれだな」
俺は瓶を取り出す。
「スライム酒(金)――金のスライムを倒したら手に入った」
「やっぱり倒したんだ。それで、何匹倒したの?」
「十匹倒した」
俺はそう言って、スライム酒(金)を10本並べる。
「お陰で、レベル97に上がったよ」
若干みんなが引いてる気がする。
「随分と差をつけられたわね」
「他には何があったんですか?」
アヤメが尋ねる。
「手に入れたアイテムはこれだけだよ」
「宝箱、11個しかなかったんですか?」
「いや、みんなと同じで40個あったぞ」
俺がそう言うと、みんな不思議そうに首を傾げる。
まぁ、種明かしの時間だな。
「いやな、実はこの恵比寿の魚篭って、魚しか入らないのかなって思ったら、詳細鑑定によると無力化した魔物を入れることもできるらしい。ダンジョンの外には持ち出せないみたいだが」
と俺は魚篭をひっくり返して、底をトントンと叩く。
すると出てくる出てくる、合計29匹の金色スライムが出てきた。
「ということで持ってきた。三人で倒してくれ」
「泰良が一人でレベルアップするものだと思ったけど、いいの?」
「もちろんだ。21階層に潜ってわかったが、これから先は一人だけ強くなっても攻略は難しいだろうし」
1匹出たら3匹は魚篭に入れ、また1匹倒して3匹魚篭に入れるを繰り返した。
「じゃあ、三人の中で一番レベルの高い私が9匹で、ミルクとアヤメは10匹でいいかしら?」
「そうだな」
姫は分身を使って、今後も効率よくレベルを上げられるからな。
「そういえば、昔も泰良からこうやってお米貰ったっけ?」
「ん? そうだっけ?」
「そうだよ。泰良、お米十キロ当てて、持って帰るのが面倒だから二人で分けようって言い出してさ」
全然覚えてない。
俺の記憶だと当たったのは五キロだったが。
たぶん、ミルクにお裾分けしたというより、一人で十キロ持って帰るのが面倒だったから半分ミルクに押し付けたんだと思う。
「私たちって壱野さんの運の恩恵で強くなってますよね」
アヤメが言う。
たぶん、大魔術師の装備シリーズのことを言っているのだろう。
「確かにね。ギリギリ姫は自分の力で強くなってるかな?」
ミルクが姫を見て言った。
分身スキルはD缶のお陰で手に入れたけれど。
「私は努力してるからね。といってもPDが無かったらここまで強くなれてないわよ」
うん、PDは本当にチートだ。
ということで、レベル上げの時間だ。
みんな、躊躇なく無抵抗の金色スライムを倒していく。
スライム酒は一本も出なかった。
どうやら確定ドロップではないようだ。
俺はその間に自分のステータスを確認する。
――――――――――――――――――
壱野泰良:レベル97(ランクF)
換金額:896811D(ランキング:899〔JPN])
体力:3420/3420
魔力:350/350
攻撃:1705(+170)
防御:1556
技術:1459
俊敏:1508(+150)
幸運:2819
技能:料理 剣術
スキル:PD生成Ⅱ 気配探知 基礎剣術 簡易調合
詳細鑑定 獄炎魔法 インベントリ 怪力
火魔法 投石 ヒートアップ 基礎槍術
魔法反射 肩代わり トレジャーアップ
妖精の輪 琴瑟相和 水魔法 応用剣術
疾風 常在戦場 ラッキーパンチ 影獣化
対応力 付与魔法
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付与魔法ってスキルが生えていた。
火付与という火属性を付与できる魔法が使えるようになってるっぽい。
それにしても、ステータスもだいぶ賑やかになってきたな。
トゥーナのクエストを達成して、冒険者ランクや技能が表示されるようになった。
ミルクと姫はまだ技能を手に入れていないけど、アヤメは早口って技能を獲得していた。
魔法の発動が早くなるって喜んでいたな。
「ちゃんとレベルが上がったよ。レベル93になってる」
「私はレベル93ですね。レベル90になったときに魔力回復ってスキルを覚えましたよ」
「私はレベル100までお預けね。レベル100だと高確率でレアスキルを覚えるらしいから楽しみね」
ミルクとアヤメはレベル93になったな。
姫はレベル95になっているはずだ。
中々楽しいお宝ダンジョンだったな。
「皆さん、お宝集めは終わったのですね? 楽しかったですか?」
ダンポンが奥の部屋から現れて言った。
「あぁ、楽しかったよ」
俺は言った。
その前にはゲーム機が浮かんでいる。
ゲームボーイではない――なんとディー〇スだった。
3ディー〇スじゃないのがダンポンらしい。
「それ、なんのゲームしてるの?」
ミルクが尋ねる。
聞くまでもないだろう。
いや、聞くまではあるか。
ブラックかホワイトか、どちらかわからないもんな。
まぁ、ダンポンだし、ホワイトだと思うけれど。
「ド〇クエ9ですれ違い通信待ちなのです」
「ポ〇モンじゃねぇのかよっ!」
今日一番の声が出た。
すれ違い通信、たぶん無理だと思うぞ。




