再転位@魔導国ガルシルド
話が進みません。
光が消え、視界が元に戻る。
まず目に映るのは、驚いた顔でこちらを見ているクラスメイト達。次に玉座っぽいのに座ってるジジイ。
さらにその周囲にはフードをおろしたローブ集団、そして煌びやかな服装をしたおっさんたちが立っていた。
「おお・・・今度こそちゃんと城っぽいとこに出たな…」
小声で呟いたからか、それとも喋ったのが俺だったからか、その言葉に反応した奴はいなかった。
大理石っぽい床に、やたら高い天井。窓から見える景色は普通そのもの。
ここが城じゃないにしても、さっきのような空間ではないことは確かだ。
「晄牙くん!?大丈夫ですか!?」
「皆心配したんだよ!?特に美奈とか!」
「お・・・おう、心配かけて悪かったな…」
俺が一人で考え込んでいる間、一緒に現れたはずの晄牙には多くの心配の言葉がかけられていた。
それらがひと段落着くと、今度は「どこにいたのか」や、「なにがあったのか」等の質問攻めへと内容がシフトされていた。
そして俺には例のごとく「なんでお前が晄牙と一緒に来るんだ」的な視線がザクザクと突き刺さる。
過去には実際に口で言われたこともあるから、決して被害妄想じゃないはずだ。
改めて気分が悪くなり、自然と表情がゆがむ。
「チッ…いいねぇ人気者はぁ」
無意識に舌打ちが出る。
八つ当たりで赤ローブを睨むと、なぜか苦笑で返された。
見下されているようで腹が立つが、態度は一貫して変わっていないので悪気はないのだろう。
軽くため息をつき、気分をリセットする。
晄牙への質問攻めがようやく途切れたころに、玉座っぽいのに座っていたジジイがなにやら話をしだした。
「えー…では、全員揃ったところで、改めて説明したいと思うのだがよろしいかな?」
どうやら俺と晄牙が転移してくる前に、一度説明がされていたようだ。
そもそも俺は聞く気なんてないからやるだけ無駄だ。
ボーっとしながら適当に聞き流す。
「今、この国…いや、ほぼすべての人族が危機にさらされている。」
「…」
「魔王の復活体…いや、この場合は転生体と言うべきですかな。魔王軍はそれを目的に侵攻してきているようで。」
「…てことは、そいつらはいるかもわからない魔王を探すために攻めて来てるってのか?」
「いえ。軍を率いる幹部の魔族は、魔王の発する独特な魔力を探知し、さらに預言書と呼ばれるものに従って行動していると、過去の報告から上がっている。…つまり奴らは、確実にこの国に魔王の転生体がいると確信した上で攻めて来ているということですな」
「もし…魔王の転生体がそいつらと出会ったらどうなるんだ?」
「間違いなく国がいくつか滅びますね。…まあ、それをさせないがために君たちのような、救世主たりえる者を召喚したわけですが…」
「転生体ってことは、一回死んでるんだよな?魔王を倒した人はもういないのか?」
「ああ…魔王を討伐した勇者、エザキ ユート様はその直後行方をくらましてしまいましてな…。年齢で考えれば生きているとは思うのですが…」
「エザキ…?それってもしかし「なーげーえー飽きた―休ませろよクソジジイー」優斗…!」
この空間のほぼ全員の視線が俺に集まる。
中には敵意どころか殺意を感じるような気がするものも結構ある。
が、とてもじゃないが飽きた。
長ったらしいったらありゃしねえ。
「お前…気にならないのか?お前と同じ名前…もしかしたら居なくなったっていう親父さんの」
「ハイデリカシー0重み0同情心0ォ~。」
「なっ、俺はただ、お前が気になってると思って…」
「だぁぁぁからぁ、余計なお世話だっつってんだよ。第一なんで知ってんだよ。つか知ってても言いますかね普通ぅ?マジ胸糞悪ぃし気持ち悪ぃ。それともお前は何ですか?人の傷口えぐって喜ぶゲスなんですか?だったら俺と分かり合えそうなんだけどなぁ~?」
ただでさえ最低に近づいていたテンションがマイナスを突っ切った。
もうここにいる意味は無い。
言うだけ言ったあと、聞こえる言葉をすべてスルーし、俺は逃げるように立ち去った。
優斗「気分悪いんで部屋でまーっす」
「「「「ちゃんと話聞いとけよ…」」」」
晄牙「…(反省中)」