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姉の仇を打って世界を変える!

第2作目です。戦闘物を小説で書くのには苦戦しましたが、読んでいただけると幸いです。なお、コメントで誤字訂正などお願いします。

これは、ずーっとずーっと未来の話

「e-Sports」…サイバーの能力が重視される世界。私は現在12歳。

「わぁっ!」

「きゃー!来た、逃げろぉー!!!」

この世では、進化しすぎた機械、通称エネミーが自由意志を持つようになり、生みの親の人間を滅ぼそうとしてくる。私の実の姉も殺された。ここで生き残りたいのであれば、エネミーから逃げ続けること。目を合わせてはならないのだ。死んでしまうから。

「おい、あれ見ろ!」

「アスリートだ!」

誰かが紅く曇った空を指して叫んだ。アスリートが、空で狂った機械を潰していく。アスリートは、エネミーをセーバーという刀で倒し、優しく私達を守ってくれる優しい存在。すると、ふっと上から妙な物体が落ちてきた。私は別に驚かない。こんなこと、当たり前だから。

「危ない」

私は気づいたら、アスリートの腕の中だった。そう、アスリートは世界を救うサイバー戦士だ。世の中にはアスリートを育成する兵がいくつもあり、それぞれに違った育成方法である。

「気をつけろ」

なんか…すごく危険な美しさ…彼女の美しい瞳に、惚れ惚れしていまう。

「何という名前なんだ?」

アスリートは照れたようにつぶやく。 

「アリア’レイス…」

「アリアというのだな、私はカルラという」

しかし。カルラは当時本物の戦士ではなかったみたいで、とりあえず適当な装備を買い、セーバーを持って参加したそうだ。そしてその後カルラと私は厳しい面接、筆記試験、実戦テスト、勝ち抜き戦…入団試験をくぐり抜け、死なないために、生き残るために…サイバー戦士へとなった。しかし、仕事はほとんどなく、先輩が実践し、私達はそのサポートをする。皆から憧れられるアスリート。また私の知らない世界があった。某テクニカルチャート兵以外もあるが、セーバーの解説をしておく。ペンのような形で持ち歩きにとても便利。使う時はペンのボタンを押し、捻るとあっという間に刀になる。

「アリア、飯はまだか」

…偉そうに席に座っている女の子は、あのカルラ。ナイフとスプーンを両手にもち、不満そうな顔だが、武器も装備も一流のエリート。サイバー戦士としての能力も飛び抜けて高く、入団試験では主席の成績を収めている。

「腹が減った…私は今日出騎士が多かったんだ」

しかし、この性格と不器用さは、兵の中でも話題沸騰。顔は本当にきれいなのに。

「カルラ!イライラしても飯はできない!」

「チッ、男なら実力で来いよ」

セルシオは、兵の中でもモテる男の子。何故か髪の毛が長髪…。でもカルラには敵わなくて悔しそうにご飯を運んだ。すると、ガラッとドアが開き、ご飯の匂いを嗅ぎつけたアナがやってきた。

「二人共、世界が危ないのに、そんな小さい争いしないでよ」

アナは優しくて兵の先輩を虜にする女の子。そして、食べることが大好き。手羽先を初めて食べたとき感動したらしく、それ以来手羽先に執着してる。全然太らないのもふしぎ。だけど、お腹が空いていたり、何か嫌なことがあるととても冷たくなる。機嫌は取り取られだ。

「相変わらず食への執着は立派なことで」

カルラはセルシオにもらったスープを飲みながら、冷たい目でアナを見る。そうしていると厨房から若い先輩がパンとステーキをお盆に乗せて来てくれた。

「まあまあ、いいじゃない。お疲れ様ー」

サファテお姉さんは、兵を管理する実力者。今は17歳と、私達より3つ年上だが、私達の頃はアナとカルラを足して2で割った感じだっさそうだ。

「お疲れ様です」

だらしないスープの飲み方のカルラ、それをにらみ続けるアナ、脱力するセルシオ。それらには目もくれず、スタスタ私の方に歩いてくる。あれ、私悪いことした…?

「アリア、あなたセーバーの試験ビリだったわね」

わぁー、それかあ…うぅ…でも、同期はこの一癖曲がった子達しかいないし…勝てない。勝てない。

「はい…」

「強くなくちゃ、兵に入った意味が失われてしまうわ。頑張りなさい。」

私はうなずき、三人とご飯を食べ始めた。すると、好き嫌いの激しい二人が…

「俺ブロッコリー嫌いなんだよねぇ…」

「私パセリ食いたくねぇ」

アナは二人の苦手なものを受け取った。そして、セーバーという剣で粉々にした。実際はセーバーは敵を倒すため、訓練をするためにあるものなのだが…あいにくカルラのせいで機嫌の悪いアナ。グチャグチャの野菜を二人の大好きなステーキの中にグチャっと詰め込んだ。

「わお」

「何すんだ、アナ!」

緑色に染まりしステーキ。嫌な予か…

「アリア、早く食べて!」

「これに関しては頭を下げよう」

結局、緑色ステーキを食べた。これが皆が憧れたアスリートなのか…?!

「ちゃんと寝なさいね」 

サファテお姉さんが部屋から消えた瞬間、カルラは飛び起きて明かりをつけた。ドアは偶然鉄でできている。よって外に光が漏れることはない…

「カルラー寝かせて」 

「眩しい」

早寝組のアナとセルシオはひどく眩しそうだ。

「うるせーな、いいじゃねーか!明日休みだぜ!オフだぜ!」

そう、明日は訓練がなく、先輩方が定期試験を行うのだ。久しぶりのオフに、カルラはテンションが高い。

「ダァから世界は今危ないってば…」

アナはうつ伏せになり枕に頭を沈めた。

「じゃあ、お忍びでどこか遊びに行こうぜ!」

セルシオもワクワクしてカルラに便乗した。

「アリアも行きたいだろ!」

カルラはずいずいと私のベッドに入ってきて、ギュッと抱きしめた。

「ちょっと、カルラー」

私はびっくりして、でも助けてもらったとき以来のハグはなんだか危険な気持ちを催した。

「二人共、さっさと寝ようよ〜」

「アナは遊びに行きたくないの?」

私はアナに尋ねると、ブツブツとつぶやいた。

「アスリートは誘拐されやすいって言うし…下手に遊べないし…」

アナは人の目が気になる性格なのだろうか。

「誘拐なんてねーよ!私達に敵う奴なんていねーから安心しな!」

カルラはまだ私のベットでゴロゴロしながら笑った。結局、そのあとアナはすぐ眠りに落ち、セルシオとカルラも笑いながら寝た。カルラに関しては、私のベッドで…そして夜0時頃、私はしぶしぶ電気を消して布団に入った。ちょっと寒い日だったけど、カルラのおかげで暖かかった。





「ねぇねぇ、ケーキほんとに食べに行くの?」

「当たり前でしょ」

カルラは真顔で言う。仕方ないのでお出かけの準備をしていると、

「すいませんー」

「めっちゃ声デカくない?」

多分荷物なんだろうけど、私はちょっとおかしくて笑ってしまう。

「なんの荷物かな!言ってみよー!」

アナは私達の手を引っ張って下に降りて行く。

「サファテさ、ん…」

そこには一人の男と、血みどろになったサファテさんが倒れていた。

「さよなら。次はあなたかもしれませんね」

男はそう言い、笑って走り去った。

「待て!おいお前何者だよ!」

「アナ、そこはお願いします!」

セルシオの長い髪がゆれ、猛スピードで進む。

私は走って追いかけた。

「どこにいると思う?」

「分からない!けど、エネミーならばきっと暗くて乾燥しているところにいるはずだ!」

そう、機械は水が苦手。日光も鉄分が熱を集めてしまうのだ。

「あ!廃ビルの裏は?」

「だったらあのアパートの影の方が怪しい。」

私は走りながら一生懸命に考える。すると、わずかだけど南区に繋がるステーションから磁波を感じた。

「セルシオ!あっちだよ!」

磁波は、私の苦手な波動。頭が痛くなるんだ。

「ここか!」

そこはステーションの改札前だった。時間的にも人は少なく、動きやすい。だけど…

「ねぇ、セルシオ…あのさ、勘違いかもしれないんだけどね…街の人達の指先がサファテお姉さんと同じような色に変色して…」

「やっぱり、クロロフィル?!」

「クロロフィル?」

セルシオは私に注意を呼びかける。

「うん、多分。昔は高級着色料として使われていたんだけどエネミーによって悪用されたんだ。ウイルス性の薬物だから気をつけて。」

セルシオは物知りだなぁ…。そう感心していると…

「クロロフィルには独特の刺激集がするんだ。多分こっちの方に奴がいる。」

さらに隅っこの方に進む。すると、その通りエネミーらしき人物がいた。

「だれだ」

エネミーは私に言う。私は聞く。

「サファテさんを治す方法を教えてもらいたい。それからお前はなぜ人型のエネミーなのか。」

私は心底イライラしていた。どうしようもない嫌悪感が腹の奥で熱されていく。早く…早く、早く!助けないと!

「言え!」

私は荒々しい口調になってしまい、セルシオは私の後ろにいる。

「俺の毒は最強だ。師匠が開発したんだからな!治す方法はないね」

私は怒る。今までに感じたことがない。

「で?人型なのは何故かって?俺はエネミーからの攻撃に耐え抜いたんだ!」

何か誇らしげに言う。私は今にでも殺したかった。

「めでたく不死身のエネミーとなったぜ!お前らもそうならないか?」

「ならない。」

私はセーバーを抜く。そして、叫んだ。

「サファテお姉さんは言ってた。私はもうじき死ぬだろう。だから、お前に伝えておいて欲しいと!」

「何?」

私はセーバーを構え、言う。

「お前に私が殺せても、私の優秀な部下が100倍にして殺すって!今まで殺してきた仲間の分も、仇を討つって!」

だから私は倒さないと…早く…!サファテお姉さんが死ぬ前にっ!

「………」

とんでもない殺意とともに私は何故か目眩がした。そして、フラフラと足が動き、手も動いた。とたんに指先から足の先、頭のてっぺんまで熱くなり、力が湧いた。

「ギャッ」

いつの間にか私のセーバーは敵の左胸あたりを貫通していた。

「アリア!」

「ゲホッ、ゲホゲホ…早く戻ろう…」

意味がわからなかった。でも、会いたかった。

早く、サファテお姉さんに!

「サファテお姉さん!!!」

アナとカルラは深刻そうに見つめていた。

「どうしたの…」

「サファテ先輩、もう息してない」

カルラは言った。私は嘘だと言って欲しかった。冗談だって、本当は死んでなんか居ないって、言って欲しかった。だってさっきまであんなに笑っていたじゃない…

「アリアちゃん、先輩がね…よく頑張ったねって、アリアちゃん達にも伝えておいてって言ってた。」

「自分の姉の仇も、しっかり討ちなさいって…訳分からんかったけど」

私は多くの涙を流し、冷たいお姉さんの体に雫を落とした。カルラ達も怒りと哀しみに苛まれていた。




私達は何も言えないまま部屋に戻った。

「当分南区には行けないようになりそうね」

事情を知ったアナはつぶやいた。とっても重い空気。

「ところで、あのエネミーはどうやって倒したんだ?」

「アリアが倒したんだ。…なんか怖い顔してアリアじゃないみたいだった。」

サファテお姉さんの言葉で、私はまだ伝えていないことがあったことを思い出す。今までは黙っていたけど、そろそろ伝えた方がいい。お姉ちゃんの仇を討つのだから。

「あの、さ。」

3人は私の方を見つめる。

「どしたの?」

「私、その…、王女、なの。」

「へぇ〜……ええっ?!」

そして疑うように目を見開いて言った。

「冗談でしょ??だって王家はもう死んで途絶えているはずだよ?」

アナは半笑いで言った。でも私は打ち明けてこなかった、このことを初めて話す。

「お父さんとお母さんは暗殺だと言われている。だけどお姉ちゃんは違う。お姉ちゃんはエネミーに殺されたんだ。」

カルラはわけが分からないと言ったようで、詳しく聞き出してくる。

「なんでアリアが知ってるんだ」

「私…目の前で見たからっ…お姉ちゃんが体を真っ二つにされる所を…!」

そうだった。お姉ちゃんの傷だらけの体。血まみれになって骨がむき出しになっている、憧れのお姉ちゃんの身体…最後まで、私は見ていた。

「今まで隠しててごめんなさいっ…でも、仇を打ちたいの。お姉さんの言葉で我に返ったんだ。二度と、私の大切な人をあんな風にはしたくない。」

私は、全て話した。なぜ隠していたのかも分からない。でも、私は決めた。お姉ちゃんの仇を討つ。

「アリアが言うなら嘘じゃないよね」

3人は納得し、笑ってくれた。これがあなた達じゃなければ、きっと信じて貰えないような気がするよ。

「臨時の管理人を務める、レオンハルトだ。亡くなった先輩の葬儀は後日行う。ここで黙祷しておこうか。」

部屋に戻った私たちに挨拶に来てくれた最年長の先輩。私たちは目をつぶり、祈った。黄泉の国でも、どうか、どうかお幸せに…

まだ少しみんなの目を赤いけど、少し切り替えるように頑張った。

「セルシオ、ちょっと…」

「?どうしたの?」

セルシオの髪の毛をひと房とり、言う。

「セルシオの髪の毛、結んだほうがいいかなって。」

後ろの高い位置で結ぶ。昔は結われる側だったから上手くは出来ないけれど…

「あ、ありがとう。」

「似合ってるよ」

私は笑った。

「今度、同期の一騎打ち大会があるってさ」

カルラはどこからともなく現れて、私とセルシオに話しかけた。

「何それ」

アナが聞く。

「知らないのか?この兵名物の一騎打ち戦!」

「へぇ〜、カルラと闘いたくないなぁ」

「俺も!」

「そうそう!セルシオ、女子なんだよ!この前私見ちゃったの、深夜に、お腹空いて一人でクッキー食べてたの!」

う〜ん、私からするとすごくいらない情報。だけど、彼女からすると重大情報。カルラからすると…ね。

「誰のだ!貴重なクッキーを!」

「実は…」

「実は?!」

セルシオは恥ずかしがりながら言った。

「手作り…」

アナは大爆笑。カルラは呆然。

「手作り…!」

「女子力の塊か!」

私もちょっと二人に釣られて笑ってしまった。

「アリアまで…」

その日の夜も、4人で幸せな時間を過ごせた。本当に良かった。




しかし、その人達は突然現れた。

「今日紹介するのは、短期留学生の、ケイとクララ。二人はアリアたちと同期生だから、仲良くしてやってね」

少し遠くにある、ライバル兵のスクエアネック兵団というところから来た二人の男女。私達と同じ部屋のため、何かと話さないと気まずい雰囲気に陥った。

「えーっと、私はアリアです」

「カルラという」

「アナです」

「セルシオだ」

二人はじぃーっと私達の顔を見て、口を開いた。

「はじめまして。僕はケイだ。」

「クララ…。」

ケイは順番に名前を読んで、覚えようとしてくれている。

「クララ!出騎士は俺たちだっけ?」

そう、たまたまなのか、計算のうちなのか、今日は一年生の出陣。クララはコクっとうなずいて頬杖をついた。

「ところで、みんなはどんな技を使うの?」

技…?適当に斬るぐらいしか教わってないけど…

「私は十字回転斬りができる。」

カルラは難なくいうが、十字回転斬りはものすごく難しい技で、天才と言われるものしかできないらしい。

「へぇ、他の人は?」

私達は不思議そうに言った。

「一般的な剣術ぐらいかな」 

すると、ケイは笑いだした。

「アハハハ!やっぱりテクニカルチャートは養育がままならないって噂は本当だったんだ!」

「ケイ、笑いすぎ…。失礼になる。」

ケイは私達をあざ笑う。クララはペシッと肩を叩いて注意をした。するとアナが、

「何を言うの!ひどいでしょ!」

可愛らしく怒る姿に、ケイは笑いを止めた。そして、可愛いと言って微笑んだ。その後アナはボソッとつぶやいた。

「今に見てろよ、てめぇ等なんか秒で殺したるから」

アナはほんとにイライラしている。それがわかった私達四人は、笑うことができなくなった。

「え?なんか言った?」

「なんにも言ってないよ!」

アナはぶりっ子して、にっこにこした。

「知らないの?『十大舞楽』!」

何それ?と言った顔になる私たち。

「舞よ…。舞によって体温を集めて力に変える。そういうこと…」

「舞ぃー?」

カルラはクララの方を見て言う。

「まぁいいじゃないか!僕達が見せてあげる!」

そんなこんなで、出陣の時間を迎えた。 

「さて、やるか!」

「暴走しないでよ…」

二人はペンを捻る。真っ先にクララは走り出す。

「氷風の舞、瓦解氷消!」

そう唱え、しなやかで不思議な舞をする。そして、クララはサイバーを地面に叩きつけた。すると同時に、ドドドッと氷山が現れた。すごい、これが…

「ナイス!僕も!豪炎の舞、気炎万丈!」

ケイはクララとは少し違う、力強い動きだ。今度は炎が、渦を巻いてものをもすべて焼き尽くした。

「これが…世界十大舞楽…!」

「凄いでしょ?」

ケイは見事なドヤ顔をみせる。

「アリア!ぼーっとしない方がいい!」

セルシオは私の前にいた機械を倒し、どんどん先に行った。

「オラァ!さっさと消えろぉ!」

得意の技でカルラは、調子よく倒していく。

「アリアちゃん、後ろ!」

アナの声でハッとする。背後でドガガ…と落下しながら攻撃してくる機械…!

「…ッ!」

危機一髪、大型機械の攻撃から飛んで避けた。あと少しで死ぬかもしれなかった…

「逃したか…王家の娘よ…」

え?今、機械の中から声がした…?いやまさか、そんなはずは無い…

「またぼーっとしてたのか!」

カルラにペシッと頭を叩かれ、我に返る。

「ねぇ、今声しなかった?」

「するわけ無いだろ!集中しろよ!」

カルラは私のことなんて気にせずバッキバキ倒す。

「ねぇ、そろそろ撤収の連絡が入るわ…」

クララは上を見上げて言った。

「なんで分かんだよ」

カルラはギッと睨んで言った。恐ろしい…

「太陽が傾いているから。」

「お、じゃあ帰るか!」

ケイはウキウキして先に進む。が、

「待って」

その服の裾を握ったクララ。当然のごとく、ケイは後ろにすっ転んだ。

「なんか雲行きが怪しくなってる」

「その前に大丈夫、じゃないのか……さすがクールガール…っっ…いてえ…」

ケイは苦笑いしながら後頭部の痛みに耐える。空を見上げて遠くをじーっと見つめるクララ。まるでケイのことなんて心配してないかのように…

「大丈夫?!ちょっと血が出てる…」

私とセルシオはケイの近くによって手当をした。アナはケイが苦手らしく、突っ立ってぼーっとしていた。一方。カルラは、クララに聴き込む。

「雲行き?んだよ、そんなんがなんか役に立つのか?」

ここにもクールガールがいた…。クールガールというか鈍感ガール?アナは嫌いなだけだろうけど…

「ええ。空と地は似ていないように見えて実は繋がっている。赤い空は危険の証…」

スッと指を上になぞる。

「ここ一帯が赤くなったら、良からぬことが起きる…気がする」

うーん、凄いこと言ってるのに、責任から逃げてるから説得力が皆無。

「さ、今度こそ帰ろう。ダラダラしてたら日が暮れる」

セルシオは頭を打ったケイを背負って言った。

「そうね、行きましょ」

スタスタとクララは歩く。

「待てよ、お前なんで雲行きだとか空と地の関係だとか分かんだよ」

トテトテ、と小走りにクララについていく私とカルラ。

「第六感…かしら」

そんな私達には目もくれず、前をまっすぐ歩いていく。

「なんだよ!それ!」

「カルラ、第六感は、勘の事。何となく、とか、感じる、とか根拠はないけど自分が予感することだよ」

私はカルラに説明した。論より証拠のカルラなら、きっとあまり頼ってこなかった術だと思う。

「よく知ってるのね」

クララなぜか嬉しそうに言った。その後、カルラはブツブツつぶやいたり、アナがケイのこと睨んでたりしたけど、無事兵寮についた。

「さ、包帯巻かなきゃ。頭部の出血は危険なんだぞ!」

ぐるぐるになったケイの頭。セルシオはケイの手当をしてあげて、運んであげた。ほんとに優しいと思う。こういうときは、言ってあげたほうがいい。

「セルシオは優しいね」

するとクルッと私の方を向き、じっと見つめた。そして、

「あ、あぁ…ありがとう」

困惑しながら微妙な笑みでお礼を行った。

「アリアちゃん、汚れたからお風呂入りましょ」

アナは灰かぶった髪を見て、言った。

「うん、そうだね。セルシオ、先入ってもいい?」

「あ、うん。いいよ」

うちの寮は大浴場が3つ。先輩方の入るのとはちがくて、底辺の私達は一番狭いお風呂に入る。

「一緒に入らないのか?」

ケイは、突然言い出した。

「ちょっとケイ何言ってるの。無礼よ」

クララは口元に人差し指を当てていたが、カルラは鼻で笑った。

「風呂で男女分かれるのは当たり前だろ!それともなんだ?ケイはいっつもクララと入っていたと言うのか?」

ケイは首を横にふる。どうやら、そうじゃないらしい。

「いや、だってセルシオ、女の子でしょ?」

?!みんな一瞬固まった。クララは呆れていたかな。

「あはははは!!!」

アナは爆笑。カルラもニヤニヤし、私も少し驚いた。

「俺は男だ!」

「ケイ、セルシオは男の子よ」

クララも白い目で冷たく放った。

「えー!そうなのか!?!手当うまいし、髪の毛長いし、優しいから、てっきり女の子かと!」 

いや、そうなんだよね。だけども流石に気づかなすぎる。

「……」

セルシオは、喋らずに、大浴場の方向を指し、私達に言っておいでと伝えた。落ち込んでいたのかな…。

「しっかり謝っておくのよ。強さとマナーは違う…」

クララもコツッとケイの頭を叩き、私達と浴場に向かった。

「悪かったよ」

「いや、こんな格好してる俺も悪いよな」




「久しぶりの出騎だったからちょっと疲れたね」

私は服を脱ぎながら言う。カルラは体力の塊(言い方変か)だから疲れないし、アナは力の使い方がうまいから、あまり疲れないのだそう。

「ええ、まぁ…それより、あなた達本当に技が使えないの?」

私達は頷いた。

「よかったら、私が教えようか…?」

細い指をピンっと立てて言った。

「お願いします!」

声を揃えてお願いした。

「じゃあ明日から特訓ね。頭と体、鍛えなきゃね」

そういうクララを見て、アナは

「ねぇ、クララはどうしてそんなに腕が細いの??」

言った。それについてはカルラも知りたいらしい。

「あぁ、私のこと…?これはね、両親に売られてから2ヶ月、食べ物が貰えなかったから…」

?!?!親に売られた?!

「カルラは、貴族だよね…?」

「なんでわかった…?私は確かにルーク三世だけど…」

そう、カルラはルーク三世。全然似合わない貴族の名前を持っている。それもそのはず、兄三人と両親を失い、半グレ(ホントは優しいけど)執事と安全な暮らしをしていた。

「あら、そう…なんか、貴族っぽいから」

髪の毛の泡を流し、ボディソープを泡立てるクララ。

「貴族っぽい…?アリアそう思うか?」

「いや、はじめは装備を見るまで気づかなかったよ」

私もシャワーを浴びながら言う。ちなみに、クララとケイには私が王家の生き残りとは伝えないようにしている。気づかれたらその場で言うつもりはあったけれど…

「アナは、…歴史的な魅力を感じる。」

アナは目をぱちぱちして不思議そうにしていた。

「アリアは、貴族じゃないけど…由緒正しい家柄な気がする…」

げ!クララ、どんだけ感がいいのよ!アナは民家の子だと聞いているけど、私のことまで勘付いちゃうとは。

「そんなわけないよ」

私は一応否定しておいた。

「クララちゃん、これ着てね。兵の制服」

ジャージのようなもので、色々機能がある。

「うん…」

基本、戦うときの装備は自由だけど、兵にいるときは制服を着るもの。

「え…!凄い、私のサイズになった…私だいたい服を着ると腕がぶかぶかなんだけど…」

あぁ、だからピッチリした服なんだ。

「いいなー、腕が細いやつは」

カルラは自分の腕を触った。

「カルラは筋肉がついてるんだよ、毎日腕立て伏せしてるし」

「あんなの軽い運動だろ」

そうかな…?私達は、改めて感心しながら外へ出た。

「あ、おかえり!じゃあ入ってくるね!」

セルシオはケイと打ち解けたみたいで、仲良く入っていった。

「仲良いのね…良かった…ケイは突っ走っちゃう性格だから止めてあげる人が必要なの」

い、いかにも豪炎の舞を使う人らしい。

「私も…」

クララは言いかけて、スッと息を吸った。

「消極的な私を引っ張ってくれる人が必要だったから、嬉しい…」

クールガールのクララも、ニコッと微笑むと天使級の可愛さになる。

「お前可愛いな」

「思ってたのと違うかも」

アナとカルラもこの反応。部屋に戻ると、レオン先輩からの置きメモがあった。

「仲良くなれたかな、夕食の支度を手伝ってほしいのでお風呂上がったら来てね、だってよ」

食堂は三階だから、一階のわたしたちにとってはちょっと遠い。二階にも先輩方の部屋はあるので、部屋の前で話す先輩方に挨拶したり、ちょっと話したりしながら通る。去年の入団者の先輩は六人。男女三人づつ。どの人も優しくて強くて頭もいい。花の70期と言われている。

「あ、レイス女王!ご機嫌いかが?」

その中の一人の先輩は時に冗談混じりだけど、よく話しかけてくれて、私のお姉ちゃんに憧れて入団したという。

「そんな呼び方しないでくださいよ…」

私は苦笑いしながら言う。が、後ろには目を丸くして私を見るクララ。

「アリア…やっぱりあなた王家の娘…!」

口を手で覆って、驚いた素振りを見せる。

「ええ、黙っててごめん」

「いや、それはいいのだけれど…ご両親は…?」

「おい、ちょっと黙ってろよ…すみません、仕事があるので私達はこれで!」

クララが私に尋ねると、カルラとアナが口を塞ぎ、手を引いて三階のエスカレーターまで小走りに行った。

「そういうことは…」

「いいよカルラ。クララはこの事をバラすような人じゃない。メリットがないことに手を出すなんて非効率的だし。」

それから少し、とんでもない殺意を向けると果てしないパワーが湧き出てくるとか、お姉ちゃんはエネミーに殺されたとか…様々なことを打ち明かした。

「へぇ、じゃあ、私が感じていた違和感はこれだったのね。…」

クララは別にもう驚かなかった。そして、

「今まで大変だったのね。」

といい、また先に歩いていった。

「なんか、素直な奴なのな、クールガール」

カルラはクララに興味を示した。

「いいじゃない、ケイとは違って安心感がある」

アナはホントにケイのこと嫌いなんだなぁ…最初のことを根に持ってるなんて、ちょっとネチネチしすぎじゃない?

「あ、来てくれたのね!」

レオン先輩はエプロンをして、ジュージューと肉を焼いていた。魚は海の塩分濃度が高すぎて川魚しか食べられないからほとんど出ない。

「何しましょうか?」

「えーっと、じゃあ、まずは…アナ、セルシオとケイを呼んできて」

あはは…雑用だな…アナは登ってきた道をなんですかさず登らなきゃいけないの…と、ブツブツと言いながらスタスタ降りていった。

「カルラはナイフとフォーク、スプーンを全員分用意して並べておいて」

カルラは動きが早いから、全員分なんてすぐ終わる。シャキーンとフォークを持って頷いた。

「アリア、こっちのスープよそってくれる?」

「はい」

クララも私についてきた。そんなクララに、レオン先輩は声をかける。

「まだなれないかな?でも、みんな歓迎してるから。任務も大事だけど、みんなと仲良くするのもいいんじゃないかな」

クララは下を向いてしばらく黙っていた。そして、

「仲良くって…わたしでいいんですか…?私が仲良くなんてしたら、みんな困る気がして…」

「自身がないのね…。でも、話によれば、十大舞楽をものにしてるらしいじゃない?すごいことだと思うけどな」

レオン先輩はクララの頭をなでて、スープを小皿によそった。

「味見してみて」

クララはふーっと息をかけて冷まし、ゴクっと一口飲んだ。

「美味しいです…」

クララも驚くほど、うちの寮のご飯は美味しいんだ。すると、バタバタと足音がした。と、同時に、

「終わりました!」

「連れてきました!もう、なかなか準備終わらないから、大変だったんですよ!」

アナは二人の方を見て白い目をした。セルシオは手を合わせ、声を出さずに謝った。

「さ、じゃあ放送するね」

んんっ、と、マイクテストをして、レオン先輩は夕食のお知らせをした。

「ただいま、夕食が出来上がりました。できるだけ早く集まりましょう」

マイクをオフにして、私達に言った。

「あまり今日は手伝うことなかったかな?でもありがとう!ケイもクララも頼もしいな」

ニコッと微笑むレオン先輩。やがて先輩達がやってきた。

「じゃあ、食べてね」

レオン先輩は戻っていった。

「アリアちゃん、食事中に言うのもなんだけどさ…」

アナは食事の手を止めて、私に向き合っていった。

「どうしたの?」

「お姉さんのこととか、なんで王家の血が途絶えるなんてことになってしまったのか知りたいの。これからアリアちゃんが苦しみを一人で背負っていくなんて、可哀想で…」

なんだ、そっか…でも、私はためらった。今まで、背負って来たんだから、今更どうしようなんてできないと思った。

「なんの話ー?」

そんな中、話題に乗れないケイが、スープを飲みながら私達に話しかける。

「あ〜、いや、なんでもないよ」

アナが言うと不思議そうにしていたが、納得したようで、その後はあまり関わらなかった。

「今夜にしましょうか?」

「そうね……」

そうしていると、ケイがニヤッと笑った。

「残念、もう知ってるよ。僕、凄ーく耳がいいんだよね〜」

そう言い、私にグイッと近づいた。

「教えてよ、そのこと。いくら馬鹿な僕だって、そのくらいの線引きはできる。クララは知ってるんでしょ?」

クララは少し気まずそうにうつむいた。

「気にしなくていい。でも、ちょこっとイライラするよね」

「あ…ごめん、ホントに。」

私はちょっとケイのことをなめていたのかもしれなかった。改めて謝る。

「いいよ。まぁライバル兵だしさ。言いたくないのもわかる。」

お肉にフォークをザシュッと刺した。横にいたカルラは目を丸くして見つめ、向かい側のクララははぁ、とため息をついて言った。

「言ってることと行動が真逆よ…。落ち着いて。貴方を仲間外れにした訳じゃないの。アリアは私にも言わなかったよ。なるべく言わないようにしてたの。たまたま私が気づいてしまっただけ…。」

ケイの肩をガシッと掴むクララ。

「自分の感情云々でアリア達を恨んじゃ駄目…!」

これ以上ないほどにキツい目つきをして言った。

「クララ…?」

ケイはとても驚いていた。

「ちょっと、喧嘩?!もう…」

レオン先輩がやってきて、クララとケイを引き離した。

「ごめんなさい。」

「すみません…。」

二人は頭を下げた。レオン先輩も多少怒っただけで、その後はもう仲裁はしなかった。

「取り乱して悪かったよ…」

ケイはちょっと顔を赤くして謝った。

「いいよ、それより早く食べて今日は何かカードゲームでもしようよ」

セルシオはケイの肩をぽんっと叩いて、笑った。



「ね、今日凄い晴れてたから星が綺麗に見れると思うの!屋上に見に行かない?」

アナはクララの手を引いた。

「え、でも…。」

「行って来いよ、クララ!」

そのクララの背中をケイは押した。

「え、あ、うん!」

アナとクララに、カルラもついていった。

「なんのゲームしようか?」

廊下で歩きながら私達は考える。すると、話の最中だというのにケイは星空を見上げた。

「あ、ホントに星綺麗だ。」

寮の廊下は、部屋の前以外周りが出入りできる窓ガラスでできているから外が寮内からもよく見えるんだ。

「流れ星!!」

ケイは叫んだ。

「流れ星は昔、流れている間に願い事を唱えると願いが叶うって言われてたんだって。」

私は星空を眺めながら言った。

「そんな簡単な方法で願いが叶うなら、こんな残酷な世界をどうにかしてくださいって言えばいいのにな。」 

「私達が生まれる前の話だし、全然平和なときだから、そういう考えはないんじゃない?自分達の私利私欲に費やしてたのね。」

私とケイとセルシオは部屋に戻り、棚にいくつかしまってある遊び道具を取り出した。

「王様ゲーム??」

「くじ引きで王様になった人は、なんでも言うことを聞いてもらえるんだよ」

へー!、と、男達は感心し、なんでも知ってるな、と言った。

「楽しそうじゃん!」

「やろうやろう!」

そうしていると、また、流れ星が流れた。それを見たら私の良くない思い出が、脳を支配していった。

それは…。昔々の王女たちのお話。

「お姉ちゃん、流れ星だって!」

「あぁ、昔はね、願いが叶うおまじないがあったんだって。だけど本当は故人の魂らしいわ」

そう言いながら、お姉ちゃんは行ってしまう。これは王邸の中だったから、私はそこそこ平和な生活をしていたんだ。お姉ちゃんとは違って。

「お姉ちゃんはどうしていつも怪我してるの?」

「勝って生き残っているから。私は誰よりもこの国のためになれる。」

その頃の私には分からなかった。だけど、今となると、きっとお姉ちゃんは世界十大舞楽が使えたんだと思う。見たことはなかったけれど…。特訓の姿も、勉学の姿も。

「そっか!じゃあ私も強くなりたいっ!」

「寝言は寝て言いなさい。あなたは私と違う。向いてないわ」

…………、うわぁー!ぁ、あ、あ…あぁ…目が、覚めた!

「アリア!大丈夫か?!」

「あ、大丈夫!」

セルシオに抱えられて、ハッとする。

「ただいま〜!」

アナたちも帰ってきた。さあ、王様ゲームだ!

「王様だーれだ?」

王様はアナだった。

「わ!やった〜、じゃあね…2番が、好きな人に愛を伝える!」

ある一人を覗いて、みんなけろっとしている。

「なんで私なんだよ…」

カルラはげんなりしていた。

「好きな人とかめんどくせーことしねぇよ…まったく。」

そう言いながら、私の方にちかよって…

「アリア、大好きだぞ!」

ギューッと抱きしめた。

「男じゃないの?!」

アナはびっくり仰天!私も驚いたけど、なんか愛らしくていいかな。

「ありがとう。」

私も抱き返した。さて。まだまだ続く。

「じゃあ二回目ね。王様だーれだ?」

「あ、僕だ。」

ケイだった。

「じゃあ、1番と、4番は第一印象をお互いに伝えてください!」

1番は私だった。で、4番はセルシオ。

「うーん、不器用そうで、なんだか気分屋なのかと思ってたけど、今は周りのこと考えられるし、優しくていい仲間だと思ってる!」

「ツンとしてるから、人見知りかな、とか思ったけど……い、今は……」

そう言うセルシオを、カルラがぐっと口元を覆い、目でサインを送っている。

「同じように良い人だと思ってるって!」

にぃっと笑うカルラに無理があったのは言うまでもないけど、諸事情に首を突っ込むわけには行かないから…

「ありがと」

「ねぇ、アリア。話聞かせてよ」

ケイは、根に持っていたらしく、番号の札を捨てて言った。

「うん…。分からないところもあるんだけど、お姉ちゃんは私の憧れなんだ。強いから。だけどお姉ちゃんは私の事好きじゃなかったみたいなの。私よりお姉ちゃんの方がずっと厳しく育てられたから…。あの、アンジュっていう…」

みんなは一瞬フリーズ。そして

「えええええええええー!!!!!」

「あの、アンジュ様?!」

「お名前伺ったことはあったけど…王女様だったのか!」

「なんか雰囲気似てなくもないけど」

みんなびっくり仰天。まぁ、サイバー戦士を広めたのもお姉ちゃんだし。

「うん、そうなの。食事のマナー、体力とか技とか社交辞令とか…私はダメダメだった。でも、怒られたりはしなかった。お姉ちゃんは私より小さな時に怒られてたのに。それが気に入らなかったみたいで。」

それからお姉ちゃんは冷たくなった。

「それから、ある日お姉ちゃんは出騎士した。その頃と言っても、十一歳だから、特訓はさせられてたよ。だから、お姉ちゃんが行ったあとで、こっそりついていったの。何か出来るかもと思ってね。そしたら、大きな飛行機に……砕かれてた、お姉ちゃんの身体が…その瞬間を私は見てしまったから」

その時は苦しくて寂しくて悔しくて、泣いて泣いて泣いて…………復讐を決意した。

「私は大好きなお姉ちゃんを殺した飛行機ももちろん許さない…でも、こんな世界の方が!大切な人を奪う世界が!わたしは許せなかった。」

「アリアちゃん、それに関しては同じ意見だよ」

「だな、言いたいこともわかったよ。」

私は、初めて打ち明けたこの最悪の思い出。みんなはすぐ理解してくれるわけじゃなかったけれど、しっかり話を聞いてくれた。

「その、何?飛行機って、飛行船かなぁ?」

ケイは飛行船、海賊船、などよくある船の名前を述べていった。

「でも…、大きいエネミーって、集合体だったって例もあるから…とにかく、私達がいられる限り、調べてみることは出来る…かも」

クララは自分のベットから、パソコンを持ってきた。  

「そんなの持ってたっけ?」

「マイクロチップ作用になっててね…。収納力高くて。」

そう言いながら起動させた。そして、

「たしか、弟が調べてた気が…あ、あった。」

レポートゾーンというところをクリックし、開くとたくさんの文字とグラフに埋められたページが出てきた。

「何かわかるかもしれない…」

「クララの弟はすげーんだよ!世界トップレベルの研究してるし、でっかい研究所にスカウトされてるし!」

ケイは目を輝かせて言った。そしてくださいケイをかるーくスルーしてクララは言う。

「ええ、まずは謎の飛行物体を見つけたとき……」

「そんなのより、正体は書いてねぇのか?」

カルラは割とせっかちだから…勝手に下へスライドさせていく。

「飛行物体は操縦がかなり難しいため、人工的に作られたのもなのかと考察する…は?!」

つまり、機械の意志ではなく、操縦士の意志…?!

「それってどういうこと…」

「その機械は、中で操縦してる人がいるとか…もしくは、遠距離操作…?電波飛ばせばできるし…。」

クララはやたら詳しい。

「そんなのどこで知ったの?」

「独学よ…。小さい頃、なんであいつら動いてるのかなぁ…て思って…」

凄いなぁ……私はそんなこと考えもしなかったのに。そういう物だって思い込ませていたのに。

「いずれにせよ、人間の手が加わっていることはわかったんだから、それが誰なのか突き止めよう。機械と違って一人ひとり人間は違いがあるから。」

そう言いながら、セルシオは私の肩を叩く。

「仇が打てる。良かったな」

でも私は一つ思いついたことがある。

「私、同期の一騎打ち戦のあと、世界十大舞楽のちからを持つ人たちを探す旅にでる。」

そう、きっとお姉ちゃんと関わりもあるだろうし、何より強い人から技を盗むのがいいと言っていた人が多い。

「了解〜。じゃあ準備しなきゃね」

「旅先に美味しいご飯がなかったらどーしよ?手羽先食べたい!」

「それはいいだろ」

カルラたち三人は言った。

「え…?」

「一人では行かせない。ついていく。」

カルラは私の手をとっていった。

「そんな、私みんなの足引っ張っちゃうから…」

「何言ってるの?アリアチームは強いじゃない!」

アナはその手に自分の手をかぶせる。

「私…ついていきたいのは山々なんだけど…」

「一騎打ちのあと、もう戻らなきゃならないし……。」

クララとケイは悔しそうに言った。

「気にしないで。でもお願いしたい。舞楽を教えてください。」

私は一所懸命に頼み込んだ。クララは

「ええ、それなら出来る。」

笑ってくれた。



「ね、今日凄い晴れてたから星が綺麗に見れると思うの!屋上に見に行かない?」

アナはクララの手を引いた。

「え、でも…。」

「行って来いよ、クララ!」

そのクララの背中をケイは押した。

「え、あ、うん!」

アナとクララに、カルラもついていった。

「なんのゲームしようか?」

廊下で歩きながら私達は考える。すると、話の最中だというのにケイは星空を見上げた。

「あ、ホントに星綺麗だ。」

寮の廊下は、部屋の前以外周りが出入りできる窓ガラスでできているから外が寮内からもよく見えるんだ。

「流れ星!!」

ケイは叫んだ。

「流れ星は昔、流れている間に願い事を唱えると願いが叶うって言われてたんだって。」

私は星空を眺めながら言った。

「そんな簡単な方法で願いが叶うなら、こんな残酷な世界をどうにかしてくださいって言えばいいのにな。」 

「私達が生まれる前の話だし、全然平和なときだから、そういう考えはないんじゃない?自分達の私利私欲に費やしてたのね。」

私とケイとセルシオは部屋に戻り、棚にいくつかしまってある遊び道具を取り出した。

「王様ゲーム??」

「くじ引きで王様になった人は、なんでも言うことを聞いてもらえるんだよ」

へー!、と、男達は感心し、なんでも知ってるな、と言った。

「楽しそうじゃん!」

「やろうやろう!」

そうしていると、また、流れ星が流れた。それを見たら私の良くない思い出が、脳を支配していった。

それは…。昔々の王女たちのお話。

「お姉ちゃん、流れ星だって!」

「あぁ、昔はね、願いが叶うおまじないがあったんだって。だけど本当は故人の魂らしいわ」

そう言いながら、お姉ちゃんは行ってしまう。これは王邸の中だったから、私はそこそこ平和な生活をしていたんだ。お姉ちゃんとは違って。

「お姉ちゃんはどうしていつも怪我してるの?」

「勝って生き残っているから。私は誰よりもこの国のためになれる。」

その頃の私には分からなかった。だけど、今となると、きっとお姉ちゃんは世界十大舞楽が使えたんだと思う。見たことはなかったけれど…。特訓の姿も、勉学の姿も。

「そっか!じゃあ私も強くなりたいっ!」

「寝言は寝て言いなさい。あなたは私と違う。向いてないわ」

…………、うわぁー!ぁ、あ、あ…あぁ…目が、覚めた!

「アリア!大丈夫か?!」

「あ、大丈夫!」

セルシオに抱えられて、ハッとする。

「ただいま〜!」

アナたちも帰ってきた。さあ、王様ゲームだ!

「王様だーれだ?」

王様はアナだった。

「わ!やった〜、じゃあね…2番が、好きな人に愛を伝える!」

ある一人を覗いて、みんなけろっとしている。

「なんで私なんだよ…」

カルラはげんなりしていた。

「好きな人とかめんどくせーことしねぇよ…まったく。」

そう言いながら、私の方にちかよって…

「アリア、大好きだぞ!」

ギューッと抱きしめた。

「男じゃないの?!」

アナはびっくり仰天!私も驚いたけど、なんか愛らしくていいかな。

「ありがとう。」

私も抱き返した。さて。まだまだ続く。

「じゃあ二回目ね。王様だーれだ?」

「あ、僕だ。」

ケイだった。

「じゃあ、1番と、4番は第一印象をお互いに伝えてください!」

1番は私だった。で、4番はセルシオ。

「うーん、不器用そうで、なんだか気分屋なのかと思ってたけど、今は周りのこと考えられるし、優しくていい仲間だと思ってる!」

「ツンとしてるから、人見知りかな、とか思ったけど……い、今は……」

そう言うセルシオを、カルラがぐっと口元を覆い、目でサインを送っている。

「同じように良い人だと思ってるって!」

にぃっと笑うカルラに無理があったのは言うまでもないけど、諸事情に首を突っ込むわけには行かないから…

「ありがと」

「ねぇ、アリア。話聞かせてよ」

ケイは、根に持っていたらしく、番号の札を捨てて言った。

「うん…。分からないところもあるんだけど、お姉ちゃんは私の憧れなんだ。強いから。だけどお姉ちゃんは私の事好きじゃなかったみたいなの。私よりお姉ちゃんの方がずっと厳しく育てられたから…。あの、アンジュっていう…」

みんなは一瞬フリーズ。そして

「えええええええええー!!!!!」

「あの、アンジュ様?!」

「お名前伺ったことはあったけど…王女様だったのか!」

「なんか雰囲気似てなくもないけど」

みんなびっくり仰天。まぁ、サイバー戦士を広めたのもお姉ちゃんだし。

「うん、そうなの。食事のマナー、体力とか技とか社交辞令とか…私はダメダメだった。でも、怒られたりはしなかった。お姉ちゃんは私より小さな時に怒られてたのに。それが気に入らなかったみたいで。」

それからお姉ちゃんは冷たくなった。

「それから、ある日お姉ちゃんは出騎士した。その頃と言っても、十一歳だから、特訓はさせられてたよ。だから、お姉ちゃんが行ったあとで、こっそりついていったの。何か出来るかもと思ってね。そしたら、大きな飛行機に……砕かれてた、お姉ちゃんの身体が…その瞬間を私は見てしまったから」

その時は苦しくて寂しくて悔しくて、泣いて泣いて泣いて…………復讐を決意した。

「私は大好きなお姉ちゃんを殺した飛行機ももちろん許さない…でも、こんな世界の方が!大切な人を奪う世界が!わたしは許せなかった。」

「アリアちゃん、それに関しては同じ意見だよ」

「だな、言いたいこともわかったよ。」

私は、初めて打ち明けたこの最悪の思い出。みんなはすぐ理解してくれるわけじゃなかったけれど、しっかり話を聞いてくれた。

「その、何?飛行機って、飛行船かなぁ?」

ケイは飛行船、海賊船、などよくある船の名前を述べていった。

「でも…、大きいエネミーって、集合体だったって例もあるから…とにかく、私達がいられる限り、調べてみることは出来る…かも」

クララは自分のベットから、パソコンを持ってきた。  

「そんなの持ってたっけ?」

「マイクロチップ作用になっててね…。収納力高くて。」

そう言いながら起動させた。そして、

「たしか、弟が調べてた気が…あ、あった。」

レポートゾーンというところをクリックし、開くとたくさんの文字とグラフに埋められたページが出てきた。

「何かわかるかもしれない…」

「クララの弟はすげーんだよ!世界トップレベルの研究してるし、でっかい研究所にスカウトされてるし!」

ケイは目を輝かせて言った。そしてくださいケイをかるーくスルーしてクララは言う。

「ええ、まずは謎の飛行物体を見つけたとき……」

「そんなのより、正体は書いてねぇのか?」

カルラは割とせっかちだから…勝手に下へスライドさせていく。

「飛行物体は操縦がかなり難しいため、人工的に作られたのもなのかと考察する…は?!」

つまり、機械の意志ではなく、操縦士の意志…?!

「それってどういうこと…」

「その機械は、中で操縦してる人がいるとか…もしくは、遠距離操作…?電波飛ばせばできるし…。」

クララはやたら詳しい。

「そんなのどこで知ったの?」

「独学よ…。小さい頃、なんであいつら動いてるのかなぁ…て思って…」

凄いなぁ……私はそんなこと考えもしなかったのに。そういう物だって思い込ませていたのに。

「いずれにせよ、人間の手が加わっていることはわかったんだから、それが誰なのか突き止めよう。機械と違って一人ひとり人間は違いがあるから。」

そう言いながら、セルシオは私の肩を叩く。

「仇が打てる。良かったな」

でも私は一つ思いついたことがある。

「私、同期の一騎打ち戦のあと、世界十大舞楽のちからを持つ人たちを探す旅にでる。」

そう、きっとお姉ちゃんと関わりもあるだろうし、何より強い人から技を盗むのがいいと言っていた人が多い。

「了解〜。じゃあ準備しなきゃね」

「旅先に美味しいご飯がなかったらどーしよ?手羽先食べたい!」

「それはいいだろ」

カルラたち三人は言った。

「え…?」

「一人では行かせない。ついていく。」

カルラは私の手をとっていった。

「そんな、私みんなの足引っ張っちゃうから…」

「何言ってるの?アリアチームは強いじゃない!」

アナはその手に自分の手をかぶせる。

「私…ついていきたいのは山々なんだけど…」

「一騎打ちのあと、もう戻らなきゃならないし……。」

クララとケイは悔しそうに言った。

「気にしないで。でもお願いしたい。舞楽を教えてください。」

私は一所懸命に頼み込んだ。クララは

「ええ、それなら出来る。」

笑ってくれた。



「もう寝るね……」

アナはバサッとベットに飛び込み、熟睡した。

「おやすみ」

セルシオもケイもクララも寝た。

「カルラ……」

「なに?」

何なんだろう…この危険な感じ。なんか、ドキドキする…?

「お、おやすみ」

「ああ」

深夜12時を迎え、眠りについた。そして、

深夜2時ごろ。眠れなくて目が覚めた。取りあえずトイレにでもいこうかな、と廊下に出た。

「あれ……誰?」

外で、剣術を熟す人影が一つ。

「短…剣?」

うちの寮でも短剣使いは珍しい。私の知る中だと…

「セルシオ…?」

「アリア。どうしたの?」

シュッと動きを止め、こちらに向き直る。

「眠れなくて…セルシオこそ何してるの?」 「散歩…」

「嘘だよね」

私はセルシオの嘘つくときの癖を知ってる。頬を掻くこと。

「うん…。実は前からみんなに秘密で夜特訓してたんだ。」

私はベンチに座る。セルシオも隣りに来て言った。

「カルラやアナは普通に強いし。アリアも、一定の条件を満たせば二人より一時的に最強になるし。ましてや舞楽なんて使う人がいるものだから。」

「そっか……私はそのままのセルシオが好きだけどね。無理して風邪引いたりしないで。もし特訓するようなら付き合うからさ。」

そう言うと、セルシオは顔を真っ赤にして頷いた。

「じゃあ、ちょっと見てほしいんだ。」

ベンチから降りて剣を構え、大きく息を吸った。

「絶頂の舞!唯我独尊!」

キレキレの早い舞だった。剣を振るうと、素早く目の前の的が切り刻まれた。

「凄い!どこで知ったの?!」

「お風呂で、ケイに言われたんだ。セルシオって名前には最高って意味があるから、この技ならすごく速く動けるって。」

ケイはセルシオのこと、あったばかりで全然知らなかったはずなのに。

「でも威力は弱いんだ。速さを重視してるから…」

「よく頑張ってるんだね。凄いよ。私も頑張らないと。」

夜遅く。私は新しい舞楽を知った。だけどこれは一騎打ち戦まで秘密とのこと。なんかハードル上がったなぁ…




「おはよう。」

レオン先輩は挨拶に来てくれて、私は昨日のことを伝えた。

「うーん、賛成は出来ないな。私はアリアたちの命を預かってるから…」

あいにく、反対された。そうだよね、まぁ、そりゃ…でも、内緒で行くなんて嫌だし、しっかり分かってもらえると思うんだ。レオン先輩だから。私は一所懸命お願いした。

「お願いします!!私はどうにでもなるんです…!身内もいないから死んでも誰も困りません!」

「死んだら私が凄く困るが、仇を打つまで安易に出騎士しても成果は得られない気がする!」

「成果のこととか分からないけど、アリアちゃんが恨みを晴らして、元気になってほしいです!」

「今も元気なときあるけど、何よりアリアが自分で決めたことなんだから、俺はついていく!」

レオン先輩は苦笑いしながら、頷いた。

「みんなの言い分はよくわかった。じゃあ一年だけ猶予をあげる。そしたらまた、一度帰ってきなさい。わかった?」

私は凄く嬉しくて、喜びと決意で身体が震えた。

「ありがとうございます!必ず仇を討ちます!」


「さあ……一騎打ち戦はたしか明後日よね……それまでに舞楽の基礎を伝えるわ」

クララは言う。セーバーを持って、私達に技を教えてくれるのだ。

「きっとできる。頑張ろう。」

まぁ、なんとも言えないけど、基本的なことを教わって、それをどう伸ばしていくかでその人の舞楽が決まるらしい。  

「あの的を切れたものは、……?なんだっけ…?」

「勉強な!で、できなかったら…徹底的に肉体改造だ!」

だ、大丈夫かな…?まぁ、いっか

「ッ!余裕だぜ〜!」

カルラはバッキバキに的を壊す。セルシオも、アナも…

「アリア、やってみて…」

クララは私に言った。

「うん…。」

できる気がしない。私は本当に下手なんだ。

でも、みんな出来たんだから、きっと…

私は思いっきり走り、的にセーバーを当てた。当たった!だけど。

「あれ?」

切れない?!勢いが足りなかったのかな……何度もその後剣を縦に振り続けたけど…的は壊れない。

「よし、じゃあ三人は俺と勉強しよう!」

わぁ〜…すっごく恥ずかしい。王女として、人として大丈夫なんだろうか?落ちこぼれなのは昔からだから仕方ないと思ってるけどね…。

「気にすることないわ…今日は晴れよ。いい運勢になる…。多分ね」

クララは私に言ってくれた。

「ごめんなさい、気を使わせてしまって。」

ということで、舞楽の訓練が始まった。

「アリアはきっと慎重に行動しているから、勢いがないんだよ…でも、それを逆手に取った舞楽もある…。」

なるほど。

「勢いを一時的につけることは難しい…殺意から生まれる強さは、聞いたことがないし…」

うーん、と考えるクララ。すると。

「ちょっとクララちゃん〜!ケイ教えるの下手すぎるー!代わってよ!」

アナが凄く嫌そうな顔して来た。

「あー…やっぱり?ゴメンねアリア、代わって来るね…」

クララは申し訳なさそうに行ってしまった。

「なんか追い出された〜」

代わりにしゅんとしょげたケイが来た。あの、落ちこぼれの私は教えるの下手な人に教わるんですか…

「あー、勢いか…声を出すのは?どうだ?」

凄く致命的な言い方だけど、大丈夫かな?とりあえず、実践。

「えー、なんて言えばいいかな」

ケイに聞くと、

「じゃあ豪炎の舞、貸してあげるよ」

ということで、豪炎の舞と言いながら的を射抜くことになった。

「豪炎の舞っ!!!気炎万丈!!」

私は名一杯の大声で叫んだ。

「うわああああ!ー!」

当たった!よし、あとは力を込めて……

「おい、アリア!煙が出てるぞ!」

的に当たったセーバー、煙が出てきた。

「豪炎の舞を使ったから…?的、溶けてる…」

大丈夫か…、何が起きたのか、なんだか不思議とていうか、的硬くない?

「そんな…これ、溶けても合格じゃないよね…?って、ケイ?」 

ケイはなんだかぼーっとしていた。

「ああ、悪い…アリアって、豪炎の舞って感じしないから…次は、氷風の舞って言って見て。」

今度は討とう。速くできるようにならなきゃ…

「氷風の舞!!瓦解氷消!!!」

今度こそ、今度こそ……!当たったセーバーから、冷気が出てきた。

「やっぱり!アリア、才能ある!」

ケイは私の手をとって、目を輝かせた。

「できる、できる!!アリアは、どんな舞楽も使えるんだよ!!」

どんな舞楽も…?で、でも…

「的は射抜けなかったよ?力が足りないんじゃない?」

ケイは首を横に大きく振った。

「違う、これは。アリア多分ね、異種の舞楽が使えると思う。あ〜、わかんないけど、僕の兵にもいたかもしれない!」

全っ然分かんない。異性の舞楽??やっぱりクララに聞いたほうが…

「クララは今忙しいから、一緒に走ろう。スタートダッシュに勢いをつける特訓だ!」

そう言いながら、めっちゃめちゃ速く猛ダッシュ。

「わ、待って!」

私も夢中で追いかけた。なんか、ケイのやり方、結構好きだ。役に立ちそうなことを我武者羅にやること。統計や理論なんて関係なく、できることから率先して動くこと。私には出来ない。

「ついてこい!」



…はぁ、はぁ……死ぬほど走った。果たして、なんの役に立つのだろうか…

「もう一度やってみろ!体中の鼓動を剣に集めて!頑張れよ!」

再挑戦。

「あと、アリア。しばらく豪炎の舞を貸すよ。」

私にケイは手を差し伸べた。

「ありがとう。」

受け取った、“豪炎の舞”。必ず、的を討つ!

「豪炎の舞!真紅の炎!!」

私は的だけを見つめ集中し、力を込めた。ケイを真似て舞う。ドク、ドク、脈打つ音、心臓の音……行けっ!!!!

鼓動を剣に……!

「燃えた…?」

炎をまとい、私の剣は的の中心に刺さった!

「アリア!よくやったな!新しい技、

“真紅の炎”だ!」

私は嬉しさに溢れてケイに頭を下げる。 

「ありがとう……ありがとう!」

「良かったな!」

さっきの死亡ランニングも、長期的に繰り出す技ならこの上ない程役に立つ!凄い……

「クララ達の所に行こう」

室内で、三人はたくさんの量の勉強をしていた。

「もう駄目…こんな量、知識が頭から溢れちゃうよ〜」

「腹減ったぞ、なんか食いもんねーのか」

「カルラ、疲れてないんだ…凄いや」

みんなぐだーっとしていて、アナは机に突っ伏している。

「じゃあお昼にしましょう…何食べたい?…」

クララは三人より多い量の勉強をしていて、凄く疲れたような顔をしていた。

「手羽先っ!!」

アナはキラッとした目をクララに向ける。

「了解……レオンさんに頼んでくる…」

「クララが作るんじゃないんかい!」



「美味しぃ〜!」

アナはさっきとは別人のように元気なっている。

「なぁ、アリアはどんなことしたんだ?」

「食うな食うな」

カルラはさり気なく私の分の手羽先を取りながら言う。

「私は、勢いをつける訓練。カルラは?」

カルラのお皿からサラダをもらい、手羽先の件は多めに見ることにした。

「ひたすら医学と歴学について暗記。ホント腹が減る。」

カルラはもぐもぐ言いながら話す。

「なんか、もう一生分の勉強した感じだよ」

セルシオは昨日からほとんど寝てないから、辛いに違いない…。

「無理しないでね」

「?あ、ああ」

隈が増えたかもしれないから…不安だ。

「心配かけて悪いな、俺は大丈夫……」

その時、ガタッとセルシオが倒れた。

「セルシオ!!」

私は間一髪、支えることができた。それにしても…かなり前から徹夜してたんだから、倒れるのは当たり前だ…。どうして止めなかった?どうしてもっと気を使ってあげられなかった?

「アリア、どけ。」

不安が募る私の後ろで、カルラが一声。

「状態を確認する。そこに寝かせろ。」

クララはセルシオを運ぶ。

「顔色が青白い…足、上げろ。セルシオ?おい、生きてるか?」

なんて素早い対応!そっか、さっきまで医学のこと学んでたから…!

「凄いね、カル…」

「喋ってねーで頭冷やすもん持ってこい!助けたいだろ!」

はい…私は厨房に言って、冷気収納機から冷たいジェルを持ってきた。

「はい、…」

「デコ、貼る!」

ピタッと貼ると、セルシオは荒い息遣いから静寂と呼吸を繰り返すようになった。

「よし、大丈夫。ただの貧血だろう。もうすぐすれば目覚める。」

ふぅ、と安心したカルラ。そして、

「はぁぁぁー……」

大きなため息をつく。最も嫌な予感。

「し、深呼吸だよね、カル…」

「なんでこいつ倒れたんだ!アリアなんか知ってるんだろーな?オイ、言え!言え!」

グイグイと近づいてきて、私に問い詰める。

「あ、えーっと…」

セルシオとは秘密の約束だったから…するとクララはめちゃくちゃ空気を読んで言った。

「ただの貧血でしょう?何もそんな罪なんてないと思うわ…きっと」

クララは力持ちだから、ヒョイっとお姫様抱っこして部屋迄連れて行った。

「何隠してるのか知らねーけど、次はないぞ?」

じーっと見つめて、許してくれた。

「なぁ、僕もクララに着いていくよ。」

トテトテ、と後を追うケイを見送ると。

「セルシオの残りの手羽先食べていいかなあ…」

アナはメロメロになりながら食べかけの手羽先を見つめて私に聞き返す。

「どうだろ…?」

「やめときな。それじゃあお前人の食べかけを狙う変態同様だぜ」

カルラは同情の目をアナにむける。

「ちぇ…まぁいっか…」

そう言いながら、部屋の外へ行く。

「何処行くの?」

「えー?部屋だけど?」

アナはポケッとして言った。

「なんで行こうって誘ってくれないのさ」

「あぁ〜!そっか〜」

テヘへと笑いながら私達の手をとった。


一方のクララ達。

「セルシオ〜?」

「……ケ、イ?クラ、ラ…?」

セルシオの意識が戻った。

「あぁ!俺、倒れて…アリア達は?!」

「まだ食堂…」

クララは成り行きを話し、ケイと雑談している。

「いーい?もう金輪際むちゃしてはだめ…!夜中に特訓も、徹夜も寝不足もだめ…!好きな人の前で倒れたのよ、あなた!」

セルシオは全て見抜かれた顔をする。

「なんでわかったの?」

「視線…?まぁ、第六感。」

ニコリと笑ってクララは答える。そして

「とにかく、あなたが舞楽を使えることも知ってるわ…カルラたちに黙っててほしいなら速く体調を治して…。」

「そうだな、クララの弟の薬もあるし!」

謎の緑色の液体をケイはセルシオの口に流す。

「苦い。」

「良薬口苦し!聞いたことしかないけど、多分そういう意味だったよな!」

「だいぶ古いことわざね…よく知ってるね」

しかし、それは本当のようで、セルシオの体中の血の巡りは活発になり、温まってきた。

「あのさ、クララの弟って、体弱いよね。昔の記事にあった。自分で実験の毒や薬を飲むからだんだん病弱にって…」

「そうなの…エリトは私と違って動けないの……昔ブラックな研究所で一時期マウスとして暮らしていたから…大層調べたのね…簡単には見つからないわ…裏社会のことは」

クララは目が赤く充血している。泣きそうだ。

「クララ、泣くなよ。僕たちが剣士になったのだって、社会を正当化させるためだろ?そのために今まで頑張ったんじゃないか!」

ケイはクララをギュッと抱いて一緒に泣いていた。

「セルシオ。あなたに薬を渡しておくわ…これは塗っても飲んでも大丈夫。旅に役立てて。」

「じゃあ僕からは包帯と止血剤、それからビタミン剤を渡しておくな栄養成分が偏りがちだから。」

「ありがとう」



「セルシオ、ごめんなさい!私何もできなくて。」

「いいんだよ、こちらこそ心配かけてごめんね。」

「まったく、せっかくの手羽先も残ったままよ。」

「それはいいだろ。私の知識がなかったら死亡だぜ…」

私達はセルシオの安全によろこび、駆けつけた。

「流石カルラ、71期生の天才だ。僕、君の力欲しいな…」

そう言ってケイは、カルラの頭をガシッとつかんだ。

「僕に寄越せ…この魔術は相手の力をコピーできる…吸い取られてる気分はどう…?」

いかにも怖ぁ…い顔をして、ケイは聞く。しかし、

「吸い取られてるも何も、私は天才ではないぞ?」

カルラはケイを憐れむような目で見てその腕を掴み返して引き剥がした。

「ごめんなさい……ちょっとケイ!そのオカルトじみたヤツまだやってるの……?!」

クララはケイを名一杯叱り、カルラに頭を下げた。

「いや、クララは悪くない。ケイも、なんかおかしいやつだろうとは思っていたが…そこまでとは思わなかった。」

「ケイ最低。」

アナはカルラに抱きついて肩代わりした。

「はぁ?これ成功したことあるんだからな」

「ケーイ、それは…ケイの後輩でしょ……気を遣ってくれたのよ…」

クララはケイを見つめて言った。

「後輩から気を使われるなんていい事だね!」

私は慰めたつもりだったけど…

「アリアってそういうとこあるよな」

ケイは、ちょこっと怒って私に言う。

「え?」

「いい事じゃねぇ!!」

しゅんとしているけど、私には最後まで意味がわからなかった。

「アリアちゃんにはプライドというものがあまりありませんからね」

アナはニコッと笑ってさり気なく見下してきた。

「まぁ、いいけど。」
















読んでいただきありがとうございました。いかがだったでしょうか?このまま毎日投稿していきますのでお楽しみください!

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