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第七八話【初夏のある日】

私の名はケニー。

異世界へ転移しちゃったおっさんで、先日元貴族の嫁さんたちを貰った。

なんでこうなったかよくわからんが、今のところはお互いに清い関係だ。

彼女たちは若すぎるし、なんだか政略だか策略だかが絡んでいるらしい。

国際政治は複雑過ぎてよくわからん。




今日も今日とて、温泉村とその周辺の開発について異世界転生した少年のコルスとあれこれ意見を出し合う。


「なあ、コルス。」

「なんだ、ケニー。」

「甘味に関してなんだけどな、馬鈴薯から水飴が作れるんじゃなかったっけ?」

「……えっ?」


コルスがポカンとした顔をしている。

珍しい。


「あれ? 気づいてなかった?」

「続けてくれ。」

「馬鈴薯の澱粉を糖化したら水飴が出来るって昔聞いた覚えがあってさ。林檎を糖化するより楽なんじゃないかな、って思ったんだ。」

「さっそく作ろう!」


中身がおっさんの少年と共に、馬鈴薯の皮を剥いて作業を始める。

村の女性陣を加えて、作業を進めた。

結果からいうと無事に水飴が出来た。

村の衆から好評を得て、嬉しかった。

甘味は稀少だ。

甘味料は戦略物資に成り得る存在だ。

故に慎重に取り扱いを進めてゆこう。




寒冷地の温泉村では花の咲き乱れる季節。

村祭は例年以上に上手くいったし、街道整備も現在進行形で好調だ。

苺の季節になり、みんなで収穫に励んだ。

甘酸っぱいのではなくて酸っぱい苺だが、それでもおいしいと思う。

そのまま食べたり、コルスが絨毯で空を飛んで交易都市のハミルの街へ持ち込んだりした。

苺の砂糖煮も順調に作ってゆく。


焼きたてのパンに苺の砂糖煮を塗って、口に入れる。

口中に広がる自然の恵み。

旨い。

これはささやかな幸せだ。

溢れかえるほどの物質に囲まれたセカイではないが、それはそれとして、ここは生きてゆく価値のあるセカイだ。

爽やかな風が吹く。

風の向こうにコルスがいる。

街道整備を進めなくてはな。

私は彼に向かって歩きだす。




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