表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/409

VS.猿神

 俺たちはその後危なげなく地下深くに潜っていく。

 そして、20階層より下にはそもそも安全マージンがないので、さらに下に行くこともできる。

 20階層のボス部屋の扉の前で姫が配信クリスタルを取り出した。

 これから配信を始める。


「こんにちは!」


 姫が挨拶すると同時に同接数が伸びていき1580まで増えた。

 と同時にコメントが一気に壁に表示されていく。


〔待ってた!〕

〔日本の救世主の初配信、伝説の幕開け!〕

〔こんにちは〕

〔既に伝説になってる〕

〔こんにちは〕

〔これ、どこのダンジョン?〕

〔チームメシア公式になってる〕

〔生駒山上遊園地のダンジョンを壊してくれてありがとうございました〕

〔生駒在住だからマジ助かった。感謝です〕


 これでもほんの一部。

 明石さんが送って来るコメントを選んでいるはずなので、本当はもっと多いだろう。


「みんな、コメントありがとう。はい、なんかチームメシアが世間に浸透していたのでそのまま使わせてもらいました。個人名はこれまで通り、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタでやっていきます」


 姫が紹介し、俺もよろしくお願いしますと頭を下げた。

 そして俺が引き継ぎ説明。


「ここはあるダンジョンの20階層です。これから初めて20階層のボスに挑戦し、そのまま21階層に突入します」


 予め用意していた台本通りの台詞を述べる。


〔20階層に来られるのってレベル95からだっけ?〕

〔どこのダンジョンだろ、これ〕

〔黒のダンジョンクリアしたチームメシアなら余裕〕

〔国から許可を貰ってたら80以上で行ける〕

〔最強鈴山が大台ヶ原ダンジョンの20階層をレベル95でソロクリアしてた〕

〔最強鈴山は最強だから〕


 最強鈴山って誰だ?

 ボス部屋の扉を開けて中に入っていく。


 PDのボス部屋とあんまり変わらないな。

 その中央にいた魔物は犬神ではなく、巨大な猿だった。

 猿というよりは茶色い毛のゴリラみたいな感じだが。


〔猿神だ〕

〔日光のダンジョンかな?〕

〔ちょっと日光に行ってくる〕

〔配信者の出待ちはマナー違反〕


 リスナーさん、マジで日光に行ったのかな?

 そこに俺たちはいないから止めてあげたいけれど、マナー違反だっていうのなら自業自得か。


 猿神の周囲に蒼い炎が二つ灯った。

 あの炎は猿神の周囲に展開し、俺たちが近付けば襲い掛かって来る。

 さらに、猿神の残り体力が半分になったらその炎が五つになって後衛にも攻撃してくる。

 水魔法を使えば消し去ることもできるらしいが、消したところで何度でも炎を出してくる。

 結構厄介な敵のスキルだ。

 魔法ではないので、魔法反射も使えない。

 作戦通りいくぞ。


「アヤメっ!」

「はい! 養蚕守護っ!」


 アヤメが養蚕守護のスキルを使うと、その分身を生み出すはずの炎が一瞬で消えた。

 獣系の能力の一部を封じるスキルだ。

 この時のために覚えてもらったんだが、効果は抜群だな。

 

 と思ったら猿が怒って突撃してきた。


注目の的(アテンションプリーズ)


 姫が猿神の注意を自分に集めて走る。

 猿神が姫に気を取られ方向転換をするべく速度を緩めたその時、


「解放:火薬精製クリエイトガンパウダー、解放:熱石散弾雨(シャープネルレイン)

 

 石の弾が天井で跳ね返ると同時に弾け、散弾の雨となって降り注いだ。


「GWAAAAAAA」


 猿神が雄たけびを上げる。

 かなり痛そうだが、傷は浅い。

 と思ったら


「分身っ! 朧突き!」


 姫の分身たちが風魔のクナイを投げて、猿神の傷口に突き刺さっていく。


 と俺の出番だ。


 影獣化スキルを発動させる。

 これについてはリスナーに隠すつもりはない。

 デメリットがアイテムを使えなくなるというだけなので21階層以降ではバンバン使っていく予定だからだ。

 それに、姫が言うにはグッズ化しやすそうだからここぞというときは是非使ってほしいらしい。

 俺のフィギュアが開発される日も近そうだ。


 影が俺の身体にまとわりついて鎧となる。

 そして俺は猿神(瀕死)に接近戦を挑んだ。

 猿神は俺の接近に気付き、蒼い炎を生み出すが、養蚕守護の効果により直ぐに消えてしまう。


風の速足(ウィンドウォーク)


 アヤメからいつも姫が掛けて貰っている風の補助魔法が飛んできた。

 俊敏値がさらに上がる。

 猿神が両腕を振り上げ、指を組んでまるでハンマーのように大きく振り下ろしてくる。

 本来ならば強烈な一撃。

 だが、俺はそれを左手一本で受け止めた。


「――俺の力試しに、お前では役不足だっ!」


 俺はそう言うと空いている右手で猿神の顎を殴った。

 まるで黒ひげ危機一髪かのように猿神の頭部が飛んでいき、なんか高そうな棒――如意棒かと思ったが、猿神の棍棒という武器らしい――とDコインを落として消滅した。


「よし、完全勝利だな。みんな、お疲れ様」


 と俺は影獣化を解除する。


「最後の凄かったね。泰良一人で倒せたんじゃない?」

「はい、壱野さんカッコよかったです。ダークヒーローって感じですね」


 いやぁ、さすがに俺一人なら一撃では倒せなかったと思う。

 みんながダメージを与えてくれていたお陰だ。

 

「お疲れ様……思ったより余裕だったわね。年内にクリアできればいいって思ってたのにもう20階層突破できるんだ」


 戦っている間にいっぱいコメントが来てるな。

 改めて読んでみる。


〔猿神の炎に気を付けて!〕

〔赤い火より青い火の方が高熱だから、当たると火傷するよ〕

〔火傷程度で済むのか?〕

〔って炎が消えた〕

〔養蚕守護って、魔物の技だよね? なんでガンマさん使えるの?〕

〔猿神炎消されて意気消沈〕

〔(ノω·`猿)ショボーン〕

〔養蚕守護:獣系の魔物の効果を無効化する。ちなみに人間にも有効。猫人形のスキル〕

〔ガンマちゃんは猫娘だったっ!?〕

〔……猫娘ガンマちゃん……いい!〕

〔猿ショボンからの激怒! 気を付けて、そいつ攻撃値も高いから〕

〔本当は強いぞ猿神!〕

〔チームメシアの戦い見てきた俺からしたら全部前振りだと思う。ほら〕

〔銃弾降り注いだ! 跳弾からの散弾ってどうなってるんっ!?〕

〔うわ、傷口を的確に抉るクナイえぐ〕

〔……えぐってえぐい〕

〔寒いっ!〕

〔ベータ変身したっ!〕

〔なに、これ、黒っ!〕

〔変身スキルってそんなのあるの!?〕

〔装備の中には一瞬で装着できる早着替えという能力を持つユニーク装備が存在する。恐らくベータ氏はその装備を着用したものと思われる〕

〔影みたいなのが纏わりついて変身しなかった?〕

〔ダークベータ……シュコー、シュコー〕

〔明らかに装備じゃない〕

〔私はお前の父親だ〕

〔I国の探索者に霊化っていう幽霊状態になって戦う探索者がいたから、変身スキルもあるんじゃない?〕

〔だとしてもユニークスキルだろ? このチーム全員ユニークスキル持ち?〕

〔ガンマはユニークスキル持ってない〕

〔養蚕守護使ってただろ〕

〔魔物のスキルはユニークスキルじゃない〕

〔顎クイからの首ドンっ!? サポートさん、ナイスモザイク!〕

〔もうすぐグロ指定BANされるところだった〕

〔おつかれさま〕

〔20階層クリアおめでとう〕

〔猿神も乙〕

〔……まるでユニークスキルのバーゲンセールだな……〕

〔あの顎クイされたら、全ての女はイチコロだな(物理的に)〕

〔役不足は誤用。力不足とか荷が重いで〕

〔変身解除した。やっぱり装備じゃなかったみたい〕

〔ベータ、そのスキルの説明kwsk〕

〔ガンマちゃんのスキルもkwsk〕

〔ベータさん、その変身してるときって剣で戦わないんですか?〕


 あ、ド〇ゴンボールネタが混じってた。

 最近見始めた俺としては少し嬉しい。

 霊化ってスキルあるのか。

 アヤメのラーニングでゴーストのスキルコピーできるようになったら似たようなことできないかな?

 と、戦いが終わったら言うコメントがあるんだった。


「リスナーの皆様、応援ありがとうございました。では、これから21階層に向かいます」


〔コメント、無視された?〕

〔ベータが台本重視なだけ〕


 スキルの正体はバレてないが、俺の台詞が台本だっていうのはバレてるようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運の初期値が異常に高かった高校生が、缶詰ガチャで手に入れたスキルを使って現代ダンジョンで最強になる物語、漫画公開中!
詳細はこちら
漫画
― 新着の感想 ―
「――俺の力試しに、お前では役不足だっ!」 役不足じゃ無くて役者不足か力不足が適切かとって思ってたら作中で指摘されてて草
変身したら道具持てないし物理干渉無効かと思ったけど、猿パン受け止めたということは装備ができなくなるだけか 変身中は装備品が全解除されてるのかな? 武器が持てないだけ?
Vの人として外装被ってるから変身しても分からないのでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ