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第四〇話【ユニークスキルというものはないかもしれないタリラリランな世界】

私の今の名はケニー。

四〇代のおっさんだ。

戦力は半ゴブリンだ。

槍や剣に振り回され、乗馬で臀部の皮が剥け、戦術理論にちんぷんかんぷんになりながら日々暮らしている。


結果から先にいうと、回転焼きもしくは今川焼とも太閤焼とも呼ばれるふうまんは大好評を得た。

小麦粉や砂糖がオーファーアイセル方面から安定供給されるようになったのも、追い風になった。

肝心要な基本形の小豆餡がないのはさみしい限りであるが、無いものねだりをしても致し方ない。

一個銅貨一枚というわかりやすさも受けて、ハミルの街に出した屋台は大人気だ。

近々、他の街にも出店予定である。





甘味料甘味料とコルスが呪文のように言うので、 白樺の樹液はどうだろうと提案した。


「白樺?」

「白樺。」

「……もしかして、キシリトールか?」

「たぶん、そんな感じ。」

「でかした、ケニー! カスタ、ラッセルな雪掻きをやっている斥候隊から一部引き抜いて、白樺の樹液を集めさせろ。キルステン、村の手の空いた連中を率いて樹液の採取だ。指揮はお前が取れ。オレは女性陣を掻き集めて樹液を煮詰める準備をする。ケニーはオレの手伝いだ。」


一旦動き出すと、温泉村の面々は早い。

それに、甘いものは皆に大人気なのだ。

キシリトールが皆から喜ばれて嬉しい。





江戸時代後期辺りの器用なお爺さんを数人連れてきたら、この世界はかなり発展するのではないだろうか?


知恵に長け、ちょっとした生活用品ならば自分自身で片手間に作り、日々を楽しんで教養も持ち合わせる。


そんな人に少しでも近づきたい。


たい焼きを焼く型の試作品をメルクリン村のドワーフに作ってもらいながら、私はいろいろと夢想をする。


役に立てるというのは嬉しいものだ。

コルスから褒賞金として、金貨二枚を貰った。

私の元いた世界だと二〇〇万くらいか。

常駐してくれる医師が欲しいと進言しておいた。

医療の充実は必要だからな。

変色した黒いエプロンにノコギリというのは勘弁して欲しいが。





お好み焼きも作りたい。

キャベツはあるのかな?

ソースは玉葱や果物を煮詰めたらいいんだったかな?

マヨネーズは既にある。

鉄板でじゅわーっと焼く、あの匂い。

もう、たまらない。

たこ焼き、鉄板焼、かやくごはん。

豚まんは作れそうだ。中華もいい。

食べたいものは沢山ある。

うどんは……醤油がない。

コルスにも聞いたが、醤油はどうやら存在していないらしい。

魚醤の改良は遅々として進まないとか。

日本の食生活は洗練され過ぎというか、滅茶苦茶な水準であることがよくわかる。

米も存在自体が不明だそうだが、もしあったとしてもジャポニカ米とは限らない。

長い時をかけて品種改良され、食べ慣れた米を二度と味わうことは不可能だろう。


小豆はどうなんだろう?

大豆があれば豆腐や味噌が作れるな。

豆腐は凍み豆腐にすれば日持ちする。

味噌は兵糧丸にすれば重宝出来るな。

菜の花は咲くのだろうか?

胡麻は存在するのだろうか?

山葵わさびはあるのだろうか?

ひじきは?

ワカメは?

テングサはあったそうだから、期待しておこう。

蛸はいるのか?

烏賊はいるのか?

海洋調査はあまり進んでいないそうだ。


石炭は?

石油は?

コークスってどうやって作るんだっけ?

夕張みたいな炭坑はないのか?


墨は作れるだろうか?

室で松を燃やして煤を集め、固めるのだったか?

律令制の頃にはあったのだから、作れるだろう。


硝子はまだまだ普及していないから、作れるようにしたい。

窓硝子のある生活を進めてもらおう。


そうだ、牛乳。

牛の乳。

山羊の乳や羊の乳も悪くないが、やはりまろやかさになると牛乳が圧勝だ。

コルスに強く進言しよう。

十勝みたいな牧場を作るのだ。


豚も欲しい。

栄養価もたっぷりだ。

飼ったら、その一頭にウマソウと名付けよう。


繊維だ。

ミツマタ、コウゾ。

お札にも使われる頑丈な繊維。

紙だ、紙。


夢は広がる。

別に私たちの世代で完成しなくてもいいのだ。

いつか。

いつか。

豊かな生活が出来たら、それでいい。

私たちの子孫に宝物を残してあげたい。

それが今の私の夢。

希望。

やる気が出てきた。

武力がないなら、知力で補えばいいじゃないか。





コルスと話をしてみた。

既に考えられているものがあったし、改良が進められているものもあった。

彼から一定の評価を与えられたのが、最も大きな収穫だろう。

外見が七歳の少年に褒められて喜ぶのは、絵的にどうかと思わないでもないが。


熱々のたい焼きを二人で食べながら、今後の方針を打ち合わせてゆく。

夢と希望を現実に擦り合わせながら。




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