質問コーナー
ちょっと休憩回です
リスナーからの質問については答えられないけれど、自由に考察してくださいって言ったら、ガチめの考察がいろいろと集まってきた。
アヤメの能力はラーニングによるものだろうという意見が出ていた。
ラーニングはユニークスキルではなく激レアスキルで数例確認されているって言っていたから、わかる人にはわかるのだろう。
そして、階段を降りる。
いつもなら真っすぐ下りれば次の階層に辿り着くんだが、今回は途中に踊り場があってそこを直角に曲がる。
さらに降りるとまだ踊り場があって曲がる。
「この階段、少し長くないか?」
どこまで続くんだ?
まさか、無限階段ってわけじゃないよな?
「21階層からがダンジョンの本番だって言われているからね。雰囲気作りじゃないかしら?」
「降りた分だけ登らないといけないのが面倒ですね」
アヤメが少し辟易した様子で言う。
「その点は大丈夫よ。21階層には転移陣があって、それを使えば1階層に戻れるから」
「そうなのか? 一階層のどこに通じてるんだ?」
てんしばダンジョンにそんな転移陣があった記憶がない。
「受付の裏よ。一度でも利用したら受付で通行証が貰えるから、その次からはわざわざ深く潜った分だけ登る必要はないわ。もっとも、そのダンジョン限定だけどね」
知らなかった。
そういう情報ってどこで手に入れるんだろ?
ダンジョンの教本みたいなものがあるのだろうか?
「本当に長いね。ちょっと休憩にしようか」
ミルクの提案に俺は頷いた。
そういえば昼飯まだ食べてなかったな。
「食事休憩なので、配信一度止めます。再開は三十分後の予定です」
戦っているところを見られるのはよくても、食事しているところはあまり見られたくないっていうのがうちの女性チーム全員の意見なので、食事中は配信を止めることになっている。
さっそく俺は鞄の中から昼飯を取り出した。
「泰良、今日はパンなんだ」
「ああ。母さんが手作りでカレーパンを大量に作って家に余ってるんだよ。皆も食べるか?」
「うん、せっかくだからもらうね」
「私もいただきます」
「ありがとう。カレーパンって手作りできるのね」
カレーパンだ。
魔法の水筒から出てくる絶品カレーは我が家でも人気で、特に母さんがカレーを使った料理を開発できないかと模索した結果、このカレーパンに辿り着いた。
姫の言う通り、カレーパンは手作りするものって感覚がないから驚いたが、これが結構美味しいんだよな。
「東大阪市ってカレーパンで街おこしするって言ってたけど、実際のところあまり広まってないよな」
「そうですね。あ、でもカレーパンなら桐陽高校の近くに美味しいお店がありますよ。スペイン石窯を使っているパン屋さんで――」
「知ってる! 国道沿いのパン屋さんだよね! 家とは反対方向だけど、たまに買いにいくよ」
「へぇ、国道沿いなら今度四人で行ってみましょうか」
とまったり雑談ムードになってしまった。
カレーパン一個で足りるはずもない。
特にミルクとアヤメは魔法を使っているから猶更だ。魔力を消費するとお腹が空くからな。
てことで、その後はアヤメとミルクが作ってくれたお弁当を食べる。
そして――配信の時間になったが、動く気にはならない。
なので、姫の提案で配信再開から三十分は質問タイムにすることにした。
質問タイムは、リスナーからの質問にNG無しで答えるダンジョン配信者恒例のコーナーだ。
とはいえ、その質問を選ぶのはダンジョン映像編集者――つまり身内なのでガチNGの質問は絶対に飛んでこない。
俺等の場合、恋愛に関する質問などは来ないだろう。
〔はじめての質問タイムだ〕
〔最初はどんな質問が採用されるだろう?〕
〔サポーター:憧れている探索者は誰ですか?〕
割とシンプルな質問だな。
「私はもちろん、キング・キャンベルね。私たちが世界一の探索者になるまでは彼に世界一でいて欲しいわ」
姫が答えた。これはわかりきっていたな。
〔アルファちゃんの勝ち気な姿勢マジすこ!〕
〔キングって行方不明だったっけ?〕
〔あの人は潜る時は数カ月単位でダンジョンに潜るからいつものこと〕
「俺は牧野牛蔵さんです。彼が探索者になる前から憧れています」
「私も牛蔵さんです」
俺とミルクは言った。
〔牛蔵、いいね! マスコミ対応もいい〕
〔現在ニューヨークで療養中。元気になってほしい〕
〔意外だな。ベータのこれまでの戦闘スタイルだったら剣鬼か剣聖をあげるとおもってた〕
ごめん、剣鬼と剣聖が誰かわからない。
竹内さんかな?
「私はおばあちゃんと壱野さんです」
アヤメがいう。
〔身内憧れはいいけど、ベータって惚気か?〕
〔随分と若いお婆ちゃんだな〕
〔ベータもげろ〕
〔あの強さを身近で見て憧れない女子はいないと思う〕
俺のことはともかく、アヤメのお婆ちゃん、呪いのスペシャリストだって聞いてたけど、探索者でもあったんだ。
そりゃ尊敬するだろうな。
「はい、次の質問ね」
〔サポーター:以前の生駒山上遊園地で天狗がドロップしたヤツデの葉ってどんなアイテムだったの?〕
その質問に、リスナーたちが沸いた。
そういえば説明していなかったっけ。
俺は鞄を開けて、そこから取り出すフリをしてインベントリからヤツデの葉を取り出す。
「これのことか?」
と配信クリスタルを持っている姫の方に向けて尋ねる。
〔そう、それ!〕
〔天狗の魔物の情報はないから、そのアイテムも世界で唯一のアイテムのはず〕
〔何ができるの?〕
〔質問採用されたってことは教えてくれるの? 機密事項だって思ってた〕
別に機密でもなんでもない。
もっと変なアイテムとかいっぱい持ってるからな。
「葉っぱって書いてるけど、かなり頑丈で普通の剣なら受け止められる。うちわのようにして仰ぐと凄い強風が巻き起こる」
と軽く仰いでみると、強風が巻き上がった。
〔芭蕉扇みたい〕
「確かに芭蕉扇みたいだな。鍋敷きに使ってばっちぃから捨てることにする」
〔ワンタンの汁こぼすなよ!〕
このリスナーとのやり取り少し楽しい。
さらに説明を追加する。
「さらに剣を振るうように振り下ろすと風の刃のようなものが起きる。ただし、天狗が使っていたような威力はなくて、せいぜいオーガを一撃で倒せるくらい。誰が使っても同じ威力になるし、魔力を消費しないのは便利かもしれないけど」
〔スゲー武器だった〕
〔億単位の金が動きそう〕
〔さば〇のつえより強い〕
〔億単位の金ポンと出せる探索者は必要なさそう〕
〔上位探索者にとっては使えないアイテムなのはその通りだな〕
〔そこは威力固定武器の定め〕
そうなんだよな。
俺たちが使わないのも、今の俺たちなら全員オーガの上位種のレッドオーガやイビルオーガくらいなら、これに頼らずに一撃で倒すことができる。
「次が最後の質問ですね」
〔サポーター:政府配信から企業配信になったのに、投げ銭を設定してないのはなんで?〕
あぁ、投げ銭したいって言ってるリスナーが一定数いたな。
俺からしたら、無料でいいって言ってるのになんでお金を投げたいのか意味がわからないが、ダンジョン配信でそういうのを楽しみにしている人がいるのは知っている。
これにはアヤメが説明する。
「一番の理由は、投げ銭の有無でリスナーを区別しないためです。あと、いまは楽に戦えていますがこれから深い階層にいって強い魔物と戦うと、一回の戦闘に30分とかかかる場合もあるかもしれません。その結果、10分や20分の投げ銭による固定メッセージを見逃すトラブルも発生するかもしれないので、リスク回避ですね」
〔トップ攻略者の配信はそういう考えで投げ銭を貰ってない人結構いる〕
〔俺貧乏だから助かる〕
〔投げ銭したいけど、理由があるのなら仕方がない。文字だけ送る。【100円】〕
「私が投げ銭断ってる一番の理由はこっちは命がけで配信して投げ銭貰っても、その四割以上が手数料で消えるのがムカつくことなのよね。今度、私たちのグッズ販売をするから、お金を払って応援したいって人はそのグッズを買って応援して。販売サイトのURLは今から表示するから」
〔サポーター:http:www:〇〇〇.co.jp〕
〔宣伝で草〕
〔四割? 手数料って三割じゃなかったっけ?〕
〔公式グッズできたのかっ!?〕
〔配信サービスの手数料は三割だけど、アプリ内課金だからそっちの手数料もかかってる〕
〔アクリルスタンド全員分買った〕
〔ダークベータのフィギュア化希望!〕
〔ガチで企業とコラボ商品あるじゃないか。もうTCG出てるの?〕
〔四割取られるくらいならグッズ買って欲しいって気持ちわかる。でも投げ銭もしたい〕
〔待て、ダークベータが公式名になったら流石に怒られそうだから名前考えとけ〕
〔ダークベータで検索しても別キャラ表示されるぞ〕
〔じゃあ、ダークモールで〕
〔TCG買った! デルタちゃん出ますように〕
〔TCGの中身全部アルファだと予想〕
〔それはそれで一人分身の術ごっこできるな〕
これはグッズの売り上げも好調そうだな。
本日6月21日
『成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです』
のコミカライズ23巻が発売されます。
〔宣伝で草〕




