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 俺は海の深くにいた。


「君たちがここの部族の最後かな」


 眼の前には上半身が人間、下半身が魚の尾びれのようになっている、いわゆる人魚のような姿の奴らが数人固まっていた。

 いや、一応槍を持って隙なく展開はしているのか。


 ここは深海のとある地点だ。

 岩場のようなものが奇妙な形で形成されていて、それがこいつらの拠点となっているようだ。

 深海というのにしっかりと明るい。

 どういうことかは分からないが光る物質がいたるところに散りばめられているらしい。


「仲間をやったのはあなたですね!?」


「あなたは一体何者なのですか!?」


 人魚たちは真剣かつ苦しげな表情で俺を睨んでくる。


「俺か、まぁ人間だよ」


「ここ最近の海域が乱れているのもお前の仕業だな!」


「何が目的なんだ! ここまで、ここまで仲間を殺すことに正義があるというのか!」


 うーん、そう言われてもなぁ。としか返せない。

 ちなみに深海ということだが水圧に関してはもちろん影響を受けないように特殊な膜を張ってあるし、膜の中で空気を生成し循環し続けることで呼吸もできるようにしてある。

 まぁ津波を起こして陸地を海にする前までもちょこちょこ水の中に住むやつは狩ってたりもしたんだがな。水の中というのも核兵器を凌ぐ格好の避難場所となる。

 だがもうそれもこいつらで恐らく最後だ。


「目的はもちろんあるよ。それは君たちに死んでもらうことだよ」


「くそうっ! お前らは逃げろ! 私がやつの気を引く!」


 槍を持った勝ち気そうな女が、そう言って残る仲間に指示を出す。

 そして俺に向かって突っ込んできた。


「くたばれええええええ!!」


 槍を俺に突き出してくる。

 水流剣を放ち、女をぶった切った。

 赤い大量の血を海に巻きながら、女は縦に二つになっていった。


 逃げていく輩は高電圧を海に流し、感電死させる。

 海は電気をよく通す。

 水中戦では有効な技だった。

 実際は何が起こっているとも思えないので、あまり派手さはなく残念ではあるけども。


「ふぅ」


 俺は瞬間移動で海上に出た。

 これでここらのやつは全滅だ。

 残る数は……


「二百七、か。そろそろいくか」


 だいぶ数は減ってきていた。

 不思議なことに数が減り、終焉に近づくにつれ、俺の心は虚無感に包まれていっていた。人殺しロスとでも言うのだろうか。せっかく見つけたやりがいが、もう少しで終わりになろうとしている。なんだか実感がわかない話だと思えた。


「でもしょうがないよな、誰だって、何事だっていつかは終わりは来るんだ。それは絶対なんだ」


 俺は生体反応を探るうちに、その個体の強さを大体で把握できるようになっていた。

 生物には生命力とでもいうべきものが備わっている。それをなんとなく見抜けるようになったのだ。


 そしてこの世界でも有数の力を持つ者たちが、一堂に会そうとしていた。

 どういうわけかとある箇所に集まってきているのだ。

 俺はその動きを前からキャッチしていた。

 でもあえて泳がせていた。


 やはりメインディッシュは最後に取っておきたい。そんな思いがあった。

 俺はデザートは最後に食べるタイプだからな。

 大抵の人はそうかもしれないけど。



「そろそろいいよな。いい感じに俺を迎え撃つ準備もできただろ」


 世界でも相当強いやつが何かを企んでいる。

 いいだろう、受けてたってやる。

 俺は満を持してその輩が集まる地点にワープした。








 ワープした先には海ではなかった。

 海の上に何やら廃材が大量に隙詰められており、人工的な陸地が作られていたのだ。


「お、お前は!」


 近くにいた生物が、俺を見て驚いている。

 そいつは獣人のような感じだった。

 全体的に巨大なトラといった感じで、服を着ている。何故か頭から触手のようなものが生えていてすごく力強そうだ。


「きしょいな」


 俺は水鉄砲を放ち、脳天をぶち抜き撃ち殺した。

 反射的な行動だった。



「おいおいきやがったぜ」


「きた! きたよおおおお! やっときたああぜえええ!」


 俺をさらに認識した数人が舞い上がっている。

 なんだ? 全員が変な姿をしているな。なんだか例に漏れず不気味な体つきだ。



「ん?」



 そこで遠くの方からなにか飛んできた。

 それは巨大な光だった。



「うーん、狙ってきてるかな」



 俺は光が俺にぶつかる直前で瞬間移動で避けた。

 どこか適当な数千キロ離れた海上の上にワープする。

 そしてすぐに元いた場所に戻ってきた。

 背後を見てみれば、人工的な陸地は熱を帯びてえぐれていた。




「ふふ、私の攻撃を避けるとは流石ですね」



 そんな言葉が聞こえてきたかと思うと、俺から少し離れた場所に空から降ってきた何者かが着地した。

 その人物は白い戦闘服をきた女だった。金髪のまだ少女に見える。手には青い刀身の立派な剣を持っていた。



「確認ですが、あなたが全ての元凶、ということでよろしいですか?」


 女は油断なくそう尋ねてくる。

 しかしわずかに笑みはともっていた


「元凶? やれやれよくわからないな」


「とぼけないでください。神の如き災厄が舞い降りたこの時期に、悠々とこの場に現れる人物が普通であるわけがない。第一あなたは私の攻撃を避けた。それだけで決めつけるには十分なのです」


「なんだか随分立派な装備を着ているね。君は一体誰なの?」


「私は人間の最後の希望かつ砦……当代勇者です」


 ということらしかった。

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