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第八一話【見よ、商人は帰還する】

爵位持ちの国際商人アヘヒロは現在大型帆船に乗って、一路温泉村を目指している。

彼は帝国へ里帰りすると共に、情報収集と根回しと宣伝活動などを行っていたのだ。


皇帝陛下への謁見やサタケ辺境伯との打ち合わせ、宮廷貴族や御用商人たちとの複雑怪奇な交渉も終了していた。

コルスとケニーから示唆された街道の敷設や整備は、皇帝陛下の勅令によって大々的に始められている。

尚、工事は理論的且つ現実に即した様式で厳密綿密に油断なく進められていた。

これは生涯かけて為すべき事業である、と陛下は仰られていた。

陛下が一番融通の効く柔軟な方とは、なんという皮肉だろうか。

アヘヒロは、欲の皮の突っ張った者たちと話し合う度にそう考えた。

欲に満ちた連中が無能かといえば、そういう訳でもないから面倒だ。

とかく、権力と金だ。

色欲をほのめかす者もいる。

見目よい娘を紹介する者もいた。

美しい娘は駒扱いだ。

工芸品のように扱われるだけマシと思うべきか。

女性の権利などという発想すらないのが普通だ。

元々女性を大切にしている彼は、婦人をモノ扱いする貴族や商人たちにうんざりした。

あの、温泉村の女性たちのなんと生き生きとしていることか!

熟練の商人とさえ対等にやりあう不思議少年のコルスや、中年異邦人のケニーが女性にとても親切なのは衝撃的であった。

二人ともそれは当たり前のことだと口を揃えて言っていたのだが、そのやさしさは出会う女性たちを虜にしているようだ。

船上で受け取った詳細な報告書には、二名の克明な様子が余すとこなく記されていた。

ケニーの幼い花嫁たちは、彼のやさしさに魅せられているらしい。

それは非常によいことだ。

今後の戦略を考えると、是非とも仲よくなってもらわないといけないからだ。

皇帝陛下の御為に、あの二人にはこれからも幅広く活躍してもらわなければならない。

経済活動規模の活性化は喜ばしいことだ。

いずれは二人とも……いや、まだそれは時期尚早か。

今は二人の喧伝けんでんに努めよう。

あともう少しであの賑やかな村に戻れる。

アヘヒロは知らず満面の笑みを浮かべた。

そは人によっては獰猛とも評される笑顔。



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