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召喚@カラフルローブ

「おい!起きろ!優斗!おい!」


誰かが肩を揺すりながら声をかけてきている。

寝起き特有のだるさがあり、面倒だからと起きずにいたら揺れが一層激しくなった。

流石に気分が悪くなってきたので起き上がると、視界に飛び込んできたのは幼馴染の顔だった



「ふぅ。やっと起きたか。」



どうやら俺を起こしてくれやがった野郎は覇桜 晄牙だったらしい。

名前がなんかもう凄まじいが人格は良く、ある程度何でもできて当然女にモテる。

まさにハーレム主人公ってやつだ。本人にそのつもりはないが。


呑気なことに求夢はまだ寝ている。

あいつだけほっとかれてるのは納得いかないが、起こしても起きないような奴だから仕方ないだろう。

一旦頭から追いやり、状況を把握するべく周りをみてみる。


今俺がいるのは、ちょうど高校の教室ぐらいの広さがある空間だった。

足元には何やらぐにゃぐにゃとした気持ち悪い字で書かれた魔法陣のようなもの。

壁の近くにはそれに沿うような形で松明が配置されていた。


魔法陣の上には俺と二人のほかに、見覚えのあるやつら…俺のクラスメイト達がいた。

接点がないやつが多過ぎて思わず閉口してしまう。

だがそれは相手も同じようで、こちらを見たまま固まっている。



(クラスの奴ら何て会話すらしたことねえよ…)



話しかける必要がないと思っているから会話がないだけで、決してボッチ等ではない。

「お前それボッチだろ」とか思った奴は真に俺のことを理解する気がないのだろう。

うん。きっとそうに違いない。


松明が置かれていない空間をぼーっと眺めていると、少し離れた位置にカラフルなローブを着た集団が現れた。

手には装飾の施された怪しげな杖を握っており、間違いなく不審者と言って差し支えない。

しかも顔は影に隠れて見えず、それがより怪しさを引き立てていた。


警戒する俺たちをよそに、カラフルローブたちはこんなことを言ってきた。



「魔王を打倒し、世界を救ってほしい。」と。



空気が冷えるのが分かった。

・突然洞窟っぽいところに出る。

・魔法陣っぽいのごしに約話しかけてくる怪しい集団。

・魔王

これだけのことがほぼ同時に起こって完全に対応できる人間なんてめったにいないと思う。

少なくとも俺はその部類だ。

再び10秒ほど沈黙が続き、そこでやっと誰かが口を開いた。



「あの…質問がいくつかあるのですが、よろしいでしょうか?」

「おお。すまない。なんでも聞いてくれ。」

「まず、ここがどこなのかという事からですが…」



質問したのは求夢。それに答えたのは赤ローブ。

いつの間に起きてたのかは知らんが、こんな時も敬語を崩さないのは素直に驚いた。


で、その赤ローブ曰く、

俺たちはこの国「魔何とか国ガル何とか」ってとこに召喚されたらしい。

カラフルローブたちは魔術師でこの国のトップだとか。

どうやら魔王軍が攻めてきてぶっちゃけもうギリギリだから勇者を召喚してどうにかしようとしたらしい。

召喚して出てきたやつは勇者に限らずステータスとかが何かいろいろスゴイ。

が、俺ら以外の召喚陣は1つを除いて起動せず、もう一つので召喚された奴らはどこかに飛ばされてしまったらしい。


つまり戦って来いと。正直すっげぇ嫌だ。

それを聞いた瞬間、考えるよりも先に口が勝手に動いた。



「お願いするときの態度が違うよなぁ…?」

「え?」

「だ・か・ら…人にものを頼むときはどうするのが適切でしたっけぇ?」

「なっ…」



青ローブから明らかに憤った声が聞こえる。

中学から鍛え上げてきた卑屈スキルは、こういった状況の時非常に役に立つ。

何せ都合のいいこと以外はほぼシャットアウトできるからだ。


きっと非常に歪んだ笑顔をしているだろう俺は、そのままの勢いで畳みかける。



「で?どうなんですか赤ローブさぁぁん?」

「貴様ぁ…あまり調子に「やめておけ」…はい…」

「すまない。この通りだ。どうか魔王を倒し、世界を救ってくれ。」

「何をしておられるのですか!お止めください!」


青ローブを制止した赤ローブ。

そいつは驚くほどあっさりと土下座してきた。

すると慌ててに緑ローブが出てきて、土下座をやめさせようとしている。

反射で頭を踏みつけようとすると、後ろから押さえつけられた。



「おい!やりすぎだろ優斗!」

「そうですよ!そこまでする理由があるんですか!」



声から察するに、片方が晄牙、もう片方が…真面目君の岩動 照のようだ。

だがまだ赤ローブは土下座したままなので、きにせずもう一度踏みにかかる。


グッ


おかしい。上半身が全く動かせない。

いくら二人がかりとはいえ少しも体を動かせないのは納得いかない。

岩動は剣道をやっているが、それだけでここまでの怪力は身につかないはず。

晄牙だって同じだ。テニス部だからと言ってスマッシュで相手選手を弾き飛ばせる程の力は…ないよな?


俺が二度も踏みつけようとしたのに気づいたらしく、さらに力が強まっていく。



「いだいいだいいだい!ちょっと待てお前ら骨!骨!」

「もう少しおとなしくしとけって…!」

「そうですよ…!今放したら絶対また踏みに行きます…!」

「ン゛ッ、ンーーッ!」



しまいに口まで押えてきやがった。

痛い。すっげぇ痛い。

こいつら馬鹿じゃね?悪いのはあっちだってのにやり過ぎだろ。

流石に抵抗もめんどくさくなったのでおとなしくすることにした。

抑えつけてくる力量は変わらないが、おとなしくした分痛みが薄れた気がする。



「どうか顔を上げてください。こちらこそ申し訳ありません」

「いや。よい。こちらの都合で振り回してしまっている以上、むしろ私たちが謝るべきなのだ。」



「すまなかった」

そう言って今度は後ろのローブたちも頭を下げてきた。

…こういう空気は俺の最も嫌いとするところだ。

いくつもの冷たい視線が俺に突き刺さる。

ま、しったこっちゃねぇけどな。




求夢「これ捻くれてるっつーかただうざいだけじゃ…」

優斗「タグ:小悪党」

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