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第五九話【迷いの剣】

「御命頂戴つかまつる!」


海上都市での激しい攻防戦。

空を飛ぶ文明の塊が、原始的な欲望の道具にされて次々に破壊されていった。

道具は進化しても、人は退化する一方だ。

二〇メートル弱の無骨な人型機動兵器が、激しい槍捌きで突きかかってくる。

よい腕だ。

だが!

機体を瞬時に沈ませて、必殺の槍を凌ぐ。

私は機体両肩に装備された光剣を抜いて、敵機の両腕を斬り上げた。


「これも定めと思し召されよ。」


腕に仕込まれた短射程のパワー・ランチャーを敵機の頭部に数発放ち、妖精ファティスの加護を失った機体が海へと沈む。


戦況は一進一退が続いていた。

いや。

我が方が反乱軍に押されているな。

先鋒の部隊を全機落としたが、まだまだ数は多い。


「Cブロックに向かってくれ! バスター・ランチャーを持っているやつがいる!」


人使いの荒い従妹が指揮所から電波を飛ばしてきた。


「マクトーンはどうした?」

「あいつが私の言うことを聞く訳ないだろう! 今頃は何処かで最新型の機体を使って遊んでいる最中だろうさ。アレは遊軍扱いにしている。今はお前が頼りなんだ。」

「わかった。すぐそちらに向かう。」


やれやれ。

この海上都市を守りきらねばならない。

すべてたたっ斬るのみ。

我が剣に迷いなし。





なんだかトミノっぽい夢だった。

少し肌寒い。

春とはいえ、まだまだ冷えるな。





「ヒロインか……。ケニー、誰か思いつく子はいるか?」

「コルス、いきなりだな。ヒロイン……誰かいたっけ?」

「なにを言っているのですか、コルスにケニー。わたしこと闇エルフのリーネが、官能系ヒロインですよ。」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」





温泉村は王国の北嶺にあり、小さな規模の村だ。

小さな村がなにかしら改革を行うには銭が要る。

作物を植える田畑の開墾には人手と時間が必要。

建築物の増設には金子と材料が大量要求される。

特産品や名物を生むにしても相応のものがいる。


温泉村の躍進は専門家であればあるほど頚をかしげるものだった。





「せいっ!」


コルスの一撃で荒れ地がえぐられる。

雪混じりの土砂が粉塵を撒き散らす。

雪がようやく溶け始めた、この季節。

不毛の地は豊饒の地に変えられるべく、人海戦術によって一気に耕されている。

本来なら何年もかかる困難な事業が、一週間も経たずに準備を調えられてゆく。


「備中鍬!」


コルスが鉄製の三又鍬を高らかに掲げる。

まるで名刀のように。

幕末の山田方谷が改良し、他の農業用製品と共に売れまくって備中松山藩の財政難を解消したという鉄製の鍬。

世界的な名品である。

時代的なことを考えれば、革命的な製品でもある。

そんな存在を、ドワーフの名工たちがその高い技術力で再現していた。

鉄製品を農村で使える利点は大きい。

それだけ村が豊かという証拠である。

コルスが近隣の地下に眠る砂鉄や鉄鉱石を回収しては、ドワーフたちに預けていた。


「まさにてつは“金の王なるかな”、だな。」


ケニーが改めて感心したような顔でコルスに笑いかける。


「村々の地力を高め、各々を連携させる。ハミルの街やロマラン村もだ。有力な諸侯とよしみを通じる。オラニエ公もシトロン公もその内巻き込む。やることだらけだ。アヘヒロは、春祭が終わったら結婚式を挙げに一旦ミトラス帝国へ戻る。帰ってくるのは初夏になるだろう。オレたちのやることは沢山あり過ぎて大変だが、やればやるだけ見返りもある。農業、漁業、林業、観光、商業、調略、内政、外交、諜報、いろいろある。盗賊野盗流民問題も考えないとな。」


私は腰に差した短剣に触れる。

場合によっては、人を斬らなくてはならない。

迷いなく斬れるだろうか?

または使い慣れつつあるあの鉄球で人を……。


「ケニー。」


振り向くとコルスがいた。


「殺すよりも洗脳した方が資源的な意味で楽が出来る。田圃の肥やしにするより、そちらの方が建設的だ。」


ニヤリと嗤う少年。

ゾクリとしながら、その方がいいのだろうと思った。


私の剣はまだまだ迷いの途中だ。






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