激レア缶のお宝
【魔法の缶切り:どのようなD缶でも一度だけ開けることができる】
アーミーナイフみたいな大きな金色のナイフだった。
だが、鑑定結果を見ると、これは間違いなく魔法の缶切りだ。
これで激レア缶を開けることができる。
かなり豪快な開け方になるだろう。
しかも三本もある。
激レア缶三つを開けることができる。
「しかし、これで本当にこれでよかったんですか? 別のアイテムも用意しようと思えばできましたのに。確かにオークションでは過去に何度か1000万以上の値がついていますが、これは私ともう一人の男が競り合った結果で、正直1000万の価値はないと思いますよ」
「え? 西条さんがオークションで競り落としたんですか?」
「二匹目のドジョウを狙って……もしももう一つドラゴンの卵が見つかって、今度は雄が生まれたらこのホワイトと番になって繁殖できるんじゃないかっていう淡い期待もあったんですよ。結果は空振りですね」
そりゃ、そう簡単には開かないよな。
「D缶のせいで全財産の9割を失いましてね……いやぁ、恥ずかしい。妻にも怒られてしまい、D缶は全て処分したんですが、この魔法の缶切りだけは処分しきれなくてね……心残りだったのでしょう」
「それは残念でしたね」
「ええ、残念ですよ。僕の幸運値が足りなかったってのもあるんでしょう……もしかして、幸運値の尖端異常者である君なら別の結果になるんですかね?」
「―――(ゾワ)っ!?」
悪寒が背中を走り抜けた。
一瞬、西条さんの気配が変わった。
その一瞬に、俺は動けなくなったのだ。
それはスキルによるものではない。
圧倒的な力の差による恐怖。
俺は強くなったと思っていた。
思い上がっていたと言ってもいい。
牛蔵さんに勝てる日も近いって思っていた。
だが、これがトップランク探索者の実力か。
「怖がらせてしまいましたね。ちょっと嫉妬したんですよ。私はレベル300だけどレベル200で幸運値が102になってからは全く増えなかったが、どうも君はそうではないらしい」
と彼は笑顔で言うと、先ほどまでの威圧が嘘のように消えて無くなる。
俺の幸運値は世間一般では100に満たないことになっているが、彼はその嘘を見抜いたのか?
さすがに四桁とまでは気付かれていないと思うが。
「そうそう、私がドラゴン使いだってことは黙っていてください。私だってあなたたちがチームメシアだということは黙っていますので」
「え……えぇ、もちろん」
俺のコメカミのあたりから生まれた一滴の汗が頬を伝って流れていくのを感じた。
その後、細かい捕獲玉のモニターとしての仕事の説明や契約を交わす。
姫はこの後、一緒に食事でもどうかと西条さんを誘ったのだが、彼はこれからニ〇テンドーワールドとポ〇モンセンターに行くからとその誘いを断った。
なんとも自由な人だ。
そして、彼は帰って行った。
それが終わって俺はソファに仰向けに倒れ込む。
すかさず姫が俺の倒れ込む方向に先回りして、膝枕状態になった。
応接室の中の様子は外からは見えないので別にいいかと思う。
「どうだった?」
「あぁ、思い上がってた。あれがトップランクか」
「いずれ私たちが通る道よ」
目標じゃなく通過点だと姫は言った。
世界一を目指す彼女にとっては本当にそうなんだろうな。
「魔法の缶切り三本――ちょうど激レア缶の数と同じか」
「どうする? 早速開けてみる?」
「いや、全員揃ってからでいいだろ……」
ミルクもアヤメも結構楽しみにしている。
「にしても姫は凄いな。あんな人といつも話してるのか」
姫の膝の上から彼女の顔を見上げて言う。
俺は姫に甘え過ぎていたな。
「惚れ直したかしら?」
「ずっと惚れたままだよ」
「ふふっ、ありがとう。でも、あんな人滅多にないわよ。役所や企業のおじさん連中は最初からこっちを舐めてかかってくるからむしろ手玉に取りやすいしね」
俺にはそっちの方が難しそうだな。
「ところで姫……西条さんに威圧使わせたのお前だろ?」
さすがにあのタイミングでキレたのはわかりやす過ぎた。
俺にトップランカーの実力を安全にわからせるために。
こういう機会じゃないとその身に感じることなんてできないものな。
俺のズバリの推理に、
「面白い推理ね、探偵くん。小説家にでもなったらどうかしら?」
と犯人が言う定番の台詞とともに笑って返した。
※ ※ ※
土曜日。
俺たちは天王寺のホテルの姫の部屋に集合した。
ここに集まるのは久しぶりだ。
てんしばのダンジョンに潜る前に、激レア缶の開封をする。
激レア缶は三本。
魔法の缶切りも三本
俺たちは四人。
一人分足りない。
誰が開封するか揉めるかと思ったら、
「泰良が全部開けた方がいいと思う」
「はい。壱野さんが開けるべきです」
「そうね、泰良が三つとも開けなさい」
え?
てっきりみんな自分が開けたいって言うかと思ったんだが、何故か俺一人で開ける流れに。
「壱野さんの幸運値で中身が変化するかもしれませんし」
アヤメが言った。
じゃあ、俺が開けるか。
「…………開ける前に神社にお参りでもいくか?」
あべのハルカスの前に小さい神社があったはずだ。
確か、あそこもお稲荷さんが奉られていたはずだし、ミコトの加護とかありそうだが――
「そういうのはいいから」
とミルクに急かされる。
ええい、男は度胸だ。
俺は金色のナイフを手に取った。
「泰良! しっかり!」
「あぁ、わかってる! 一千万の缶切り、使わせてもらうぜ!」
俺はそう言って激レア缶を魔法の缶切りで突く。
そして、激レア缶の上面を丸く切っていく。
缶が開いたとき、魔法の缶切りは消えてしまっていた。
四人で中を覗く。
「紙? また魔道具のレシピなの?」
「紙だけじゃなくて鍵も入っていますよ?」
「泰良、鑑定をお願い」
当たりかハズレかわからないな。
俺は鑑定をした。
【お宝ダンジョンの地図――お宝ダンジョンの場所が記されている地図】
【お宝ダンジョンの鍵――お宝ダンジョンに入るために必要な鍵】
……お宝ダンジョン?
さらに詳細鑑定をしてみると、お宝ダンジョンは地図を持っている人にしか入り口が見えず、鍵を使うことでその使用者のパーティ全員で中に入ることができる。
また、地図の場所は入手場所の100キロメートル以内の地上のどこかが表示されるらしい。
「お宝ダンジョンって知ってるか?」
「いいえ、聞いたことないわね……ここから周辺100キロってどこまでかしら?」
「えっと……」
アヤメがスマホで調べてみる。
「ここで開けたら南は和歌山県の田辺、北は京都の舞鶴、東は三重県の松阪や津までで、西は淡路島までですね」
「関西が丸々入ってる感じか」
「三重県は近畿地方であっても関西地方ではないけどね」
ミルクに訂正される
近畿と関西って違うのか? 知らなかった。
でも、100キロで助かった。
ここで宝の地図を手に入れて、場所がエベレストの頂上とかだったら困った。
「個人の家の中とかだったら困るんだけど。地上にしか現れないっていうのなら、周辺は海しかない無人島に移動してD缶を開いたほうがよかったわね」
「結果論だな……じゃあ地図を開けてみるか」
地図を開ける。
問題はその地図の場所がすぐにわかるかどうかだ。
山の中の地図で、周辺に目印となるものが何も記されていなかったら、その場所を特定することができない。
頼む、どうかわかりやすい場所であるように。
山の中ではなかった。
県道31号線沿い。何県だ?
目印となるのは多賀の浜海水浴場という地名のみ。
こういう時にスマホは便利だな。
調べたら直ぐに特定できた。
淡路島の海水浴場らしい。
遠浅の美しい海と播磨灘に沈む夕日がとても綺麗な場所らしい。
「明日早速行ってみるか?」
ここなら日帰りで行くことも可能だろう。
「待って。8月まで待って! 最近ちょっと食べ過ぎて」
「新しい水着を用意しないといけませんね」
おーい、遊びに行くんじゃないぞ。
姫からもなんか言ってやれ――と彼女を見ると、
「…………」
何故か姫は窓の外を見て物思いにふけっていた。
登場人物紹介などを含めて100話目です。
ここまでお付き合いありがとうございました。




