1:動き出す運命
止まっていた運命の歯車が遂に動き始める。
「え...白神...って」
白髪にこの顔立ち...そしてこの独特の雰囲気。この人、確実に白りんのお父さんだ...今まで時間が合わなくて会ったことなかったけど、1発で分かった...。
「...神無崎君?大丈夫かい?」
「え、あ、はい!」
「今回、白神さんに来てもらったのは、神無崎君を白神さんの高校に入れようと思ったからなんだ。」
「は、はぁ...」
でも神夜乃高校って言うと、国立高校の中でもかなり特殊な高校だったはず...噂では入学するには政府の許可が必要とか聞いたなぁ...。
「今回は、君に推薦という形で神夜乃高校に入学させようと思うんだが、どうかな?」
「え!?」
か、神夜乃高校に入学!?嘘!?
「いや、今すぐに考えなくてもいいんだよ。まだ3年生が始まってばっかだからね。」
だ、だよね...飛び級かと思っちゃった...良かった...僕、成績は普通だから飛び級なんてする訳が無いもんね...。
「んー...そうだな...君が入るかどうかを決める猶予は丁度一年後、つまり高校1年の二学期までだ。」
「来年の9月か...」
「どうだ?十分な猶予だろう?」
どっちかと言うと長すぎな気がする...
「はい、とても助かります!」
「...そうか!」
「とりあえずそういう事だ、はいこれ、私の番号。君からの返事を私は待っているよ。」
「はい...!」
「では、失礼致します。」
「白神先生、本日はご足労いただきまして、本当にありがとうございました。」
「あぁ、いえいえ良いんですよ。私はただ神無崎君に用があっただけなので」
「あ、あとこの事は内緒にしておいて下さい。学校内で変な噂になったら嫌ですし。」
「はい、分かりました。」
「では」
先生同士でお辞儀した後、僕に対してウインクをした。どうやら余程に入って欲しいらしい。でも、学費が足りないよぉ...あ、でも待って推薦って事は学費免除ってこと?うーん...まぁ時間あるし、ギリギリまで考えるのがベストだな!
そうして、僕の猛勉強は始まった。
「入学するとして、授業についていけなかったら終わりだ...」
なら今から一般的な高校の勉強を全てする!!
僕、頑張るよ。お母さん...ッ!!
「なぁ、最近あいつ見なくね?」
「え?誰?」
「神無崎」
「...誰?そんな奴いたっけ?」
「居たよぉ、なんか影薄くてちょっと辛気臭そうな奴」
「黒髪でさ」
「あーなんかそんなヤツいたな」
「あいつ遂に不登校になっちまったのか」
「まぁ別に良いじゃねぇか、あんなやつの1人2人消えたところで大して変わらん」
「....なぁ、乖十。」
「お?どうした?」
「...一応聞くが、お前高校どこ行くんだ?」
「そりゃ神夜乃高校っしょ!!」
「....やっぱか」
「モチのロンでしょ!」
「お前の親のコネで入るんダヨッ!」
「....最低だこいつ」
「俺だって自力で金出して入りてぇが、家が家なもんだからな。」
「....まぁ、しょうがないな」
「へへっ、恩に着るぜ。」
時は過ぎ、春になった。
ヤバい、とても眠くなってきた。全然寝てないせいだ。勉強しすぎたな...。今頃、中学は卒業式か...まぁいいや、勉強...って思ったけど眠たいから流石に寝るか...。
「──────」
ん?なんだ...?誰かが呼んでる?
「──────」
もしかして僕の能力...?
「───なれろ」
...いや、何か言ってる...
「俺から離れろ」
っ!!
「はぁ...はぁ...な、何今の...夢...」
全く僕とは関係の無い夢だった...
「一体...」
その変な夢は、それ以降一切来なくなった。来なくなったのは良い事だけど、でも気になってきた。だけど、そんな事を気にする前に僕は神夜乃高校に入学しなければならないんだから。
数ヶ月後。
「っし!」
いよいよ神夜乃高校入学を決定する日だ。白神さんに伝えないと...!!
な、何故か緊張する...っ
「...はい。」
「あ、あの、すいません。神無崎凪津です...!!」
「...すいません。お電話変わります。」
「え、あ、はい。」
あれ?白神さんの電話じゃないの...?
「お電話変わりました。官房長官の霧木と申します。」
「...えっ」
官房長官...?
遂に動き始めようとする凪津の運命。高校に入ると白神理事長に伝えようと思ったが、まさかの政府用の電話だった...。