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影獣化

 鑑定結果を踏まえて、改めて手の中にある勾玉を見る。

 言われてみれば普通の勾玉より品があるというか美しいというか、どこか神秘的な輝きがある気がしないでもない気がする。

 素晴らしいアイテムだ。

 さすがは日本の宝だ(レプリカだけど)。


「泰良、その様子だと――」

「三種の神器の一つ、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)らしい。本物じゃなくてレプリカだけどな」

「ダンジョンで見つかったり鍛冶で作られる伝説の道具は全部レプリカよ」


 そう言えば俺が持ってる布都御魂と布都斯魂剣もレプリカだったっけ。


「まさか、三種の神器の一つが見つかるとはね。今のところダンジョン内で発見された三種の神器のレプリカは宮内庁が保有する草薙の剣だけだったのに」

「へぇ……ちなみに、本物の草薙の剣ってどこにあるんだ?」

「本物の草薙の剣は名古屋の熱田神宮にあるわね。もっとも、壇之浦に沈んだとも言われているけど」

「三種の神器は八咫鏡(やたのかがみ)・草薙剣こと天叢雲剣あまのむらくものつるぎ・八尺瓊勾玉だね。それぞれ、知力、武勇、慈悲を表すって言われてるの」

「慈悲……だから、状態異常の悪い効果を打ち消す効果があるのか」


 ミルクの言葉に何か納得した。


「悪い効果だけを打ち消すって、例えば毒状態になってもダメージを受けないってことはわかるけど、勾玉を外したら毒のダメージを受けるの?」

「詳細鑑定してみたが、どうもそうじゃないらしい。毒状態になるときにこの勾玉を装備していると、体力の減らない、苦しくならない――そういう毒状態になるんだ。だから勾玉を外してもその状態が変わるわけではない。そのため、既に発症している状態異常は無効化できないらしい。ちなみに、補助魔法でも効果はある。例えば光属性の被ダメージは減るが闇属性の被ダメージは増える補助魔法を受けた場合、光属性の被ダメージ軽減だけが適用される感じだ」

「本当に状態異常無効化がかわいくみえるぶっ壊れ性能ね。そしてミルク向けの装備だわ」


 姫が言う。

 それには俺も同意だ。

 理由は三つ。


 一つ目。

 ミルクは幸運値が低い。状態異常を引き起こす魔物の魔法やブレスの中には幸運値が低いほど効果を受けやすいものが多くある。その不運から身を護ることができる。

 二つ目。

 ミルクは回復役だ。仲間全員が麻痺したり毒状態になって動けなくなってもミルクが動ければ薬魔法で治療できるかもしれない。

 三つ目。

 ミルクのスキル、禍福倚伏の効果だ。

 このスキルは状態異常になったときにステータスを上昇させる効果がある。状態異常の悪い効果だけを打ち消すという八尺瓊勾玉の効果は、つまりはミルクが状態異常になったとき、その状態異常のデメリットを全て無効化した上で禍福倚伏の効果だけを享受することができるという意味となる。

 毒や麻痺、呪いが全てミルクの力になるわけだ。


「私もミルクちゃんに装備してほしいかな?」

「ありがとう、アヤメ。でもいいの? アヤメも後衛職だから状態異常受けやすいけど」

「うん。そんな高そうなもの、ずっと装備してたら心臓に悪そうだから」


 アヤメの庶民的な意見には俺も全面的に同意した。


「ただ、この勾玉はあまり他人には見せない方がいいよな?」

「うん。上松のおじさまが言っていたことを思い出すと、三種の神器はレプリカでも個人で持ってほしくないみたいだし。一応服の中に隠しておくよ」


 ミルクはそう言うと、以前上松大臣から貰った装備品のネックレスの宝石部分を勾玉に付け替えて服の中に入れた。

 現在の勾玉の位置が少し気になった。


   ※ ※ ※


 話し合いも終わり、ホテルからてんしばダンジョンに移動する。

 人がいる浅い階層から十三階層くらいまで一気に降りて行った。

 かなり久しぶりだが、地図もあるし、魔物も弱いのでスムーズに移動できる。

 そこで、さっそく新しく覚えたスキルを使ってみる。


「みんな、少し離れていてくれ」


 俺はそう言ってみんなと距離を取るとスキルを発動させる。


「影獣化っ!」


 スキルが発動した次の瞬間、黒い鎧のようなものが全身を覆った。

 獣というよりはまるで戦隊ヒーローのブラックのようだ。


「泰良、大丈夫?」


 ミルクが尋ねる。


「問題ない。呼吸も普通にできるし、なんか体に力が漲ってる感じがする。ちょっと試してみるよ」


 ちょうどいいところに魔物の気配がした。

 豚の魔物、オークの上位種であるレッドオークがいた。

 俺は脚に力を込める。

 おぉ、超加速! 姫ほどじゃないけれど、俊敏値が大幅に上がってる。

 レッドオークの腹を殴ろうと拳を前に突き出す。

 吹き飛べっ! って感じで力を込めたら、吹き飛んだのはレッドオークではなく、俺の拳に集まった力だった。

 黒い衝撃波となってレッドオークの腹へと飛んでいき、その腹を貫通する。

 腹に空洞ができたレッドオークはそのまま息絶えた。

 剣に纏わせれば、飛ぶ剣戟とかできるのだろうか?


「次は剣で戦って――ってあれ?」

「どうしたの?」 

「腰に差してたはずの剣がない。それに、インベントリからアイテムを取り出せなくなってる」


 落としたわけじゃないよな?

 影獣化を解除する。

 すると、ちゃんと腰の剣が元に戻っていた。


「なるほど、影獣化している間はアイテムを一切使えなくなるのか」

「そんな感じですね。あれで武器まで使えたら強すぎます」


 アヤメの言う通りだ。

 これは俺のとっておきだな。

 一度解除するとクールタイムが発生して直ぐには再使用できないらしい。


 その後の検証でいろいろとわかった。

 影獣化のクールタイムは5分。

 影獣化は一時間以上連続で使っても問題なかった。

 他人から渡された道具であっても使えない。持とうとしても落としてしまう。

 ヒートアップなどの補助スキルが使える。

 そして、魔法を使ったとき、闇属性が上乗せされる。


 火の魔法を使ったとき、黒い炎が出たのには驚いた。


「面白いスキルだな。変身ヒーローっぽい」


 これで配信したら人気出るんじゃないか?

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― 新着の感想 ―
 影獣化時専用装備とか有ると面白そう。
物理無効とかついてたりしないかな
[気になる点] 拳から貫く石で衝撃波がでたってことは口からも意思を込めれば光線とかが出せる……?
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