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求)魔法の缶切り 出)捕獲玉

【廃世界:かつてエルフたちが過ごした世界の成れの果て】


 なんだこれ?

 詳細鑑定してもこれ以上の情報が出てこない。


「わぁ、綺麗ですね」

「地球じゃないよね。大陸の配置が全然違うし」

「異世界の置物かしら?」


 鑑定結果がわからないミルクたちが無邪気にガラスの容器を見て、さらにミルクは手を伸ばそうとする。


「ミルク、触るなっ!」

「え? 触ったらダメなの?」

「いや、わからないがヤバイ。これはアイテム……なのか?」

 

 俺は廃世界を見て言う。

 滅んだ世界とは思えないほどに美しいそのアイテムを。


「滅んだ世界の残滓……その欠片なのですよ。滅んだあと、世界の崩壊の後、力の奔流とともにダンジョンの中に流れてD缶の中に入ってしまったのです」

「滅んだって……なんで?」


 ダンポンはダンジョンを資源を生み出す場所と考えている。

 ダンプルはダンジョンを戦いの場所だと考えている。

 だから危ないのはダンプルで、ダンポンはそれを阻止していた。

 ここまでは理解している。

 それに世界の存亡は関係なかった。せいぜい、魔物が地上に溢れて人類の文明が駆逐されるくらいだ――ってそれは俺たちにとっては滅びるのと同じようなものだが――世界がこんなスノードームみたいな状態になるなんて聞いていない。

 そして、なんでそんなものがD缶から出てくるんだ?


「ダンプルのせい?」


 姫が尋ねる。


「ダンプルの仕業ではないのです。もちろん僕が悪いわけでもないのです……それ以上は話せないのです。ただ、900万人のエルフを含むこの世界の動植物は滅び、こういう形になってしまったのです」


 それがこの廃世界か。

 ダンジョンを一つ破壊したことで、破壊された世界が出てくるってなんじゃそりゃって感じの話だ。


「泰良がダンジョン奥深くまで潜ることができたら、その時答えに辿り着くかもしれないのです」

「本当なのか?」


 ダンポンは頷いた。

 ダンプルも言っていた。

 俺たちにダンジョンの奥へ向かえと。

 

「ダンポン、これはどうしたらいいんだ?」

「どうもできないのです。僕が預かっていてもいいし、タイラがインベントリに保管していてもいいのです……ただ、壊したり見世物にするのはやめてほしいのです」

「……じゃあ預かっていてくれ」


 世界を預かるのは怖すぎる。


「それと、これだけは答えてくれ…………地球もこんな風に滅びたりしないよな?」

「大丈夫なのです。心配ないのですよ」

「そっか」


 俺はそう言ってD缶のデータベース化に戻った。

 ダンポンを無条件に信じているわけではない。

 だが、俺には……俺たちには情報が無さすぎる。

 トップランカーの牛蔵さんはどこまで知っているのだろうか? 上松大臣は? 竹内さんは? キングは?

 なんか一気に疲れたな。

 話の話題を変えようとし、そう言えば聞いておかなければいけないことがあることを思い出した。


「あぁ、そうだ。ダンポンに言い忘れてたんだが、魔物を預かるサービスってやってるのか?」

「やってるのですが、クロは預からないのです。あの子はもうダンジョンから独立した存在なのです」

「いや、クロじゃないよ。今度捕獲玉って魔物をテイムするアイテムの生産が始まるから、確認をな」

「捕獲玉を造れる人が出てきたのですか!? これは忙しくなるのです。仲間にも連絡しておくのです」


 ダンポンはそう言うと、自分のパソコンを取り出して仕事を始めた。

 俺たちも作業を続ける。

 廃世界については極力語らないようになっていた。


 そして、かなりの時間を費やし、D缶のデータベース化は終わった。


「やっぱり気になるのはレア缶と激レア缶だよね。レア缶が8個、激レア缶が3個あったよ」


 ミルクが言う。

 それは俺も前から気になっていた。

 どう考えても当たり確定缶だもんな。

 ソシャゲで言えば、虹色の宝箱とかオーブとかそういう感じだ。


「開封には魔法の缶切りを使うらしいが、オークションサイトを見てても数年出てないんだよな」

「一個1000万円以上してたよね」

「D缶の中身なんて、ほとんど1000万もしないんだけどな……」


 なんでそんなに珍しいのか。


「そりゃそうよ。魔法の缶切りは深い階層の宝箱からしか出てこないけれど、そういう階層に行く探索者って基本Dコインと魔石の換金で生活できるから、魔道具の類はあまり現金化しないのよね。特にEPO法人化するまでは現金化したら税金が圧し掛かってきて大変だったから」


 大きい買い物をするときに売って現金にすることはあるけれど、そのくらいだと。


「現金化しないって、自分で使うのか?」

「いいえ、交換トレードよ。メタルスライムを覚えてる?」

「ああ、あの雑魚な」

「普通は強いのよ。倒そうと思ったら金属を溶かす酸という特別な道具がいる。そんな感じで二十階層以降の攻略には特別な道具が必要なことが多いから、トップランクで深い階層に挑む探索者たちはそういうアイテムを交換して自分たちに有利なように戦ってるの」


 トレードか……考えてもいなかったが、実際牛蔵さんはいろんなアイテムを倉庫に溜め込んでいる。

 俺たちだって、ドロップアイテムの大半はインベントリの中か、この一階層に置きっぱなしだ(ダンポンに怒られている)。


「魔法の缶切りと物々交換できるもの……か。トップランカーが欲しがるもので俺たちが持っているものってあるか?」


 身代わりの腕輪とか経験値薬とかは必要ないだろう。

 天狗と戦ってわかったが、強敵と戦うとき、あの腕輪は一時しのぎにしかならないし、相手が本気で殺しにかかってきていたら腕輪を再装備するときに決定的な隙が生まれる。

 英雄の霊薬……は取っておきたい。


「あら、それならあるじゃない。ここに」

「どこに?」


 俺が尋ねると、姫は捕獲玉を取り出した。

 あぁ、そういうこと。



 次の日、ダンジョン局から正式に捕獲玉に関する発表が行われ、日本、いや世界中が大きな騒ぎとなった。

 俺はベッドに寝そべりながら掲示板をチェックする。


――――――――――――――――――――――――――


【ダンジョン総合892】


279:名無しの探索者

 >>276

 それはナタデココ味

 魚スライムを釣るのはパンナコッタ味


280:名無しの探索者

 ダンジョン局から新種の魔道具販売情報来た

 タマタマが販売される


281:名無しの探索者

 下ネタ乙


282:名無しの探索者

 確認してきた

 捕獲玉っていう魔物をテイムできる魔道具の販売だってさ


283:名無しの探索者

 モンスターバトルして虫取り少年から小遣い巻き上げる世界線に来たのか?

 

284:名無しの探索者

 ~ダンジョン局からのお知らせ~

 国内の魔道具技師が新たに捕獲玉という魔道具の開発に成功しました。

 この魔道具を魔物に食べさせることで、これまでは不可能とされていた魔物のテイムが可能となる消費魔道具です。

 この商品は今年度中に販売開始予定ですが、アイテムの性能のデータ収集のために、若干名様にモニター先行販売を行います。

 詳しくはこちら(※別ページが開きます)をご覧ください。


285:名無しの探索者

 >>284

 コピペナイス


286:名無しの探索者

 確率はどのくらいだろう? まものの餌レベルか超しもふり肉レベルか


287:名無しの探索者

 玉って言ってるんだから、桃太郎印のきびだんごだろ


288:名無しの探索者

 モニター価格でも高いな

 1000万円で二個って


289:名無しの探索者

 1000万免除で魔法の缶切りでも可能、むしろそっち優先

 魔法の缶切りってなに?


290:名無しの探索者

 モニター募集は終了しました


291:名無しの探索者

 早っ!? まだ五分経ってねぇぞ

――――――――――――――――――――――――――


 え? もう決まったの?

ローファン四半期ランキング1位になりました!

これも皆様のお陰です

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漫画
― 新着の感想 ―
元々テイム缶はこっち経由で開かせるの想定してたんだろうな、運営 10年経つまでテイムカテゴリが稼働しなかったのをマシュマロはどう思ってたのだろうか
[良い点] 早くて草なのだ
[気になる点] ダンポンとダンプルの名前は、どっちがどっちだっけ?と一瞬止まっちゃいます。 ダンジョンの「ダン」部分はしょうがないとしても、せめて文字数を変えるなどして視認性を良くして欲しかったです。…
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