5 「パイロットダフィ」
ダフィがメグと共に楽園から逃走した理由。
「色々と協議した結果だがね、ダフィー君……キミにはメグジェシカ様の護衛兵として働いてもらうことに決定したよ」
ぼくが【楽園】で生活を送るようになって一週間が経った頃、信者達の夕食の準備の為に厨房でジャガイモの皮を剥いていた最中、突然現れたブラックマン神父はそう言った。
「メグジェシカ様の……護衛!? このぼくがですか? 」
護衛、つまりはガードマンだ。体育の成績は万年Dクラスだったぼくにそんな責任ある役割を仰せつかるとは思ってもいなかったので、危うくジャガイモではなく自分の指の皮を剥いてしまうところだった。
「そうだ。まさに適任だと私が推薦しておいた」
「そんな、確かに光栄でうれしい限りなのですが……そんなにも責任ある役目、このぼくに務まるでしょうか? 体格だってヒョロヒョロだし、クラスメイトにいじめられて女の子に助けられちゃうくらいなんですよ」
そういうと神父様は「フフッ」とわずかに微笑み、ぼくの肩にポンと手を置いた。頼りがいがあって分厚い手のひらの感触から、神父様の「心配するな」という無言のメッセージを受け取った気がした。
「そうか、まだキミには見せていなかったな。ジャガイモの皮剥きは他の者にやらせるから、今からついて来たまえ」
厨房での仕事を中断させて、ぼくは神父様と共に宮殿の外に出た。
【楽園】はメグジェシカ様を初め、上流層の神官数名が生活を送っている宮殿を中心に、一般居住区、農園、学校、等の施設がエリア毎放射状に広がっている。
【楽園】の人口は千人いるかいないかくらい少数で慎ましい生活を送っている。パソコンだとか携帯電話だとかいったハイテク機器はないものの、完全工場栽培で小麦や豆といった穀物を育て上げてしまうようなテクノロジーは存在しているので、科学技術がお粗末というワケではなさそうだ。
「どこに向かっているのですか? 」
神父の案内で歩き続けて10分は経ったろうか? 日が落ち、周囲はおんのりと暗闇に包まれはじめ、街灯の光が徐々に照らされた。
「心配しないでくれ。もうすぐ着く」
ぼくの気のせいでなければ、神父様は【楽園】の立ち入り禁止区域へと向かっているように思える。禁止区域にはソーラーパネルを使った電力発電所といった、【楽園】の生活に密接している重要な施設が置かれている。神父様を初め、その作業員や位の高い役職でなければ近寄ることすら許されていない。
そしてさらに5分ほど歩き続け、その目的地に到着したようだった。そこは禁止区域の厳重なゲートをくぐった先にある、巨大な倉庫のような建物だった。ジェット機の出入りだって可能と思えるくらいに大きなシャッターがぼく達を出迎えてくれた。
「神父様……ここは一体? 」
「まぁ、見ていてくれたまえ」
神父様はシャッター横に設置されている配電盤のような箱を開き、そこに左手を突っ込んで何かを操作した。多分それはぼくが【楽園】に行く前に連れられた小部屋の扉を開いた時と同じ、指紋認証によるロック装置なのだろう。
ゴゴゴゴォォォォと轟音が周囲の空気を振動させながら、シャッターがゆっくりと昇降し、内部の光が漏れて地面に白い長方形を伸ばしていく。
倉庫内が徐々に露わとなり、その全貌が明らかになった時。ぼくは思わず「すげえ……」と感嘆の言葉を漏らしてしまっていた。
「ダフィー君。これが女神メグ・ジェシカを守護する正義の機械神だ」
倉庫の中には、10体を越える巨大な象……いや、像の形そっくりにデザインされたロボットが格納されていた。
鋼鉄か強化プラスチックと思われる外郭は純白に塗装されていて、倉庫内の照明の光を乱反射して神々しく輝いている。
「すごい……こんな物が【楽園】にあったなんて……」
「この機械の守護神の名は【機神象】。女神メグジェシカと、【楽園】に不幸をもたらす悪魔達を排除する為に作られたのだ」
【楽園】の名からは大きなギャップを感じさせる巨大兵器の存在、そして神父様の口から思いも寄らない「悪魔」という言葉が発せられたことで直感した。
多分ぼくは、これから先安穏で牧歌的な生活を送ることは出来なくなるのだろう……と。
「ダフィー君。もうわかるね? キミが今後どうやって女神メグジェシカの命を守っていくのかが」
「はい……」
ぼくは覚悟を決めた。【楽園】の平和を守る為の正義の番人として、自他共に血を流すことをいとわない。という不退転の覚悟を……
そう、断る理由なんてあるものか!
護衛兵として活動を続ければ、そう……あのメグジェシカ様とお近づきになれるかもしれない。
そして、記憶の中で絡まったシーツのその先を確かめられるかもしれない。
夢の少女の顔と、メグジェシカ様の顔が、どうして同じ顔だったのかを、突き止められるかもしれない。
「神父様……まかせてください。このダフィ・ノーツ、身命に変えてもやり遂げてみせます……この【機神象】のパイロットとして【楽園】の盾になることを、今誓います!! 」
そうして、【機神象】のパイロットとして訓練を受け初め。三ヶ月があっという間に過ぎ去った。
象の頭にあたる部分に備えられたコクピットに乗り込み、四足歩行で真っ直ぐ歩くだけでも一週間は掛かってしまった。でも神父様は、それでもかなり早い上達なのだと褒めてくれた。お世辞とはいえ、尊敬している人から力を認めてもらえる嬉しい。
そして来る日も来る日も練習を重ねて、今では他の同期パイロットよりも素早く、性格に【機神象】を操ることが出来るようになっていた。正直自分でも驚いている
「素晴らしいよダフィー君。さすが私の見込んだとおりだ」
神父様の声がコックピットのスピーカー越しに響きわたる。【機神象】を操作する為のグリップ式コントローラを握る手も自然と緩まった。
「神父様、お褒めいただきありがとうございます。もっともっと精進して、いずれは“二足形態”も自在に操れるようにしたいです」
「いい志だ。だが焦らずともいい……二足形態は今よりもずっと高等な技術を要する。まずは四足での動作を完璧にし、“翼”を使えるようになることが先決だ」
「はい! 神父様! 」
“翼”とは【機神象】の四足形態時に取り付けられる外付けパーツのことで、文字通り翼を生やして空を飛ぶコトが出来る優れモノだ。
【機神象】の身体が複雑に変形し、ステルス爆撃機を思わせる硬質の両翼と機構が絡み合う合体プロセスを見ることは、男心をくすぐる機微に溢れていて大好きだ。
【楽園】の平和の為には、この翼を持った【機神象】も一度も使われることなく終わることが一番ではあるけど、やはりこういった兵器の類には不謹慎なロマンが倫理を圧倒する。一度こいつに乗って人暴れしてみたい、と考えてしまう方が健全じゃないかと思うほどに。
「しかし神父様、こんなにも巨大な兵器を用意してまで戦わなければいけない相手などいるのでしょうか? 【楽園】を脅かす敵は地震と台風といった天災以外ないのかと思っていました」
以前ぼくはそんな質問を神父様に投げかけたことがある。その時神父様は「うむ……」と一言呟いて少しためらった後……
「この【楽園】の平和を脅かす、【上の力】と呼ばれている者達がいる……一度はやつらを退けたのだが、わずかな残党達が再度襲来する可能性に備える為にキミたちの力が必要なのだ」
その時の神父様の顔は無表情ではあったけど、空気に穴を空けてしまうかと思うほどに鋭い眼光で虚空を見つめていた。
正直言ってその時の神父様は、怖かった。静かなたたずまいの中に、怨嗟の煙を燻らせていたことはぼくの目にも明らかだった。
だからその時は【上の力】が一体どんな組織なのか、これ以上追求することは出来なかったんだ。
【上の力】・神父様の憎悪……胸に引っかかるものは残っていたものの、【機神象】パイロットとして訓練を積んでいる日々は充実していた。
【楽園】に来る前は映画オタクであることをイジられ、バカにされ続けた毎日を送っているばかりだったけど、ここではそんなことをする人間は0(ゼロ)だ。
皆が共通してメグジェシカ様を崇めているからだろうか? 性別や年が違えど、誰もが隔てなく交流し差別やイジメもいっさい無い。
不謹慎な例えかもしれないけど、映画の趣味さえ合えば初対面同士でも話題に困ることなく語り合えるのと同じなのかもしれない。
そして【機神象】パイロットとして訓練を積んで半年が経った頃だ。
ぼくはこの日のことを誰かに記憶操作でもされない限り、一生忘れることはないだろう。
今後の運命、そして価値観を大きく変動させるターニングポイントと呼べる一日がやってきたんだから。
「ダフィー君、仕事だ。【上の力】の残党と思われる反応をレーダーが捕られたらしい。キミを女神メグジェシカの近衛兵として任命する。すぐに他のパイロットと共に【機神象】に乗り込むんだ」
とうとう来てしまったようだ。
神父様が言うには【上の力】と呼ばれる組織の人間は、かつて【楽園】の住人だったが、怠惰で邪悪であることを理由に追放された堕落者なのだと言う。そいつらが逆恨みをして幾度となく【楽園】の住人に危機をもたらしているらしい。
そんな【楽園】の闇の部分を知った時は、さすがにショックを隠すことができなかった。追放された人間ということは、かつての仲間ということだ。今は違うとはいえ、同じ女神を信仰した者と戦わなければいけないのは辛いことだ。
とはいえ、そうは言っていられない。ぼくが最優先するのはメグジェシカ様の安全だ。メグジェシカ様は【楽園】に警報が発せられたとなったら、即刻宮殿の地下にあるシェルターへと身を隠したらしい。
ぼくに課せられた任務は、そのシェルターの中へ何者も通さないように砦になることだ。
「ダフィー、これはある意味チャンスだぞ。俺達の活躍で【上の力】ってヤツらを一掃できれば、宮殿直属に昇級できるかもしれん。そうなりゃ、メグジェシカ様の御幸を間近でいただけることになる、キバっていこうぜ! 」
仲間の【機神象】パイロットが軽快な口調でそう言った。確かにその通りだ。ぼく自身不謹慎ながらもそんな考えを抱いていたの事実。護衛兵という誉れ高き役割をいただいたものの、メグジェシカ様を間近で見られることなどほとんどなかった。
夢の中の記憶の事実を突き止めるには、どうしてももっとメグジェシカ様の近くに寄りたい。ぼくも仲間と同じく、不安と共に高揚感が沸々とわき上がっていることを実感した。
「やりましょう! 【上の力】なんて、ぼくたちにかかれば屁でも……」
その時だった。
ぼくたちの緩みきった心を読みとったかのように、宮殿内で何かが爆発し、大型車のタイヤが破裂したかと思うような反響音が鳴り響いた。
「な、なんだ!? 大丈夫か!? 」
無線でさっきまで軽口を叩いていた仲間に通信を試みるが、返事は一向にない。肉眼で仲間の【機神象】のコクピットを覗いてみると、そこには一切の生気を感じさせずにダラリとうなだれた仲間の姿があった。
「そんな……嘘でしょ? 」
外傷は一切見られない、まるでオモチャの電池が切れてしまったかのように、仲間はピクリとも動かない。
「敵は……どこだ!? 」
動揺し、ワキ汗が止まらなくなる。一体どこから、どうやって仲間の命だけを奪い取ったのか?
ぼくはとにかくメグジェシカ様の隠れているシェルターだけは死守しなければ! と全神経を集中して敵のさらなる攻撃に備えた。
「どこだ? どこにいるんだ? 」
操縦グリップを握り、いつでも【機神象】の機銃を放てるように構えるも、敵の姿はどこにも見あたらない。
「どうした!? 何が起きたんだ!? 」
ぼくたちの危機を察したのか、他の場所で警備に当たっていた護衛兵の仲間が一人、【機神象】の巨体を震わせながらぼくの方へと近づいてきた。
「だめだ! こっちに来ちゃ……」
この場所に敵が潜んでいる。それを伝えるにはあと数秒必要だった。
再びタイヤの破裂音が聞こえたと思えば、援軍に来た仲間の【機神象】もそのまま力なく横に倒れてしまった。
「うわああああッッ!! 」
今度ばかりはぼくはもう平静を保つことが出来なかった。操縦グリップに取り付けられた引き金を引き、象の牙部分から機銃を見えざる敵に向けて掃射しまくった。
「ズガガガガガガガ……!! 」
鳥の鳴き声と人々の活気で作られた【楽園】に似合わない、金属のぶつかり合う凶音と火薬の匂いが、ぼくの正気をさらに喪失させた。
「うおおおおおおッ!!!! 」
宮殿内の壁に、柱に、天井に、でたらめに弾丸を撃ち散らかしたぼく。本来であれば戦闘中にもっともしてはならない行為ではあったけど、それがこの場では逆に功を奏する結果となった。
「うぅッ! 」
何者かの悲鳴が聞こえた。足下からだ!
ぼくは【機神象】を歩かせてその悲鳴の発声源をさぐり、ようやく見えざる敵の正体を使むことに成功した。
「どおりで……」
敵は、宮殿の床の下に潜んでいたのだ。
「う……うう……【上の力】よ……永遠なれ……」
象の牙を使って床のタイルを引っ剥がすと、そこには【機神象】の銃撃によって負傷した男の姿。その手には手榴弾らしき物が握られている。
「まさか?! 」
ぼくはその姿を見て直感した。この人は自爆する気なのだと。
「待って! 」
ぼくはすばやく【機神象】から飛び降り、負傷した【上の力】の侵入者の元へと駆け寄った。敵とはいえ、目の前で自殺しようとしている人間を放っておけるワケはない!
男は手榴弾のピンに指を掛け、爆発の秒読み段階に入る。あと数歩踏み込めば、彼の元へ飛びついて自爆を止められる……そう思った瞬間。
「だめええええ! 」
突如背中に強い衝撃を覚えた。【楽園】に来る前、学校のバスケの試合でいじめっ子からワザと身体を突き飛ばされた時のビジョンが頭をよぎる。
「いてッ! 」
そして地面に身体を叩きつけられ、痛みが全身を駆けめぐったのと同時に、三度目の破裂音が宮殿内を反響させた。
「バカ! あれは“インスタント・グレムリン”だよ! アレは“私たちだけ”を殺すことが出来る特殊兵器なの! 」
ぼくの背後からタックルして押し倒したと思われる人物が、背中の上にのしかかったまま、鬼気迫る口調でそういった。
「いんすたんと……ぐれむりん……? いや、それよりも……!? 」
ぼくは叩きつけられた衝撃で頭が揺さぶられてしまったことで、すぐに気がつけなかったらしい。ぼくを押し倒して“インスタント・グレムリン”とやらから救出してくれた人物が一体誰だったのかを……
若干の落ち着きを取り戻した今ならすぐに分かる……その人こそ、ぼくが守護しなければならない現人神……
「め……メグジェシカ様!? 」
身体を捻り、背後に視線を移すと確かにいた……
神々しいまでの金髪と、白雪のような肌……そしてエメラルドを彷彿させるグリーンに輝く瞳。間違いない! この人こそぼくが夢にまで見たあこがれの……
「こらッ! なにボサっとしてるの! さっさと立ち上がって逃げないと! 」
「は、はい? 」
メグジェシカ様はそう急かしながら……あろうことかぼくの手を握って引っ張り、立ち上がらせようとしてくれていた……!?
「う……うわッ! すみません! ぼくごとき人間があなた様の手と触れ合うだなんて」
「んな面倒くさいコト言ってる場合じゃないでしょ! 早く立ちなさいって! 」
この人は本当にメグジェシカ様なのだろうか? 礼拝の際、いつも遠くから拝見させていただいている気品ある姿とはほど遠い、くだけた口調と快活なイメージ……
しかし、格調高き存在であった彼女とのギャップに翻弄されるのと同時に、どこか懐かしい心地を感じてしまうのは一体なぜだろうか?
「はぁ……はぁ……くそッ! 」
そんなことを考えているうちに、【上の力】の男が床下から這い出し、腰に携えたコンバットナイフを引き抜いてぼく達の方へと向け、殺意を放出させながら突っ込んできた! まずい! 今度は手っ取り早く実力行使というワケなのか?
「危ない! メグジェシカ様! 」
ぼくはとっさにメグジェシカ様の前の立ちはだかり、女神を守る為の人壁になろうとした。
命に代えても彼女を守りきる!
「さすがだなダフィー君。私はキミのそういうところを買っていた! 」
上方から馴染みのある低音の声。その主はぼくにとってはこの【楽園】で誰より尊敬している人物であることは間違いない。
「神父様!! 」
助けに来てくれたのだ。あのジョン・ブラックマン神父様が、黒い僧衣を翻し、颯爽とぼく達と【上の力】の男との間に割り込んだ!
「【アースバウンド】の悲劇を再現してやろう」
あーすばうんど……だとかなんとか、神父様は呟き、黒手袋によって封印されていた右手を突き出した! 一体何を? このままでは神父様が男に殺されてしまう?
「うぐああああッ!!!! 」
そんな不安をよそに、【上の力】の男は突然苦しみ出す。何が起きたんだろう?!
「さあ、キミはそのまま【上の力】の仲間の元へと戻るんだ。わかるな? そしてそのナイフは、私ではなくキミ達の首領へと向ける……いいな? 」
「は……はい……」
男の目はどんどん虚ろになり、さっきまでの威勢はどこに行ったのか? そのまま回れ右をして宮殿から外へ歩き出してしまった。一体何がどうなっているのだろう? 理解できない事象の連続で脳の処理が追いつかない。
「さて……ダフィー君、それに……メグ……」
神父様は【上の力】の男を見送ると、一切こちらに視線を向けずにそう言った。どことなく高圧的なニュアンスを感じ取ってしまうほどに、いつもとは明らかに違う口調だった。
「残念だよ、この私の[リモートコントロールワーム]を見られた以上……キミ達はリセットしなければならない。本当に残念だよ」
りもーとこんとろーる……? 一体神父様は何を言っているんだろう?
「逃げるよ」
隣に経っていたメグジェシカ様ぼくにそう耳打ちした。こんな状況にも関わらず、彼女の暖かい吐息とシャンプーの香りで心臓がドキドキしてしまった自分に恥じてしまう。しかし、逃げるって?
「逃げるよ! 早く! 」
メグジェシカ様は再びぼくの手を掴んで走り出した。ぼくもワケが分からないまま一緒に駆け出す。
「メグジェシカ様!? 一体これはどういうことで? 」
「まだ分からないの!? 私たちの本当の敵は【上の力】なんかじゃない! ブラックマン神父だよ! 」
「ええっ?! ワケが分からないです! なんであんなに良い人が敵なんですか? 」
「あんたまだ分からないの!? 今さっきキミは殺されかけてるの! なよなよしてないで! 少しはビシっと現実を受け入れなさい! 」
「え……その台詞……まさか!? 」
『なよなよしてないで! 少しはビシっと抵抗したら!? 』
夢の中の少女が時、ぼくに向けて怒鳴った時の言葉。それにそっくりだった。
」
「もしかしてメグジェシカ様は、ぼくをいじめてた子の股間に野球ボールをぶち込んだ……」
メグジェシカ様はぼくのその言葉を聞いてニヤリと微笑んだ。
「やっと思い出したの? ダフィー……私はあなたが【楽園】に来た時、全て思い出してたんだから」
からまったシーツは、時折思いもよらぬ物まで一緒に引き上げてしまう。




