第七六話【スライム捕獲作戦】
俺の名はトニー。
可愛い幼な妻のいるナイスガイだ。
いやー、春祭のコルスがヤバかった。
ありゃ、可愛いってレベルじゃない。
温泉村に来た男連中がみんな見てた。
お陰でかなり儲かったからよかった。
俺も嫁のハンナからどつかれるくらい見つめちまった。
いつもあんな感じでいてくれたらいいのによ。
長い髪を風になびかせて、ああもうたまらん。
「また春祭のことを思い出しているの?」
「ああ、あの時のコルスはホントに……あれ、ハンナ、何故ここに?」
「ちょっとお話しようか。」
「な、なんでフレイルなんて持っているんだ?」
「練習相手を探していたの。ちょっとつきあって。」
「え、俺はこれからちょいと仕事があるん……。」
「つきあって。」
「は、はい!」
いてて。
痣だらけになっちまった。
「トニー、ハンナがとても魅力的なのはわかるが、そういうのは推奨出来んな。」
どっと笑い声。
コルスがあきれた目付きで俺を見ていて、その瞳に思わず……。
ノー! ノー! 断じてノーだ!
「じゃあ、再確認だ。初夏のスライム捕獲作戦はこの広場を進発したら開始する。スライムの攻撃力は低いが油断するなよ。今年はリーネの精霊魔法で支援してもらうが、鎧の隙間から入られないようにしろ。後、そんなバケツ兜を被っていると視界が効かなくてやられるぞ、トニー。」
また笑い声。
仕方なく兜を脱ぐ。
折角借りてきたのに。
「ケニーは新婚修行中、アヘヒロはミトラスへ一旦戻って挨拶回りするから当分帰ってこない、腕の立つ連中は訓練教官として斥候隊その他を鍛えている最中だ。必然的に村の若い衆に手助けしてもらわないといけない。頼むぞ、トニー隊長。」
お、おう。
初夏になると、スライムの活動が活発化する。
刃物が通らないので、槌やフレイルやメイスといった打撃系武器を装備し、追い詰めて捕まえる。
その後は清掃要員として活躍してもらうのだ。
投網を投げたり、壺に入れたり、四苦八苦しながら捕獲した。
しかしまあなんだな。
このスライムの弾力ってのが、またなんともいえない魅力を感じる。
あはは、こりゃたまらんぜ。
「楽しそうね。」
「おうよ、この感触は……ハンナ? 何故ここに?」
「お手伝いよ。」
「お、おう。」
「きもちいい?」
「えっ?」
「私といるよりずっといい?」
「な、なんば言いよっとですか!」
「そうよね。私、ちっちゃいし。」
「だ、大丈夫ですたい! なんも問題なかとよ!」
「ホント?」
「ホントじゃきに!」
「信じていい?」
「いいともさ!」
「なあ。」
「なんだ、コルス。」
「トニーっていい奴だな。」
「ああ、あいつはやれば出来る奴だからな。俺たちをまとめているだけのことはあるよ。」
「ハンナもよく手綱を取っている。」
「あの年であれだけ出来るんだから、てえしたもんだよ。」
「今年のスライムは伸びがいいな。」
「ああ、こりゃよく汚れを取ってくれそうだ。」
「あと三回も捕獲すればいいかな。」
「わかった。明日も来ればいいか?」
「そうだな。明日も捕獲作戦だな。」
幼な妻に引き摺られるガタイのいい男。
少し困った顔は、それでも幸せそうに見えた。




