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赤ーREDー  作者: 蒼治
一幕 ROSE RED
6/91

1-6

 履いたこともないような高い踵の靴に、ナユタのつま先は激しく痛んでいた。

 ここに来て三日。

 あの日、賑わう人々にまぎれるようにして神殿に連れてこられたナユタは、神殿内の最重要人物と引き合わされた。セツナの容態は本当に数名にしか知られていないということをナユタは知ったのだった。

 神官長のユージ。

 女官長キリエ。

 薔薇瞳の豪華な自室で二人は待っていた。

 ユージは中年の男性だ。柔らかい表情で眼鏡の奥の目は微笑んでいる。濃茶の髪は短く整えられ体もゆったりとした高位の神官服に隠れているががっしりしている。神官というよりは気の良い大工のように見えた。ただその笑っている目の光が鋭い。

 キリエはユージよりさらに年上の、初老といっていい女性だ。ユージの柔らかさとは逆に凍りつく空気のように険しい表情をしていた。灰色の長い髪を固く頭の上で結い上げている。立って待っていたようだが彼女の姿勢は片時も崩れなかった。今も整った顔立ちだが若い頃は相当美しかったと思われた。

 そして紅蓮。

 一瞬静まり返った部屋で、最初に口を開いたのはユージだ。

「似てるね」

「しかしセツナ様より痩せてますし随分小柄ですね」

「踵の高い靴を履かせて胸には布を山ほどつめておけ」

 本当に紅蓮の言葉には棘が多い。

「とにかく、彼女も薔薇瞳だったことが何よりの救いだ。これさえあれば、大概のことはハッタリがきく」

「どうしましょう。さっそく明日にでも」

「いや、少し回復の噂を流してからにしよう。セツナ様の場所も移動させなければ」

「あ、あの!」

 ナユタはようやく口を開いた。神都の姿が目に映ってから、なにもかもに圧倒され続けだったのだ。都はナユタの想像を超える規模で、馬車から見た道行く人々の数は村では考えられないものだった。たどりついた神殿は夕の陰りのせいもあったが視界に入りきらないほどの大きさだった。ただ耳に入る鐘の音が怖いほどに厳粛だった。何もかもが村とは違う。

 今もこの部屋の贅沢に驚いている。

「わたしはこれからどうしたら」

「どうしたら?」

 ユージとキリエは紅蓮を見た。

「お前、説明してなかったのか」

「大体はした」

「時間が無いからちゃんと時間をかけて説明をしておけと言っただろう。一週間もあったのに」

「俺は説明は苦手だ」

 紅蓮は悪びれていない。

「紅蓮だけでなく私もいくべきでした」

「魔犬と女官長が両方居なかったらおかしいだろう」

 二人は小さくため息をついた。

「あなたに求めるものは唯一つ。セツナ様の身代わりです」

 ユージの言葉、そこまではナユタもわかっていたことだ。

「明日にでも」

 その早急さは予想していなかったが。




 そしてあのバルコニーからの謁見である。

 ナユタはサイズが合わず中ですれた靴の痛みに顔をしかめながら、公務の間控え室にいた。ここについてから三日たつが、あまりにも慌しかった。セツナのものだったドレスを慌ててサイズを少しだけつめる。セツナらしい微笑をキリエから学ぶ。ユージは薔薇瞳回復の噂を流し、ナユタが極力話さなくていいように段取りを整えた。

 ひっぱりまわされこづかれているような賑やかな三日間、なのに、ナユタはひどい孤独を感じていた。

「おみ足大丈夫ですか?」

 それが少し和らぐのは彼女がいるときだけだ。

 ナユタの足元にしゃがみこんでドレスをうやうやしく少しだけめくる。彼女はサワといい、ナユタと唯一年が近い少女だった。セツナが神殿に召し上げられたときからずっとセツナの世話をしてきたという。セツナがほぼ瀕死であることを知る最後の一人だった。

 サワは淡いふわふわとした茶色の髪を首筋で揃えていた。細いうなじを見せながらナユタの前にかがみこむ。

「あー、ちょっとすれてますね。ドレスはつめられますけど、靴のサイズはなかなか合いませんものね」

「だ、大丈夫です」

「だってナユタ様、軽く足引いているじゃないですか。私、キリエ様に靴だけは早急にナユタ様のサイズに合わせてもらうように伝えますね」

 遠慮してあまり何かを言えないナユタの様子を気遣うことの出来る少女は、すぐなんとかします、と笑った。

「それよりナユタ様、私に敬語はいけません。神官長様にもキリエ様にもです。薔薇瞳様はこの神殿で一番偉いんですよ?」

「あ、すみません……慣れてなくて」

「謝ることもないんですよー」

 サワは快活に笑った。

「あ、でも私もナユタ様って呼んじゃいけないんだっけ。セツナ様って呼ばないといけないんだ」

 どこかぞんざいなサワの口調は、セツナと彼女が仲良く友人のようにやってきたことを想像させた。それはナユタにも不快感ではなく安心感を与えてくれる。

「でも緊張しますね。バルコニー、なんか私までどきどきしました」

「わ、わたしなんて心臓とびでそうだったよ」

「えー、堂々としてたじゃないですか」

 静かな室内に、年頃らしい華やぎをもった笑い声が響いた。

「はしたない」

 冷ややかな声が響いたのはそのときだ。物音さえ立てず、ドアを開けて入ってきたのはキリエだった。いつもながらの深い山の清水のような冷ややかな瞳で二人を見る。しゅんとなったようにサワがうつむいた。

「それにいつまで着替えに手間取っているのですか」

「す、すみません」

 サワがナユタの後ろに回り、飾りも兼ねて無数についているボタンを外しはじめる。

「あの……」

 鏡越しのキリエにナユタは初めて自分から語りかけた。

「あの、私、いつまでここにいればいいんでしょうか」

 その時のキリエの顔はある意味で見ものだった。一瞬完全に虚をつかれた顔だ。

「……何をおっしゃいますか、セツナ様」

 彼女はナユタではない誰かの名で呼びながら近寄ってきた。固い床を叩く彼女の踵の音は、その美しい姿勢を音だけで予想させた。

「セツナ様は死ぬまで薔薇瞳です。ここより出られることはありません」

「……だって私はセツナじゃない」

 そういいかけたナユタの小さな顎を、恐ろしい強さでキリエは掴んだ。ぎょっとしたナユタだがいきなりすぎて押しのける手が出ない。

「そんなことは二度と言ってはいけません」

 近い場所で見つめることになったキリエの瞳の冷たさにナユタは自分の体の芯まで冷やされるような気持ちになった。

「あなたは薔薇瞳セツナであり、後にも先にも変わりません」

 正直ナユタも、今日まで漠然とした思いしかなかった。仮にセツナの現状、神殿の内情、これから先の見通し、すべて明確に提示されたとしても、心のどこかで理解を拒んでいただろう。いずれセツナが回復するか、別の薔薇瞳が見つかれば自分は用済みとなって故郷に帰れるだろうと思っていたのだ。

 しかし、もしセツナが回復すれば神殿は薔薇瞳が二人というかつて例を見ない黄金時代を迎えることになる。魔犬の数にもよるが、防戦主体の今までとは逆に夜見の血族に戦いを挑むことすら可能だ。セツナが回復すれば、ナユタは改めて華々しく迎えられるだけで、結局薔薇瞳として逃れられるわけではない。

 セツナがこのまま逝けば、事態はもっと切実だ。セツナ不在のまま一度付いた嘘を覆すのは難しい。セツナの身代わりとして生涯をここに置くことは決定だ。仮に他の誰かが薔薇瞳として見つかろうとも、神殿は前述の理由と同じく二人の薔薇瞳を手放すわけがない。

 セツナと名乗るかナユタと名乗るか。

 それくらいの違いだ。

 キリエの瞳にそれだけの覚悟をナユタは見た。

「わたし……」

 わたしはナユタだ、という言葉は口の中で溶けて消えた。キリエはその手を離す。

「お急ぎ下さい。昼食の支度が出来ております」

 一つ一つが薄い刃物で空気をそぐような切れ味の鋭い動きだ。ひらりと身を翻してキリエは控えの間を出て行った。扉が閉まるかすかな音に、ナユタの、そしてサワのため息が重なった。

「……怖かったあ……」

 先に口にしたのはサワだった。

「セツナ様のお具合が悪くなってから、あまりお目にかかる機会もなかったんですけど、久しぶりに会ったらすっごく怖い……」

「サワも怖いと思うんだ……」

「ちょっとなにそれ」

 二人は顔を見合わせて笑う。今だけでなくここに来てからずっと張り詰めていたような緊張が少しゆるんだ気がした。サワといると、少しだけ村にいた頃の自分が戻ってくるようにナユタには思える。

「でも、キリエ様って怖い……」

「うん。厳しい人だとは思うな」

 サワは手早くナユタの背中のボタンを外しながら言う。

「セツナは神官長のユージ様とは仲良くてね。結構人から見えないところでは馬鹿馬鹿しいこととか話して笑っていたんだ。でもキリエ様とはいつも必要最低限の会話って感じだったなあ」

「ふうん」

「まあキリエ様は薔薇瞳とか神殿に、わだかまりがあっても仕方ないのかなとも思うけど」

「なんで?」

 そこで、サワはしまった、言い過ぎたとばかりの沈黙を落とした。しかし鏡越しにナユタに見られていることに気がつくと、しかたなさそうに続きを語り始めた。

「キリエ様ね。お子さんが居たの。セツナ様が紅蓮と血の盟約を結んだ直後だから、もう十年以上前になるのかな。でもそのお子さん、夜見の血族に咬まれたの」

 その意味は、田舎の小娘であるナユタでさえ想像のつく最悪だ。

 人の血を喰らうということで、一まとめに夜見の血族と呼ばれる彼らだが、その中には階級が存在している。

 純血、と呼ばれるものだけが本来は純粋な夜見の血族と言える。百年をかるく超える寿命を持つ王家を絶対とする一群だ。魔犬もこの出自以外からは生まれない。光り輝くような美しい金色の髪と、茶色とは明らかに異なる濃厚な金色の目、そしてまたたく蛍光色。透き通るような白い肌は病的であるにも関わらず触れたくなる魔性を持っていた。

 それ以外はすべて元は人間からの変化である。

 自分も血を吸われ、けれど死ぬ前に純血の血を与えられた者。数は少ないがそういった存在はまれにいる。もちろん夜見の血族の中での階級は低く、召使のような立場に過ぎない。人としての人格を残してはいるが、血を与えてくれた純血の命令には逆らうことが出来ない。それは夜見の血族として末端であるが、当然人の中に戻ることもできない。

 もう一つはもっと悲惨である。

 たまたま、食い残されたものだ。

 夜見の血族がふざけ半分に言うことだが、食事にも作法というものがある。食いきれなかった分は責任を持って処分するべきだ、と。人一人分の血は一回としてはかなり多い。夜見の血族も暴食ではない。故に血を吸われてもそれだけでは絶命するところまでいかない場合も多い。その場合、夜見の血族は自分の責任として、犠牲者の首を刎ね、命を絶つ。

 そうしないと夜見の血族にとっても都合が悪いのだ。

 運悪くそうされず、生きながらえてしまった場合、人にも夜に一族にとって不運なことになる。生きながらえたものは、人としての人格さえ残さない。ただ、本能として人の血を、そして肉を求めるだけの存在に成り下がる。

 夜見の血族さえ、彼らには唾棄し、自分達とは一線をおく意味で屍者と呼ぶ。一族にとって彼らはむやみに狩場を荒らす異端なのだ。

 二十一代目薔薇瞳の時代に、夜見の血族の王家が内乱を起こしたことがあった。そのため夜見の血族自体の統制が取れず、屍者が異常に増えてしまうという事態に至ったのだ。王都周辺はともかく―そのころはまだ神都はなかった―辺境の村などは次々に壊滅するような事態へとなってしまった。屍者が増え人があまりに減りすぎれば夜見の血族にとっても自分達の存亡に関わってくる。そのため歴史の中でもはなはだ異例ではあるが、薔薇瞳及び魔犬が夜見の血族王家の一方に手を貸し、内乱の終息を促したのだった。内乱が収まった後は、夜見の血族王家と人間が共同で屍者の殲滅を行い、ある意味での秩序を再構築した。二十一代目薔薇瞳と当時の魔犬、彼らの決断は歴史家の間でも是か非か判断が分かれるところだが、少なくともその恩義を感じたらしい夜見の血族は、二十一代目薔薇瞳と締結した条約どおり、その後十年、人を襲うことを極力控えたという。その十年の間に、二十一代目薔薇瞳は、魔犬を核とした薔薇瞳守護団を成立させたので、けして人にとっても不利益ではなかった。

「それで食い残されて息子さん、屍者になっちゃって。紅蓮が捕らえてくれたんだけど、なまじ身内なだけに、すぐに処分できなかったのね」

 だからこそ、キリエの息子の話はナユタにも悲惨さを想像させた。

 母を母ともわからず、凶暴に暴れながら言葉にならない大声を上げる息子を、彼女はどんな気持ちで見たのだろう。

「セツナ様がキリエ様を見て一言だけ言ったんだ。『例外は認められない』って。あの頃私も子供だったけど、でも覚えている」

「すごいね、セツナって」

「うん」

 サワはナユタに薔薇瞳の普段着を着せる、普段着と言っても王族に劣らない豪奢なものだ。今日のものは、淡い桃色に白い糸で可憐な花が無数に刺繍され、小さな珊瑚のビーズがあしらわれていた。同じビーズで出来た背中のボタンを留めながらサワは続ける。

「でもキリエ様も凄いんだ。『かまいません』って、それだけ。すぐに紅蓮が首を刎ねて死なせて上げたんだけど。キリエ様どんな気持ちだったのかなあ」

 サワはさあできた、とナユタにドレスと揃いの小さな髪飾りをつけた。

「キリエ様、つらかっただろうね」

 ナユタにはそれを言うことが精一杯だ。整理しきれない情報を聞いてしまった。

「でも、キリエ様、それからも何も変わらないでセツナ様に仕えていたんだけどね。さて急がないとまた怒られちゃう」

 サワは行こう、と声をかけた。

「朝ごはん食べる暇なかったものね。おいしいと思うよ」




 しかし、サワの言った昼食はとてもおいしいどころの話ではなかった。

 確かに料理自体は、ナユタのいた田舎ではとてもありつけないほど、洗練された豪華なものであった。

 前菜、サラダ、スープ、魚料理、肉料理、そしてデザートと、百年ほど前に完成された夜の様式そのままだった。

 そう、本来は夜のもの。

 ナユタと向き合うのはキリエだけだ。

「本来はこれも夜に提供されるものです。しかし、食事においては様々な作法がありますので、その練習ということで今日は昼に出させました」

「……御飯食べるのに儀礼があるんですか?」

 母親に口を開けて物を食べるなとか言われたことはあるが、それは練習してまでするほどのことなのか。ナユタはぼんやりそんなことを思う。

「あります。神都の皆ならばまだ無礼講と言う部分もありますが、王族との会食もいずれまぬがれないでしょう。王族連中の様式には私も理解に苦しむ部分がありますが、しかしそれもやれということならやらねばならないでしょうから」

「はあ」

「返事はそんな曖昧に返してはいけません。はいかいいえ、それが出来ないなら品よく笑ってすませてください」

 いきなりびしっと言われて、ナユタはうつむいた。そしてテーブルの上にならんだ無数の食器に驚く。

「ではまず前菜ですが」

 キリエはその場合使う食器はこれで、と事細かに説明しはじめた。そもそも朝食を食べる暇もなくすでに日は真上である。おいしそうな食事を目の前に講釈が長々と続いていらだたない人間がいようか。

「ではどうぞ」

 ようやく言われてナユタはおそるおそる料理に取り組んだ。キリエがじっと見ていて、とても味わえたものではないと思ったが、それでもそのおいしさは沁みた。

「おいしいです!」

 ついうっかりそんな能天気なことを口走ってしまう。相手がキリエだということも忘れた。はっと気がついて黙る。無駄口叩くなといわれたばかりだ。

「それは結構」

 一瞬の間を置いてキリエはおもしろくもなさそうに言った。怒られなかったことでほっとした。

「では次です」

 立ち上がったキリエはほんの数口しか食べていない皿をいきなりナユタの前からさげた。本来は給仕がいるのであろうが、ナユタのこんな教育の場面など誰にも見せられない。キリエは脇に置いた別のテーブルから今度はサラダをとってくる。

「あ……あの、今のお皿は」

「あれはお終いです」

「だってまだ食べ終わってないです」

「淑女たるもの、すべて食べつくすなど、見苦しいといわれます。王都式ですが、それが一番わずらわしいこと揃いである以上学んでおかなければなりません。大体皿の五分の二ほど食べたら、『もう結構』という意味でナイフやフォークをおいてください。向きは……」

「あれ、どうするんですか!」

 五分の二、などという微妙な量も意味不明だが、そのもったいなさが理解できない。ナユタの村では数年前まで飢饉と言って差し支えないほどの不作が実際のものだったのだ。今だってけして裕福ではない。

「そんなことはあなたが気にすることではありません」

「嫌です」

 自分の村の人々が作ったものがあんなふうに扱われたら我慢できない。

「それにわたしはおなかが空いているんです」

「大丈夫です、ゆっくり食べれば満腹になります」

「とにかくもったいなくて嫌です」

「私だってもったいないと思いますよ。神都では普段はちゃんと適量出します。しかし今は勉強です。そういうものなのだと思ってもらわなければ恥をかくのはあなたです。いいえ、あなただけではない。薔薇瞳が恥をかくと言うことは神都が恥をかくということ」

「今一回でも我慢できない!」

「そんな大声を出すものではありません」

「とにかく返して、あれ!」

 ナユタは立ち上がった。その肩をつかまれる。ぎょっとするほどの力で無理やり椅子に戻された。

 そして次の瞬間鋭く空を切る音と共に、右手の甲に熱いような痛みが走った。キリエが持っていたものが短い、児童用の鞭だと気がついたナユタは息を飲んだ。まさかそんなもので今更打たれるとは思ってもいなかったのだ。

「私は、あなたをまだ薔薇瞳とは思っていません」

 キリエは表情を崩さない。

「こんな田舎の野良娘、育てるもの憂鬱ですが早急にとり組まなければならないのも事実」

 手の甲にじわりと朱線が浮かび上がってくる。それとは逆にキリエは青白いような気迫があった。まるで自分への嫌悪のようだとナユタは思う。

「セツナ様に比べるのもおろかなほど出来が悪いことは責めません。セツナ様にはなれませんが、身代わりは務めなさい。たとえ猿真似であっても」

 キリエはそこで微笑む。親しみはかけらもない。

「では、次を」

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