第七一話【飛脚】
今回、大変短いです。
春祭の準備に手間取っています。
申し訳ありません。
この世界には郵便制度が存在しない。
故に、手紙は旅人や行商人や隊商に預けて送るのが一般的だ。
距離によって相場は異なるが、基本的に温泉村からハミルの街までが銅貨一〇枚、温泉村またはハミルの街からオーファーアイセルの街またはトゥルンハウトの街までが銅貨二〇枚、オーファーアイセルの街からサタケ辺境伯領サカタまでが銀貨一枚である。
辺境の村では現金収入が少ないから、貨幣の流通量は少なめだ。
温泉村の場合は様々な地域から人々が療養や湯治や観光に来るため、貨幣経済が浸透している。
一般的な村に生活する人々は収穫物で納税するのが基本だし、食料や必要品などは物々交換が殆どだ。
「よし、飛脚制度を作ろう。」
いつものように、コルスがいきなり言った。
私ことケニーは首を捻る。
「飛脚?」
「韋駄天のような健脚の者を村や宿屋に待機させて、手紙を素早く送り届ける制度だ。」
「それは知っているけど、上手くいくかなあ? どう思います、アヘヒロさん?」
強者商人のアヘヒロに話を振ってみる。
「あったら嬉しいですね。私は筆まめなので、あちこちに早く出したいんですよ。サカタやメルキアに一ヵ月以内で送れたらありがたいんですがねえ。」
「需要があるんだ。供給すれば潜在需要も掘り起こせる。翼竜に乗った飛脚って出来ないかな?」
「あのですね、コルス。翼竜自体の遭遇率が極めて少ない上に、翼竜を飼育している者なんて天文学的確率の存在です。もしいたとして、運よく手伝ってもらえたとしても大赤字確定です。」
「『魔女の宅急便』は無理か。」
「箒に乗って飛ぶ魔女が荷物を運ぶのかい? もしいたとしても、アスラン帝国方面ならなんとかなりそうだけど、ミトラス帝国方面は無理そうだなあ。運用すればするだけ赤字になりそうだ。ところで、快速船ってどうなの?」
「あれは一ヵ月かかる距離を三週間かもう少し早く届けるくらいの感じだな。倍速ってことはない。時化や凪で状況はかなり変わるから、快速船より一般船舶の方が早く着いてしまったという冗談みたいな話があるくらいだ。」
話し合いは翌日に持ち越され、斥候隊から特に足の早い者を幾人か選んで試験的に運用してみようという話に落ち着いた。
上手くゆくといいなあ。




