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「やべー、人生終わってるわー」
俺は人生に悲観していた。とにかく悲観していた。
なぜならもう高校も卒業し、大学一年の年も過ぎようかというのに生まれてこの方恋人の一人すらできていないからだ。いや、そんなことはまだいい。恋人は当然として、まともな友達すら出来ていなかった。
「なんでなんだよ……」
俺は一人暮らしの自室の部屋でただ椅子に座り呆然とする。
もう、誰がこんな人生決めたんだよ。
俺はこんな人生送りたかったわけじゃない。
どうしてこうなったんだ?
中学の頃の成績はそこそこ良かったはずだろ? 高校でもそれなりの進学校に行って、大学もそこそこのところに入れた。でも蓋を開けてみればこうだ。
なんでだ、なんで俺はこんなにも孤立している? 孤独を感じている? おかしい、こんな人生まっぴらだ。出来ることならもう一度新しい人生を一から歩み直したい……
「くそ、そんなこと言っても始まらないよな。いいさ、この人生はこの人生で許容してやる。その代わり来世はきっと素晴らしい人生を恵んでくれよな神様」
俺はいつものようにくだらない独り言を吐き捨てながら、アパートの部屋を出た。
もう気分が晴れないな。こういうときはコンビニでアイスでもかじるのが一番いいんだよ。一旦すべてがリセットされるというか、そんな感覚になれる。
「今日はチョコミントアイスにしようかな。いや、でもミントは美味しくないからやめてお……」
「あぶなーい!」
俺がコンビニまでの道のりにある横断歩道を渡っている時だった。
後ろから叫び声が聞こえた。
なんだと思い横を見てみると、一台のトラックが突っ込んできていた。
え、意味分かんないんですけど、俺ここで死ぬの?
最後に冷静にそんなことを思い、俺の意識は途絶えた。
「う、うぅ……ありゃ?」
目を覚ますと知らない部屋にいた。
白を基調とした、ずいぶんと淡白な小部屋だ。
調度品の類も置かれているが、それらもことごとく白い。
変な趣味のやつもいたもんだな……ってここはどこだ?
「起きたか、少年」
と思ったところで声が聞こえた。
見てみれば、そこにはしわがれたおじいさんが立っていた。
ずいぶん老いぼれている。今にも朽ち果ててしまいそうだ。
「えーっと、おじいさんは、一体何者? なんですか?」
「儂か、まぁ儂はいわゆる神じゃな。そしてここは儂の部屋じゃ」
「え、神?」
何だこの人は。もしかして認知症を患っているのかな? 俺のおじいちゃんもそんな感じだったから、なんとなくわかる気がする。この人は俺が看病したほうがいいのかな? でも他人だしな。
「信じられんとは思うが、それはまごうことなき事実なのじゃよ。まぁといったところでもっと信じられるんと思うから、これを見せよう」
そういうや否や、おじいさんの手が立派なお花に変化した。
茎があって、葉があって、黄色の大きな花が咲いている。
右手そのものが完全に花になっていた。ひまわりじゃん、すごい。
「どういう手品なんですか?」
「まぁ手品ではなく、本当に花に変換したんじゃよ。ちょいと力の見せ方が弱かったかの。まぁ別にどうしても神じゃと信じてもらいたいというわけでもない。その前提なら話が早いだろうというだけのことで」
うーん、この人さっきから何を言ってるんだろう。なんか見るからに怪しい感じ? でも悪い人ではなさそうなんだよな。てことはやっぱり認知症が酷い感じなのかなー。
「まぁ儂をしんじんでもい良いからとにかく話を聞くのじゃ。今は半信半疑でも後から思い返して貰えればよい。それでじゃが、お主は地球で死んだ。それは覚えておるかの?」
「え、何を言い出すかと思えば俺が死んだだって? そんなことあるわけないじゃないですか。だって今もこうして生きてますよ?」
「それは儂が特別に再構築しなおしたからなんじゃが、まぁそれもよい。とにかくお主には一つ頼みたいことがあっての」
おいこの人全然人の話聞かなくなっちゃったぞ。まだ全然俺の疑問は解消されていないというのに。とりあえず話に付き合うしかないのか? てかここマジでどこなんだよ。
「実はいまとある世界が滅亡の危機にさらされておっての。それをお主に救ってもらいたいんじゃよ」
「どんなスケールの話ですか。その世界っていうのは何かの界隈とかってことですか?」
「その世界はリグラと呼ばれておる。地球とは性質が全く異なる世界じゃ。具体的には魔物がおるし、魔法が使えたりする。人を簡単に食い殺してしまうような生物がその辺にうじゃうじゃわいとったりもするの。そしてその世界で現在魔王という凶悪な存在が勢力を増してきておる。こいつが時期にそのリグラを滅ぼしてしまうことがすでに予言で示されておるのじゃ。このままだと当然のごとくやばい。そこでお主に白羽の矢がたった。お主が勇者として異世界におもむき、その魔王を殺して、リグラに安息と平穏をもたらすのじゃ」
おい、一気に捲し立てすぎだろ。めちゃくちゃ調子にのってるぞこのおじいさん。俺が聞き役に徹したのをいいことに凄い喋るじゃんか。そんなに妄想してて逆になんか凄いかもしれんけどもな。
「てことで頼んだぞ」
「え」
それだけ言い残され、俺の視界は光に包まれていった。




