表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな友達~特別編~  作者: 松村かれん
1/3

ノエルの初恋

 これは、「小さな友達」の2年前のノエルが小学6年生の頃の話。友達のサクラとは小学4年生の時から一緒に帰ったり、一緒に遊んだりしなくなりました。理由は、「サクラの受験」です。サクラは難関私立女子中学である桜花中学校を目指しわざわざ都内の塾に通っていたため、帰る時は親の送迎、休み時間は勉強とノエルと一緒にいる時間が無くなりました。サクラはミニテストはもちろん普通のテストでも100点をとり先生方に褒められる優等生でした。ノエルはその頃図書委員に所属していました。なので、休み時間は担当の日は図書室のカウンターに座り本を読み、担当ではない日も図書室のテーブルで本を読んでいました。それは、担任の落合先生が「牧野さんはクラスレクに全然参加しない。」と心配するほどでした。だってノエルにとってはクラスレクなんて楽しくないから。なぜなら、ノエルはクラスの女の子達にいじめられていました。原因はわからないけど、多分、事故に遭って人の顔が覚えられないこと。ノエルはそう思いました。

 ある日のこと、ノエルはいじめられるのが嫌で女子更衣室ではなく女子トイレで体操着から洋服に着替えていました。すると、女子グループのリーダー格である吉川さんに上から水をかけられました。「あんた、いつも同じ服着ているし、トイレで着替える事自体汚いから洗濯してあげたの。」と言って、キャッキャッキャッキャ笑いながらその場を去って行きました。教室に帰ってからも、「濡れた雑巾みたいww」といわれノエルは悲しい気持ちでした。すると、だんだんサクラにも避けられているのではないかと思うようになりました。

 ノエルは学校に生きたくないと思っていた時でした。委員会の日、ノエルにだけプリントがありませんでした。どうやら、同じ図書委員の子が配り忘れてしまった様です。影が薄いノエルは誰にも気づかれずプリントが無いまま委員会に参加しました。委員会が終わって帰ろうとした時でした。一個下の学年の男の子がノエルに声をかけました。「悪い、お前の存在を忘れてたよ。」と言ってノエルに自分の分のプリントを渡しました。「これは俺のミスだからこれお前にやる。俺はもう内容頭に入っているから。」そう言ってその男の子は友達と帰って行きました。ノエルは「あの子少し生意気だけど、優しい。」そう思いました。ノエルは家に帰って寝転がりながらそのプリントを読んでいました。でも気がつくとその男の子のことを考えていました。名前がわからないので、ノエルは心の中でその子のことを紫色の服を着ていたことから「紫君」と呼ぶことにしました。そして、もう一つわからないこと「どんな顔だったっけ。」そうです。さっき会ったばかりなのにの、ノエルはもう顔を忘れてしまいました。考えながらノエルは仰向けになりました。すると、光が透けてプリントの上の方に何かが書いてあった跡に気づきました。ノエルは思わず「噓でしょ。」と言いました。なぜなら、そこに書いてあった文字が「ノエル」。ノエルはその時、今まで感じたことのない気持ちになりました。

 数ヶ月が経ってサクラの桜花中学校合否発表の日になりました。結果は「不合格」。なぜなら、前日不運にも38度の高熱を出してしまったのです。お医者さんに診てもらったところ、インフルエンザではなかったので、サクラは当日頭が重い中受験に挑みました。勉強を一生懸命していたサクラをずっと見てきたノエルはサクラになんと声をかけていいかわかりませんでした。でも、ノエルはサクラに「サクラ。」と声をかけました。すると、サクラが言いました。「ノエル、私すっごく悔しい。だって、実力で負けたんじゃなくて時の運に負けたから。でも、滑り止めの星影中学校には受かっているから後3年後に桜花高校を目指すよ。」サクラは前向きでした。それを聞いたノエルは安心しました。

 卒業式の日になりました。ノエルは下田中の赤いチェックに胸元には赤いリボンのブレザータイプの制服を着ていて、サクラは星影中の上下紺のブレザータイプで胸元には赤く細いリボンの制服を着てました。そして、卒業式が終わりノエルが帰ろうとした時、紫君に会いました。すると、紫君はノエルに「改めまして卒業おめでとうございます。」と言いました。ノエルはびっくりしました。なぜなら、いつもノエルや他の上級生達にため口の紫君が敬語を使ったから。ノエルも思わず、「あ、ありがとうございます。」と敬語になりました。ノエルはとても嬉しい気持ちでした。「私のこと忘れないでね。」ノエルは紫君に言いました。紫君は「お前みたいな変なヤツ忘れるわけないだろ!」と言いました。ノエルはいつもの紫君だなぁと思いました。紫君が去って行きました。ノエルは「バイバイ。」と言って小さく手を振りました。紫君は一度も振り向かずに頭の上で大きく手を振りました。

 中学生になると、ノエルは紫君を見かけることはありませんでした。ノエルの恋は終わりました。でも、あの時紫君からもらったプリントはいつまでも大事に取っといて置くのでした。


 次はサクラの星影中でのお話。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 『小さな友達』では語られていなかった、ノエルが受けていた”いじめ”の描写(女子グループのリーダー格「吉川さん」怖っ!)や、サクラと遊びたくても遊べなかった小学校生活などが描かれていて、ノエ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ