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光が消え、気づいたときには……普通に森の中にいた。
「おい森ってどういうことだよ! ガチで意味がわかんないんだが!」
俺はブチギレてしまった。
マジで意味がわからない。転生するとかどうのこうの言っておいて、気づけばこんなことになっている。なんだ、なんのマジックだ? いや、こんなことマジックで出来る範疇は超えている……となると本当に転生? いやいやでもこんな現実感のない転生あるわけ……あー、だめだ、本当にわけわからん!
「森ってマジでこれからどうしればいんだよ……」
そう思っていると、ふと近くの茂みが揺れた気がした。
おお、もしかして誰か人間か? もしかして俺を助けてくれるのか?
そう思い見てみれば、そこからは緑色の生物が現れた。
確かに二足歩行で人型っぽい感じではある。
だが明らかにおかしい。
肌の色は全身緑だし、耳がデカく、顔は明らかに気色悪い。
目は黄色だし、なんだ、こんな生物見たいことない。
「うわああああ!」
俺は恐怖から思わず尻もちをついてしまった。
な、なんなんだ! 地球にこんな生物いない。いるはずない。となるとここは地球ではない? つまり……異世界だということなのか?
「ぎぎぎ?」
その生物は俺の方を見て首をかしげた。
その生物の後ろからはさらに同じ姿をした生物が二体現れ、俺の方を警戒するように見てくる。
「ぎぎ!」
そうしてその三匹は鳴き声をあげたかと思うと、戦闘態勢をとるかのような仕草をみせた。
え、あれか、もしかして俺殺されるのか? 襲われて、殺される? そんなことある? きっとあれだよな、これはなにかの夢だよな、そうだ、きっとそうに違いない。いや、でもそんなわけないか、この現実感は本物だよな。おもわず漏らしちまったおしっしもかなりじんわりきてやがるし、もうこれは本当に起こってる出来事なのだろう。ああ、なんか分からないが地球ではない場所に飛ばされて、そこで八つ裂きにされて殺される。それが俺の人生だったのか……悲しい、悲しすぎる。こんな人生、もう……
「やめなさい!」
するとそこに突如として割って入る声があった。
その方向を見てみると、待ったと手を突き出している女の子の姿があった。
赤色の短髪に、小さな唇。大きな瞳。
服装は旅人風のものに身を包んでおり、腰には一本の剣を差しているだろうか。
こんな状況であるにも関わらず、かっこいい、可愛いといった羨望の感情を抱いてしまった。
そしてそんな少女の登場に、俺を狙ってきていた化け物たちも、流石に目線を新たな闖入者、少女の方に向けていた。
「まったく、こんな場所に一人でいるなんてどんな田舎者なのかしら……」
そう言いながら、俺の目の前に割って入るように歩いてくる少女。
「あ、あんたは……」
「はぁ、大丈夫? ちょっと説教してあげるから黙って見てなさい」
そう横目で俺に告げると、彼女は化け物たちに向け、剣を引き抜いた。
美しい所作だった。
なんだろう、おもちゃの剣ではないのは一発でわかるというか伝わってくる。これはきちんとした場を積んできたものの流れるような所作だ。
「ゴブリンごときが生意気ね。血糊はあんまりつけたくないんだけど……しょうがないか」
「ぎぎぃいい!」
化け物たちは、一斉に少女に向かって飛びかかった。
それに対し、少女は腰を低く構え、それに対し迎え撃とうとする。
お、おい、ガチで大丈夫なのか? なんか俺の前に入ってきたけど、この人マジで何ものなの? 俺を助けてくれるってことでいいよな? でも本当にそうなのか? 他人をそんな簡単に信用してもいいのか? いや、流石に常識的に考えて助けてくれるよな、ここはもう祈るようにして見守るというのが今の俺にとって最善の選択であるはずだ。そうだ、きっとそうだ、それしかもうないんだ。
しかし少女に襲いかかる化け物たちを見て、なんだか俺はいてもたってもいられなくなってしまった。
「や、やめろおおおおおおおおおおおおお!」
気づけば俺は少女をかばうように前に出ていた。
ああ、あほだ、何してるんだ俺。こんなことしたかったわけじゃない。少女を押しのけて、こんな矢面に立つなんてこと、なんでしてるんだろう。もう本当に俺はアホだ。
そして少女を押した際、俺の手から風圧のようなものが出て、少女を思いっきり吹き飛ばした。少女はものすごい圧を受けたのか、横に思いっきり飛んでいってしまった。
あ、あれ。
そうして化け物たちが俺へと迫りくる。
やばい、このままだと俺は死んでしまう。
「やめろおおおお!」
俺は化け物たちに向け手を突き出した。
手から光り輝くビームがでて、化け物たちをのみこんだ。
気づけば一直線上に道が出てきていた。
どこまでも、地平線まで続いてそうな道が、一直線に伸びている。
当然化け物たちの姿はそこにはなかった。
消し飛んだとしか思えなかった。
「え……」
俺は思わず呆然としてしまった。
さっき少女を吹き飛ばした方へ歩いていってみた。
少女は木をなぎ倒しながら進み、大きな岩のところで止まっていた。
血まみれになり、動かなくなっていた。
揺すってみるも、瞬きの一つすらしない。
ああこれは死んでるなと直感した。
「あは」
俺は思わず笑ってしまった。
気持ちいい自分がいることに気づいていた。




