この先輩たちは面倒くさい
登場人物
安藤真紀 (いわゆる美少女)
佐川里奈 (こちらも美少女)
速水 (ただの速水。文学少女)
とある高校の教室にて、こじんまりと活動している文芸部に私、速水は所属している。
文芸部と言っても名ばかりで私を含めた三人でただひたすらに本を読んでいるだけなのだが。
本が何よりも好きな私はこの活動を気に入っているのだが、この部には唯一の問題がある。
それは、私以外の二人のことで。
その二人とは安藤真紀と佐川里奈の二人だ。
この二人は私の一つ上の先輩で二年生であり、何でも幼馴染という間柄らしくとても仲が良いのだがそこに問題があった。
「ねえ、真紀って好きな人いるの? 」
「え! す、好きな人?! 」
「そう、新しい恋愛小説読んでてふと思ったんだよねー」
「そ、そうなんだ」
「どうしたの? そんなに顔赤くして」
「なんでもないよ! 」
仲がいいことは確かなんだろうけど、その中に少なからずのピンクのオーラが混じっているのはたぶん私の勘違いじゃないと思う。
『この二人絶対お互いのこと恋愛的な意味で好きでしょ』
そう、この文芸部の問題はこのピンクオーラに耐えなくてはならないことである。
まず安藤先輩が佐川先輩のことを好きなのは明白だろう。
だって佐川先輩が少し恋愛的な話題を振れば顔を赤くしてしどろもどろだし、かと思えば本を読むふりをして佐川先輩の顔をチラチラとみているのだ。
それも顔を赤くして。
これは間違いなくクロ。
対して佐川先輩のほうはというと、初めはそんな気はなく純粋に幼馴染として聞いているんだろうなって思ったけどそうではないことがすぐに分かった。
先輩は安藤先輩にこの手の質問をした後、決まってそれは楽しそうに安藤先輩の顔を眺めてるし、その顔は愛おしそうに安藤先輩を見ていることを隠そうともしていない。
それに、ふとしたタイミングで本に夢中になっている安藤先輩を眺めては微笑んでいる。
そのときの先輩の目をみれば、そこには友情以上の感情があるのは明白だった。
あとは確信に変わった出来事と言えば、
「速水ちゃーん! 里奈がー! 」
「先輩、またですか? 」
こうやってたまに、安藤先輩がキャパを超えると私に絡みに来るのだがそのときの佐川先輩はと言えば。
『うわっ』
ちらっと佐川先輩の様子をのぞいてみると笑っているのに目が笑っていない黒いオーラ。
言い換えるなら殺気を飛ばしてくるのだ。
『まずい』
「先輩、離れてください」
「速水ちゃん冷たいよー! 」
そういいながらも安藤先輩は離れていく。
再びちらっと佐川先輩の様子を伺うと、殺気は消え再び安藤先輩のことを愛おしむような視線で見ている。
『めんどくさい』
私は二人に気づかれないようにため息を吐くことしかできなかった。
こんなことが毎日起こっているのだ。
初めの頃は美人な先輩二人が仲よさそうに本の感想を言い合っているのを見て眼福とすら思っていたのに、今ではピンク色のオーラとたまに飛んでくる佐川先輩の殺気でとてもではないが落ち着いて読書に明け暮れることなんてできないでいる。
もはや読書なんて建前で二人の観察に明け暮れることが私の部としての活動にすらなってしまっているのではないかと思ったりしている。
早くくっついてしまえばいいのに、どうやら安藤先輩はいまいち告白に踏み切れないようだし、佐川先輩はそんな安藤先輩のことを楽しそうにからかっているのだから埒が明かない。
「どういう里奈こそどうなの? 」
しかし今日の先輩は少し踏み込んでいくようだった。
「そうだなー、私は勉強ができて料理もできて、気遣いもできる優しくてかわいい子がいいなー」
「へー! なんだか本当に小説のヒロインみたいな子がタイプなんだー!」
「でもそんな子なかなかいないと思うよ? 」
ヒロインみたいな子って、いやそれってドンピシャあなたじゃないですか!
なにがなかなかいないと思うだ!
というか佐川先輩がいつもの愛おしそうな顔を隠そうともしてないのに何で気づかない!
「そうだね、私もそんな子は一人しか知らないかなー」
「へぇー、実際にそんな完璧な子いるんだねー」
だからそれはあなたですよ!
だいたい、この学校では安藤先輩は美人で成績優秀、家事もできる完璧美少女として有名なのに本人には自覚が全くないみたいだ。
まあ、そこが先輩のいいところなんだろうけど。
「それって私も知ってる人? 」
「どうかな? もしかしたら知ってるかもね」
「へー! その子ってほかにはどんなところがあるの? 」
「んーと、完璧なのに誇らないし何ならそのことに気が付いてないのかもね」
「ふふっ、なにそれ」
暖簾に腕押しとはこのことかと言わんばかりの会話。
もうここまでくると佐川先輩がかわいそうにすら思えるが、先輩の表情は変わらず微笑んでるのだからきっとこの状況も楽しんでるんだろうな。
「そんな子が本当にいるなら会ってみたいなー」
「……案外近くにいるかもね」
まあ、まさか安藤先輩だとは流石に言えないよね。
「あ! もしかして速水ちゃんのことだったりして! 」
『え?』
どうしてそこで私になるんですか!
というかやめてくださいよ!あんま変なこと言うとまた佐川先輩が……。
ああ、もう見なくても先輩から黒いオーラが出ている様子がわかる。
とにかくここは上手く躱さなくては!
「私はそんな完璧美少女なんかじゃありませんよ」
「えー、速水ちゃんもかわいいよー? 」
なんで躱そうと思ったのに話の路線をこっちに戻すんですか、この先輩は!
とにかく何か当たり障りのない感じに返さなきゃと思っていると。
「ほら、あんまり速水ちゃんのことからかったらだめでしょー」
「えー、からかったつもりなかったんだけどなー」
まさかの佐川先輩から助け舟を出されるとは。
というか、独占欲を出すぐらいならさっさと付き合ってしまえばいいのに。
それに安藤先輩もいい加減気づいてほしい。
『この先輩たち、ほんとめんどくさい』
なんとか危機を脱した私は改めて二人の先輩を見て気づかれないようにため息を吐くことしかできなかった。
もっといちゃいちゃさせるつもりだったんですけどね……力不足。
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