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俺は氷塊の上に出現していた。
瞬間移動作戦は大成功のようだ。
「よっしゃー! いやさっむうううううううう!!」
俺は思わず凍てついてしまった。
やばい、核弾頭の熱には対応してたけど寒さについては考えてなかった。
俺は寒さを対策できるようなシールドを張った。
うまくいって、寒くなくなった。
「きたな。でもそうか、意外と核弾頭も飲み込まれてしまうのか」
氷塊はかなり炸裂していたり、ボロボロになってたりした。
ところどころが水に還って湖のようになっていたりする。おそらくここらでもしっかり核弾頭は着弾したのだろう。しかし流石に自然界の熾烈さの方が勝ったということか。キノコ雲なども特にあるわけでなく、核が着弾したと言われなければ気づかないほどには修復されていた。流石大自然、つよいなー。
「こんな訳の分からないところまで着弾してるなら、もうほぼ世界中着弾してるといっても過言じゃないんじゃないか? もうこの極寒地帯だけで証明されたようなものだろ」
しかし一応とばかりに何度かワープを重ねてみる。
何回かワープしたところは全て焼け野原になっていた。やはり確実に核弾頭は世界を蹂躙してしまっている。
「これじゃ生き残りは流石にいないか……? いや、でも万が一うち漏らしとかがあるかもしれないしな……もうここまで来たら人間が全滅してるかどうか気になってきてしまうな。どうしたらいいものか」
俺はとにかく核の発射しまくりパレードの結果を知りたくて仕方がなくなっていた。でも全世界を見て回るのはやはり骨が折れる行為だ。隅々までというのは非現実的すぎることに変わりない。
「うーん、なにかいい手は……あ、そうだ! 人間を探してみればいいんじゃないか!?」
別に歩き回って人間を探さずとも、人間を探してそこに行き着けばいい。
ああ、なんでこんなことを思いつかなかったんだろう。
この作戦のほうが核弾頭がどれだけの範囲に及んでいるのかわかりやすいじゃないか。俺のばかちん。
「でも果たして成功するのかな……そういう魔法を唱えてみればいいのかな」
俺はとてつもない不安にかられた。
成功すれば何も問題ないわけだが、この世界の人間がもし仮に全滅してしまっていたとしたら、成功したかどうかの判別がつかないのではないか。それが一番ダルいパターンだと思っていたが、そんな考えは杞憂に終わった。
「おお、反応がある! え、これ全部そうなの……?」
俺は脳内に浮かぶ地図に記された反応の多さに思わずビビってしまう。
魔法はどうやら成功した。
どういう原理なのかは自分でもわからないが、脳内に生命反応が赤い点で表示されているのだ。この赤い点が恐らく生き残ってる人間ということなのだろう。
そしてその数はとても数えられないほどだった。
「マジかよ……核弾頭全然やりきれてないじゃん。めちゃくちゃ穴だらけじゃんか。はぁ、なんかなえたなぁ。まぁそんなうまくいくわけもないのか。はぁ」
流石にがっかりしてしまう俺。
となれば生き残りたちがどういう状態になっているのか気になるというもの。
俺は一番近い、今の荒れ果てた地帯から五キロメートルほどの場所にある複数の生命反応の近くにワープした。
シュン。
景色が一瞬で書き換わり、新たな場所に降り立つ。
そこは火事になっていた。
かなりの広さで炎が燃え盛っている。
なんだ、これはもしかして森ってことか? 核弾頭の熱で山火事みたいになってるんだろうなぁ。
で、生命反応は一体どこなんだ。
探ってみると、本当に歩いて数十秒程度の場所に反応がある。
俺は火事の中歩いていき、その反応の直ぐ側までたどり着く。
そこはほら穴になっていた。
人が十分に出入りできるようなほら穴だ。
ああ、なるほどな、こういう穴に入っている人間は被災を免れることができるというわけか。これは盲点だったな。防空壕的な役割を果たしてるってことだよなつまり。こういうことをされると萎えるな。こりゃ結構な数の人間がいたるところで生き残ってるわけだな……
俺はひとまずそのほら穴の中に入っていった。
松明により一定間隔で明かりが焚かれていたので不自由なく進むことができた。
少し進んだ先に、人が倒れていた。
何人も倒れている。
「あれ」
なんだ、やっぱり人はいたが、様子がおかしい。
明らかに倒れてぐったりしてるぞ。
見る限り男しかおらず、服装的にはまぁなんというか普通の布地の服って感じだ。
その部屋には結構物資みたいなものが置かれてあって、どうやらここで根城にしていたらしい。
「お、おい……あんた……たすけて、くれ……」
かすれたような声でそう呼び止められた。
その人物はやはり倒れた状態で顔だけこちらに向けてきている。
鼻からは鼻血が出ていた。
「どういう状況なの? あんたたちはなんでこんな風に倒れてるんだ?」
「知らねぇ……なんかひたすら外で凄い音がなってて……終わりだと思ってたら、体調が悪くなっていって……」
男は泣いていた。
なんで泣いているのかはわからない。
どういう気持ちなんだろう。そんなにつらいのかな。体調があまりに良くないのかな。見た感じこの人以外もこんな感じだし、このままだと死んでいってしまうんじゃないか。
「まぁ俺は適当にここに来てみただけだから、あんたたちを助ける義理はないんだ。だから助けない。面倒だし。悪いね」
「そん……な……」
そうして男の目からは光が失われていった。
この場の全員が死亡していた。
あとあと考えてみれば、核弾頭の真の脅威はその後の放射能による空気汚染にあることを思い出した。




