ゴールデンウィークが終わるだと? くっ、殺せッ!
────ゴールデンウィークが終わるだと?
くっ、殺せッ!!!
……。
◇◇◇
起きた。僕はベッドから飛び起きた。そしてすぐさま、枕の横に置いてあったスマートフォンを見た。
「……十二時」
なんでか予定より遅くに鳴り響くアラームの音だけが僕の鼓膜を通り過ぎていく。
「十二時だと!? 昼の!?」
そこでようやく理解する。
僕は寝坊したのだ。この大事な日に。十二時。昼の十二時────いや、特に大事な予定はないのだが。
ただあまりにも寝過ぎたと、僕は後悔のため息を漏らす。
「くっ、殺せ……」
ゴールデンウィークの終わり鐘が鳴るこの日に、僕は惰眠を貪った。貪り尽くした。
「ほんとよね、まったくさあ」
「まさかこんなゴールデンウィークの大切な残り一日に、眠って終わるだけなんて厭だ……!」
「ほんとよね。まったくさあ」
「ほんとだよ……って、なんでお前がここにいる!?」
と、そこで更にこの状況を僕は理解する。
なぜか。僕が起きた横に、見慣れた一人の少女が立っていたのだ。誰だよ。僕の幼馴染だよ。
「なんでかなにゃ」
「可愛いからなんでもいい……よくない!」
「ほらこれだよ~」
黒髪ロングの美少女こと『胸まな板』さん……じゃなくて、『京秋葉』。彼女は僕に対して、合鍵をちらつかせ見せてみた。
どうやら、勝手に僕の鍵で合鍵をつくり、勝手に侵入してきたのか!
恐ろしい。
「合鍵つくったはまあ意味が分からないけど、まあいい。僕の心は寛大だけで構成されているからな。それはともかく、なんでわざわざここにきたんだよ」
「なんでって、そりゃあキミを起こしに来たんだよ~」
「起こしに? 別に僕は自然に起きたけどな」
「私が設定した、アラームでね」
……いつの間にコイツは僕のスマートフォン内に侵入したんだよ!? パスワードも設定しているはずなんだが。ばれているらしい。恐ろしい! って。
「じゃあまさかお前、僕のあのお気に入りサイトを見たのか!?」
「……えへへ。かなり良いご趣味で?」
「僕は別に猫耳ロリメイドなんて好きじゃない!」
まずい。焦っている。自白してしまった。
「自分からみんなに自白しているスタイルなんだね……」
「くぅ、殺せ!」
「さっきもそんなこと言ってたよ」
別に何回言ったっていいだろう!
僕はただ絶望しているんだ。ただでさえゴールデンウィーク最終日で悲しんでいるのに、それに追い打ちをかけるようにと彼女によるこの始末だ。
最悪である。
「僕はな。このゴールデンウィークでやり残したことが沢山あるんだよ! 部屋に積んで残っている本を読んだり、部屋の片付けしたり、ゲームしたり、フィギュアを綺麗にしたり、映画見たり、アニメ見たり、勉強したり、楽器を練習してみたり!」
「……逆に今まで何してたの」
僕の言葉に呆れるまな板。
「何もしていない。ただ、寝ていただけさ」
「うわあ。完膚なきまでの、完全なる自業自得じゃん。そりゃあゴールデンウィーク最終日で後悔するよね」
「仕方がないだろ、眠かったんだから」
やれやれ、なんでわざわざそんな分かりきったことを聞いてくるのか。コイツは。
「なんか他にすることなかったの? デートとか」
「……」
……僕がそんなリア充みたいなこと、ゴールデンウィークでするとでも?
くっ、殺せ!
「はあ、この私がデートしてあげようと思ったのににゃー」
「にゃんですと?」
「まあもう昼だから、無理だけどね」
「くぅ、殺せええええええ!!!!!!!!」
────早く起きとけば良かった。
というかゴールデンウィークの最終日に僕は一体、何をしているんだろうか。それに、この憂鬱な気持ちは、夏休みの最終日にも匹敵するほどだ……!
「ご飯食べる?」
「いらない!」
「もしかして、拗ねた?」
「拗ねた! ああ。だから僕は寝る! ふて寝する!」
ゴールデンウィークの最終日に僕は一体、何を考えているんだろうか。ただ寝て過ごすだなんて。酷く贅沢な時間の使い方だ。
僕はもう一度ベットで横になり、目をつむる。
すると。
「そういえば学校の宿題やったの?」
……なんて疑問を、彼女がぶつけてきた。
もちろん、やってない! ……まずいかもしれない!
「そんなことはどうでもいいんだ──僕はただ眠るんだ! この時間は、無限の惰眠で出来ている!」
「課題を抱いて憤死しろ!」
「くっ、殺せ」
「あ、私も一緒のベットで寝てあげるよー」
「うわぁ!?」
ふて寝していた僕のベットに、彼女が潜り込んできた。ゴールデンウィーク最終日。課題終わらず何も出来ずの絶望。僕はそこに唯一の希望を見出していた。……柔らかさと良い匂いを兼ね備える彼女の肌が、僕に触れ。
そしてそしてそして。
僕はそのままショック死するような勢いで、気絶してしまうのだった。
「はー、ゴールデンウィーク最終日って辛いねー」
そしてそしてそしてそして。
気絶直前、彼女のそんな声が聞こえてきたのを、僕は認識していた。……おいおい、ここは僕の実家だぞ。僕の母親とか父親がこの状況を見たら、どう思っちまうんだよ。
と、そんなことに思考を巡らせていると扉が開く音がした。
……まずい。
「お兄ちゃん遊ぼう──って、なにしているの!?」
最後に聞こえてきたのは、妹の声だ。
妹の声だ。僕の妹の声だ。僕は目をつむっているから分からないが、この状況を察するに可愛い妹ちゃんがこの現場を目撃してしまったのだろう。
僕が秋葉と寝ているところを。
いや、決して卑猥なモノじゃないんだが。
「えっ、いやっ!」
咄嗟に起き上がって、言い訳をしようとする僕だが時すでに遅し。
「おかあさーーん!! お兄ちゃんがついに、女の子と、秋葉さんと添い寝してるよおおお!!!!!!!!! 私の知らないお兄ちゃんだ!!!!」
妹は目を自分の手で覆いながら、そう絶叫していたのだ。
おい。おいおい。おいおいおいおい。
死んだわ、僕。
「くっ、殺せ……!」
最後に一言。
僕はそれだけを残して、ショック過ぎて再び気絶してしまうのだった。
──ゴールデンウィーク終わってほしくない(切実。
私が持っていたのはば五日ほどの休暇だったけれど、この物語の主人公同様にその長い日々を有意義に消費することは出来なかった。
ただ寝て、ただ飯を食べて、ただパソコンいじって。まさに『くっ、殺せ!』と言いたいぐらい恥ずかしい生活を、私は送っていたのだ。
そんなわけで怠け者な私が今朝、適当に書いた絶望、少しでも絶望いただけただろうか?
明日は月曜日だ。学校だ。仕事だ。平日だ。
……そんなの、死ぬしかないじゃない!
【お願い!!!!】
ということで少しでも絶望できた、ゴールデンウィークもう少し楽しみたかった、ゴールデンウィーク楽しかった、ゲームしたい、面白かった、お前(作者)馬鹿だよ? と思った方、どれかに当てはまったり共感してくれた【ブックマーク】や【評価】をいただけると、モチベーションがとても上がって嬉しいのでぜひよろしくお願いいたします!
私は今年のゴールデンウィークは、歴代で一番というほど何もしないで過ごしました! これ以上後書き書くとただのエッセイになるため、ここで締めます。
────ありがとう、ゴールデンウィーク。
そして、さようなら(泣)。